決算とは?基礎知識や決算の流れ、決算早期化のポイントを詳しく解説

 2022.03.22  株式会社システムインテグレータ

決算は、企業の資産・負債などを計算し、財務状況を明らかにするための手続きのことです。
決算にまつわる業務は、決算書類の作成や株主報告資料・書類の作成、計算業務など、その内容は多岐にわたります。また、正確性が求められミスが許されないため、手がかかりがちな業務の一つとされています。

この記事では、そんな決算業務の概要やステップ、効率化のポイントを解説します。決算早期化を実現するためにおすすめなシステムもご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

決算とは

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決算とは、会社の会計記録をまとめる作業のことです。不測の事態の回避や取引の安全確保を目的として行われます。この作業は事業規模や業界を問わず必要で、年間を通じた収益・発生した費用を計算して書類にまとめなければなりません。作成した決算書類は税務申告書と一緒に税務署に提出する必要があります。

いくつか子会社を持っている企業やグローバルに会社を展開している場合、連結決算業務も発生します。連結決算とは、子会社と親会社をひとつの組織とみなして決済を行うことで、組織全体の財務状況などが可視化されます。

連結決算に関する内容は、こちらの記事も併せてご覧ください。
連結決算とは?連結するメリットや実際の流れを徹底解説

 決算業務はどの会社にも等しく必要なものですが、手間がかかるものでもあります。一方で、決算によって会社の経営状況が把握できるため、会社が次に取るべきアクションを明確にする効果もあります。

では次に、決算を行う理由について、さらに深堀りして解説します。

なぜ決算を行う必要があるのか

決算業務は、会社法第440条第1項の規定により義務付けられています。

なお、対象となるのは会社法で定められている会社形態4種類(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)のうちの株式会社です。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

先ほど触れたように、決算では税務署への申告・株主への報告なども必要で、決算申告は決算日から2ヶ月以内に行わなければなりません。

では、なぜこうしたプロセスが必要で、このような規則になっているのでしょうか。

理由は明快で、ステークホルダーに対して財務状況・および経営実績を明らかにする必要があるからです。

持続可能な社会を目指すために、企業は経済活動をメインとして、社会・環境など各要素に責任を持たなければなりません。また株式会社は、株式を発行して資本の出資をうけ、それを元に経営を行っています。ステークホルダーの中には、企業のサービスを利用するユーザーや株主などが含まれますが、こうした人々は企業の金銭が適切な形で運用されているか否か、出資金が適切な運用を経ているか否かを知る権利があるのです。

ちなみに、決算の歴史を遡るとその起源は大航海時代にまで及びます。当時の貴族階級は、欧州を中心に盛んだった香辛料貿易に投資をしていました。一方で、投資を行う条件として航海士に金銭の利用詳細を報告することを求めたのです。

こうした思想の背景にある考え方は、先ほどご紹介したステークホルダーの概念と根本的に変わっていません。つまり、金銭の活用状況を明示させることで、投資価値があるか否かを判断したり、不正防止に役立てられたりするものが「決算」であり、決算を行う理由と言えるでしょう。

決算を行うタイミング

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基本的に、決算を行うタイミングは自由です。

日本では3月に決算を行うケースが多いのですが、これは税法改正が4月1日に適用されることが多く、公的機関の会計期間が4月〜翌年の3月と決まっていることが理由と考えられています。一方、海外では12月に設定されているケースが多いため、それに従って12月を会計期間とする企業も多く存在するようです。

また、個人事業主における会計期間は税法によって1月から12月、決算日は12月31日と定められています。

ちなみに、上場企業は四半期ごとに財務諸表を作成し、投資家への報告を行う義務があります。

決算書を構成する要素

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さて、ここまで決算の概要についてご説明してきました。

続いて、決算に必要不可欠な決算書の仕様についておさらいします。一口に「決算書」と言ってもいくつか種類が分かれており、それぞれ内容も異なります。決算書類の項目ごとに、詳しい内容を確認してみましょう。

損益計算書

損益計算書とは、1年でどれだけ「利益」が出たのかを報告するための書類です。

「収益」「費用」「利益」の3つの要素で成り立ち、それぞれが「どれだけ収益が上がったか」、その中から「どれだけ使ったか」「使った後にどれくらいの利益が残ったか」を表しています。この書類を見ることで、収益状況や無駄なコスト、利益率の適性判断をすることが可能です。

では、この書類において重要な5つの「利益」について、さらに細かくチェックしてみましょう。

売上総利益

売上総利益は、商品やサービスによって得た利益のことです。「売上総利益=売上高-売上原価」の計算式から算出できます。

営業利益

営業活動によって発生した利益のことです。売上総利益から家賃や給与などを差し引いた数値になるため、その会社の経営状況や利益率の判断に役立ちます。

計算式:営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

経常利益

事業全体で発生した利益のことを表しています。ちなみに営業外利益とは、株や不動産賃料など営業利益以外の方法で発生した利益のことです。

計算式:経営利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

税引前当期純利益

税金を引く前の、会社全体に発生した利益のことを表しています。特別利益・特別損失とは、事前の予測ができない、火災や自然災害などによる不動産の損失や売却などによって発生した損益のことです。

