タレントマネジメントとは?目的や効果、実現のステップを解説

 2022.05.20  株式会社システムインテグレータ

グローバル化やテクノロジーの急速な進化により、企業を取り巻く経営環境は大きく変化しつつあります。従来は固定されたメンバーで協調性を重視しながらビジネスを進めることが求められてきましたが、現在は「いかにスピーディーに新しい価値を生み出していけるか」という部分に重点が置かれるようになりました。

そこで、注目を集めているのが「タレントマネジメント」です。

タレントマネジメントは、従業員個人の能力や業務経験、スキルなどをデータで一元管理する仕組みです。従業員の能力を最大限に活かせるポストに的確に配置できるため、企業全体のパフォーマンスが向上し、業績アップを期待できます。

本記事では、タレントマネジメントの目的や効果、導入の流れなどを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。 

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは?目的や効果、実現のステップを解説 1

「タレントマネジメント」とは、「タレント(従業員)」の持っているスキルや能力、経験値などの情報を一元管理することによって、組織を横断して戦略的な人事配置や人材開発を行うことです。

タレントマネジメントを実線することで「売上・利益を上げる」「事業を拡大する」といった企業の経営目標を、人事戦略の視点から実現していきます。具体的には、人材の調達・人材の育成・適材適所の配置による成果の最大化・人材の定着などの効果が期待できます。 

タレントマネジメントが注目されている背景

かつての日本では大量採用が主流で、企業はできるだけ多くのポテンシャル人材を獲得することに注力していました。

しかし、現在は労働人口の減少により、企業が求める経験やスキル、素養を兼ね備えた人材を採用することが求められています。このように、限られた人材に高いパフォーマンスを発揮してもらうことが欠かせなくなった今、従業員一人ひとりの能力に目を向けつつ、企業の経営戦略に沿って人事施策を統合的に実行するタレントマネジメントが注目を集めているのです。 

「タレント」とは誰のことか

タレントマネジメントは、特定の人材やポテンシャルを持った人材に限定される場合と、全社員を対象にする場合とがあります。

幹部候補の社員や特定のプロ人材などに限定した排他的アプローチでは、リーダーシップ論に基づいた戦略的な人材活用が実現できます。

一方で、全社員を対象にした包含的アプローチでは、適材適所に社員を配置するのに大きな役割を果たします。 

タレントマネジメントの目的

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タレントマネジメントの目的は、経営目標を達成するための経営戦略を人事面から支えて実現させることです。つまり、タレントに着目した統合的な人事施策を行い、従業員一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えることが求められます。個々人の生産性を高めることで、組織全体の継続的なパフォーマンス向上につながるのです。

ここからは、より具体的な内容について詳しく確認していきましょう。 

大目標:経営目標の達成

企業における経営目標達成のためには「リーダー候補の育成」が重要です。

タレントマネジメントを活用することで、リーダーの資質を持つ人材をピックアップすることができます。次世代リーダー候補の育成を、早期から効率的に行えるのは大きなメリットでしょう。 

人材の調達

人材の調達もタレントマネジメントを行う目的の一つです。

経営目標を達成するためには、それを叶えるのに必要な人材を揃えることが必要不可欠です。タレントマネジメントを行うことで、組織内に埋もれている人材を発掘できたり、外部から採用するべき人物像が明確になったりするため、よりスムーズに経営目標を達成できるでしょう。 

人材の育成

タレントマネジメントは人材育成にも有効です。タレントマネジメントによってそれぞれのスキルが可視化されれば、個人のどこを伸ばし、どのギャップを埋めていくかという育成計画を立案し、実行することができるようになります。総合的な視点で今後の育成計画を立てられるため、効率的な人材育成を行なえるのです。 

配置の最適化

続いて、適材適所による成果(パフォーマンス)の最大化です。

能力を最大限に発揮できるポジションと従業員をマッチングし、適材適所に配置することで、やりがいを感じて働いてもらえるようになります。それによって、従業員一人ひとりに見合ったキャリア開発が叶い、企業成長の実現が見込まれるのです。 

人材の定着

最後にご紹介するのは人材の定着です。

調達・育成した人材にできるだけ長く、活躍し続けてもらうというのもタレントマネジメントを行う目的です。タレントマネジメントを活用し、個人のスキルや思考、価値観を把握することで、誰をどのポジションに配属すれば生産性が向上するのか、従業員の業務へのモチベーションが保たれるのかなどがわかり、最適な人材配置が可能になります。 

こうしたいくつかの目的・メリットからタレントマネジメントは行われます。

企業は人で成り立っている以上、従業員個々人のスキルだけでなく、思考や価値観を把握し、能力を向上させる取り組みは業績などに直結するのです。 

タレントマネジメントがもたらす効果

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タレントマネジメントの導入によって、個人のスキルや能力などのデータを一括して把握できるようになります。

