先入れ先出しとは?メリットや課題点、導入のポイントを解説

 2022.06.15  株式会社システムインテグレータ

在庫管理は重要な経営課題の一つです。在庫管理が上手く機能していないと、商品の品質劣化や配送漏れ、期限超過による廃棄などの問題が生じてしまいます。特に在庫廃棄に費用が掛かるケースや倉庫代などを支払わなければならない状況に陥ってしまうと、在庫がキャッシュではなく“コスト”の発生源になってしまいます。在庫管理一つで、キャッシュフローの悪化を招いてしまう可能性もあるのです。

今回は、そんな在庫管理に関わる「先入れ」と「先出し」について解説します。 

先入れ先出しとは

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「先入れ先だし」は物流業界の用語で、在庫を管理する方法の一つです。

最初に入れたものを最初に出す(英語で「First In First Out」略して「FIFO」と呼ばれることも)ことに由来しています。つまり、その名の通り「先に入荷したものから出荷する」方式を指します。

先入れ先出しはおおよそ以下のような手順で行います。新しい在庫が入荷したら、同じ商品のある棚から同じ商品の在庫をすべて取り出し、新しく入庫した商品を奥に詰め、入荷前からあった商品を棚に戻します。この作業によって棚の前面に、より古い商品が並びます。そして前面から順に出荷することで、出荷のオペレーションを単純化・効率化できます。

先入れ先出しでは「実際の商品の流れに関係なく、先に入荷したものから出荷すること」が徹底されるのです。

この方法を採り入れることで、期限間近の商品から現金化できる利点があります。つまり、倉庫内の在庫を古いものから順に出荷していくことで、在庫内の商品が劣化したり、出荷期限を超過したりすることを防ぐことができます。在庫の商品を現金化するチャンスを逃さず、在庫の廃棄コストを発生させないことは、キャッシュフローの最適化という意味で会社経営全体にとっても当然プラスの効果があります。

ちなみに、在庫に関する基礎知識から在庫管理の役割などについてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

在庫とは?製造業における在庫管理業務の役割と重要なポイント 

先入れ先出しのメリット

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先入れ先出しにはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に解説します。 

商品の品質維持

先入れ先出しの方法論は、特に小売業・製造業などを代表に、商品劣化が問題になりやすい分野において基本的なルールとなっています。具体的には食品や医薬品、電子部品などが該当し、これらの商品はすべて商品の品質が価値と直結しているものばかりです。

特に食品のようにライフサイクルが短かったり、医薬品・電子部品のように使用期限があって高い品質管理が必要だったりする商品の場合はこの点が重要です。日付の古い商品から先に出荷していくことで品質を維持しつつ、在庫を消化していけます。

在庫管理の効率化

次に挙げられるのが、在庫管理の効率化です。先入れ先出しが徹底されれば、一定の棚に日付順に在庫商品が格納されている状態が実現します。先入れ先出しの方法自体は厳密には在庫管理とは区別される、在庫の保管場所を管理する「ロケーション管理」と呼ばれる活動に属します。しかし、先入れ先出しを徹底することで、在庫の物理的な所在や状態が容易に把握できるだけではなく、在庫データの整備が同時に進みます。そのため、在庫に関する信頼のおけるデータがあることで棚卸の際に正確な数量や入荷日が確認しやすくなるのです。

また先入れ先出し法はこうした手法を採るため、棚卸資産の評価方法は現実の在庫管理の実態に近くなります。棚卸資産の評価方法として、期末に最も近い取得原価によってすべての棚卸資産を取得したとみなす「最終仕入原価法」などがあります。先入先出法では全ての棚卸資産が現実の仕入価格によって評価されているため、取得原価に基づく評価としてより正確と言えるでしょう。

このように、在庫の全体像が正確かつ容易に把握できるようになることで、在庫の適正水準を維持するという、本来の意味での在庫管理もしやすくなります。

在庫管理のポイントについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
在庫管理とは?運用からシステム化のポイントを解説 

出荷時間の短縮

先入れ先出しが徹底されると、棚の前方ほど、古い日付の商品が常に保管されている状態になります。この状態であれば、棚の前面にあって容易にアクセスすることができる商品は常に日付が古く、先出しのオペレーションの対象であるべきものが並びます。出荷の対象が容易に把握できることで出荷オペレーションが効率化し、出荷にかかるリードタイムを短縮できます。 

