SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較

 2022.05.02  株式会社システムインテグレータ

多くの企業で利用されている「SAP ERP」。スピード経営や業務効率化、テレワークを実現してくれる便利なツールです。しかし、このシステムがもうすぐサポート終了となってしまうことはご存じでしょうか。また、これを機にシステムの見直しを検討している方も多くいらっしゃるでしょう。

この記事では、SAP ERPの概要や一般的なERPとの違い、導入のメリット・デメリットなどを比較します。 

SAP ERPとは

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較

SAP ERPとは、ドイツのヴァルドルフに拠点を置く「SAP社」が開発したERPのことです。ERPパッケージのシェアでは最大手企業となっています。それもそのはず、SAP社は1973年に世界で初めてERPを開発したことで、世界中の企業から注目されていました。

また、SAP社ではSAP ERPのほかにも、SAP BWというデータ蓄積などに特化しているシステムやサプライチェーンマネジメントに特化したSAP APOというシステムなども開発しています。

SAP ERPは、開発当初からの長い歴史で培われた経験と知識を活かし、企業の要望も取り入れた改善を重ね、多くの企業にとって利用しやすいシステムへと進化しています。さらに、国際会計基準にも対応していて、現在では30種類以上の言語でサポートされていることから、海外はもちろん日本国内でも多くの企業がSAP ERPを導入しているのです。 

SAPについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
SAPとは?ドイツ発ERPの特徴や導入のポイントを解説

ERPとは

ERP(Enterprise Resource Planning)とは、直訳すると「企業資源計画」という意味になります。

企業にある「ヒト・モノ・カネ」といった資源を有効活用するための、考え方・手法のことを表しています。近年はERPを実現するためのシステムも「ERP」や「ERPパッケージ」と呼ばれるようになりました。ERPパッケージは「調達」や「販売」はもちろん「生産」や「会計」など各種システムを統合管理できるようなソフトウェアを指し、これを利用することで企業が保有する情報をまとめて管理できます。

そのため、情報共有にかかる手間を省くことが可能となり、業務を効率化できます。また、リアルタイムな情報を一ヶ所に集められることから、経営判断の材料として活用することも可能です。 

ERPについては以下の記事で詳しくご紹介しています。併せてご覧ください。
ERPとは?統合基幹システムの種類やメリットなどを解説 

SAP ERPの特徴

SAP ERPは、ドイツのSAP社が提供するERPです。

SAPは数あるERP製品の中でも製品誕生からの歴史が長く、世界的な大企業での導入実績も豊富で、ERPパッケージの世界市場におけるシェアでは堂々の1位を誇ります。

SAPは「受注・販売管理」や「在庫管理」「生産管理」といった基幹業務システムから、「人事給与」や「経費精算」「管理会計」「プロジェクト管理」などの機能がそれぞれ「モジュール」として提供されています。いずれもカスタマイズ機能が豊富で、各社の業務にあわせてシステムを柔軟に作り込める点が特徴です。

また、SAPはパッケージ製品である強みを活かし、導入は短期間で完了します。導入後も手厚いサポート体制が整っている点もポイントです。 

SAP ERPに搭載されている主なモジュール

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較-1

SAP ERPは、業務領域を「モジュール」と呼ばれるいくつかの単位に分けて管理しています。この項目では、主要な4つのモジュールをご紹介します。 

会計モジュール

FI:財務会計(FInancial Accounting)

CO:管理会計(COntroling)

 ロジスティクスモジュール

SD:販売管理(Sales and Distribution)

MM:在庫購買管理(Material Management)

人事モジュール

HR:人事管理(Human Resources)

生産管理モジュール

PP:生産計画/管理(Production Planning and Control)

倉庫管理モジュール

WM:倉庫管理(Warehouse Management)

そのほかのモジュール

QM:品質管理(Quality Management)

PS:プロジェクト管理(Project System)

PM:プラント保全(Plant Maintenance)

CA:クロスアプリケーション(Cross Application)

