労働生産性とは?定義や向上のメリット、具体的な取り組み方法を解説

 2022.09.15  株式会社システムインテグレータ

昨今「日本国内の労働環境が悪化している」と話題になることがあります。日本における労働環境悪化の原因は、少子高齢化による労働力不足や、若年世代のワークライフバランスに対する価値観の変化などと考えられています。
今後、人手不足はますます深刻化すると見られています。この状況下で労働環境を改善するためには、労働生産性について正しく理解し、向上させていく必要があります。

この記事では、労働生産性の基礎的な知識や、企業が労働生産性向上のために実践できる取り組み、便利なITツールについても解説します。 

労働生産性とは

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まずは労働生産性の定義や、労働生産性の種類と算出方法について解説します。

労働生産性の定義

労働生産性とは、「生産性」の指標の一つです。生産性の中でも「労働」を基準とし、「労働者1人または1時間の労働でどれくらいの成果が出せたか」を調べる指標となります。

ヨーロッパ生産性本部のローマ会議の報告と結論(1959年3月)によると、「生産性」は「生産諸要素の有効利用の度合い」と定義されます。具体的には、産出物を作り出す際にどれくらいの生産要素が費やされたかを示すもので、式で表すと以下の通りです。

生産性=産出(Output)÷投入(Input)

「産出」は生産過程でつくり出される物(産出物)であり、「投入」は物をつくり出すために必要な人員や設備など(生産要素)を指します。

生産性は、どの生産要素を基準とするかによって、いくつかの指標に分類が可能です。

労働生産性の基本的な計算式

労働生産性は、生産性の式をもとに計算します。産出物を「1時間または労働者1人あたりの成果」、生産要素を「労働者数または労働者数×労働時間」に置き換えると算出が可能です。

式に当てはめると以下の通りになります。

労働生産性=生産量または付加価値額(Output)÷労働者数または労働者数×労働時間(Input)

労働生産性を測る場合、「量」と「額」のどちらを基準に検討するかによって2種類に分類可能です。 

労働生産性の2つの種類と計算式

労働生産性には、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類が存在します。

物的労働生産性

産出物の個数や重量など、「物量」単位で生産性を測定する際に使用されるのが物的生産性であり、労働生産性に当てはめたものが「物的労働生産性」です。

労働者1人あたりもしくは労働1時間あたりどれくらいの「物量」を生産したのかを測定できます。

物的労働生産性の計算式は以下の通りです。

  • 労働者1人あたりの物的労働生産性:労働生産性=生産量÷労働者数
  • 労働1時間あたりの物的労働生産性:労働生産性=生産量÷(労働者数×労働時間)

付加価値労働生産性

付加価値とは、物を生産する際に生じた利益のことで、売上高(生産額)から原材料費や人件費などを差し引くと求められます。

付加価値労働生産性の計算式は以下の通りです。

  • 労働者1人あたりの付加価値労働生産性:労働生産性=付加価値額÷労働者数
  • 労働1時間あたりの付加価値労働生産性:労働生産性=付加価値額÷(労働者数×労働時間)

労働生産性が下がる原因とは

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現状、日本の労働生産性は世界的に見て低い位置にあります。公益財団法人日本生産性本部が2021年12月17日に公表した「労働生産性の国際比較2021」によれば、「2020年の日本の時間当たり労働生産性は49.5ドル(5,086円)で、OECD加盟国38カ国中23位」という結果でした。

参考:労働生産性の国際比較2021|公益財団法人日本生産性本部

労働生産性が下がる原因は、大まかに分類すると以下の3点が挙げられます。

一業務に複数人が携わる働き方

日本企業では、チームワークや協調性を重要視した働き方が多い傾向にあります。その働き方自体が悪いわけではありませんが、チームの人数が多くなることで確認や承認に時間がかかってしまったり、チームメンバーが残業しているから自分も残業するという考えになったりもします。複数人で行う必要がない業務なのであれば、他の業務に人員を割いた方が効率的です。適正な人員配置でない場合は、労働生産性を下げる原因となります。