システムでの管理を通じて、人事・経営陣などが社員のモチベーションを把握したり、悩みやストレスに対して早期にフォローしたりすることが可能です。そのため、離職率の低下はもちろん、その他にもいくつかのメリットが得られます。では、項目ごとに詳しく確認してみましょう。 

従業員満足度やエンゲージメントの向上

タレントマネジメントではキャリアの志向やスキル、キャリア遍歴といった従業員の情報を可視化します。そうすることで個別管理が進み、一人ひとりの状態に合わせた育成・キャリア開発が促進されるのです。これによって、従業員がやりがいを感じる仕事への配置を実現しやすくなるでしょう。

また、従業員に「この仕事は自分に向いている」「職場に貢献できている」「この仕事によって成長できている」といった実感を持ってもらえるようになることは、従業員のエンゲージメントを高めることにもつながるでしょう。 

ひとりひとりに合った育成ができる

社員がどのようなキャリアプランを描いているのか、どのようなスキルや経験を身に付けたいのかを把握することで、効率的な人材育成が可能となります。目指す方向に応じた業務を任せたり、トレーニングを行なったりすることで、各々の意欲向上にもつながるため、スピーディーな事業発展も見込めます。 

多様な人材に活躍のチャンスがある

旧来の日本企業における人材マネジメントは、新卒での一括採用にはじまり、フルタイム勤務を前提とした配属、数年ごとのジョブローテーションや転勤を伴う異動といった集団的な管理手法が一般的でした。そのような企業にタレントマネジメントを導入することで、従業員を能力ごとに把握し、個別的な管理を推し進められるようになります。外国人や高齢者といった多様な人材を含む従業員一人ひとりが、それぞれの能力を存分に発揮できるでしょう。 

タレントマネジメントを実現するステップ

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ここからはタレントマネジメントの導入にあたって、具体的にどのようなステップを踏んでいくのか5つのステップでご紹介します。人事戦略も絡めて、しっかりと目的を定めましょう。 

タレントマネジメントの目標設定

最初にやるべきことは、目標の設定です。何を目的にタレントを増やすのか、どのくらいタレントを増やすのか、タレントマネジメントを採用することによってどんなタレントを持った社員を率いる企業を目指すかなど、目的・目標を設定します。

タレントマネジメントを活用することで、人事・採用の場にどう生かしていくかを明確化することで、どんな情報を集めていけばいいのかなど、タレントマネジメントの具体的な内容を決めていくことに欠かせないでしょう。 

人材情報の収集とタレントの把握

次に、氏名や学歴・経歴、取得資格、現在の配属先、現時点での評価などのタレントの情報を集約してデータ化します。

情報は一度取り入れたら終わりではなく、常に最新のものに更新しなければなりません。どのような従業員がいるのかをすぐに把握できる状態にしておくことが重要です。 

タレントの採用や育成計画の作成

最初のステップではタレントマネジメントの目的や目標を設定しました。次のステップでは実際に集めたデータと目標を照らし合わせて、理想と現実のギャップを確認し、その差を埋めるための採用計画や育成計画を立てます。企業規模が大きくなると個人ごとのタレント管理が難しいため、ある程度スキルや経験でグルーピングしたデータベースを作り、グループごとに計画を立てると良いでしょう。 

タレントの採用・配置

タレントマネジメントの目的に応じて必要な人材を確保し、育成計画に基づいてタレントを適切な場所に配置します。

ここでは、実際に現場をコントロールする管理者の役割が非常に大きくなります。タレントが想定していた能力を発揮できているか、能力の向上ができているか、モチベーションの増減などを随時チェックする必要があるためです。また、それらの情報を「タレント情報」として蓄積していくことで、この先のサイクルにおいて、適切な活用ができているかを判断する材料の一つとなります。 

取り組みの評価と改善

タレントマネジメントにおいては、適切な評価体制の構築が必須になります。明確な評価体制を構築し、目標や成果に対して適切に評価することで、タレントの能力やモチベーションの向上効果が期待できます。

企業業績と個々の貢献度の照らし合わせはもちろんのこと、キャリア志向や仕事上での考えなども、例えば上司と部下による面談(1on1)などできめ細やかに確認しましょう。 

タレントマネジメントシステムで効率化しよう

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タレントマネジメントシステムとは、社員のスキルや知識・経験などの情報を一元管理できるシステムです。人材のあらゆる情報が蓄積されており、それを活用して適材適所な人員配置ができるようになります。タレントマネジメントシステムを活用することで、膨大な情報の収集、管理や活用における効率化が期待できます。 

