貿易管理とは、貿易業務の中で発生する輸出入に関わる管理業務と、それに伴うさまざまな管理業務の総称のことです。例えば、輸出業務では輸出通関手配や通関書類作成などの業務があります。輸入業務においては輸入通関手配、関税・消費税納付などの業務が含まれ、管理業務の内容は顧客管理から販売管理、在庫管理まで多岐に渡ります。各企業がグローバル戦略に力を入れ始めている影響で、貿易を本業としない企業でも貿易管理の重要性が増しているのです。
しかし、貿易管理は業務の種類も多いうえに、非常にプロセスが複雑なものも含まれています。そのため、貿易管理の負担をいかに軽減するかが企業にとっての共通で、かつ大きな課題となっているのです。そこで近年、貿易業務をより円滑に進めるために注目を集めているのが、貿易管理システムです。
この記事では、貿易管理システムの概要や主な機能、導入メリットについて解説します。また、実際に貿易管理システムの導入を行っている企業による活用事例も併せて紹介します。
貿易管理システムとは
貿易管理システムとは、輸出・輸入における管理業務全般を自動化・効率化するシステムソリューションのことです。具体的には、輸出・輸入業務の支援や船積書類の作成、複雑な通関業務のサポートを行います。加えて、基幹業務となる販売管理や財務会計のデジタル化にも対応しています。
特に、関係者が多くなる税関や通関業者の業務を簡略化することは、業務の生産性の向上には欠かせません。そのため、貿易管理システムは貿易業務のスマート化を図る企業を中心に、導入が進められているのです。
貿易について詳しくはこちらの記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
貿易とは?国内取引との違いや貿易の流れ、世界の貿易動向について解説
貿易管理システムのおもな機能
貿易管理システムには主に輸出業務・輸入業務・三国間業務の、3つのメイン業務があります。ここでは、それぞれの業務における管理機能について紹介します。
輸出業務
貿易管理システムは、輸出業務の自動化・効率化に大きく貢献します。貿易管理システムで主に対応している輸出業務は以下の通りです。
見積管理 |
見積の入力・登録から見積書の出力 |
---|---|
受注管理 |
受注契約書の出力 |
発注管理 |
仕入れ先ごとの国内発注書・海外発注書の出力 |
仕入管理 |
入荷数量の管理 |
売上管理 |
輸出情報の登録、輸出に必要な帳票類の出力 |
入金管理 |
入金残などの管理 |
L/C接受 |
L/C(信用状)の履歴や残高管理 |
買取依頼 |
輸出手形買取依頼書、輸出手形取立依頼書、ドラフトの出力 |
為替予約 |
為替の予約データの管理など |
契約内容の照会 |
契約内容の照会や、受発注の進捗状況の照会、出力 |
管理帳票出力 |
管理帳票の出力 |
このほかにも、輸出業務で必要な見積書から契約書、送り状や梱包明細書の作成などの業務も可能です。
輸入業務
貿易管理システムで主に対応している輸入業務は、以下の通りです。
基本契約 |
基本契約書の出力 |
---|---|
発注管理 |
注文書の出力 |
仕入管理 |
入荷予定情報の管理 |
分別荷捌 |
通関依頼書の出力 |
諸掛管理 |
諸掛の按分処理 |
原価計算 |
輸入原価を算出 |
支払管理 |
決済情報の管理 |
L/C開設 |
L/C開設依頼書および変更依頼書の出力 |
外国送金 |
外国送金依頼書の出力 |
為替予約 |
為替予約データの管理 |
契約内容の照会 |
契約内容の照会や、受発注の進捗状況の照会、出力 |
管理帳票出力 |
管理帳票の出力 |
他にも、輸入前の貨物が国内法令の規制対象か否かを判断できる点は、輸入業務の機能としても重要といえるでしょう。
三国間業務
貿易管理システムは、これまで紹介した輸出・輸入業務以外で三国間業務にも活躍しています。三国間業務とは、輸出業者・輸入業者の間に仲介業者を含める貿易形態です。三国間貿易では仲介役が存在するので、実績の少ない業者同士でも安心して取引しやすくなるというメリットがあります。取引に必要な業務上のプロセスも減らせるという利点である一方で、各業者の進捗が見えづらくなる課題を抱えています。この課題に対し、貿易管理システムの導入によって機能を最大限活用できるようになるのです。
貿易管理システムで主に対応している三国間業務は以下の通りとなっています。
三国間契約 |
受注先への受注契約書の出力や仕入れ先への注文書の出力 |
---|---|
三国間船積 |
入荷残管理や貿易書類の出力 |
L/C取引 |
L/C開設依頼書および変更依頼書の出力、L/C残管理など |
支払管理 |
決済情報の管理 |
入金管理 |
入金残などの管理 |
買取依頼 |
輸出手形買取依頼書、輸出手形取立依頼書、ドラフトの出力 |
為替予約 |
為替予約データの管理 |
契約内容の照会 |
契約内容の照会や、受発注の進捗状況の照会、出力 |
管理帳票出力 |
管理帳票の出力 |
ほかにも三国間業務の進捗が可視化でき、取引が円滑に進みやすくなるのもポイントです。
貿易管理システムを導入するメリット
貿易管理システムを導入すると管理業務が効率化でき、人材不足や取引データの管理に関する課題も解決できるようになります。
貿易管理システムのメリットについて具体的に見ていきましょう。
管理業務の効率化
貿易管理システムを導入する代表的なメリットとして、管理業務の効率化が挙げられます。基本となる管理業務は貿易業務の中でも多岐に渡り、具体的には営業管理・顧客管理・販売管理・在庫管理などが含まれます。
