1973年、世界で最初のERPとなったSAP社の「R/1」がリリースされました。以降40年以上にわたって、ERPは様々な時代背景を受けながら進化しています。現在では純国産ERPやクラウドで提供されるERPなど数多くの製品やそれに関連するサービスが存在します。
そんなERPが誕生したきっかけは何だったのか?
今回は、業務のシステム化という背景から、ERPの歴史についてご紹介いたします。
メインフレームによる処理が当たり前だった1960年代から1970年代
実は、企業がコンピュータが使用するようにってから、まだ半世紀ほどしか経っていません。まず最初の段階でメインフレームによる統合環境下での分散処理が一般化しました。
そもそもメインフレームは、金融機関におけるオンライン処理などに代表される大規模なトランザクション処理に利用され、徐々にダウンサイジングが進むことで、一般企業における財務会計や生産管理など、各企業の基幹業務にも普及していきました。
一方で、部門や業務形態ごとに個別のシステムが存在していたのも事実です。現在でも度々問題視される「サイロ化(分散)されたシステム環境」は、当時からすでに始まっていたものだと言えます。
こうしたメインフレームによる基幹業務処理は企業の業務処理能力を一気に向上させました。しかし、当時のコンピュータはそれぞれに設計がまったく違うため、コンピュータ同士の相互接続に手間を要し、プログラムを設計・構築するコストが大きな課題でした。
そこで新たなコンセプトとしてERP(Enterprise Resources Planning)が登場しました。そもそもERPとは、企業の事業計画に沿ったリソース(資源)の最適配置を目的とすることであり、結果として基幹業務の見直しが促進しました。
その際に会計業務のみならず、人事管理や生産管理、営業・販売管理や物流・倉庫管理といった関連する業務全体を統合的に連携する思想が持ち込まれました。これを実際に開発したのが、先に紹介したSAP社の「R/1」です。
当時、SAP R/1は、メインフレームで動作するように設計されていましたが、ERPのアーキテクチャーは革新的な情報システムとして注目され、数は少なかったものの大手企業を中心に導入されていきます。
コンピュータの普及とダウンサイジング化が進んだ1980年代から1990年代
1973年に登場した「R/1」は後に「R/2」がリリースされ、導入率としては低いものではあったものの、多言語、多通貨を扱ったこの製品はヨーロッパ圏を中心に成功を収めています。1980年代に入ると、ミニコンピュータ(ミニコン)やオフィスコンピュータ(オフコン)、さらにパーソナルコンピュータ(パソコン)が登場し、価格的にも購入しやすく、コンピュータの企業へのコンピュータ普及率は上がりました。
しかし、コンピュータはネットワークに接続されていない環境(スタンドアロン)での利用が一般的でした。企業は部署ごとにコンピュータを設置し、そこに業務ソフトウェアを導入することで、業務の効率化を図っていたのです。
こうしたコンピュータ環境は、1990年代に入り「クライアント・サーバ型」が登場したことで一変します。
クライアント・サーバ型とは、複数のクライアント(パソコン)に対し一つのサーバでデータを処理するという利用方式であり、LAN接続されたコンピュータ同士が相互に連携し合う環境が整いました。さらに、コンピュータ(主にパソコン)がダウンサイジング化(小型化)したことで、企業規模を問わず爆発的にコンピュータが普及していきます。
こうした背景の中、米国Oracle社やJD Edwards社(後にOracle社によって買収)、オランダのBaan社(後に米国Infor Global Slution社によって買収)など、次々にERP市場へ新規ベンダーが参入していきます。ちなみにERPのパイオニアであるSAP社は、1993年にクライアント・サーバ型に対応した「R/3」をリリースしています。
BPRへの取り組みが加速しいていく
1990年代に入り、多くの海外企業で生産性の大幅な向上を目指し、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)への取り組みが加速していきます。BPRとは既存の業務プロセスを抜本的に改革し、新たな業務プロセスを再構築することで、組織全体の生産性を向上させるための業務改革手法です。
このBPRを実現するためのツールとして注目されたのがERPでした。当時ERPは「ベストプラクティス」と呼ばれ、ビジネス成功要素の集合体と言われたことから、ERPによってそのベストプラクティスを取り入れようという企業が多かったのです。実際に、多くの海外企業がERPによってBPRを実現させ、生産性を向上しました。
日本企業でもERPが浸透した1990年代後半から2000年代初頭
海外でBPRへの取り組みやERPが普及する中、日本ではバブル崩壊の影響で不況のあおりを受けていました。終身雇用制度は事実上崩壊し、多くの企業がリストラなどによる人件費削減を行っていたのです。
こうした状況から脱するために、日本でもBPRに注目が集まります。先進的な海外企業のように、既存の業務プロセスを抜本的に再構築し、生産性を大幅に向上することで、現状からの改善を目指したのです。
日本企業のBPRにおいても、中心となったのはERPでした。しかし、そこに落とし穴があったのも事実です。海外企業と日本企業ではそもそも商習慣が異なるので「海外企業のベストプラクティス」が日本企業にフィットするはずもなかったのです。結果、独自の商習慣に合わせるためにERPのアドオン開発が多くなり、導入コストは肥大化しました。日本企業のERP導入の多くは投資対効果が見合わず「失敗」するケースがありました。
国産ERPの登場と、クラウドERPが台頭する2000年代後半から2010年代
2000年代に一度は下火になったERP市場も、今では息を吹き返し、毎年堅調な成長を見せています。その理由は2つ。一つは国産ERPが多くリリースされ、日本企業の商習慣に対応した製品が登場したことです。
これにより日本企業のERP導入であってもアドオン開発を最低限に抑え、従来よりも低コストかつ迅速な導入が実現しました。
そしてもう一つは、クラウドERPの台頭です。クラウドERPはインターネット上で提供されるため、インフラ調達が必要なく、かつ複雑なシステム構築も不要でERPを導入できます。これに注目した、IT投資に積極的な大手企業と、ERPを低コストで導入したい中小企業の間で普及が進み、現在では一大市場へと成長しました。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
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まとめ
ERPが登場したのは実に40年以上も前であり、日本でも一般化されています。こうしたERPの歴史を振り返ると、意外な事実が隠れているものです。この歴史を振り返ることで今後の情報システム戦略が見えてくるかもしれません。システムインテグレータが提供する国産ERP「GRANDIT」は、2004年7月のリリースから、多数の企業のビジネスを根底から支えています。
十年以上の導入支援からのノウハウにより、様々な業界業種への適切な導入をサポートします。ERP導入の際は、ぜひGRANDITをご検討ください。
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