SSC(シェアードサービスセンター)とは?導入のメリットや課題点を解説

 2022.06.15  株式会社システムインテグレータ

業務の効率化やコスト削減を実現しようと、組織の見直しを検討している企業は少なくありません。激しい競争に勝ち残って企業の成長を続けていくためには、業務に対して改善や工夫を取り入れていく必要があります。しかし、企業が成長し、規模が拡大すればするほど、業務の最適化や標準化を課題として抱えるケースが増えているのです。

そうした際に多くの企業から注目を集めているのが「SSC(シェアードサービスセンター)」です。近年は実際にSSCを構築している企業が増加しており、話題に上がる機会も増えましたが、そもそもSSCとはどういったものなのでしょうか。

この記事ではSSCの概要や対象となる業務、SSCを構築するメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。SSCの構築を成功させるためのポイントについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。

SSC(シェアードサービスセンター)とは

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SSCはシェアードサービスセンターの略で、グループ内企業の間接業務を集約して運用する組織です。企業の間接業務を集約化・標準化する企業改革として注目されてきました。SSCが司る具体的な間接業務としては、グループ企業の経理・人事・総務・法務・情報システムなどが挙げられます。

つまり、SSCはシェアードサービスの導入を通じて、グループ内で共通・保持する業務機能を集約的に請け負う専門組織のことです。

昨今のSSCの運営ではデジタルツールを活用して、グループ全体の業務改善を強力に推進する取り組みも増えています。SSCの構築によって体制をより強固にしようとする動きがさまざまな企業で活発化しているのです。

SSCとBPOの違い

BPOはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、企業の特定業務を他社に外部化して、より効率的な業務運用を目指す手法です。専門的な知識やスキルを保有する外部企業に社内の一連の業務を任せることで、自社の持つリソースをコア業務などに割り当てられるようになります。さらに、BPOであれば社外ノウハウの活用によって、内製が難しい業務を実施することも可能です。

BPOとSSCは業務の効率化を図る点では共通しています。ただし、BPOは社内業務を外注するのに対し、SSCはグループ企業の間接部門を集約した組織に依頼するという点で違いがあります。

SSC構築が広まっている背景

SSC構築が広まっている背景としては、まず、新型コロナウイルス感染の影響などを受けて、リモートワークへの移行が活発になったことが挙げられます。多くの企業でリモートワーク環境への急激な適応が求められましたが、スムーズに対応できた企業ばかりではありません。業務工程の随所に紙ベースでのアナログな文化が残っている、限られた台数のPCを交代で利用しているなど、リモートワークのボトルネックとなり得るポイントが、企業によっては数多く存在するためです。こうした環境整備を、企業のそれぞれの部門に任せるのではなく、SSCの構築で総合的に課題を解決しようとする動きが広がっています。

さらに、政府が主導し国内で進んでいるDX対応のためにも、SSCの構築が急務だと考える企業は少なくありません。企業の間接業務を担当する部門では、過去の技術や仕組みで構築されているレガシーシステムに頼っているケースがまだまだ散見されます。システムのアップデートに対応したSSCの構築が多くの企業で求められているのです。

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シェアードサービスのおもな対象業務

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シェアードサービスの対象となるのは企業の間接業務です。具体的にどういった業務が含まれるのか、企業の部門別に見ていきましょう。

まず挙げられる間接業務の代表格と言えば、経理・財務部門が挙げられます。経理・財務部門は実際に多くの企業のシェアードサービスの対象として扱われています。経理・財務部門では企業にとって欠かせない数多くの業務を行わなくてはなりません。例えば、税務・入出金管理・受発注管理・予算実績管理などが主軸となる業務です。

次に、人事部門もシェアードサービスに集約される場合が目立ちます。人事部門の主な業務としては、採用・労務管理・給与計算・社会保険手続き・健康管理などが含まれます。人事部門は企業を支える人材の獲得や管理、活用に至るまでを一手に引き受けている企業の心臓部です。

