営業活動・出張費・交通費など、日常業務に関する費用の払い戻しを行う経費精算。企業運営において必ず発生するものです。経費の申請手続き以外にも、管理者の承認や経理部の計算など、経費精算の工程は多岐にわたります。そのため、経費精算は申請者と承認者の双方にとって大きな手間となっているケースも珍しくありません。経費精算でミスが発生している、作業自体を後手に回してしまっているといった課題も頻発しているのです。
そこでこの記事では、経費精算の基本的な考え方やシステムを活用した業務効率化の方法について詳しくまとめました。自社の経費精算に課題を感じている方や業務改善を考えている方はぜひ参考にしてください。
経費精算とは
経費精算とは、業務に関係する活動で発生した経費を、領収書をはじめとする必要書類から不足なく正確に計算して払い戻しを行う作業です。
経費精算には領収書と引き換えに現金を支払う小口精算、電車・バス・タクシーといった交通費を払い戻す交通費精算、出張で使用した新幹線や飛行機などの移動費・宿泊費・日当代金を払い戻す旅費精算の3つに分類されます。経費精算業務は社員が申請を行い、その後管理者・経理が承認、経理や財務が費用の精算と支払を行います。
それでは、そもそも経費とは一体何を指すのでしょうか。経費の考え方について詳しく解説します。
経費とは
経費とは業務で発生した費用を指します。営業活動を例に挙げると、営業担当者が営業活動の移動の際に支払った交通費は経費として扱われます。そのほか、消耗品費や交際費など、業務目的の費用であれば経費に含めることが可能です。経費として経理処理するためには、正しく計上してミス・不正なく処理しなくてはなりません。
また、所得税法において経費は必要経費と表記されます。必要経費とは事業展開で収益を得るために必要な経費のことです。事業により生まれた収入から必要経費を差し引いた金額が、所得課税の対象となります。
経費の対象となるもの
それでは、具体的にどういった費用が経費の対象なのでしょうか。
前述の通り経費は業務に必要な費用を指します。しかし、すべての費用が経費として計上できるわけではありません。以下に代表的な経費の対象となる費用を記載しました。
- 広告宣伝費
- 旅費
- 交通費
- 交際費
- 通信費
- 事務用品費
- 消耗品費
- 水道光熱費
- 保険料
- 図書費
- 支払手数料
- 地代家賃
- 減価償却費
業務に関連して出費が発生したら、証拠となる領収書の保存だけでなく経費として分類されるか確認するようにしましょう。
経費の対象とならないもの
一部、経費精算の対象にならない費用があります。また、そもそも経費ではない支出も同様に精算の対象になりません。以下のようなケースは経費精算の対象にならないため注意しましょう。
社長・役員・社員個人の支出
経費精算の対象となる費用は、企業の事業に関連して行われる出費でなければなりません。社長・役員・社員個人の生活や活動の中で発生する費用は経費精算の対象にはならないため気をつけましょう。
経費精算対象外の支出
企業の利益に対して発生する住民税・法人税・事業税は経費ではないため経費精算の対象になりません。
経費精算の流れ
それでは、実際費用を使用して経費を算出した際、経費精算はどのような工程を経て行われるのでしょうか。ここでは経費精算の業務フローを紹介します。
立替払い
接待飲食代・交通費・備品購入代金など、会社の費用を社員が代わりに現金で立替えます。
紙の領収書の受け取り
立替払いの証明書類として領収書などを受け取り保管します。
経費精算書の作成
受け取った領収書を規定の申請書に添付して経費精算書を作成します。
経費データの入力
Excelや会社のシステムなどに立替経費のデータを入力します。交通費の場合は、スケジュールを参考に日付や当日用いた路線情報を調べる必要があります。
経費精算書の提出
経費精算書に伝票番号などを記入して上長に提出します。
上長の経費精算書確認と承認作業
経費精算書を受け取り紙媒体であれば上長が押印をして承認し経費精算書は経理へ渡ります。月末は確認や承認作業のためだけにオフィスに行くというケースもあります。
経理の経費精算書確認と承認作業
経理で間違いがないかダブルチェックし、不正やミスが無ければ承認されます。
社員へ払い戻し
経理担当者に承認された経費は、給与日をはじめ会社で規定されている日に払い戻されます。なお、経費精算書に張り付けられた領収書は最低でも7年間保管しなくてはなりません。ファイリングをして大切に保管しましょう。