年功序列制に代表される給与システム

年功序列制をはじめとする給与システムは、若い人材がどれだけ成果を上げたとしても、成果に見合った給与が与えられにくい仕組みです。

給与が変わらなければ若手のモチベーション低下につながり、十分なパフォーマンスを期待できません。結果として、労働生産性を下げる原因になります。

残業を良しとする旧時代的体制

「残業=悪」とは限りませんが、不要な残業は減らすのが得策です。しかし日本企業では、周囲が働いている中で自分だけ先に退社はできないと感じる方が多い傾向にあります。

残業はあたりまえだという環境が、残業せずに決められた時間内で業務を終わらせる意識を薄れさせるのです。時間効率を意識しない労働は、労働生産性を下げる原因になります。

労働生産性を向上させるメリット

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労働生産性を向上させるとさまざまなメリットを得られるため、働き方の見直しは大切です。ここでは、3つのメリットについて具体的に解説します。

利益の増加

1人の従業員が産出できる成果が上がれば、それだけ会社の利益は拡大するため、人材不足に悩む企業ほど労働生産性を意識した働き方改革が必要です。

労働生産性が上がり人材不足が解消されると、最終的には会社の継続的な利益増加も期待できるでしょう。 

投資の拡大

労働生産性が向上すると、今まで発生していた余分な人員やコストを削減できます。削減できた人員やコストは、新規事業や福利厚生など企業として他に力を入れたい部分に充てることが可能です。

結果として自社の成長を促す投資につながり、さらに労働生産性が向上する良い循環を生み出せます。 

ワークライフバランスの改善

特定の業務の自動化で個人にかかる負担が軽減したり、残業の見直しによってプライベートの時間ができたりなど、労働生産性の向上が従業員のワークライフバランスの改善にもつながります。

従業員のライフスタイルが良質であれば、仕事でも成果が見込めるでしょう。一人ひとりの成果が上がれば、より労働生産性も向上していきます。 

労働生産性を高めるために必要な取り組みのステップ

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実際に労働生産性を高めるためには、いきなり思いついたことを実践するのではなく、まずは現状の把握から始めましょう。労働生産性向上のために必要な段階を5つに分けて紹介します。

現状の把握と目標の設定

自社の労働生産性を数値化して、現状を把握することが第一段階です。労働生産性の算出は先述した数式を用いて行いましょう。

自社の労働生産性が高いか低いかは産業や業種により異なりますが、ある程度の基準は存在します。経済産業省が公表している「中小企業白書」などを参照し、自社の目標を設定してみましょう。

2020年度の「中小企業白書」によると、中小企業の付加価値労働生産性は520万円が平均値です。業種ごとの労働生産性についても紹介されているため、平均値を基準にご確認してみると良いでしょう。

参考:中小企業白書 第1章 第6節 労働生産性と分配 (経済産業省)

業務の見直し

自社の労働生産性について現状を把握して目標を設定したら、目標達成に向けて業務の見直しを行いましょう。代表的な手法として「業務プロセスの可視化」が挙げられます。

業務プロセスを可視化することで、特定の従業員に負担がかかっている業務がないかなど細部の把握も可能です。業務プロセスの可視化を行う際は、スキルマップの作成や可視化ツールの使用をおすすめします。

業務の標準化

特定の従業員しかできない業務がある状況下では、該当の従業員が休んだり退職したりした場合、誰もその業務を遂行できない恐れがあります。円滑な業務進行のために「業務の標準化」を図り、複数の従業員が同じ作業を行えるようにしておきましょう。

業務の標準化の施策例としては、マニュアル作成やドライブ・クラウドでのデータ共有などが挙げられます。 

人材配置の最適化

労働生産性を向上させるには、従業員一人ひとりが1時間あたりで最も効率的に成果を挙げられる状態を維持する必要があります。そのためには、従業員ごとの得意・不得意な業務を見極め、適切な人材配置を行うことが重要です。

