工事管理システムとは?システム導入のポイントや工事業界の仕組みを徹底解説

 2022.08.31  株式会社システムインテグレータ

2021年の開催となった東京オリンピックに続く好材料として、2025年に開催が予定される大阪万博では多額の経済効果が見込まれています。開催に向けた準備として、インフラ整備や道路工事、鉄道路線の延伸など、工事業界が関わってくる事業は多数あります。関連事業の総予算は1兆円超との試算も出ており、日本経済に多大な影響を与えるでしょう。

こうしたケースにおいて、資金力や人手の多さを活かすには先進的なITを取り入れ、より早く、正確な業務運用を心掛けていくべきです。しかし実際には、業務のシステム化がスムーズに進んでいない企業も少なくありません。本稿ではそんな業界内の現状をキャッチアップすると共に、その課題と今後のあるべき姿をシステムに結びつけてお話しいたします。 

工事管理システムとは?

工事管理システムとは?システム導入のポイントや工事業界の仕組みを徹底解説

工事管理システムとは、工事業の一連の業務プロセスやデータ管理を一元化するシステムのことを指します。例えば工事の受注管理や予算作成、支払管理などに関する情報量が増えてくると、紙媒体や表計算ソフトのみで情報管理を行うことが困難になってきます。工事管理システムを導入することで、受注管理や請求書発行、回収などに用いるデータを1種類のシステム上で管理できるようになります。

工事管理システムの主な機能

工事管理システムを制作・販売するメーカーは近年増加しており、製品によって多様な機能が搭載されています。ここでは、多くの工事管理システムに搭載されている基本的な機能を紹介します。 

受注管理機能

自社が受注した工事の物件情報や契約内容をシステム上で管理できる機能として、受注管理機能があります。通信環境が整っている場所であれば、移動先や作業現場などから情報を確認することが可能です。 

予算管理機能

工事の予算や工期などを一元管理する機能です。案件ごとの予算や工期、工法などをシステムへ入力することで、最終的な売上や利益額を自動的に計算・確認できます。 

発注管理機能

実行予算に応じて発注金額を設定できる機能です。案件ごとに利用する仕入れ先や金額を登録することで、予算設定や注文書の作成などを手早く実施することができます。 

請求管理機能

仕入れ先からの請求書を工事や工種ごとに分けて管理する際に必要な機能です。原価が変動した際には自動的に更新されるため、発注元に対する請求金額の計算や請求書作成などの業務をスピーディに実施できます。 

支払管理機能

仕入れ先に対する支払日の確認、支払依頼書の作成や支払手段の設定を行える機能です。 

入金管理機能

発注元からの入金管理、残高確認を行う際には、入金管理機能があります。入金が行われた時期や金額をシステム上で確認できるので、二重請求や金額不足といったミスを防ぎやすくなる機能です。 

原価管理機能

工事原価をシステム上で管理する原価管理機能では、売上に対する原価率計算や利益管理などをリアルタイムで行えるようになります。 

工程管理機能

案件ごとの進捗状況をシステム上で一元管理する工程管理機能を活用すれば、請け負う案件の進捗状況を常に把握できるようになります。工期調整や人員配置の見直しなども検討しやすくなるでしょう。

作業日報の作成や提出、確認をシステム上で実施できる機能を用いることで、進捗確認や原価管理を効率的に行えるようになります。 

工事業界の仕組み・構造、そして「人」

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工事業界ではゼネコンといわれる大手企業をトップとして、サブコンや建築設計企業、建材企業や施行管理企業などが仕事を請け負うピラミッド構造が存在しています。ほとんどの場合は「元請け」が存在し、そこから建物を完成させるまでの業務を個別に請け負う「下請け」が存在する仕組みです。

工事現場などでは担当の請負企業名が記載された紙や看板などを目にすることもありますが、実際に現場で仕事を行う企業は一般知名度の高くない企業であるケースも珍しくありません。施主となる企業や個人は元請けに発注し、元請けは下請けへ依頼を行うため、施主と現場で仕事を行う企業には面識がないケースもあるのです。

しかし、施行に関する不具合が発生した際、責任の多くを元請けが負うことになります。こうした仕組みの都合上、元請けが下請けを選定する際には慎重になるか、すでにある程度の実績をもつ企業を選定するケースが多くなりやすいのです。なお、成果物へ支払われる対価を元請けが多く獲得する構造は長年維持されています。企業で業績責任を負うウェイトが高い社長や役員等、上席の方の収入が一般社員より多い構造と同じだと言えるでしょう。

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※【重量鳶 建設業界あるある】より抜粋

※大手ゼネコン(スーパーゼネコン):鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店の5社を指す。 

さらに現在国土交通省が旗振りで「i-Construction」を軸とした施策に取り組もうとしている背景に深刻な人手不足があげられます。他業界に比べ新卒者が例年少ない状況もあり、例えばトンネルやダムの工事など、今まで人が請け負っていた作業は、作業ロボットに任せることで、解決の一助としてます。また、作業ロボットに人工知能(AI)を搭載し、これまで人が行ってきた作業を学習させてさらなる効率化を目指す動きも加速しており、「当社も他人事ではない」と感じている企業も少なくないのではないでしょうか。