経費精算は企業活動の多さに比例して工数が増えやすいです。そのため、通常業務と経費精算を兼務している担当者にとっては特に大きな負担となってしまうのです。
立替経費精算とは
そもそも、立替経費とは会社が事業を運営するうえで必要な経費を、社員が前もって負担して支払う行為を指します。本来であれば会社が負担する経費を社員が代わりに立て替えて負担しているため、現金の払い戻しを行うために社内で手続きしなくてはなりません。なお、経費精算については立替・仮払の違いや、その費用が課税対象になるか、経費予算の規模を把握しておくと手作業でも円滑に精算できます。
立替経費精算に必要な書類
立替経費精算の際に必要になる書類は以下の通りです。
立替経費精算書と経費精算書
どちらの書類も社員が立て替えた経費を払い戻すために必要です。一般的には、消耗品や図書の購入といった購入費と出張旅費などでは経費の性質が異なるため、立替経費精算書とは別に出張旅費精算書・旅費精算書といった書類を用意します。スムーズに業務を進めるためには、ミスや不正が起こりにくいように記入例・申請ルールを整備しておきましょう。
領収書
領収書は社員が一時的に立て替えたという事実を証明する書類として最も一般的なものです。立替経費精算書への記載項目である支払先・支払内容・金額は、受取時に記載内容に不備がないか必ず確認しましょう。なお、株式会社の記載も絶対に省略せず、前株か後株なのかも間違えないように注意する必要があります。
経費精算書とは
経費精算書とは社員が立替払いをした経費の精算に必要な書類です。日々の営業活動の中では取引先への訪問や接待といったシーンも多くあるでしょう。加えて、通常業務で使われる文房具なども一時的に社員が立て替えているというケースも珍しくありません。会社の業務で出張が頻発するようであれば、個人で立て替えるには高額になるケースもあるため、概算を算出して経費の仮払いを行う場合もあります。
経費精算書の種類
経費精算書には主に仮払経費申請書・仮払経費精算書・出張旅費精算書があり、書類ごとに申請用途が異なります。それぞれの特徴については以下の通りです。
仮払経費申請書と仮払経費精算書
経費の合計金額が不明瞭なケースなどで、事前に概算で経費を算出するための書類です。なお、仮払経費精算書では前もって受け取った仮払金を精算するため、実際にかかった金額を証明できる書類の添付が重要です。
出張旅費精算書
社員旅行や出張で発生した費用を精算するための書類です。金額が大きくなりやすいため、ほかの経費とは分けて計算される場合もあります。出張旅費精算書と旅費精算書を別としている会社もあれば、旅費精算書だけを作成している会社もあります。
経費精算業務における課題点
ここからは、経費精算業務における課題点について解説します。
金額のミスが発生するおそれ
経費精算では属人的なミスが起こりやすいため注意が必要です。経費精算に慣れていない、精算機会の少ない社員の場合は同じミスを繰り返す恐れがあります。そのほか、立替経費を申請する社員自身が領収書を紛失する、立替経費の申請期限を知らずに申請を忘れてしまうといった問題が発生する場合もあります。
承認までに時間がかかる
経費精算の際に発生する経理担当者の作業は、申請書のチェック・エクセルファイルなどへの入力・計算作業など工程が多くあります。そのため小規模な会社であっても承認までに時間がかかってしまいます。加えて、計算・入力にミスがあると担当者は書類を差し戻さなくてはならず、その度に発生する余計な作業の増加も時間がかかる要因です。
生産性の低い業務フロー
IT化が企業で推進されていますが、経理現場では手作業やアナログな手順での回覧・押印など、非効率的な業務フローがまだまだ目立つのが現状です。目視確認や紙媒体に頼っていては経費精算の手続きが複雑化し、担当者の負担が増加してしまいます。
電子帳簿保存法の改正で経費精算のペーパーレス化が進む
電子帳簿保存法とは、帳簿や請求書などの国税関係帳簿・書類について、所定の要件を満たせば電磁的記録(電子データ)での保存を認める法律のことです。従来は最低7年間、紙での保存が必要だった証憑書類を電子的に保存することができるようになるため、ペーパーレス化が進み経理関連業務の効率化につながります。
また、立替経費精算をクラウドツール上での申請だけで行えるようになったり、紙の請求書をスマートフォン等で撮影したものを電子データとして保存できたりと、経費精算においても利便性が向上します。
2022年の改正では電子取引における証憑書類の紙保存が不可となりデータ保存が義務化されたため、多くの企業が電子帳簿保存法に対応しなければならなくなりました。
