決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説

 2022.03.22  株式会社システムインテグレータ

決算は、企業の財務・経営状況を正確に把握し、投資家や金融機関などの外部ステークホルダーへと開示する非常に重要な業務です。
決算はすべての企業が毎年必ず行わなければならない業務ですが、その決算業務の1つに決算整理仕訳の作成があります。決算整理仕訳は減価償却費の計上や売上原価の計算などのことで、期中業務とは違った特殊な業務です。

今回は決算整理仕訳にスポットを当て、全体の流れや仕訳例について詳しくご紹介します。

決算とは

決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説

決算とは、企業の1年間の収益や費用、損失等を計算して決算書を作成する業務を指します。

決算の一番の目的は、年度末時点での企業の財務や経営状況の把握です。現在の経営状態を明確にすることで、今後の経営方針の決定に役立てます。

また、株主や取引先などの利害関係者に経営状況を開示し、企業の健全性を示す意味でも重要です。また、決算書は確定申告などの税務処理を行う場面でも必要となります。

決算についてはこちらの記事で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。

決算とは?基礎知識や決算の流れ、決算早期化のポイントを詳しく解説

決算整理仕訳とは

決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説-1

決算整理とは、期中業務で入力している会計帳簿などを、期末決算に向けて修正する業務です。

期中の取引には、まだ支払いが済んでいないものや、これから代金を受け取るものなど、未処理のものが含まれます。期中業務では現預金などの変動のある取引を計上していきますが、決算整理仕訳では減価償却費の計上や原価計算など、1年の取引を通じて計上されるものを仕訳します。

決算整理仕訳では、売上の確認、現金・預金の確認、費用の確認、減価償却費の計上、棚卸資産の確認、保有株式や有価証券の確認、税務処理などを行います。これらにより、財務諸表を作成する元になる正確な数字を算出します。

決算整理仕訳の流れ

決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説-2

決算整理仕訳で必要となる工程について、詳しく見ていきましょう。

売上の確認

今期の売上が漏れなく正確に計上されているかを確認します。

売上は代金を受け取った入金日ではなく、物品を納入した納品日に計上しなければなりません。この考え方は、企業会計原則の発生主義と言います。

例えば、3月決算の企業が2月に受注し、3月に納品したとします。3月中に入金があれば今期の売上に計上されますが、入金が4月にずれ込んだ場合、売上はどのようになるでしょうか。

現金主義では、実際に入金のあった4月の売上となり、今期ではなく来期の決算に計上されます。一方、発生主義では、納品した3月に計上されるため、今期の売上となります。

現在では現金授受が伴わない掛取引や信用取引が一般化しているため、発生主義の考え方を採用したほうがメリットが多いのです。

現金や預金の残高を確認

現金と預金の残高が、合計残高試算表の期末残高と突き合わせて間違いがないように確認します。合計残高試算表とは、合計試算表と残高試算表を組み合わせたもので、勘定科目ごとに合計と残高が記載され、お金の流れが一目で分かります。

現金残高は現物の確認が必要です。一方、預金残高は、銀行が発行する残高証明書か、決算日の預金通帳の残高を確認します。期中業務で残高確認を行っていれば差異が出ることはありませんが、差異が出た場合は未取付小切手や未取立小切手、利息の計上漏れなどが考えられます。

当期費用の確認

今期の費用が漏れなく正確に計上されているかを確認します。未処理の今期費用が無いか、来期の費用が含まれていないかを把握することが大切です。

未払費用や前払費用については、全社で判断基準を明確にしておく必要があります。これらを判断する上で重要性の原則というものがあり、会計上重要性が乏しい費用については簡便な会計処理が認められています。

例えば、光熱費など、毎月ほぼ同額かつ定常的に発生する費用については発生主義ではなく現金主義での計上が認められます。

棚卸資産の確認

続いて、棚卸資産を確認します。棚卸資産とは在庫のことです。

在庫は売れた時点で計上されるため、決算時点での在庫数を確認し、差し引きで売上原価等を求める必要があります。実際に売れた金額が売上原価、売れ残っている分が期末商品棚卸高です。

期末商品棚卸高は貸借対照表の商品の欄に記載され、来期の期首商品棚卸高になります。売上原価との関係をまとめると「売上原価=期首商品棚卸高+商品仕入高−期末商品棚卸高」という関係性が成り立ちます。

減価償却費の確認

年間の減価償却費が、固定資産台帳と突き合わせて間違いがないように確認します。

減価償却費とは、固定資産の取得に必要な費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分し、その期に相当する金額を費用に計上する会計処理です。

10万円未満の固定資産については購入時の費用として認められます。一方、10万円以上の固定資産については購入した期に全額を費用計上することができないので注意しましょう。

有価証券の期末時価を確認

有価証券は保有目的に応じて、売買目的有価証券・満期保有目的債券・子会社株式・関連会社株式・その他有価証券に分類されます。

決算翌日から1年以内に満期を迎える満期保有目的債券、売買目的で保有している売買目的有価証券については、期末時点の時価を確認します。取得価格と決算時の時価を比較し、帳簿価格を変更しなければなりません。この処理を「評価替え」と言い、損益については有価証券評価損益の勘定科目で処理されます。

