DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?「2025年の崖」との関連性や推進ポイントまで解説

 2021.06.23  株式会社システムインテグレータ

世界規模でIT化やデジタル化が進む昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の動きが注目を集めています。スマートフォンの普及や業務プロセスのIT化が進んだことで、人々の行動様式も変化し、それによって最良の打ち手も変化しているのです。

そうした中、従来のように一部分の業務改善を図るのではなく、プロセス全体を抜本的に変革するDXの気運が高まっています。

今回は、そんなDXにおける概要や課題、成功のためのエッセンスを解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義とは?

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まずは、DXの定義について、改めておさらいしてみましょう。広義・狭義の意味に分けて解説します。

広義のDX

そもそもDXは、2004年にスウェーデン大学のウメオ大学教授・エリックストルターマンが提唱した概念です。

その主張では「デジタル技術が浸透することで、人間の生活のあらゆる面で引き起こす、あるいは良い影響を与える変化」と定義されています。

このように、DXは規模感の大きい概念のため広く用いられていますが、使用する場所や人によって意味と範囲が異なります。最近では、ビジネス領域でDXという言葉が盛んに用いられるようになりましたが、状況に応じて示している概念や意味を正しく理解することが大切です。

では、続いて狭義の意味についてご紹介します。

狭義のDX

狭義のDXは、経済産業省が公開した「競争優位性の確立」という考え方で定義されています。より具体的には「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とまとめられています。

つまり、競争優位性の確立のために、ビジネスモデルを変革する取り組みがこれにあたります。

では次に、DXと間違えられやすい「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」について見ていきましょう。

デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

DXと似た言葉に、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。このあたりの言葉は混同されがちなため、それぞれどう違うのか説明いたします。

デジタイゼーション

経済産業省の資料では、デジタイゼーションとは、「アナログ・物理データのデジタルデータ化」と明記されています。例えば紙で管理していた顧客リストをSFAやCRMなどのシステムで管理するようなことを指します。こちらは局所的な業務を単にデジタル化するようなイメージです。デジタイゼーションによって業務の効率化やコスト削減が見込めます。

デジタライゼーション

こちらも経済産業省の資料では、「個別の業務・製造プロセスのデジタル化」と明記されています。デジタイゼーションが情報のデジタル化であるのに対し、デジタライゼーションはビジネスのプロセスをデジタル化することです。

顧客リストをSFAに入れたという状態が先述したデジタイゼーションで、SFAを活用してタイムリーな情報共有やダッシュボードによる分析と改善を行うのがデジタライゼーションです。

それぞれ意味に違いはありますが、デジタル化という観点においては共通しています。デジタイゼーションが第一段階、デジタライゼーションが第二段階、最終段階にデジタルトランスフォーメーションが位置しています。

デジタル化のステップの違いについて理解し、デジタイゼーションとデジタライゼーションはひとつの過程であると認識しておきましょう。

「2025年の崖」が示すDX推進の必要性とは?

Businesswoman walking up staircase to door in sky

次に、2018年に経済産業省がDXレポート(※)の中で提議した「2025年の崖」と、DX推進の必要性について解説します。

(※)DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省

「2025年の崖」とは?

2025年の崖とは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムの残存により、経済の停滞や国際競争の遅れの発生などが想定される問題を指します。

ITシステムの統合による複雑化や、離職などによるノウハウの漏れ、技術蓄積の難しさから生まれた言葉です。

「2025年の崖」克服のためのDX推進

システムを刷新して2025年の崖を超えるには、莫大な費用と時間がかかります。そこで推進されているのがDXです。仮に2025年の崖に陥った場合、日本では以下の問題が懸念されています。

  • 爆発的に増加したデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者になる
  • ITシステムの運用保守者が不在になり技術的負債を抱える
  • 業務基盤の維持、継承が困難になる

さまざまな懸念がある中で、経済産業省は2025年までを目処に、既存システムの廃棄や刷新を進める必要があると提唱しました。そして、提唱された取り組みを通じてDXを推進、2030年に実質GDPを130兆円超えに押し上げるための「DX実現シナリオ」が描かれています。

DX実現シナリオはユーザー企業を対象に、2020年までのシステム刷新やDX推進ガイドラインを踏まえた体制構築、共通プラットフォーム検討の必要性を示唆する内容です。より具体的には、2021年から2025年までの期間を対象とした、「経営戦略を踏まえたシステム刷新」「計画的なシステム刷新の断行・提案」などが挙げられます。