また、以下のようなスローガンを掲げ、より多くの人材を採用できるよう業界内に啓蒙しています。

  • 一人一人の生産性を向上させ、企業の経営環境を改善
  • 建設現場に携わる人の賃金の水準の向上を図るなど、魅力ある建設現場へ
  • 建設現場での死亡事故ゼロに
  • 「きつい、危険、きたない」から「給与、休暇、希望」を目指して

※【国土交通省「i-Construction」~建設現場の生産性向上の取り組みについて~ 目指すべきものについて】より 

工事管理とシステムの関わり

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工事を進める際には完成に向けたスケジュールや予算の管理、従業員の配置管理などが必要になります。そこで重要になるのが、システムを用いた工事管理です。

例えば、大規模な建造物を請け負うスーパーゼネコンでは、自社から下請けまで1種類のシステムを採用し、販売・資材調達・施工・人員管理・会計などのデータを連携させる仕組みを構築、実践するケースが多くみられます。改ざんできないように電子文書化したデータを業務報告に用いるといった方法が実施されており、工事管理を強化する傾向は年々高まっています。 

工事業界すべてシステム化できているのか?

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スーパーゼネコンではシステム化が進む一方、それより規模の小さい企業や建設会社では総合的な工事管理及びシステム化はあまり進んでいません。

ゼネコンといわれる各社には上場企業が含まれており、収支を開示することで各工事の金額やコストを把握することが可能です。上場企業では自社の収益や支出に関する情報をシステムで一元管理することで、健全な経営環境と正確な事業実績を公開・アピールできるようになっています。

一方、中堅から中小規模の工事会社は、システムの導入強化が十分に進められていないケースが中心です。実際、2019年における基幹システムの導入率は建設業で9%~10%、国内全体で27%とされています。

自社内ではシステム運用を行う企業でも、下請け管理は紙ベースで行い、資材の仕入れも「いつもの価格」として資材製造元にお任せしている企業もあるようです。そういった企業は品質に関しても自社で確認する意識が薄く、問題が発生した際には製造元の責任とすることが考えられます。システム化が行われていない企業では、工事に関するトラブルや偽装事件が発生するリスクが高く、工事業界に対するイメージ低下を引き起こす原因にもなり得るでしょう。 

システム化が進んでいる工事業界

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しかしながら、スーパーゼネコン以外はシステム化ができていないわけではありません。例えば、建設業の協会では公平化を図るため

  • 建築案件の協会員への公平振り分け
  • 賦課金や企業仕切の均一化
  • 遂行率管理
  • 施主企業の与信管理

をシステムで一元管理し、それらを協会員だけでなく、自治体や外部に開示している取り組みも存在します。ERPのようなデータの一元管理ができる基幹システムを利用したり、個別のシステム間で必要なデータを連携して運用していたりします。

また、一部の工事会社では、AIやIoT技術を採用することで資材の品質管理を強化し、品質基準データをラーニングさせ、資材の良品・不良品判定や在庫数・必要数などを素早く計算し、発注や払出に関連するデータ表やコスト一覧表を作成するなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する取り組みを進めようとする会社も増えています。 

工事管理システムのメリット

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工事の受注や書類作成といった業務をシステム化することで、業務効率向上やコスト削減など複数のメリットを得られます。ここからは工事会社の業務をシステム化するメリットを具体的にご紹介します。 

工事に関するデータを一元管理できる

工事管理システムを導入することで、予算設定や進捗、仕入れ管理といった情報を一元管理できるようになります。部署ごとに異なるシステムで情報を管理している場合、データのフォーマット修正や、別システムのデータを手入力するなど、管理ミスのリスクは高まるでしょう。

しかし工事管理システムでは各部門の工事に関する情報を一つのシステム上で確認できるため、情報の手戻りや認識齟齬が生まれにくく、こうしたトラブルも回避できます。受注管理や人員配置などの業務も、より適切なタイミングで実施できるようになるでしょう。 

業務の効率化

工事に関する情報の入力・確認に工事管理システムを使うことで、事務作業の効率化を図れます。仕入れ先の原価情報や発注先の依頼内容などをシステム上で確認できるため、事務作業にかかる時間を短縮できるというメリットがあります。 

現場の状況がリアルタイムで把握できる

ネットワーク上から現場の進捗や予算状況などをリアルタイムで確認できると、自社が受注している案件のスケジュール設定や予算管理などを効率的に実施できるようになります。 

社内外のコミュニケーション円滑化

工事管理システムに搭載された機能を活用することで、依頼内容の確認や進捗報告などを円滑に進められます。システム上で入力・変更された情報はどの部署からでも確認できるので、企業内での情報交換はもちろん、仕入先や発注先との商談、進捗報告などを行う際にも正確かつスピーディに行えるでしょう。 

意思決定スピードが上がる

経営に関わる売上や利益額などの情報を一元管理することで、経営層による状況確認や経営判断を効率的に実施できるようになります。受注価格の見直しや従業員の配置変更などを検討する際に、工事管理システムの情報を確認することで、経営判断を正確かつスピーディに実施できます。 

ペーパーレス化によるコスト削減

紙媒体で情報伝達をおこなう企業では、多額の印刷代がかかっていることが考えられます。工事管理システムではネットワーク上で情報を記録、共有するので、ペーパーレス化によって印刷代の削減を図れます。書類を印刷する時間や費用を省くことで、業務効率の向上が図れることも工事管理システムを導入するメリットの一つです。 

工事管理システムにデメリットはある?