そして、総務部門もシェアードサービスの対象として数えられることが多くあります。総務部門は企業内の事務業務のすべてを統括する部門と言われており、スムーズな事業運営で重要な役割を果たします。福利厚生制度の運用・社内の安全推進・衛生管理備品管理・会議室管理・アカウント管理など、担当する業務もさまざまです。

その他にも、契約管理や労働紛争対応などを担当する法務部門、社内システム運用やヘルプデスクなどを担当する情報システム部門などが、シェアードサービスの対象業務として考えられる場合もあります。企業ごとに最適なシェアードサービスの対象業務を見極めることが重要なのです。

SSCを構築するメリット

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それでは、SSCを構築するメリットを整理してみましょう。SSCの構築に成功できれば、コスト削減やサービス品質の向上などのさまざまな恩恵が得られます。自社の課題と照らし合わせて、SSCの導入イメージを膨らませましょう。

コスト削減

それぞれのグループ企業内の子会社が間接業務を行う場合、各社で人材やシステムを用意しなくてはなりません。一方、SSCを構築して経営資源を集中させられれば、より効率的な業務運営が可能となりコスト削減が可能です。SSCが構築されていれば、各子会社がそれぞれリソースを用意する必要性がなくなり、一元的な間接業務が実現します。さらに、人件費が安価で品質も保てる海外にSSCの拠点を設置すると、よりコストを抑えられるでしょう。

サービス品質の向上

SSCを構築できれば間接業務を一ヶ所に集約できます。グループ企業のさまざまな部門に散らばっていた間接業務の専門家が、同じ組織で協力して仕事を進められるようになるのです。また、社員同士の連携力が強化されるので正確性や対応力がアップします。実際にこのやり方を採り入れてみて、業務品質や業務効率が改善したと感じる企業も少なくないようです。さらに、SSCでは間接業務のノウハウも蓄積されていくため、業務をさらに改善するための体制を構築しやすくなるでしょう。

ガバナンス強化

SSCが組織されれば、企業のガバナンスも強化されます。そもそもガバナンスとは英語で統治・統制・管理を表す言葉で、ビジネスでは企業経営の健全化を目指す管理体制という意味を持ちます。

SSCが構築されれば企業のさまざまな間接業務が標準化されます。大きな企業の多様な部門に散在していた機能がSSCに集約されるので、管理体制が強化されるのです。SSCが中心となって企業内の不正行為や情報漏洩を防止できる仕組みを構築できれば、より健全な企業経営を実現できます。

工数の削減

SSCを構築できれば間接業務のプロセスを標準化できるので、工数の削減も可能です。企業の規模に比例して、間接業務の工数や関連する部門数は増加します。同じような仕事をしていたとしても、違う部門に分かれているという企業も少なくありません。また、間接業務を扱うそれぞれの部門によって仕事のルールや進め方が異なるといったケースも目立ちます。

SSCが構築されていれば、総合的に判断して最も効率の良い方法を業務に採用できます。分断して行われていた仕事も一つにまとめられるので、大幅な工数削減も期待できるのです。

SSCを構築するデメリット

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一方、SSCを構築するデメリットは何が考えられるでしょうか。スムーズにSSCの構築を進めていくためにも、注意点としていくつかのデメリットも認識しておきましょう。

業務の標準化が難しい

標準化とは企業のさまざまな業務内容を集中して処理しやすいように、業務の形を揃えて整理することです。一見するとスムーズに実行できそうな業務の標準化ですが、実際には簡単に進みません。規模が大きく歴史のある企業であれば、それぞれの部門に独自のルールやシステムが存在します。

例えば、個々のスキルに依存している属人化した業務や、エクセルや紙によるアナログな管理などが代表的な課題として挙げられます。そして、人事部門や経理部門などの企業の間接業務を集約するには、この業務標準化が欠かせません。企業内のすべての課題をクリアして標準化を実現するのは骨の折れる作業なのです。