計算式:税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失

当期純利益

決算期の最終的な利益のことを表しています。税引前当期純利益から、法人税や事業税などを加算したものです。

計算式:当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等 ± 法人税等調整額

貸借対照表

続いて、貸借対照表について解説します。

貸借対照表とは、資産や負債など、決算日における会社の財政状態を示す決算書のことです。この書類を見ることで資産と負債のバランスが把握でき、現状における資産の安定性を判断するのに役立てられます。

貸借対照表には大きく分けて「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の項目があります。

資産の部には「流動資産」と「固定資産」があり、1年以内に現金化あるいは費用化できる資産は「流動資産」、1年以内に現金化あるいは費用化できない資産を「固定資産」として区別しています。また、現金や預金はもちろん、土地や株券、車なども資産として計上されます。

そして、負債の部にも「流動負債」と「固定負債」があり、未払金など1年以内に返済義務があるものが「流動負債」、長期の借入や社債など1年以内に返済義務がないものを「固定負債」として区別されます。

純資産の部は、株主が出資する資本金や過去の利益の合計です。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書とは、ある一定の会計期間における現金の流れを把握するための書類です。

そもそも「キャッシュフロー」とはお金の流れのことで、現金をはじめとした収入を「キャッシュ・イン」、キャッシュが出ていくことは「キャッシュ・アウト」と表現します。キャッシュには現金以外にも預金・換金可能性が高い資産なども含まれるため、会社全体の資金を示すものだと言えるでしょう。

なお、キャッシュと利益は混同されることも多々ありますが、似て非なるものなので注意しましょう。利益はあくまで「会社が儲かっているかどうか」を示すもので、会社の運転資金などは含まれていない概念です。対してキャッシュは、事業や会社を運営したり展開したりするために必要な資金・組織全体の資金価値などを示します。

キャッシュフロー計算書では、会社全体の資金の流れが示されています。大きく3項目に区分けされ、項目ごとの内容は以下の通りです。

営業キャッシュフロー

会社が本業の営業活動によって生み出したキャッシュの増減に関する内容

投資キャッシュフロー

剰余金の運用や設備投資、固定資産の売却などを行った際のキャッシュの増減に関する内容

財務キャッシュフロー

株式発行や金融機関からの資金調達、またその返済に関する内容

この計算書を活用することで資金の流れが分かるほか、損益計算書・貸借対照表と突き合わせることで、より詳細な経営分析をすることが可能です。また、営業キャッシュフローなどの項目ごとに照らし合わせてみても、売掛金の回収遅延に気付けるなどフォローにも役立ちます。

なお、上場企業の場合はキャッシュフロー計算書の作成も義務づけられています。非上場企業の場合は作成義務はありませんが、資金の流れを把握するために非上場企業でも作成されるケースも珍しくありません。

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書は、資産の変動を示す書類です。

株式発行や自社株の取得・処分など、株主資本の変動の様子を一覧で確認することができ、こちらもお金の流れや発生の理由を見るのに役立てられます。なお、当書類は「Statements of Shareholders’ Equity」のSの頭文字をとって、「S/S(エスエス)」と略称で呼ばれることもあります。項目は資本金・新株予約権・資本剰余金・利益剰余金の4区分です。

決算業務の流れ

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続いて、具体的な決算業務の流れを確認していきましょう。

企業の規模や連結決算業務の有無によっても異なりますが、大きく6つのステップがあります。

決算整理

仮勘定整理・経過勘定計算・長短債券債務整理・引当金計上など、決算書類の作成以前には整理業務が必要になります。決算では数字を確定させる必要があるので、最終的な修正が欠かせないのです。

整理業務は決まったパターンが存在するわけでなく、会社の規模によって異なります。大まかな作業としては、以下のような業務が含まれます。

  • 各勘定科目の残高・決算整理仕訳の計上額・整理後の各勘定科目の残高が含まれる精算書類の作成
  • 勘定科目内訳明細の作成
  • 期中仕訳の確認
  • 前期比較など計上漏れ防止の再確認など

決算整理仕訳に関する内容は、以下の記事でも紹介しています。
決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説

税金の計算

決算残高の確定後には、消費税・法人税・法人住民税・法人事業税などの税金計算を行います。

各種別の概要は以下の通りです。

  • 消費税:売上にかかる消費税から、仕入れ・経費などにかかる消費税を差し引いて算出します
  • 法人税:企業活動によって得た所得にかかる税です
  • 法人住民税:籍を置く地方自治体に納める税です
  • 法人事業税:公共経費を一部負担するための都道府県税です

