企業の人事給与業務を管理する「人事給与システム」。近年では人事情報を経営資源の一部と捉え、事業戦略実現のための「戦略人事」として人事業務を捉え直す新しい動きに注目が集まっています。
本記事では、人事給与システムについて、基本知識からシステム化のメリット、戦略人事を実現するためにはどのようにすればよいのかまでまで解説します。
人事給与システムとは
人事給与システムとは、採用管理や人事評価、給与計算など、従業員の一連の人事情報を管理するシステムのことです。
スキル管理や研修管理機能によって人材配置の最適化を図れるようなものから、特定の機能にフォーカスしたものまで、さまざまなものがあります。例えば、勤怠を管理するものから、人事・労務領域をカバーするシステム、タレントマネジメントや採用関連のシステムなどもあります。
人事給与システムの導入によって解決できる課題とは
中堅から準大手などある程度の規模の会社では、人事給与関連業務を人力で処理することには限界があるためシステムによる効率化が必要です。
一般的な人事給与業務と言えば、日常的なルーティンから、半期・年次サイクルのもの、中長期的なものなどがあります。
日常的なルーティン業務では、社員の情報管理・スキル管理・勤怠管理・給与計算・有休管理・社会保険管理・人事諸届管理・退職金管理など、人事情報の把握と管理を行うものが挙げられます。
半期・年次サイクルの業務で言えば、採用や人事異動、昇任昇格管理、人事考課管理といった業務もあるでしょう。
また、中長期的な業務としては人員計画、戦略的な人員配置・教育などが挙げられます。
そして、この各サイクルはそれぞれに課題を持っています。
例えば日常的なルーティン業務においては、紙ベースの申請による管理の複雑化、勤怠管理・給与計算といった定型業務の工数増、法改正や制度改正の度に対応に追われることなどがあります。
半期・年次の業務では、人材情報が整理されておらず、担当者が情報を手動で集めては都度対応するといった状態が続き、評価の際の客観性公正性を維持するのが難しくなるなどの課題があるのです。
人材情報の共有・整理が進んでいなければ、当然個々の会社内だけでなくグループ会社間でも同様の問題が起き、全社的・全グループ的な人材配置の最適化も進まないでしょう。
こうした課題の解決に役立つのが、人事給与システムなのです。
従業員の出退勤時の打刻をもとに労働時間や勤怠を管理する勤怠管理システムや、勤怠データをもとに給与計算をおこなう給与計算システムがあれば、紙やExcelを使って都度集計する手間が省けます。
半期・年次の業務では、各種の届出や申請をワークフロー化し、人事情報の照会ができる人事諸届・申請システムが役立つでしょう。採用管理・人事異動・退職等の手続きも人事労務管理システムにより、一元的な管理が可能になります。人事評価の基礎となる勤怠、評価者による評価情報を蓄積する人事評価システムも評価の客観性・公正性を維持してくれます。
人事給与システムを導入するメリット
ここからは、人事給与システムを導入するメリットについてご紹介します。
具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
業務の効率化
人事給与システムを導入することで、業務効率の向上が期待できます。
人事給与業務に伴う勤怠管理や評価のための情報入力のような、細かく単純な繰り返し作業を自動化することで効率化を図れます。経営的観点からは単純作業の工数削減による人件費の圧縮が期待できます。
ヒューマンエラーの抑制
勤怠や給与計算など、細かな計算が多数必要な人事給与の業務をアナログで行っている場合では、入力や計算のミスが発生しがちです。
勤務形態などによって条件が異なる場合などは勤怠や給与計算も複雑になりミスの原因につながります。
システムを活用することで入力ミスや計算ミスを減らすことができ、また勤怠形態の違いなどにも問題なく対応ができます。こうしたヒューマンエラーの抑制はそれ自体も重要ですが、人件費の削減という効果も得られるはずです。
セキュリティ対策
人事部門は従業員の個人情報や社外秘の情報を多く扱うため、データ管理に強固なセキュリティが欠かせません。多くの人事給与システムにはさまざまなセキュリティ機能が備えられています。よくある例として、操作ログを保管して不正や事故の監視やけん制に役立てたり、ユーザーごとの操作権限を設定したりする機能などがあります。
人材育成への活用
システム化によって人材育成や評価の基礎となる情報をデータベースに蓄積できるようになります。従業員個人の能力や業績に関する蓄積されたデータが評価の裏付けとなることにより、評価される側の納得度やモチベーションの向上が期待できます。
人事給与システムの種類
人事給与システムは前述の通り、人事給与業務全体をカバーするものから、個別の業務に特化したシステムまでさまざまです。各業務におけるシステムの特徴を簡単におさらいします。
勤怠管理
業種や雇用形態にかかわらず、社員の出退勤を管理するシステムです。残業や休日出勤などのようなイレギュラーな勤務も把握できます。勤怠は労務管理や給与計算といった人事・給与の管理の基礎となる重要な情報です。専用のシステムで管理することで、働く従業員の安心感にもつながるでしょう。
労務管理
労務管理システムでは、入社の手続きや給与計算、従業員の氏名や住所、年齢などの基本情報の管理、社会保険・雇用保険の手続きを行います。人事管理や勤怠管理と同様に扱われていることもあります。
給与管理