先出し先入れのデメリット

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一方で先入れ先出しにはデメリットもあります。

具体的にどのようなボトルネックが生じるのか、項目ごとに確認していきましょう。

管理の煩雑化

先入れ先出しを厳密に行おうとするほど、管理すべき商品情報は増加し、業務が煩雑化します。

また、場合によってはデータ管理専任のスタッフを配置しなければならない場合もあり得るでしょう。そして当然、データ入力量が多ければ、ミスが発生するリスクも大きくなります。また、データが統合的に管理されていない状態なのであれば、入力されていたとしても、データそのものの信頼性は低下してしまいます。信頼度の低いデータは次第に管理や利用がされなくなり、結果的に現場スタッフが自己流の判断で出荷や受注をする環境ができあがってしまうのです。

この状態に陥ると在庫の状態がますます把握できなくなり、発注や出荷の精度が低下し、在庫管理の状態が悪化する負のループに陥ります。このように、管理に要する負荷が過大であるならば、誰でも簡単に扱える新たな管理方法を検討したり、在庫管理システムを導入したりするなど、何らかの対策を採る必要があるでしょう。

関連ブログ:在庫管理システムとは? 基本機能や導入メリット、おすすめシステムまで解説! 

作業工数の増加

データ管理の問題だけではなく、作業工数の増加も問題です。入荷がある度に新しい在庫を棚の奥に格納し、古い在庫を手前に詰め直す必要があるため工数の増大が避けられません。効率化のための手順や作業の工夫が必要になります。そのため、一般論としてではなく自社の個別具体的な状況に照らし合わせて、先入れ先出しによる工数の増大に見合うだけのメリットが得られるのか否か、検討が必要です。

その他にも、価格変動への対応が難しかったり、期末に近い仕入価格が影響してしまったりと、先入れ先出し法であるが故に生じてしまうデメリットはいくつかあります。しかし、そうした懸念点を差し引いても、先入れ先出し方を採用するメリットは大きいのです。 

先入れ先出しの手順

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ここからは先入れ先出しの手順の具体的な手順を解説します。

まず商品が入荷したら、商品コード・ロット・期限などが記載されたラベルを貼付します。定位置に貼り、どこを見れば良いのか迷わないようにするのがポイントです。外装箱に記載があり、読み取りに困らないのであれば省略できます。

次に在庫管理表に商品情報と入荷個数を記入します。このとき、先入れ先出しに必要な期限やロットの情報も判別できるように記載しましょう。入出庫の度に在庫管理表上の払出・受入の個数を更新すれば、どの取り口から出荷するのかが簡単に確認できます。

ここまで商品の管理情報を更新したら、商品を定位置に格納します。期限やロット単位でパレットや台車にまとめておくと、パレットや台車ごと動かすことで商品の出し入れや再配置といった、この後に続く作業の工数を圧縮できます。そして、新しく入荷した商品を奥に、入荷日付が古くて先に出荷するべき商品を棚の前面に詰め直します。このとき、同じロットや取り口が複数箇所に分散していると先入れ先出しに支障がでるので注意しましょう。出荷の際には棚の前面にある古い商品を取り口としてピッキングを進め、出荷作業を行います。在庫管理表も忘れずに更新しましょう。 

先入れ先出しで起こりうる課題点

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先入れ先出しは管理工数も作業工数も小さくない方法だけに、課題が生じるポイントも少なくありません。具体的なケースをご紹介します。 

商品状態がわからない

入荷時の管理が適切に行われないと、商品状態の判別が付かなくなる恐れがあります。

食品のように劣化が明らかなものであれば容易に判別できますが、アパレルやインテリア雑貨、部品など商品の種類によっては、時間の経過だけで劣化するわけではありません。「入荷日が分からなくなってしまった」「入荷日管理を忘れてしまった」などのミスを防止する工夫が必要です。 

ルール徹底の難しさ

ルールが徹底されず、業務が標準化されないという難しさもあります。先入れ先出しの手順や順序と関係なく、たまたま目についた期限の迫った商品から出荷してしまったり、棚卸や棚の整理のために仮置きしておいた商品が同じ商品の別日付のものと混ざってしまったりと、全ての作業者にルールを周知できていないと、どうしてもトラブルが起こってしまいます。