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システム化を進める際には、コストの高さや利用できる機能、操作方法などを考慮することが必要です。まずはシステム化を進める過程で発生しやすい問題やデメリットについてご紹介します。 

コストが高くなる場合がある

工事管理システムを選ぶ際には、自社にとって必要な機能が搭載されているか否か、適切な契約プランであるか否かなどを重視することをおすすめします。多機能であるほど運用コストが高くなるため、使わない機能が多い場合は余分なコストを多く払っているといえます。搭載されている機能や料金体系はシステムによって異なるので、複数のメーカーで比較・検討することがコスト削減のポイントです。 

複雑なものは使いこなせない

高機能な工事管理システムは操作方法が複雑であり、業務効率化やコスト削減といったメリットを得られるようになるまで時間がかかります。操作方法が複雑すぎたり、システムの導入準備を行う時間が不足していたりすると、導入した工事管理システムを適切に運用できないリスクが高まるでしょう。 

工事管理システム導入のポイント

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コストを抑えながら業務のシステム化を進めるには、自社にとって必要な機能が揃った工事管理システムを導入することが前提になります。多機能なシステムであればそれだけ費用が高くなるため、中堅~中小規模のゼネコン、工事会社では「必ず必要な機能」や「あったらよりよい機能」など、必要な機能に優先順位をつけて選定の指標にすることが重要です。

とはいえ、様々なベンダーが多くの工事管理システムを開発・販売しています。機能だけでは比較できない場合もあるでしょう。

そのため、システム導入にあたっては工事管理システムを導入する理由を明確化しておくことも必要です。他のゼネコンや工事会社を単に真似するだけでは、システム化に失敗するリスクが高まります。自社が工事管理システムを導入する理由やタイミングに関しては、社内で十分に議論を重ねてから踏み切るようにしましょう。 

工事管理システムの選び方

各ベンダーの工事管理システムを比較する際には、基本的な機能が揃っているか、初期サポートが充実しているか否かを確認することをおすすめします。工事会社の場合、受注管理・予算管理・発注管理・支払管理・入金管理などの機能は必要不可欠です。その他、請求管理・原価管理・工程管理などの機能が搭載されていると、より広範囲の業務を効率化できるでしょう。

このように、最初のステップとして自社の目的を明確化し、次にその目的を叶えるための機能を洗い出す、そしてその課題にマッチする機能があるか否かでシステムを選定するといったフローを、丁寧にクリアしていくことが重要なのです。

また、自社内にITリテラシーが高い人材がいない場合には、システムの操作説明や保守管理、適切な利用プランの提案といったサポートを実施しているベンダーを選ぶなど、運用面を加味することも大切です。あくまで機能だけに限らず、運用面・コスト面も含めて自社の課題をクリアできるか否かを考えましょう。 

企業のシステム化を成功させるために

システム化を成し得るためには、最初から全面的な改善を図るのではなく、ボトルネックや優先すべき課題がある業務領域から着手していくことがポイントです。

例えば「建築物の品質を向上させる」なら、AIを駆使した各品の画像や内部3D撮像管理ができるシステムを、「工事の契約から売上金の回収までの各種データを一元管理させる」なら工事管理システムを、「経営状態、事業実績を社内で共有したい」ならBIツールシステムなど、経営者から従業員までが納得する業務改善理由と、目標達成のために必要なシステム選定が重要です。 

さらに大事なポイントは、信頼できるベンダーをパートナーとして選定するということです。自社だけで課題を発見し、システムを検討するのも一つの方法です。しかし、より早く・正確に重要課題に辿り着き、安心して業務改善に進みたいのであれば、その改善成功に欠かせないパートナーを選定し、タッグを組んで取り組むことをおすすめします。システムに精通したベンダーにアドバイスを求めれば、より良い解決方法が見つかるかもしれません。

その他、より効率的にシステム化を推進したい場合はERP(企業資源計画)の導入・運用も一つの方法です。経営情報を一元管理することで、業務効率の向上やコスト削減といったメリットを図れます。今後企業がDXを行っていくうえで、ERPを活用して情報統合の基盤を作っていくのは必要不可欠でしょう。

なお、ERPに関しては以下の記事で具体的に解説しています。併せてご覧ください。
ERPとは?統合基幹システムの種類やメリットなどを解説 

最後に

当社では国産ERPシステム「GRANDIT」を通じ、工事業界を含む各業界の課題をお客様と共に解決して参りました。システム化の手順やメリットを把握したい場合、ぜひシステムインテグレータまでお問い合わせください。

また、工事業界向けのより詳しい情報を資料にまとめましたので、こちらもぜひご連絡ください。


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