製造業で特に課題となるのが、「在庫管理」です。在庫管理を徹底して、必要とされている製品をいつでも過不足なく供給できることはモノづくりにおいて欠かせない要素です。
では、製造業で最適な在庫管理を行うためには、どういった工夫が必要でしょうか。そこで、この記事では製造業における在庫管理方法や代表的な課題の解決方法まで分かりやすく解説します。
また、効率的な在庫管理業務の遂行には欠かせない人気のシステムについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
在庫管理とは?
そもそも、在庫管理とはどういった業務でしょうか。在庫管理とは企業内にある商品や資材などをタイムリーに求められている分だけ供給できるように、在庫量を確保することです。それでは、製造業と非製造業にける在庫管理についてそれぞれ考えてみましょう。
製造業における在庫管理
製造業における在庫管理では、製造過程において在庫の状態が変化する特徴があり、工程が進むに従って在庫の種類が三段階に変化します。詳しくは後述しますが、部品と原材料・仕掛品・完成品と分類でき、各段階の特徴に対応した在庫管理が必要です。各製造工程の状況を見極めて、必要としている在庫量を適切に管理しなくてはなりません。
仮に、完成品が不足していたとしたら部品や原材料まで遡って考える必要があるため、各ステップでの在庫問題は全体の進行に影響します。
日本の製造業は世界からも品質が評価され、これまでさまざまな商品を誕生させてきました。そうした優れた生産体制において、在庫管理は欠かせない業務です。
非製造業における在庫管理
一方、小売業や流通業などの非製造業における在庫管理の対象は商品を指します。店頭で販売されている商品も在庫に含まれるので、イメージしやすいのではないでしょうか。また、並んでいる商品だけでは欠品の恐れもあるため、バックヤードなどにも在庫が確保されています。製造業は製造過程によって在庫の過程が変化しましたが、非製造業では完成された商品が在庫として扱われるため、ここが両者の在庫の考えで異なる点です。
製造業で管理する在庫の種類
続いて、製造業で管理する在庫の種類についてお伝えします。
部品・原材料
部品や原材料とは、素材として製品を作るのに用いられる在庫です。
ねじやナットなどすぐに使用できるものは部品、鉄材や樹脂材などの加工が必要なものは原材料と区別されます。また、部品や原材料の発注から納品までの期間をリードタイムと呼びます。材料によってはリードタイムが長いものもありますので、全体の生産計画を考慮して必要な量を適切な時期に調達しなければなりません。
仕掛品
製造途中の状態にあり、まだ販売できない状態の在庫を仕掛品と呼びます。
原材料や部品などを加工中だったり、組み立て途中だったり、最終的な製品を生産する過程で作られる状態の在庫を指します。
また、仕掛品とよく似ている「半製品」という言葉もあります。半製品は中間的製品のことで、そのままでも販売できることが特徴です。製造途中である仕掛品とは在庫の状態が異なるので、混同しないようにしましょう。
完成品
完成品とは、販売が可能な状態の在庫です。
完成品の在庫は、自社の倉庫や小売店に並んだり配送されたりします。完成品はお客様からの購入に直結するため、機会損失を生まないよう在庫量を保つ必要があります。
ただし、売れ残った製品は劣化して価値を失ってしまう場合もあるため、必要以上の在庫量には注意しましょう。
製造業の在庫管理方法
続いて、製造業の在庫管理を適切に行うためのプロセスについて考えていきましょう。
適正在庫数の設定
まずは、過去数年間の製品出荷量の情報などから、適正な在庫数を設定します。適正な在庫数とは、品切れを起こさない最小限の商品の確保数です。在庫数は少な過ぎると欠品を起こして販売機会を失うリスクがあり、多過ぎると倉庫で保管するための維持費が増えてしまいます。
多過ぎず少な過ぎない、お客様に迷惑をかけない適正な在庫数を確保しなければなりません。
適正在庫数の考え方
基本的な考え方としては、注文を受注してから納期までの期間と生産リードタイムから、適正な在庫量を算出しましょう。
例えば、生産に時間が必要で納期の短い商品は、ある程度は需要予測や販売計画に基づいた見込み生産をしても仕方ありません。
一方、受注から納期まで現在の生産リードタイムで間に合う商品は、受注生産が推奨されます。今までの受注履歴なども参考にしながら、適正在庫数を決定していきましょう。
また、季節性のニーズがある商品や一時的な需要の増加がある場合は、在庫数に加味して適正な在庫数を設定しましょう。
在庫の見える化
在庫の状態をすぐに把握できるように見える化を行いましょう。見える化できていない在庫は、どこに何が置いてあるか分からず、在庫数も正しく把握できません。
在庫の見える化を行えば、過剰在庫や在庫不足を予防できるだけでなく、在庫管理業務の効率化も実現できます。さらに、在庫の保管スペースも有効活用が可能となるため、在庫を見える化するメリットは軽視できません。
在庫管理の仕組みを整える
適正に在庫管理を行うための仕組みとしては、まずは在庫を整理できる体制が必要です。現物が散らかっている状態では在庫の把握もスムーズに行えません。在庫を陳列するルールを定めて、綺麗に整頓することを目指しましょう。
次に、在庫管理表を作成したりシステムを導入したりして在庫の情報を見える化します。専用のシステムについては後述しますので、参考にしてみてください。
アナログな手法による在庫管理には限界があるため、システム導入を検討する企業が一般的です。そして、社内の関連するチームで在庫情報をタイムリーに共有できれば、適正な在庫管理を行うための仕組みが整います。
製造業における在庫管理の課題
それでは、製造業における在庫管理で問題になることは何でしょうか。代表的な3つの課題についてそれぞれ解説します。
販売ロスの発生