その他、不要なシステムの廃棄やマイクロサービスの活用、協調領域のプラットフォーム活用なども必要でしょう。DX推進にあたっては、これら2025年の崖における懸念点を理解し、シナリオを実行していくことが重要です。

DXの推進事例

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ここからは、実際にDX化を進めた企業の事例を見ていきましょう。

DX推進で売上3倍を実現

まず、老舗の看板屋を運営するクレストホールディングス株式会社のDX推進事例を紹介します。

クレストホールディングス株式会社は、需要の減少に悩まされるレガシー産業のひとつでした。そうしたレガシー企業の現状を打破するため、DX推進として実践したのが以下の2ステップです。

  • デジタルトランスフォーメーションによる組織や事業の生産性の向上
  • レガシーアセット ✕ ITによるイノベーションで新しい価値の創造

代表取締役社長の永井俊輔氏は、業界としての認知度の低さや、組織として機能していない現状に危機感を覚え、DXを進めました。最初に推進した内容は、以下の通りです。

  • サプライチェーンの変革
  • あらゆる領域にITツールを導入し効率化を徹底
  • 組織編成を機能別にし役割を明確化
  • KGIの分析やKPIの設定を週次で実践
  • 組織内に評価制度を導入

こうした取り組みを経て、次のイノベーションを起こすステップへと進んでいきました。看板事業の課題に正面から向き合い、Web広告の計測を参考にした効果測定を実施。投資の最適化を顧客に提案しました。この取り組みにより、クレストホールディングス株式会社は売り上げを5年で3倍にまで上げるなど大きな成果を実現しています。

レガシー産業からの脱却。老舗の看板屋がおよそ「5年で売上3倍」を実現した改革の全貌

DX推進でコスト削減を実現

DX推進は売上向上だけでなく、コスト削減の実現にも繋がる場合もあります。建機・農機などの製品を通じたトータルソリューションの提供をするグローバル企業・クボタのDX事例を見ていきましょう。

グローバル企業として、海外にも多くの販売子会社を抱えているクボタは、建機の修理対応が課題でした。多くの修理対応を現地販売店のサービスエンジニアが行うため、マニュアルだけでは十分な対応ができません。ダウンタイムで建機が稼働できず、ユーザーの収益率低下につながるケースもあり、早急な対策が必要でした。

また、従来の修理は建機のマニュアルの中から該当する箇所をわざわざ見つけ出して対応していたため、手間も問題視されていました。クボタはこうした課題に直面し、DXを推進したのです。

まず、クボタは販売代理店のサービスエンジニアを対象に、ARや3Dモデルを活用した故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」を提供。このアプリにより、建機が故障した際のダウンタイムが軽減されました。ダウンタイムの軽減で顧客側のコスト削減に貢献し、カスタマーサポートの業務効率化も同時に実現しています。

そしてDXを推進するうえで、クボタは故障診断フローのデジタライズと、エンドユーザー側が故障箇所を特定できる仕組みの構築を行いました。実際に導入された対策を以下に挙げます。

  • エラーコードや不具合症状を入力し、修理方法や点検箇所が自動で表示されるフローの構築
  • スマートフォンをかざすだけで故障箇所や部品を特定できる故障診断機能を搭載(3Dモデル・AR)
  • 現地ユーザーに向けて日本語マニュアルを英語圏用に再構築(米国ユーザーに向けたトレンドの取り入れなど)
  • マルチデバイスへ対応可能な「Flutter」を採用して独自のCMSを構築(故障余地や診断フローの整備の実現)

こうした対策を取り入れた結果、企業にはさまざまな変化が起こりました。特に、3Dモデル・ARによる故障診断機能が注目され大きな話題になり、日本を始め世界への順次展開と対象機器の拡充が期待されました。

そして、人員の確保やサービスエンジニアの教育といった側面にも好影響を与えています。また、クボタは故障診断フローの精度向上や、機能拡充に向けて継続したローカライズ支援を世界各地へ行う計画も発表しています。