過剰な人員配置がないかも確認し、無駄な人材コストをかけないようにしましょう。 

アウトソーシングの活用

必ずしも全ての業務を自社完結させる必要はありません。企業によってはノウハウが蓄積されていない業務もあるでしょう。無理に自社完結しようとしても余計なコストがかかる場合もあるため、必要に応じてアウトソーシング(外部委託)の活用を検討しましょう。

アウトソーシングを活用すれば、余計なコストの削減だけでなく、委託した業務にあたっていた人員をより適切な業務に割り振れます。 

労働生産性を高めるために活用したいITツール

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労働生産性を高めるためには、ITツールの活用が有効です。ここでは「ビジネスチャット」「グループウェア」「ERP」の3つを紹介するので、導入する際の参考にしてください。

ビジネスチャット

コロナ禍でテレワークや在宅勤務が推進された結果、ChatworkやSlackなどに代表されるビジネスチャットツールを利用する機会は大幅に増えました。テレワークが少ない企業でも、ビジネスチャットは大いに活用できるツールです。

ビジネスチャットは従来のメールでのやり取りに比べて情報伝達スピードが速く、最低限の文章を用いて共有できるため、労働生産性が飛躍的に向上するでしょう。

また、主要なビジネスチャットツールには信頼できるセキュリティ機能が付属しています。あらかじめ設定する必要がありますが、情報漏えいなどの危険性が低減するため、安心して利用可能です。 

グループウェア

同じ部門に所属する複数のメンバーでプロジェクトを遂行する場合は、グループウェアの活用が最適です。

グループウェアとは、スケジュール管理や設備予約などの機能を備えたソフトウェアのことをいいます。「Microsoft Office 365」「Googleワークプレイス」などが代表的です。

グループウェアを活用すれば、チャットなどを用いたコミュニケーションやスケジュール管理・各種ファイルの共有も行えるため、効率的にプロジェクトを進められるでしょう。

また、プロジェクトメンバーが大規模になっても、グループウェアを使用すればスムーズなやり取りが可能です。メールを用いた従来型のプロジェクト進行と比べて、迅速かつ活発なコミュニケーションができ、労働生産性の向上が期待できます。 

ERP

ERPは「Enterprise Resources Planning」の略称で、「統合基幹業務システム」や「基幹系情報システム」などの意味で用いられています。目的は社内情報の一元化です。

社内情報には、財務情報や人事情報、生産情報などさまざまな情報が存在し、各部門ごとに情報のまとめ方が異なります。しかし、最終的に企業情報として一つに統合する際に、異なるまとめ方では情報の集約と分析に手間がかかるのです。そのためERPは、集約と分析を迅速に行えるツールとして誕生しました。

ERPの種類は「クラウド型」と「オンプレミス型」とに分けられます。

  • クラウド型:クラウド上で社内情報を一元化できる
  • オンプレミス型:システムの構築から運用までを社内で行える

カスタマイズ性やセキュリティ性の高さを重視する場合は、オンプレミス型がおすすめです。自社にはどちらのERPが適しているのか、比較検討をしっかりと行って導入すると良いでしょう。

クラウド型とオンプレミス型の違いについてはこちらのブログで詳しく解説しています。
クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

日本は今、旧時代的体制から抜け出せないことやチームワークの重要視などが原因で、世界的に見ると労働生産性が決して高いといえないのが現状です。労働生産性を向上させるためには、自社の労働環境を見直し改善する必要があります。

労働環境を改善し、労働生産性が向上すれば、従業員満足度の向上や新たな人材の獲得などが期待できます。労働生産性は簡単な計算式で可視化できるため、まずは自社の労働生産性を把握することから始めてみてください。

また、実際に労働生産性を向上させるためには、ITツールの活用が効果的です。特に、社内情報の一元化ができるERPの導入を積極的に検討・推進すると良いでしょう。

弊社では、ERPの基本的な情報から活用方法まで解説した資料をご用意しております。ぜひ、ERP導入の参考としてご覧ください。


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