先出しを行うためには同商品であっても入荷日が異なれば別に仕分けなければなりません。そのため、仕分けのルールや配置場所を社内全体で一貫したものになるよう整備し、現地判断の入り込む余地のないようマニュアル化しましょう。

また、ルールに従った作業が確実に行われているか責任者や第三者によって点検する必要もあります。実情を点検できるように実施する観点から、必ず抜き打ちで行いましょう。あらかじめ点検日がわかっていると、点検のためだけに体裁を整えるようになり、実情を点検できなくなってしまいます。業務が標準化されない問題は、ルールに従わない現場も問題ですが、徹底させることができない管理側の問題として取り組むべきです。 

先入れ先出しの実践を成功させるポイントとは

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先入れ先出しはメリットが大きい一方で、実践する上では管理が煩雑になったり作業工数が増えたりといった課題やデメリットも大きい方法です。

では先入れ先出しを上手く実践していくにはどのようなポイントに注意すれば良いのでしょうか。 

商品状態が簡単に判別できるようにする

商品の状態がひと目で判別できるようにすることは先入れ先出しの上で重要です。商品コード、ロットナンバーや入荷日、使用期限、出荷期限などが記されたラベルを貼り付けると、商品の判別や期限のチェックの際に迷わずできるようになります。入荷のタイミングや商品の種類別などで、色付きのカラーラベルを使い分けるという工夫もあります。 

3Sの徹底

整理・整頓・清掃の「3S」を意識し、庫内での作業をスムーズに進められる状態を維持するのも効果的です。ここで言う整理とは「必要品と不用品を分別し、不要物を捨てること」、整頓とは「必要なものを、必要なときに誰でも取り出せる状態にすること」を、清掃とは「汚れのない清潔な状態を保ち、作業がしやすい環境を整えること」を指します。ベテランや一部の熟練者がいないと作業が成り立たないような、属人化した状態を作らないことが大切です。

商品に応じたルールの設定

先入れ先出しの基礎的な概念は抑えつつ、事業や扱う商品、作業といった企業や事業所の事情に応じてルールを設定することも大切です。先入れ先出しを実践するとしても、ある程度大まかで良いのであれば、現場主導で作業をしやすい形でルールを設定する方が良いでしょう。

逆に厳密な先入れ先出しが必要で、ロットから賞味期限まで緻密な管理が必要な商品を扱うのであれば、現場が迷わずに作業できるように、現場からのフィードバックも受けつつ事務側主導で明文化されたマニュアルとして作業手順が指示されている状態を作る必要があります。

適正な在庫量を保つ

倉庫内の在庫量を適正水準に維持することも必要です。在庫量が適正在庫の水準から多すぎると、出荷されずに滞留する在庫が発生し、品質の劣化や期限の超過によって廃棄せざるを得なくなる商品が増えます。保管スペースが増えればコストが発生しますし、スペースがひっ迫すれば倉庫内のオペレーションの効率が落ちます。滞留在庫になれば値引き販売も増加するでしょう。先入れ先出しを行うために管理するデータや作業工数も増大します。

逆に少なすぎる在庫も問題で、出荷したいときに出荷できずに、欠品になって販売の機会を逃す機会損失を生みます。適正在庫量を維持し、倉庫内の在庫を増やし過ぎず減らし過ぎず、適正な水準に維持して効率的に運用することが大事です。 

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まとめ

今回は在庫管理手法の一つである、先入れ先出しについてご紹介してきました。

先入れ先出しを実施することで商品の品質維持や出荷作業の効率化といったメリットがあります。この方法を徹底することで、在庫管理を適切に行う上でも有用なうえ、在庫データの整備にも役立つでしょう。

一方で、先出し先入れを実現するうえでは、すべての現場作業者へルールを周知することが欠かせません。実現に至るまでの、現場業務の抜き打ち点検を含め、根気強く啓蒙していくことが大切です。また、先入れ先出しを徹底するには在庫管理システムや、ERPの導入も役立ちます。

ERPでどのように在庫管理ができるのか、機能について詳しくご紹介した資料がありますので、ぜひご覧ください。


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