これらの業務は、基本の管理業務と貿易管理を別に行っているケースが一般的です。例えば、自社独自のExcelシートで貿易業務をしていたり、貿易管理専用ソフトを使用していたりする場合があるでしょう。いずれの方法を用いても、それぞれの業務管理システムが統一されていないため、余計な手間がかかったり作業時間が増えてしまったりするのです。
そこで貿易管理システムを導入すれば、基幹システムと貿易管理業務を一元化できます。管理業務が効率化できれば、工数削減や作業時間の短縮にもつながるでしょう。
なお、販売管理と在庫管理の詳細については、以下の記事で解説しております。併せてご覧ください。
人材不足の解消
人材不足の解消を行える点も、貿易管理システムを導入する際のメリットといえます。日本では少子高齢化や人口減少が深刻化しており、各企業で人材不足に直面しています。また、高齢化による人材の離職が企業に与える影響も考慮する必要があるでしょう。特に、優秀な人材や専門的なスキルを持った人材が離職した場合の影響は計り知れません。業務の引継ぎに時間がかかったり、後継者を探すのが困難となるケースもあります。
そのため、人材不足とスキル・知識の継承の両面が企業にとっての大きな悩みといえます。
この課題に対し、貿易管理システムを導入することで、複雑でかつ業務内容の範囲も広い貿易業務のサポートが受けられるのです。もし貿易管理の担当者が離職しても、新しい担当者が業務を引き継ぎしやすくなり、業務の属人化の防止にもつながるでしょう。
取引データの一元管理
貿易管理システムを導入することで、取引データの一元管理が可能となる点もメリットです。基幹情報をデジタル化することで、貿易に関する業務フローを可視化しやすくなります。また、取引データを1箇所に集約できるので、定量分析が行えるようになり、より合理的な事業戦略作りが行えるようになるのです。また、部門間の情報共有も円滑に行えるため、生産性の向上も見込めるでしょう。
ただし、貿易業務に従事する際は、取引先の国の言語や法律、制度に従う必要がある点には注意する必要があります。特に国によっては通貨も異なるため、為替レートや決算処理の確認も必須です。導入する貿易管理システムが現地の会計制度に対応しているかの確認は忘れずに行いましょう。
貿易管理システムの導入事例
続いては、貿易管理システムを実際に導入している、照明機材の輸入販売業とコーヒー卸売業の事例を紹介します。
照明機材の輸入販売業での事例
国内外から舞台照明の仕入れを行って全国に販売するこの会社では、以前から導入していたシステムに課題を感じていました。特にExcelで仕入費用を円換算してから価格を算出し、システムに入力する作業は3日ほどかかってしまっていたのです。また、導入したシステムの利用期間が長く、業務の属人化が進んでいることも懸念しています。ほかにも、機材の販売以外にも施工も行うため、物件情報の管理方法の改善も検討していました。
しかし、貿易管理システムの導入によって、今までの作業量からおよそ10分の1にまで短縮し、業務の効率化を実現できたのです。また、数字の入力ミスも減ったため、生産性や管理の質向上にもつながっています。物件についても、物件ごとの管理ナンバーで見積や受発注、売上・仕入などのデータを関連づけることが可能となり、物件状態の把握も迅速に行えるようになりました。今では社員全員が在庫管理を共通のシステムで行える状態になり、貿易管理もスムーズにこなせるようになっています。
参考:https://aladdin-office.com/case/else/kenpro/
コーヒー卸売業での事例
コーヒー卸売業を展開しているこの会社では、システムの分断によりデータが集約されていない、顧客からの問い合わせ対応に時間がかかるという2つの課題がありました。そのため、貿易管理システムを導入する際は「マスタと在庫情報の一元管理」と「顧客別の問合せ対応情報や取引状況の一元管理」の2点について重点的に取り組みました。
マスタと在庫情報の一元管理では、販売管理業務・会計業務システム・貿易業務の3つを連携させ、業務効率化と情報の一元化を図りました。顧客別の問合せ対応情報や取引状況においては、取引先別による注文一覧や入出荷状況、問合せ情報を一目でわかるように整備を行ったのです。
その結果、貿易管理システムの導入後は二重入力などの人的ミスが減り、事務効率も大幅に向上しました。在庫管理を一元化したことで在庫管理の対応が素早く行えるようになり、管理の精度自体も高まったのです。また、取引先別の情報や注文状況などの管理も一本化できたことで、顧客対応もより円滑に行えるようになっています。
参考:https://food.uchida-it.co.jp/case/c3-company/
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
貿易管理システムとは、輸出入に関する管理業務を一元化できるITソリューションです。貿易管理システムの主な機能は輸出入業務だけでなく、三国間業務での取引も含まれています。貿易管理業務を効率的に行いたい、人材不足を解消したいと考えている企業を中心に導入が進んでいる状況です。結果として、システムを導入することで効果を実感していたり、一定の成果をあげていたりする企業も存在します。
貿易管理システムの導入を進めれば、貿易業務も円滑に行えるようになるなどいくつもメリットがあります。特に、販売管理や在庫管理と連携できるものであれば、より管理業務の効率化も図れるでしょう。そのため、貿易管理システムを選ぶ際は貿易管理の機能を備えたERPを選択するのがおすすめです。
当社が提供しているWeb-ERP「GRANDIT」は、貿易管理機能を標準で備えているのが特徴です。GRANDITについてはご紹介資料も用意しているので、ぜひご覧ください。
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