給与管理システムは、勤怠データをもとに給与計算業務を効率化させるシステムです。
残業代・所得税・年末調整の処理など、人為的ミスが発生しやすい作業を自動化します。
人事評価
人事評価システムは、社員の評価とそれに関するデータの蓄積・管理を一元的に処理するシステムです。人材育成への活用や人材配置の適正化にも活用できます。
タレントマネジメント
タレントマネジメントシステムは、人材の計画的育成や配置の最適化に役立つものです。効果的な人材活用に役立てられるほか、採用・評価・育成などにまつわる人事データを一元的に集約・管理する機能も備えています。
タレントマネジメントについては以下の記事で詳しくご紹介しています。
採用管理
採用管理システムは自社の採用活動に対する応募者の管理を行います。応募者の募集から採用に至るプロセスを一元的に管理します。
昨今は少子高齢化やグローバル化が激化していることもあり、企業の採用活動は激しい競争にさらされていると言えます。その中でスピード感のある採用活動が求められています。優秀人材を素早く確保し、抜け漏れを防ぐという意味でも採用管理システムは欠かせないでしょう。
人事給与システムの選び方
人事給与システムの製品やサービスは多数販売されています。その中から自社に適したものを選ぶにはどのような点をチェックすれば良いでしょうか。
対応できる業務範囲
一口に人事給与システムといっても、人事給与業務のどのような領域を得意とするかは製品によって異なります。システム化したい業務の領域を明らかにするとともに、採用候補の製品でどんなことがどこまでできるのか細かくチェックしておきましょう。
各種システムとの連携
人事情報は企業にとっての基幹情報です。人事だけでなく他の周辺システムにも連携させて活用できれば、バックオフィス業務全体の効率化に効果が見込めます。現在利用しているシステムと連携が可能かどうか、CSVでのダウンロードは可能かどうかなど現周辺の連携可否もチェックしましょう。
たとえば経理システムと連携できれば、バックオフィス業務全体をシームレスかつ効率的に管理できるようになります。
クラウド型orオンプレミス型
システムの設置形態としてクラウド型なのかオンプレミス型なのかもチェックすべきポイントです。
オンプレミス型であれば、自社がハードウェアからソフトウェアまで、すべて占有のものを使えるため、運用の柔軟性やセキュリティの上で有利でしょう。買い切りになるので、何年も継続使用するのであれば、おすすめできます。ただし、導入の際の初期費用としてハードウェアやソフトウェアの購入費がかさむデメリットもあります。また、システムの構築費用や維持管理費用も必要です。維持管理のために、社内に情報システム部門を設置する必要もあるでしょう。
対してクラウド型であれば、サービス提供会社のハードウェア上で稼働するシステムを、SaaSとして従量課金制で利用することになるので、初期費用や維持管理費は不要です。また、法改正や制度改正に応じたソフトウェアのアップデートや、システムの陳腐化に際しての廃棄・更新といった維持管理コストも自社で負う必要は基本的にありません。また、多くの場合マルチデバイス対応しており、必要な情報をクラウド上に挙げておけば、どこからでもアクセスして業務を進められるため、職場のペーパレス化や働き方改革の一環としての在宅勤務の推進にも効果が見込めます。
ベンダーによるサポート体制
人事給与システムは各社ごとの独自の制度や雇用形態などを反映しなければならないため、事前に個別設定の必要があり、ベンダーのサポートが欠かせません。また、運用が始まってからも長期的に使うのであれば、税制や制度、法令の改正にあわせたアップデートが欠かせません。導入時や運用時のサポート有無、対応時間、対応方法などを事前に確認しましょう。導入後の不具合や問題が生じても、サポートを受けられれば安心です。
使いやすさ
システムやソフトは一度導入すると長期間運用し続けることになります。そうなると、操作感や使いやすさは非常に重要な要素です。無料体験や試用ができるのであれば、一度十分に試してから選定・導入するということを考えましょう。高額な費用をかけて導入しても使いにくいからといって、活用されず放置されてしまうようであれば無駄な出費になってしまいます。
人事給与管理にERPを活用するメリットとは?
人事給与を管理する専用システム・サービスを利用するほかに、ERPを活用する企業も増えています。
ERPとは「Enterprise-Resources-Planning」の略で、企業資源計画、すなわち経営資源である「ヒト、モノ、カネ、情報」の最適配分を行う計画の考え方であり、これを実現するためのシステムもことも指します
ERPは給与管理や福利厚生、従業員情報、勤怠情報などを統合して管理することができ、会計業務と連携させることも可能です。
EPRを活用することで定型性の高い業務をシステム化・効率化できるだけでなく、統合されたデータを活用することで採用や人材育成にも活用ができます。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
人事給与システムは多数存在していますが、ERPを活用することにも企業の経営資源のデータの一元管理と一体化した戦略人事の実現といったメリットがあります。システム導入や刷新を検討している方は、ぜひERPを検討してみてはいかがでしょうか。
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