 このように、原価管理に役立つ会計モジュールから、人事・生産管理・在庫管理・プロジェクト管理まで、SAPひとつでプロジェクトから経営まで幅広くカバーできます。

いずれのモジュールもカスタマイズ性が高く、さまざまな企業の業務環境にマッチするようにできています。 

ERPのメリット・デメリット

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較-2

ERPのメリットは、社内の情報を一元管理することで情報共有などの手間が省けることや経営の可視化、セキュリティ対策ができることなどにあります。

部署や部門を越えて情報が共有されるので、ERP導入以前に必要だったデータ連携の手間を省き、正確な情報を素早く手に入れることが可能です。

データ連携の他にセキュリティ面でもメリットがあります。ERP導入以前は部門ごとにシステムがあり、それぞれにセキュリティ対策を行う必要がありました。しかし、ERPを導入することでシステムを一元管理すれば、セキュリティ対策もひとまとめに済ませられるようになります。アクセス権限などを設定すれば、情報流出への対策もできるでしょう。 

一方、デメリットとしては、既存システムからの乗り換えに時間が掛かったり、ERPについてある程度の知識が必要であったりする点が挙げられます。

ERPにもさまざまな種類が存在し、それぞれに得意分野があるため、複数社を比較・検討して自社に合ったものを選定する必要もあるでしょう。

さらに、ERPは複数の業務をカバーする大きなシステムのため、初期費用が高くなってしまいます。導入後にもライセンス費用や保守費用、バージョンアップなどに費用がかかる場合があります。ベンターによってはデモや導入などをサポートしてくれるため、事前に相談しておくと良いでしょう。 

SAP ERPのメリット・デメリット

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較-3

長い歴史とその柔軟な機能から世界中で人気を得ているSAP ERPですが、導入にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。 

SAP ERPのメリット

SAP ERPは「受注・販売管理」や「在庫管理」「生産管理」「財務管理」といった基幹業務システムから「人事給与」や「経費精算」「固定資産」「プロジェクト管理」「管理会計」「顧客管理」「予算管理」など、幅広い業務領域をカバーしており、それぞれのシステムから生まれるデータを一元的に管理することが可能です。

他社のERPパッケージ製品は、各業務単体の遂行に重きを置く「個別最適」な考え方を持つツールも多くありますが、SAPの場合は業務プロセス全体の実現や整合性の確保を重視しています。部分的にカスタマイズや業務内容の変更が生じても、業務プロセス全体で矛盾や不整合が発生しないようにつくられています。

SAPは欧米の大企業における活用実績も多いため、SAPを導入するということはそれらの企業と同様の業務プロセスを取り入れることにもつながります。有効性が高い業務プロセスを自社に採用することで、業務改革につながるといった効果も期待できます。

また、ERPの周辺システム(SAP BW、SAP APO、SAP CRM)と連携することで、広範囲な業務をカバーして高度な多次元分析をすることもできます。SAP ERPで出力した分析レポートはExcelでダウンロードできるので、オフラインでの情報共有にも便利でしょう。

さらに、国際会計基準にも対応しており、30種類以上の言語でサポートされていることもポイントです。海外拠点の業務や取引を一元管理すれば、海外取引専門の人員を雇う経費を抑えることができ、かつ業務遂行の確度も高まります。 

SAP ERPのデメリット

一方で、ライセンス料やサーバー費用、システム構築料などの初期費用がかかり、場合によっては付加機能の開発費が発生するケースもあるため、導入費用は高額になってしまう傾向にあります。SAPは、ERPの中ではかなり高額な部類と言えるでしょう。

また、SAPのライセンス料、利用するユーザー数が多いほど金額が高くなります。しかし、必要以上の削減は業務効率の低下やトラブルの原因につながり、SAP ERPの導入自体を失敗させてしまうこともあるため、注意が必要です。

さらに、あくまでもSAP ERPはツールの一つで、導入するだけでさまざまな課題が解決できるわけではありません。理解が浅く、上手に活用できなければ意味がないのです。プロジェクトリーダーなどの選出を行う際には、SAPについて理解の深い人材を選ぶと良いでしょう。 

SAP ERPのサポート終了について

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較-4

SAP ERPに関して多く人々を悩ませているのが「2027年のSAP ERP 6.0のメインストリームサポート終了」です。サポートがなくなると、システムの改善や機能追加、法改正に対応するためのアップデートが行われなくなります。