高額な初期費用

SSCを構築するためには、高額な初期費用が必要となるケースも珍しくありません。例えば、全社の間接業務に耐えられるシステムの構築、従業員データの統合、大規模なアップデートの実施などには高額なコストがかかります。

企業のグループの規模にも左右されますが、組織の大きさに比例してSSCの初期コストもアップする可能性が高くなります。企業に対して大きなインパクトのあるSSCの構築ですので、対価としてそれなりの費用は求められると認識しておきましょう。

運用開始までの準備に時間がかかる

SSCを構築して実際に運用をスタートさせるまでには、それなりの時間がかかります。グループ企業の規模にもよりますが、行われている間接業務を整理するのは簡単な仕事ではありません。SSCを構築する方針が決まったとしても、人員やシステムを改めて配備するのは骨が折れる作業です。

さらに、システムの構築を行うとなれば、開発にはそれなりの時間を要します。SSCの運用開始までには一定の時間がかかるものと想定して準備を進めましょう。

社員のモチベーション低下を招く可能性

SSCの導入は、社員の働く環境に影響を及ぼすケースも少なくありません。社員の働き方や待遇に配慮のないSSCの構築を行ってしまうと、モチベーションの低下を招く可能性も生じます。例えば、「強制的に慣れない部署へ異動させてしまう」「給与体系に不利益な変更が生じる」といったケースは注意が必要です。企業を改善するためのSSCの構築であっても、社員の待遇が伴わなければ社内の前向きな雰囲気は創出されません。

効率が低下する可能性

SSCの構築で失敗してしまうと、業務効率が低下してしまう恐れも生じます。SSCの構築では既存業務の無駄やムラを削減して、サービス品質の向上や業務の効率化を目指しますが、その際は必要な間接業務を取捨選択していかなくてはなりません。コスト削減や企業のスリム化は大切ですが、SSCに集約する業務の選定は慎重に行いましょう。現状分析が不足していて必要な間接業務や人材をカットしてしまうと大きなトラブルを招きます。SSCの構築によって業務が停滞してしまわないように、丁寧な作業が求められるのです。

SSCの構築を成功させるために

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SSCの構築を成功させるために鍵を握っているのは標準化です。プロセス・システム・サービスの3つのポイントから、標準化の重要性を整理してみましょう。

プロセス

まず、プロセスの標準化では誰もが戸惑うことなく業務を行えるように、仕事の方法や進め方を整理して見直します。ばらばらのルールや特定のスキルに仕事のプロセスが依存していては、SSCの構築は成功できません。現在の業務を可視化して、標準的なプロセスを定義することからスタートしましょう。必要に応じてRPAなどのITツールを導入できれば、業務を効率的に進められます。

システム

次に、システムの標準化を行いましょう。部門によって異なるシステムを導入しているケースも珍しくありません。同じ業務であるのに、複数のシステムを使った運用では業務効率が低下します。管理も複雑になるため情報の流失や紛失といったリスクも高まります。業務に求められる機能を見極めて、導入するシステムを統一しましょう。

サービス

続いて、サービスの標準化が重要です。グループ企業に存在する間接業務の種類はさまざまで、提供しているサービスの種類にも差異があるはずです。同じ内容のサービスでも名前が違ったり、取り扱っているサービスが異なっていたりするのではないでしょうか。サービスの必要性や利用しやすさを重視して、サービスの種類を揃えましょう。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

今回はSSCについて詳しく解説しました。SSCを構築することで、企業にとっては業務効率化や品質向上といったメリットがありますが、デメリットや事前準備にかかる手間については注意が必要です。また、制度改正や業務標準化などが後手にまわり、小手先の業務改善のみになってしまう場合もあります。

そこで、業務を一元管理し、情報を集約するにはERP活用も有効です。ERPについて基本を解説した資料がありますので、ぜひご覧ください。


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