給与計算とはどんな業務?主な手順や注意点を解説

 2022.05.20  株式会社システムインテグレータ

従業員に支払われる給与は、給与計算業務における計算を経て支払われます。しかし、実際にどのような手順で計算を行うのか、担当者ではないため詳しいことまでは知らないという方も多いのではないのでしょうか。

この記事では、給与計算業務の概要や主な手順、注意点、効率化のポイントなどをご紹介します。 

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給与計算とは

給与計算とはどんな業務?主な手順や注意点を解説 1

給与計算とは、文字通り従業員の給与額を計算する業務のことです。

企業における規定や雇用契約などに基づき、勤務状況や諸手当などを計算し、給与の総支給額を最初に求めます。それに厚生年金保険料や健康保険料、雇用保険料といった社会保険料や、住民税、所得税といった税金を差し引いて、従業員に支払われる「手取り額」を算出します。 

給与計算の担当

給与計算は総務や人事部門が担当することがありますが、経理部門にとっても重要な仕事の1つです。

給与計算の仕事に資格は必要ありませんが、正しく給与計算を行うために社会保険の仕組みや労働基準法の理解、所得税や住民税などの税金の知識が求められます。必要資格はないものの、税理士や社会保険労務士などの資格を取得することや、「給与計算実務検定試験」といった民間の資格を取得することが給与計算スキル向上に役立つことがあります。 

給与計算はミスが許されない

給与計算業務では、まず企業が従業員の給与を計算し、そこから社会保険料や税金を差し引いたうえで公的機関に納付するステップを踏みます。このプロセスでミスが発生した場合、単に従業員の給与に影響するだけに留まらないことに注意しましょう。例えば厚生年金の金額にミスがあると、従業員が将来受け取る年金額に影響を与えてしまいます。税金の計算ミスは、追徴課税が発生するおそれがあるため、特に注意が必要です。

給与計算には税法や労働法といった、さまざまな法規制による縛りがある上に、法律は改正される頻度が多く、その時点の法律の内容に従った給与計算が必要になります。法律の解釈を誤ると、すべての従業員の給与計算にミスが発生する可能性もあります。こうしたことが起きると従業員からの信頼を失うこともあるでしょう。

万が一給与の過不足が発覚したときは、その分の精算をする必要があります。不足分が発生した場合は、税金や保険料を考慮した追加の支給額を算出し、精算します。それだけでなく、計算ミスがあった従業員に説明を行って信頼回復に努めなければなりません。給与計算はマンパワーで行うことが多く、それゆえにミスが発生する可能性も高いことに注意しましょう。 

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給与計算に必要なもの

給与計算とはどんな業務?主な手順や注意点を解説 2

給与計算をするうえで、準備しておくものにはどんなものがあるのでしょうか。準備が必要となる4つの項目について、1つずつ詳しくご紹介します。 

就業規則や給与規則

「就業規則」とは、従業員が企業で働くうえでのルールや、労働条件を定めた規則のことです。従業員の人数が10人以上の企業は、就業規則を作成し、労基署に届け出ることが法律で決められています。一方従業員が10人未満の企業の場合は、「就業規則を作成する」「届け出を行う」といった義務はありません。しかし、前もって就業規則を作成しておくことで従業員と企業との間のやり取りがスムーズになるといったメリットがあります。

給与は就業規則のなかで定められていることもありますが、「給与規程」として別途定められている例も多く見られます。その場合、毎月の給与計算はこの給与規程に基づいて行われます。 

なお、就業規則や給与規程に記載する事項には、必ず記載しなくてはならない項目(絶対的必要記載事項)と、定められている場合に記載する項目(相対的必要記載事項)、その他任意で記載する項目(任意的事項)の3種類があります。このうち、必ず記載する必要のある項目は以下の通りです。 