決算書の作成

次はいよいよ決算書(財務諸表)の作成です。法令に基づいた書式に沿って、以下の書類をまとめます。

  • 賃借対照表(B/S)
  • 損益計算書(P/L)
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 製造原価報告書 
  • 販売費及び一般管理費明細書
  • 個別注記表
  • 附属明細書
  • 事業報告書

なお、当書類は決算完了後も一定の保存が義務付けられており、法人法で規定された書類は7年・会社法で規定されている書類は10年の保存が義務付けられています。

取締役会や株主総会にて承認を得る

続いて、決算書類の承認を得るための決算取締役会を開催します。

会社法436条「計算書類等の監査等」にある「取締役会設置会社においては、計算書類、事業報告、これらの附属明細書は、取締役会の承認を受けなければならない。」との内容に沿い、決算に必要な書類は取締役会で承認を得なければなりません。

監査方法などは会社の形式によって異なりますが、決算取締役会開催にあたっては、大きく以下のようなステップを踏むのが一般的です。

  1. 計算書類の作成
  2. 監査役または会計監査人による監査
  3. 取締役による承認 (決算取締役会)
  4. 株主への提供と招集
  5. 株主総会による承認
  6. 決算公告

法人税申告書の作成

法人税申告書は、確定申告書や明細書などを総称したものです。

ステークホルダーに対して、特定期間内における収支・財産状況の報告を目的として作成されます。

法人税・消費税・地方法人税・法人事業税・法人住民税に関する書類を作成するほか、適性な計算結果を示す別表・付表も必要です。各種明細書や届出書など付表は約100種類以上にも及ぶため、細かい作業になります。ただ、全ての別表を提出する必要はなく、その粒度は決算内容によって異なります。

決算書と法人税申告書を提出する

作成した決算書と法人税申告書を、それぞれの提出先に提出し、納税を行います。

これで一連の決算業務が完了します。

決算業務を効率化し決算早期化を目指すには

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決算業務の主なステップをご紹介しましたが、これだけ読むとあまり多いとは感じないかもしれません。しかし、ご紹介した各ステップで用意すべき書類や確認事項はかなり多く、内容も細かなものばかりです。決算業務になると忙殺されてしまう担当者の方も少なくないはずです。

こうした複雑な決算業務ですが、効率化・早期化を実現するためにはどういった取り組みが必要なのでしょうか。まずは決算早期化のメリットから順に説明します。

決算早期化の効果

決算を早期化するメリットはいくつもありますが、大きく分けると「社外向けのメリット」「社内向けのメリット」の2点があります。

社外向けのメリットとしては「株主に素早く情報開示ができる」という点が挙げられます。

決算を早期化するということは、株主もそれだけ早く投資判断ができるということに他なりません。また、単に決算処理が早いということは社内の財務整備が行き届いている証左にもなり、各ステークホルダーへの信頼感向上にも寄与するでしょう。

そして、社内向けのメリットとしては「自社の経営判断をより早く行える」点が挙げられます。

決算を早期化するということは、自社の財務状況をいち早く把握できるということです。また、早ければ早い分、現状と決算処理の感覚が短くなるため、より実態に即した経営状況が分かります。企業として次に取るべきアクションが早期に分かり、打ち手の確度も正確になる、これは自社において大きな利点になるでしょう。

一方で、「決算早期化」というと「社内の経理担当者がより疲弊してしまう」「残業過多やオーバーワークに繋がるのでは」といった懸念の声も少なくありません。しかし、管理システムを導入して日常的に管理体制を整えておけば、複雑で負荷の高い決算業務もスムーズに行えるようになります。

ERPの活用がおすすめ

「ERP(Enterprise Resources Planning)」とは、経営に必要な情報を一元管理し、経営資源を有効活用する考え方、およびそれを実現するシステムのことを指しています。

ERPでは、会計・財務・顧客情報・営業支援・人事労務・販売管理・在庫管理など、企業が保有するあらゆる情報を集約して管理することができます。システムごとに情報を抽出して計上したりする必要がなくなるため、システムや部署をまたいで計算を行う際のミスなどを防止できます。

ERPにはいくつか種類があり、機能的な面で見ると「統合型ERP」「コンポーネント型ERP」の2種に大別できます。統合型ERPは機能がすでに搭載されているもので、コンポーネント型は各機能を個別に組み合わせて構成できるタイプのものです。

システム費用や社内の業務体制、ERPを運用する人的リソースなど、会社の状況によって適したものは異なるため、導入の際は社内でよく吟味して決めましょう。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

今回は決算をテーマに、概要や具体的な手順、決算業務を効率化するポイントなどをご紹介しました。煩雑な決算業務ですが、自社にあったERPシステムを導入すれば、決算の早期化を効率良く実現できます。

ERPについては基本をまとめた資料なども多数ご用意してありますので、ぜひ下記からダウンロードしてご覧ください。


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