3Dモデル・ARを活用した診断を提供し、建機故障時のダウンタイムを低減

DX推進で口座開設者数2倍を実現

DXの推進で好影響が出た事例として、金融業であるSMBC信託銀行の取り組みを紹介します。

SMBC信託銀行のDX化は、2019年10月に「GLOBAL PASS」という多通貨Visaデビット一体型キャッシュカードのリリースに合わせて、効果的な訴求のためにオンライン中心のマーケティングを展開したことがきっかけです。

主なアプローチとしてはYouTubeでの広告配信を始め、ポータルサイトや会員向けのEメール配信などが行われました。

また、海外現地での決済やATM利用などを外貨のまま取引可能にした取り組みも評価されています。このような手法の展開により、オンラインを経由した既存顧客のGLOBAL PASSへの誘導が成功し、新規での口座開設者数をこれまでの2倍に増加しました。

金融機関3社のDX事例、SMBC信託・アクサ生命・みずほFGはどうやって成果を出したか

DX推進における課題とは?

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DX推進における成功例をご紹介しましたが、全ての企業がDXに積極的に取り組み、成功を収めているわけではありません。ここではDX化推進に当たって現在どのような課題があるのかについて解説します。

人手不足の深刻化

人材不足のために、DX推進に苦戦している企業が多い現状は軽視できません。

IT人材の慢性的な枯渇により、経済産業省からは「2030年には約45万人が不足する」という見通しが立っています。DX推進にはエンジニアを始め、イノーベーターやビジネスデザインのできる人材が欠かせません。

しかし、こうした人材はITベンダー企業に偏ってしまい、多くの企業で人材不足が深刻化しています。そして、人材不足が影響してIT人材確保の競争も今後ますます激化していくでしょう。

従って、関連企業ではDX推進のための人材確保や育成を早急に進める必要があります。

レガシーシステムの影響

DXを推進させるうえで、レガシーシステムが「技術的負債の塊」として取り上げられています。

経済産業省によれば、IT予算のおよそ9割が老朽化システムの維持にコストを割いているとのデータが掲示されています。また、8割の企業で老朽システムの残存が報告されています。攻めのIT投資の傾向が強いアメリカと比較しても、日本は守りのIT投資と表現されるほど保守的です。

こうした背景からも、レガシーシステムを一変させ、IT予算を戦略的に投資することがDX推進のポイントです。 

一貫性のないシステム

ITシステムの課題として、システムの一貫性が挙げられます。多くの企業で、システムの開発や改善を短期で行っている影響から、システムのブラックボックス化や保守運用費の高騰化が問題視されています。

一貫性のない複雑なシステムはIT人材や管理維持する際に負担となる要素のため、見直しを迫られている企業は少なくありません。早急にDXを推進し、技術的負債の老朽システムを改善していきましょう。

DX推進を成功させるためには?

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企業でDX推進を成功させるには、社内全体の足並みを揃えることも大切です。事業部それぞれで率先して協力し合うことはもちろん、経営陣のコミットメントも大切です。DXで生み出すべき価値や変革の方法、予算や人材の割り当てなど、現場と確実な意思疎通を図ったうえで社内全体の方向を決めていきましょう。

そして、社内で固めた方針を実現させるためには、DX推進に対応できる人材の確保と育成を優先して行うことも大切です。そして、DX推進メンバーを適切に配置することも重要でしょう。また、技術的負債となっているレガシーシステムの一新も、DXを推進するうえで避けては通れません。そのためには、全体を俯瞰した一貫性のあるシステムを構築する必要があるのです。一貫性のあるシステム構築を行えば、全体を通したシームレスなデータ活用が実現可能になり、競争力向上や効率化が期待できるでしょう。

ただし、社内全体の足並みを揃えることは比較的容易ですが、人材確保・育成や一貫性のあるシステム構築には時間やお金がかかります。従って、DXの推進には中長期的な目線が必要です。企業競争に乗り遅れないために、中長期のプロジェクトになると認識したうえで、早急にDXに取り組んでいくべきでしょう。

まとめ

今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)について解説しました。

「DX」という言葉だけが先行し、実際に企業で行っていることがデジタイゼーション・デジタライゼーションであるケースも少なくありません。

より詳しくDXを理解するためには、DXの基本概念や組織体系の作り方、必要とされているスキルなどを押さえておくことが重要です。DX推進に関するお悩みを抱えている方は、ぜひ以下の資料をご覧ください。企業がDXに取り組む際に必要な内容を網羅しています。


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