ただし、有価証券を売却した場合は、有価証券売却益か有価証券売却損で処理されるので注意しましょう。

消費税区分の確認

期中業務での消費税の扱いには、本体価格と消費税を分けて計上する税抜処理と、取引を税込み金額で計上する税込処理があります。税抜処理と税込処理では決算処理が異なるため注意が必要です。

まず、税抜処理の場合は仮払消費税と仮受消費税が相殺されます。中間消費税を支払った場合も、同様の仕訳で清算されます。

一方、税込処理の場合、基本的には決算時の清算仕訳は不要ですが、中間消費税を支払った場合は租税公課として仕訳しなくてはなりません。

また、現在の消費税は10%ですが、食品などの一部の商品は軽減税率が適用され8%です。その他、印紙代や自治体などの手数料は非課税となっており、これらの区分についても同時に整理しておく必要があります。

税金の確認

株式の受取配当金や銀行の受取利息などは、所得税や復興特別所得税等が控除された金額が入金されます。決算整理仕訳では、実際の入金額で計上する純額主義と、所得税等の各種税金を含めて計上する総額主義があります。簡易的な処理として純額主義での仕訳も認められていますが、原則としては総額主義で仕訳を行いましょう。

総額主義で仕訳するためには、源泉徴収税額を正確に算出する必要があります。総額主義での仕訳は処理が煩雑になりますが、税務申告時に所得税控除などが受けられるメリットがあります。

固定資産の確認

固定資産とは、建物・設備・車両など、会社が販売用ではなく自社で使うために1年以上に渡って保有し、取得金額が一定以上の資産のことです。取得費用をその年度に計上するのではなく、企業活動を行うために使用した期間に応じて計上されます。

固定資産ごとの取得金額や取得年月日、減価償却の履歴をまとめた帳票が固定資産台帳です。

未収入金の確認

未収入金とは、固定資産の売却益や土地・建物などの不動産の賃料など、本業の企業活動以外での未回収の収益を計上するための勘定科目です。決算翌日から1年以内に回収が見込まれるものを未収入金、1年を超えるものは長期未収入金として計上されます。

未収入金には、中間消費税や概算納付済み労働保険料なども含まれる場合があります。中間消費税の場合は仮受消費税と仮払消費税の差額が、概算納付済み労働保険料の場合は確定申告額との差額が未収入金として計上されます。

具体的な決算仕訳の実施例

決算整理仕訳とは?手順と具体例で詳しく解説-3

ここまで、決算整理仕訳の各工程について概要をご説明してきました。この章では仕訳について具体例を挙げて、さらに詳しくご紹介します。

繰延べの仕訳例

繰延べ仕訳とは、当期の費用に来期以降の費用が含まれている場合、決算時にその費用を除外する仕訳を言います。

3月決算の企業が9月1日に火災保険料を1年分(9月~翌8月末)・現金で120,000円支払った場合を例に見てみましょう。

支払時

借方

貸方

支払保険料

120,000

現金

120,000

期中処理では実際の支払金額で費用計上します。

決算時

借方

貸方

前払保険料

50,000

支払保険料

50,000

月額保険料は120,000円÷12ヶ月=10,000円

当期保険料は10,000×7ヶ月(9月~翌3月末)=70,000円

来期保険料は10,000×5ヶ月(翌4月~翌8月末)=50,000円

先払いした支払保険料(費用)50,000円を前払費用(資産)として振分け、当期保険料70,000円を当期の費用として計上します。

翌期の期首における処理

借方

貸方

支払保険料

50,000

前払保険料

50,000

前期に繰延べた仕訳した前払費用(資産)を次期の初めに再度振分け、次期の費用として計上します。

見越しの仕訳例

見越しの仕訳とは、当期の費用のうち未処理で支払いが済んでいないものがある場合、決算時に当期の費用として計上する仕訳を言います。

今回は未払利息(負債)について、具体例を挙げて説明します。

12月決算の企業が10月1日に借入期間1年、年利6%、翌9月30日に利息と元金を一括返済する契約で、銀行から100万円借り入れた場合はどのように仕訳されるでしょうか。

決算時

借方

貸方

支払利息

15,000

未払利息

15,000

1ヶ月分の利息は1,000,000円×0.06(6%)÷12ヶ月=5,000円

10月1日から12月31日までの利息は5,000×3ヶ月=15,000円

期末時点では実際の支払いはありませんが、経過期間の利息15,000円を将来払わなければならない未払利息(負債)として費用計上します。

翌期の期首における処理

借方

貸方

未払利息

15,000

支払利息

15,000

利息は9月30日に元金と合わせて一括返済するため、前期に見越しの仕訳をした利息を次期の初めに再度振分け、支払利息(費用)の残高をもとに戻します。

返済時

借方

貸方

借入金

1,000,000

現金

1,060,000

支払利息

60,0000

 

 