労働時間に関すること

始業時刻と終業時刻、休日・休暇や休憩時間など。労働者を2組以上に分けて交代で就業させる場合は、さらに就業時転換に関する事項など、労働時間に関係する情報。 

賃金に関すること

給与の計算、支払い方法、給与の決定、締め日と支払日、昇給など、賃金に関する情報。 

退職に関すること

解雇の事由を含む、退職に関する情報。 

従業員情報

給与計算には従業員情報も必要です。職種や勤続年数、役職といったことで基本給や手当が変動することが多いためです。

また家族の増減があると、扶養状況によっては所得や家族手当の控除額が変わりますし、勤務地の転居・変更があれば通勤手当が変わります。給与に関係する従業員情報は、毎月行われる給与計算前に収集し、必要に応じて更新するようにしましょう。 

社会保険

社会保険などの各種保険料は、給与計算をするうえで欠かせない項目となります。法律で定められた条件に合致する場合、従業員にはそれぞれの保険に加入する義務が発生します。雇用形態に関係なく、条件を満たしていれば加入する義務があることに注意しましょう。

例えば、事業所の規模を問わず1週間の労働時間が30時間以上の従業員や、従業員が501名以上の事業所において「1週間の労働時間が20時間以上である」「継続して1年以上雇用される見込みであること」「学生以外であること」「月額賃金が8.8万円以上」の4つの要件をすべて満たしている従業員は健康保険や厚生年金保険の加入対象となります。 

勤怠情報

給与計算を行うには、それぞれの従業員の労働時間を計算することが必要になります。時給制でパートやアルバイトで働く従業員の給与の計算や、時間外労働に対しての割増賃金の計算で使用します。

給与計算のための勤怠情報のデータを収集するには、出席簿をつけたり、タイムカードを使って出退勤を記録したりするなどの仕組みが必要です。 

給与計算の主な手順

給与計算とはどんな業務?主な手順や注意点を解説 3

続いて、給与計算で必要となる手順について詳しく解説します。 

総支給額の算出

給与計算をするときに最初に行うことが「総支給額の算出」です。就業規則や雇用契約書などで定められている「基本給」と、勤怠データや各種手当によって変動する「給与額」を計算して、総支給額を算出します。深夜手当や休日出勤手当、残業代は、以下で紹介する計算式を用いて算出します。 

 休日出勤手当=時間外労働の時間数×1時間あたりの賃金×割増率 

例を挙げると、割増率は22時から5時までの深夜手当の場合、最低でも25%以上と労働基準法によって最低ラインが決められているのです。計算をするときには、労働時間を1分単位で計算に含めなければならず、15分未満を切り捨てるなどの行為は違法となります。 

社会保険料や税金などの控除計算

次に、税金や社会保険料などの控除の計算を行います。社会保険料には、健康保険料や雇用保険料、厚生年金保険料などがあり、40歳以上65歳未満の従業員にはさらに介護保険料も合わせて計算します。

そして、所得税は毎月おおよその金額を導き出して税務署に納付します。年末調整によって1年間の正確な所得税額を計算し、一般的に従業員は還付金を受け取って調整がなされます。

住民税は、毎年5月に各市区町村から納付書が届くため、企業は記載された額を従業員の給与から差し引く「源泉徴収」を行います。 

手取り額の決定

手取り額は、総支給額から控除額を差し引いて求めます。額面金額から控除されるものは以下のような項目です。 

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税 

ちなみに「基本給が同額なのに手取りに差が生まれている」という話は耳にすることも多いトピックですが、これは基本給以外の控除額に差があるため起こることです。

仮に基本給が同額であったとしても、役職手当や通勤手当は一律でない場合があります。また、社会保険料を決定するための等級は、基本給以外の金額も考慮して算出されます。そのため、手当などに違いがあれば、当然控除額にも差が生まれ、結果として手取りに差が生まれるのです。 

各種事務処理

手取り額を算出し、決定した後は給与明細や賃金台帳を作成するための事務処理を行います。特に賃金台帳は従業員の給与の支払い状況を記録するための書類で、労働基準法で作成・保管が義務付けられている重要な書類です。

定期監督や申告監督の際、労働基準監督署から賃金台帳を提出するように求められることもあるため、必ず作成するようにしましょう。 

給与の支給と税金や保険料の納付

従業員への給与が確定したら、所定の支給日に支払うことができるように手続きを行います。住民税や所得税などの税金は、支払いの翌月10日に税務署に納付する必要があります。社会保険料は、それぞれの担当役所から納入通知書が送付されるため、月末までに支払いを行いましょう。

