企業の経営基盤を支えるERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)。統合された基幹システム環境、統合されたデータベースは、多くの企業にとってビジネス価値を創出するために重要視されています。
しかし、ERPの導入はその影響範囲の大きさから導入失敗になる確率が高いとされています。ERP導入に取り組んだものの、プロジェクトに頓挫してしまったり、導入後に運用失敗に陥るケースも少なくないのです。
そうした「ERP導入失敗」を回避するためには、事前に注意ポイントを知り、対策を立てておくことが大切です。今回は、ERP導入前に注意すべき7つのポイントについてご紹介します。
ポイント1.ERP導入前に、目的を明確にする
ERP導入検討段階で自問していただきたいことは、「ERPを導入する目的は何か?」ということです。実は、ERP導入に際し目的が明確になっていない企業が、意外にも多く存在します。
- ERPを導入すれば多くの経営課題を解決できる
- ERPを導入すれば全体最適化が促進する
- ERPを導入すればリアルタイムな情報活用ができる
こうしたメリットばかりに目をとらわれ、ERPを導入する自社の目的が明確になっていません。「目的なしの導入」では、プロジェクトが頓挫するか、ゴールが不明確なために導入後に失敗に陥ります。
そのために現在の課題を洗い出して、何が問題なのかを明確化することから始めます。そして、ERP 導入で予測できる効果を可能な限り具体的に示しましょう。
ERP導入の目的を明確にすることは、ERP選定基準や、運用指針を作り、一貫した導入プロジェクトを行うための基盤となります。このため、ERP導入の目的を明確にすることは、思っている以上に重要な作業であり、この目的が全ての基本となるのです。
もう一つ、「ERP導入自体が目的化しない」ことも大切です。ERPはあくまで経営課題を解決するための道具であり、導入自体が目的になってしまってはいけません。
ポイント2.RFIとRFPに注意する
ERP選定にあたって、システムベンダー各社にRFI(情報提供依頼書)と RFP(提案依頼書)を提示し、各製品の情報収集をして製品選定を行います。しかし、このとき重要な点があります。
それは「現状」がしっかりと分析/整理されていることです。
一般的なRFIやRFPでは、自社がERPによって実現したい要件を記載し、その要件に沿った回答が返ってきます。そのRFIやRFPが「こういうことがやりたい」「ああいう風にしたい」など曖昧な表現だと失敗する可能性が高まります。
曖昧な要件の場合、実際にプロジェクトが進行し、いざ要件定義の段階になると大幅に見積もり金額が膨れ上がるケースがあります。
このような失敗を避けるためにも、移行前の現状を整理して分析しておくことが重要です。例えば、現場で利用している帳票を調べてそれは本当に必要なのか、部門では日々どのようにシステムを利用しているのかなどを整理しておきます。また、新しい機能が必要であれば重要度・優先度も併せて、その内容を正確にシステムベンダーに伝えるようにします。
RFI/RFPは、細かく伝えることが成功のポイントとなります。
ポイント3.導入事例を確認する
ERPを初めて導入する企業の多くは、製品選定の際に、まずシステムベンダー各社の導入事例を確認します。自社と同じ業界への導入事例が多ければ、経験や知見もあり それだけ信頼できるシステムベンダーである、ということになります。。しかし、ここでも注意すべきポイントがあります。
確かに、同業他社への導入実績が多いほど、業界特有の課題を解決できる可能性は高いでしょう。しかし、同業他社のERPの導入目的が自社と同じとは限りません。むしろ同業他社であっても、抱えている経営課題はまったく違うかもしれません。
このため、導入事例の紹介をされてもその企業名で安心するのではなく、可能な範囲でそのプロジェクトの詳細を聞くようにしましょう。そして自社の状況と照らし合わせてみることが重要です。
ポイント4.経営者視点だけで導入を進めない
ERPはよく「経営のための基幹システム」と言われています。これは、統合データベースによる情報の一元管理を実現し、経営ダッシュボードといった機能によって経営状態をリアルタイムに可視化することで、意思決定の迅速化を促進できるためです。
このため、経営スピード向上のために、ERP導入を目指す企業も多いでしょう。ただし、経営者視点だけでERP導入を進めてしまうと、往々にして導入失敗に陥ります。
というのも、ERPは経営のための基幹システムであっても、実際にシステムを利用するのは現場の従業員だからです。つまり、経営者が求める情報の可視化も、従業員の正確な情報入力あってこそなのです。
もしも導入したERPが各部署に定着しなければ、正確な情報は手にできず、経営のための基幹システムも破たんしてしまいます。だからこそ、経営者視点だけでなく、現場視点も取り入れることが大切です。業務プロセスや使い勝手が変わる現場では大きな反発があるケースも少なくありません。ERP導入の本質を理解して現場までERPを使い切る覚悟が成功へと導くのです。
さらに言えば、システム管理者視点もERP導入には大切です。導入後にERPを運用するのはシステム管理者であり、セキュリティポリシーなどを適用するのもシステム管理者です。従って、情報システムはERP導入成功の要と言ってもいいでしょう。
以上のことから、経営者視点だけでなく、現場視点、さらにシステム管理者視点、プロジェクト体制を取り入れたERP導入を目指す必要があります。
ポイント5.自社に最適なERP導入の形を知る
ERP導入には現在、多様な導入形態があります。パッケージ製品で構築するか、あるいはそれをクラウド環境で構築するか。自社開発するか、クラウドERPを利用するかなど、いくつかの選択肢があります。そこで、どの導入形態が自社にとって最適なのかを知ることが大切です。
ポイント6.時に機能要件を緩和することも大切
ERP導入にあたって多くの機能要件を定義します。しかし、時にその要件定義が原因となって、製品選定を阻害してしまう可能性もあります。あまりにガチガチに固まった機能要件を定義してしまうと、それに対応したERP製品が見つからず、導入プロジェクトが一向に進まないか、ERPでありながらカスタマイズが大量に発生するといった事態が発生します。
カスタマイズが多ければ多いほど、コストやスケジュールは肥大化します。さらには将来的な運用コストも膨らむことを理解する必要があるでしょう。
もちろん、自社の機能要件を完全に満たす製品を導入することがベストです。しかし、ERP製品の中には、100%の機能要件を満たせる製品は少ない、ということを念頭に置くことも大切です。
機能要件を少しでも緩和すれば最適な製品が見つかることもあるので、本当にその機能が必要なのかをしっかりと考える必要があります。
ポイント7.強いプロジェクト体制を組む
最後のポイントは、ERP導入のプロジェクト体制です。メンバー構成やメンバーへの権限、報告・意志決定方法について決めておかないと、要件・課題整理や解決方法の決定などが的確に行えずに要件が決まらない、もしくはスケジュールが遅延するなど、プロジェクト全体に大きな支障をきたす恐れがあります。
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まとめ
今回はERP導入を成功に導くためのポイントをいくつかご紹介させていただきました。
ERPの導入は、今後の企業経営を左右する大事なプロジェクトです。そのプロジェクトを成功に導くためには、数多くのポイントが存在することも事実です。
もしERPの導入をご検討している場合には、システムインテグレータにお問い合わせいただければ幸いです。
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