タレントマネジメントシステムでできること

サービスによって多少異なりますが、一般的なタレントマネジメントシステムでは、以下6つのことが可能です。 

  1. 人材データベースの構築・管理
  2. 後継者管理
  3. 目標・パフォーマンス管理
  4. 要員計画
  5. 報酬管理
  6. 採用管理 

タレントマネジメントシステムにはさまざまな種類があるため、自社に最適なものを検討して選ぶ必要があります。その際、一番大切なのはなぜ導入するのかという「目的」です。 目的を定めた上で、その達成にマッチするもの、そして自社の社員規模などと合致するシステムを検討してみましょう。 

従来の人事システムとの違い

人事システムは、主に労務や人事に関する管理業務を効率化するシステムです。具体的には、給与計算勤怠管理・人事評価などで活用します。人事戦略や経営に直結するような機能は備えていません。

それに対して、タレントマネジメントシステムは、個人のパーソナルなデータ(素質・才能・ポテンシャルなど)をデータ化し、管理するものです。将来のリーダー候補を選定して育成するほか、従業員の能力やスキルにマッチした適材適所の配置を実現し、従業員の本来持っている能力を開花させて経営戦略実現の可能性を高めます。 

代表的なタレントマネジメントシステム

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タレントマネジメントシステムは、「評価」「育成」「活用」の工程ごとに、それぞれを支援する機能を備えた「評価業務支援タイプ」「目標管理支援タイプ」「人材活用支援タイプ」、いずれの用途にも対応でき、かつ離職防止機能も備えた「多目的タイプ」の4つに分けられます。

それでは、代表的なタレントマネジメントシステムを、3つ紹介していきます。 

HRBrain

人事・現場が使いやすく、顧客満足度に定評のあるタレントマネジメントシステムです。

「人材データ管理」「配置シミュレーション」「組織分析」「人材育成」「人事評価」「アンケート」などあらゆる業務を効率化し、蓄積したデータをもとに効果的な人事戦略を実現できます。 

タレントパレット

さまざまなビッグデータの活用に取り組んできた同社がノウハウを活かして開発した人材情報分析に強みのあるツールです。社員一人ひとりの「今ある能力」を多角的にデータ分析し、いくつもの組み合わせをシミュレーションできるため、人間の勘や好き嫌いにとらわれることなく、最高のチームを追求することができます。 

カオナビ

社員の個性・才能を発掘し、戦略人事を加速させるタレントマネジメントシステムです。

名称にある通り、人材情報を「顔」を起点にまとめることで、社員の性格・特徴なども把握しやすいのが特徴です。縦横に何百という従業員を部署・評価テーブル・年代などさまざまな切り口で分類して一覧表示できる「マトリックス表示」は、組織・部署にどういう人が多いのかを直感的に理解できるため、とても便利です。 

タレントマネジメントシステムの選び方

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タレントマネジメントシステムは業務対象が広いため、実現したいことによって選ぶべきシステムが変わります。ここでは、選び方のポイント4つを解説していきます。 

システムを使って目指すものを明確にする

まず、そもそもなぜタレントマネジメントシステムを導入するのかを明確にしましょう。

自社の経営計画や事業計画を達成するために現状どのような課題があるのか、その課題を人材の面からどのように解決できるのか具体的に考えていきます。目的が曖昧な導入を進めても、途中で形骸化してしまう可能性が高いので注意が必要です。 

必要な機能が搭載されているか確認する

自社が実現したいことを明らかにし、必要な機能を把握することが重要です。たとえば、育成計画に役立てたいのか、データ分析に重きを置くのかなど、ニーズによって選択すべきシステムは変わります。自社の目的を果たせる機能を見極めたうえで選定することが大切です。 

利用中のシステム・ツールと連携できるか確認する

タレントマネジメントシステムの導入を検討する際は、自社で利用しているシステムと連携できるのか確認しておきましょう。連携が可能であれば、人事・給与・勤怠などを管理する基幹システムと、タレントマネジメントシステムで情報を一元管理することができます。それによって総合的な人材管理が可能になり、業務効率も飛躍的に向上するでしょう。 

使いやすさを重視する

必要な情報だけを正しく取得できるのか、操作が複雑になっていないか、見やすくて理解しやすいか、事業変化に応じてカスタマイズしやすい仕様になっているかなど、「長く活用できるイメージ」を持てるかどうかをチェックしましょう。

また、導入・運用に当たってサポート体制が万全かどうかも確認しておきましょう。 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

今回はタレントマネジメントシステムをテーマに、概要やポイントをご紹介しました。

タレントマネジメントシステムを活用することで、従業員のキャリアアップや、リーダー育成などに役立てられます。一方で、単にシステムを導入するだけで、こうした状況が実現できるわけではありません。社内に存在するスキルや資格などの情報を一元管理し、人材管理や育成に取り組む必要があるのです。

そこでおすすめなのが、タレントマネジメントシステムを保有したERPシステムです。企業全体の情報を一元管理することで、より戦略的な人材育成につなげられます。ERPについて詳しく知りたい方は、多数資料をそろえていますのでぜひご覧ください。


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