雇用保険は年に1度まとめて納付します。金額にずれが生じた場合は翌年の支払い時に調整が必要です。 

給与計算で注意が必要なポイント

給与計算をするにあたっては、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。以下では給与計算における注意ポイントを3つご紹介します。 

賃金支払い5原則の遵守

1.現物給与禁止の原則

原則として、日本円の通貨で賃金を支払う 

2.従業員へ直接払いの原則

賃金は従業員に直接支払う 

3.全額払いの原則

賃金は従業員に全額支払う 

4.毎月1回以上の原則

賃金は毎月1回以上の回数で支払う 

5.一定期日支払いの原則

賃金は毎月25日、毎月末日など一定期日に支払う 

 

以上が「賃金支払い5原則」です。この原則は賃金が従業員に確実に支払われるための規程で、必ず守らなくてはなりません。しかし、状況に応じて「労働協約」を締結して、例外を設けることもできます。

例えば2番の直接払いの原則を厳しく守ろうとすると、銀行振り込みができなくなってしまいます。しかし、利便性を考慮して従業員の指定する従業員名義の口座であることを条件に銀行振り込みをすることは許されています。ただし従業員の両親や配偶者など、従業員以外の他人名義の口座に賃金を振り込むことはできません。 

残業代の支払い

労働基準法では所定労働時間を週40時間を定めており、これを超過する残業の割増率は、残業手当が25%、休日出勤手当が35%となっています。22時~翌朝5時までの時間帯は、「深夜業」として25%の割り増しが必要です。加算するのを忘れないようにしましょう。 

業務を属人化させない

給与計算の業務は高度な計算力と知識が要求されるため、スキルを身につけるにはかなりの時間を要します。

ただ、人材採用や育成の余裕がないからといって、給与計算の担当者を1人に固定することは、担当者以外は業務をこなすことができない「業務の属人化」が起きるリスクを招いてしまいます。

もし担当者が離職すると誰も代わりに業務ができる人がいなくなりますし、離職だけでなく病気やケガといった要因で長い期間休職するケースもあることから、企業にはリスクに備えるために給与担当者を複数置くという対策が求められます。

複数の担当者に仕事を任せると、それぞれがお互いの仕事を確認することができるようになるため、計算ミスを防ぎやすくなります。あるいはチェック担当者を置くことで、さらにミスを防げるようにもなるでしょう。複数の人に給与計算業務を任せ、仕事を分担することは効率性の向上にもつながります。

給与計算業務は労力がかかるため、中小企業であっても複数の担当者を用意することをおすすめします。担当者が複数いれば、知識の不足分を埋めることができ、困難な状況に直面した際も担当者同士で話し合いをしたうえで正確な判断をすることができます。 

システムの導入で給与計算を効率化

給与計算は、人の力だけではミスが起こる可能性があります。給与計算をミスなく行うためには、給与管理システムや勤怠管理システムを導入して、業務を効率化することが有効です。

給与計算システムとは、登録された従業員の雇用情報や勤怠管理データなどから自動で給与計算を行うことができるシステムで、導入することによって毎月の給与計算業務を大きく効率化することができます。年末調整や税金の対応など、ミスが起こりやすい業務でも間違いを大きく減らせます。

勤怠管理システムとは、従業員の出退勤の時間を管理できるシステムで、勤務時間や残業時間、欠勤の有無など、給与計算をするにあたって必要となる情報を効果的に集めることができます。 

給与計算を効率化するためのシステムについては、以下の記事もご参照ください。

人事給与システムとは?種類・導入メリット・選び方を詳しく解説

勤怠管理とは?重要性や管理手法のメリット・デメリット、注意点を解説

まとめ

ここまで、給与計算業務の概要と手順についてご紹介しました。

給与計算では給与額と税金、保険料などを計算することになります。給与計算にはさまざまなツールがあり、給与計算に特化したツールや、人事労務も管理できる人事給与に特化したツール、ERPに給与計算が含まれているタイプなどが挙げられます。

まずは自社に適切なツールがどのようなものかを検討してみましょう。ERPについては他の資料でも詳しく解説していますので、ご参考にあわせてご覧ください。

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