9月30日に、元金100万円と1年間の利息5,000×12ヶ月=60,000円を合わせた106万円を一括返済します。実際に支払った利息は支払利息として計上されます。当期の支払利息(費用)の残高は、前期決算に計上した15,000円を差し引いた45,000円です。

未収入金の仕訳例

未収入金には固定資産や有価証券の売却などの本業以外での収益や、中間消費税などの立替払い、還付金などの未回収金が含まれます。例えば不要になったパソコンを3万円で売却し、代金を後日受け取ることになった場合はどのような仕訳になるでしょうか。

売却時

借方

貸方

未収入金

30,000

雑収入

30,000

本業の商品以外を売却し代金を後日受け取る場合は、未収入金という資産が増加したと捉え、借方に未収入金を仕訳します。

代金受取時

借方

貸方

現金

30,000

未収入金

30,000

代金を受け取った場合は、未収入金という資産が減少したと捉え、貸方に未収入金を仕訳します。

減価償却費の仕訳例

減価償却費の仕訳方法には、直接法と間接法の2つの方法があります。

直接法では、固定資産から減価償却費を直接差し引きます。間接法は、今までの減価償却費の合計を示す減価償却累計額を計上する方法です。

期首に「取得原価100万円、耐用年数10年、減価償却費10万円」の車両を購入した場合を例に見てみましょう。

直接法

借方

貸方

減価償却費

100,000

固定資産

100,000

間接法

借方

貸方

減価償却費

100,000

減価償却累計額

100,000

売上原価の仕訳例

売上原価は期首商品棚卸高と商品仕入高の合計から、売れ残りをマイナスした数字が計上されます。売れ残りである期末商品棚卸高は、来期の期首商品棚卸高として繰り越されます。決済整理では、期中の仕入れ原価から、売上原価へ修正が必要です。

期首処理

借方

貸方

商品仕入

300,000

繰越商品

300,000

前期の期末商品棚卸高30万円を今期の期首商品棚卸高として仕訳します。

決算時

借方

貸方

繰越商品

150,000

商品仕入

150,000

期末商品棚卸高15万円を仕入高から相殺する仕訳です。

有価証券の仕訳例

売買目的有価証券については、期末時点の時価に応じて評価替えを行う必要があります。株式売買時を例に、具体的な仕訳を見てみましょう。

1株1,000円の株式を10株購入し、手数料が500円かかった場合

借方

貸方

有価証券

10,500

現金

10,500

1株1,000円×10株+手数料500円=10,500円

1株1,000円購入した株式を1株1,200円で10株売却した場合

借方

貸方

現金

12,000

有価証券

10,500

 

 

有価証券売却益

1,500

帳簿価格と売却時の時価との差額が、有価証券売却益として収益計上されます。

1株1,000円購入した株式を1株900円で10株売却した場合

借方

貸方

現金

9,000

有価証券

10,500

有価証券売却損

1,500

 

 

帳簿価格と売却時の時価との差額が有価証券売却損として費用計上されます。

決算整理仕訳における注意点

students group working on school  project  together on tablet computer  at modern university-1

決算整理仕訳は一年に1回、決算時にしか行わない業務ですが、企業の財務・経営状況を推し量る非常に重要な業務です。また、決算はその企業の評価として外部の利害関係者にも公開されるため、ミスが許されません。

期中業務とは違った難しさがある決算整理仕訳について、注意点をいくつか解説します。

決算整理仕訳後は各勘定項目残高を確認する

決算整理仕訳は、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書などの決算書を作成するうえで重要な業務です。期中業務で作成している帳票を整理・修正し、各財務諸表に掲載される数値を確定する作業であるため、この仕訳でミスがあると間違えた決算書になってしまいます。

決算整理仕訳を行った後は、勘定科目残高と実際の残高とで差異がないか入念にチェックしましょう。

期中仕訳の内容をあらためて確認

決算整理仕訳に先立ち、期中業務での仕訳を今一度確認する姿勢が重要です。

決算整理仕訳が貸借対照表や損益計算書などの決算書の作成が目的であるのに対し、期中仕訳は日々の取引の記録を残すことが目的です。目的は異なりますが、決算整理仕訳では期中仕訳のデータを決算に適した形に修正や再仕訳を行うことが求められます。

そのため、期中仕訳においても数値を正確にする必要があるのです。

前期と比較して仕訳漏れを防止

仕訳の計上漏れを防止するには、まずは前期の決算整理仕訳を確認するようにしましょう。一旦前期と同じ勘定科目で仕訳を行い、当期で新たに発生した仕訳については期中仕訳を分析して作成します。

決算整理仕訳では、当期の決算整理仕訳にだけ着目するのではなく、前期の決算整理仕訳、当期の期中仕訳と横断的に確認する必要があるのです。

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まとめ

この記事では決算整理仕訳についてご紹介しました。

決算整理仕訳は正確な決算書を作成する上で非常に重要な作業ですが、仕訳や計上などは複雑で経理担当者の負担の大きい業務でもあります。そこで、会計システムやERPを導入し、決算業務を効率的に行えるようにしましょう。

ERPについて詳しくご紹介した資料をご用意しましたので、併せてご覧ください。


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