SAP ERPは約20年間アップデートにより機能拡充が行われましたが、システムの肥大化や処理速度の低下などを引き起こしていました。そのためSAP社は、SAP ERPの後継版である「S/4 HANA」をリリースし、ユーザーにこちらへの移行を推奨しています。この一環として、SAP ERPは2027年にメインストリームサポートを終了します。もともとは2025年にメインストリームサポートを終了する予定でしたが、2020年2月に2027年まで延長することが発表されました。 

移行が間に合わない企業のために、SAP ERP6.0のエンハンスメントパッケージ(EhP)のうち、6から8までの新しいバージョンを利用していれば、延長保守料を支払うことで2030年までサポートの延長が可能になりました。

SAP技術者の不足や移行の難しさなどの理由から、多くの企業が移行への取り組みに消極的なこともあり、次世代バージョンであるS/4HANAに「移行する」か、サポートを受けずに「継続利用する」または「別のERPに乗り換える」といった3択を迫られています。 

詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。
SAP ERPの2027年問題について 

SAPだけじゃない!押さえておきたい定番ERPパッケージを比較

SAP ERPとは?一般的なERPと特徴やメリット・デメリットを比較-5

ここまではSAP ERPのメリット・デメリットやERPについて解説しました。サポート期限などの問題から、他社システムの導入を検討している方もいるでしょう。

この項目では、SAP ERP以外の定番ERPパッケージをご紹介します。 

GRANDIT

株式会社システムインテグレータが提供している「GRANDIT」は、純国産のERPシステムです。クラウド・オンプレミスどちらも対応可能で、さまざまな業種に対応できるこのERPシステムは、製造業や情報サービス業、商社や小売業者など1,200社以上の導入実績を持っています。

開発は13社のプライムパートナーからなるコンソーシアム方式で行われており、パートナー企業各社のノウハウを結集することで、多くの人にとって使いやすいERPパッケージを実現しています。

このような「常に進化するERP」という特徴は、他のERPにはない要素でもあります。

また、共通機能として、電子承認ワークフローやメール・webの通知機能、データ分析やEC、海外取引対応などを備えています。

ちなみに、デモの依頼も可能なため、事前にシステム導入によるシミュレーションもできます。いきなり高額なERPシステムを導入するのは不安と思う場合にも、しっかりと使い勝手を確かめてから導入できるのは嬉しいポイントです。 

Oracle

オラクル社が提供しているERPは2種類あり、どちらもクラウド環境を利用して使用する「クラウドERP」です。

Oracle NetSuite(ネットスイート)は、クラウド生まれのクラウド育ちという特徴があります。ERP・CRM(顧客関係管理)・EC(イーコマース)機能などが統合されていて一元管理ができるほか、多言語・多通貨に対応しているのも魅力です。グローバルで、共通の統合システムを構築できるクラウドERPとして、世界中で利用されています。

もうひとつのERPであるOracle Cloud ERPは、安定したクラウド環境が特徴です。オンプレミスなみの高性能コンピューティング能力を持っていて、セキュリティ面も強力です。NetSuiteよりも柔軟なカスタマイズができ、業務が複雑化しやすい企業に向いています。 

オービック

オービック社が提供する「OBIC7」は、累計2万5千社を超える企業の導入実績があり、ERP累計導入者数のシェアは19年連続でNo.1を獲得しています(※)。創業時から自社開発・直接販売を続けており、手厚いサポート体制を持つ点も特徴です。

提供されている製品は、会計、財務、人事、給与、就業、販売、生産、クラウド、書類作成・事務支援、そしてBIツールなどを含む連携ソリューションの10種類で、これらを柔軟に組み合わせて活用します。シンプルながらカスタマイズ性が高く、導入しやすいERPです。 

(※)2002年~2020年 ERP主要ベンダー(ライセンス売上高シェアトップ10)における累計導入社数 矢野経済研究所調べ 

まとめ

今回はSAP ERPについてご紹介しました。SAP ERPはSAP社が提供するERPパッケージです。国際会計基準に対応し、30ヶ国語のサポートを受けられるほか、長い歴史から得た経験と知識を活用した改善を重ねた安心と信用を兼ね備えたシステムであることが特徴です。

しかし、2027年には標準サポートが終了してしまうことから、多くの企業がERPの見直しを迫られています。弊社ではERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績がございます。ERPなら株式会社システムインテグレータにお任せください。

また、弊社では、ERPパッケージ比較資料やERPを選定する際のポイントをまとめた資料などを多数ご用意しておりますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。


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