この法改正への対応や経費精算の効率向上には、電子帳簿保存法に対応した経費精算システムの導入がおすすめです。次章で詳しく解説します。
電子帳簿保存法の基礎知識や改正内容、対応ポイントについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
電子帳簿保存法への対応にはシステム導入がおすすめ。機能や選び方とは
経費精算はシステムの導入で効率化
経費精算システムの導入で経費精算業務を効率化できます。社内に合わせたカスタマイズができるなど、企業に合わせたメリットが多くあります。
経費精算システムとは
経費精算システムとは経費の精算を行うために必要となる申請・確認作業・承認といった業務を、より効率的に行えるITツールです。主に以下のシステムが多くの企業で導入されています。
会計ソフト連携型
経費精算は申請者から経理担当者の手に移り、経費計上や決算に使用されます。これらの業務は一連の流れで進行するため、会計ソフトと連携すると業務効率を大幅に向上できます。処理する段階で勘定科目・税区分などを連携させてCSVデータを作成し会計ソフトと連動させれば、経費計上や企業決算へと円滑に進められます。
さらに、導入時に担当者や申請者が直感的に入力できるシステムを選定できれば、経理担当者が社員に指示して記入者がマニュアルに沿って申請するといった無駄な手間を省けます。
クラウド型
クラウド型経費精算システムはデータのバックアップなどを自動で行いクラウド上に保存します。
そのため、ネットワークエラーや破損によるデータ損失などのリスクを回避できます。経費精算の処理工程を一元的に管理できるため、セキュリティ対策や情報漏えいに対しても大きな効果を発揮するのです。ID・パスワードでログインが可能で、外出先であってもアクセスできます。普段は直行や直帰が多い社員であっても、スマートフォン・タブレット端末などからいつでも申請ができるため、上長や経理担当者の承認も円滑になり生産性が向上します。
このように、経費精算システムにはさまざまな種類があり、課題に合わせた選定がポイントです。
選定の際は企業で抱えている課題を明確にして最適なシステムを選びましょう。
経費精算システムを導入するメリットとは
経費精算システムを導入するメリットについても整理しておきましょう。経費精算システムを上手に活用できれば業務効率化が推進されます。経費精算システムを導入すれば困っていた問題を解決できます。
経費精算業務の生産性向上
経費精算はすべての工程を手作業で行った場合、必要となる時間と労力を軽視できません。
しかし、システムを導入すればアナログで時間のかかる工程をカットできます。経費精算時にかかる労力を大幅カットしヒューマンエラーなどのリスクを軽減でき職場の生産性もアップします。
ミスや不正の防止
経費精算の中でも交通費精算時は入力ミスや不正が発生しやすい経費です。アナログな資料をベースに計算を行うことが多いため、デジタル化されていないとミスや不正が起こってしまいやすいのです。経費精算システムを導入すれば事前に申請フローを設定する機能や入力漏れチェック機能があるため、ミスや不正を未然に防げます。
データの管理が容易に
前述の通り、経費精算時には用途によってさまざまな書類が必要です。加えて、領収書などの書類をすべて管理しなくてはならず、書類とデータを関連づけている会社であればデータ管理がより困難になるでしょう。しかし、システムを導入すれば精算に必要なデータはすべてクラウドに保存されるため、データ管理が簡単になります。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
経費精算は企業運営にとって欠かせない業務です。経費精算は正確かつ迅速な処理が求められ、ミスや遅延が発生してしまうと従業員からの信頼を失ってしまう原因にもなりかねません。
少しでも効率的に経費精算を行おうと考えているならば、今回詳しく紹介したシステムの導入がおすすめです。適切なシステムを採用できれば経費精算の課題を解決できます。
経費精算に特化したシステムはもちろんですが、経費精算の機能を内包したERPの活用も有用です。以下のページでは、システム導入における注意点や考え方について、より詳しく紹介しています。導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
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