製造業の在庫管理では、部品を調達してから販売可能な商品が完成するまでのリードタイムのコントロールが重要です。リードタイムをなるべく短くできると、お客様の需要にタイムリーに応えられるので、ビジネスチャンスを活かせます。
一方、リードタイムが長期化してしまうと、販売ロスが発生してしまいかねません。また、部品や原材料などの管理が不十分だと、リードタイムの長期化を招きます。製造過程の各工程とお客様からの注文状況を考慮して、無駄のない在庫管理を行いましょう。
キャッシュフローの悪化
在庫管理を適正に行えておらず過剰な在庫を抱えてしまうと、企業の自由に使える資金は減ってしまいます。また、キャッシュフローが減少するため、企業の資金繰りを圧迫してしまう恐れもあります。
在庫ではなく現金として資産を保有していれば流動性も高く、投資などへの活用のチャンスも生まれるはずです。しかし、在庫として資産を抱えてしまうと、商品として売却されることを待つしかなく、市場のニーズとマッチしない場合は資金化できない可能性もあります。ある程度の在庫の確保は必要ですが、適切な量の見極めが大切です。
ピッキングミスの発生
ピッキングとは、倉庫などで必要な商品を集める作業です。正しく商品を出荷するためにピッキングは欠かせません。
しかし、商品の種類や量が多いと、正確なピッキング作業を行うためのハードルが高くなります。似たような外見や名前の製品があると、ピッキングでミスが多発する恐れがあります。ピッキングのミス発生を抑制するためには、作業のルールを明確にして保管方法も最適化しましょう。
また、ピッキングリストと棚番を見やすいように調整することも大切です。
製造業でよくある失敗事例
ご紹介した通り、製造業には部品や原材料、仕掛品、半製品といった、完成品ではない在庫も多くあります。それぞれの在庫に適した方法だけでなく、自社の運用を鑑みた管理が必要ですが、新たな管理方法や効率化を検討し、失敗してしまった事例も多くあります。ここではどのような失敗事例があるのかご紹介します。
物流改善による生産ラインの業務効率低下
ある工場では、工場内の倉庫から生産ライン(生産現場)への荷物の搬送に関する工数を削減するため、生産ラインへ搬送する荷物の量を増やしました。
結果として搬送作業は減り、物流担当の人材削減は実現できました。
しかし、その結果大量の荷物が生産ラインに置かれるようになり、生産現場にはいままでになるモノにあふれた状態となりました。
必要な荷物を探したり、現場が手狭になったことで移動に時間がかかったりと、生産現場における作業効率が低下する結果となりました。
リアルタイムの在庫数確認に課題が
ある企業は、販売や仕入れの管理がアナログ管理だったため、在庫管理もできるようにシステムを導入しました。
販売管理や仕入れ管理はシステム化に成功しましたが、在庫については思っていたような管理を実現できませんでした。仕入れと売上のデータを入力すれば事実上、現時点の在庫数の確認ができるはずでしたが、この企業では時間があるときにデータを一括で入力していたのです。
仕入れと売り上げのデータが反映されるまでにタイムラグが発生するため、データ上の在庫数と実際の在庫数が合わない結果となってしまいました。
製造業界の今後のあるべき姿
これまで、日本はその高い技術力によって世界の製造業をリードする立場にありました。しかし、従来のやり方の頼り続けた結果、生産性を向上させるための管理業務など、IT技術やシステムの導入に後れを取っています。このままではグローバル市場と戦っていくことはできないでしょう。
人のスキルや経験に依存した状態から脱却し、現場だけでなく計画段階での業務効率化にも取り組んでいく必要があります。
①業務が可視化された状態
日本の製造業は品質を上げるための取り組みを随時行ってきました。そのため実際の製造工程における工程はしっかり可視化された状態といえます。
逆に、可視化されているのはその一部のみで、業務全体の可視化という点では課題が残っています。どこで誰が・いつ・どのような業務を行っており、その業務がどの業務と関連があるのかなど、生産現場に限らず、業務全体の工程を可視化する必要があります。
②フレームワーク化された業務設計
業務プロセス全体を可視化することで、どのプロセスに問題があるのか、不要な業務が行われていないか、どこがボトルネックになっているのかという課題の発見がしやすくなります。可視化された業務プロセスをもとに、業務を標準化することで全体のプロセス改善が可能になります。
自社工場であればこの業務プロセスを全体に適用しておくことで何か問題があった際の早期発見や、改善を行った際の全体への適用も容易になります。
③オペレーションとマネジメントが識別されている
マネジメントとは組織の目標を達成するために、目標の設定やそれに合わせた計画を定める業務のことです。一方オペレーションは、決められた目標を達成するために日々業務を実行し、達成のための管理や改善を行うことです。
このマネジメントとオペレーションを混同してしまう場合がありますが、これらの業務をそれぞれ区別して標準化を図るのが良いでしょう。
在庫管理で起こり得る課題の解決方法
製造業では、在庫管理に関連してさまざまな課題が発生するとお伝えしました。こうした課題を解決するためには、どういった方法が考えられるでしょうか。主な解決方法3つについて解説します。
工程信頼性を数値化し、実力を客観的に把握する
在庫管理マニュアルの作成
課題の解決策として有効なのが在庫管理マニュアルの作成です。在庫管理業務のフローやルールを改めてまとめることで、現場の課題も明確になります。特に、企業の規模が拡大すると在庫管理の手順が曖昧になっていたり、ルールの認識にズレが生じていたり、さまざまな問題が発生しているケースも珍しくありません。そうした際に在庫管理マニュアルがあれば、在庫管理のあるべき姿を確認できます。
また、明文化することで在庫管理の考え方も整理でき、複雑な業務フローを見直すきっかけにもなるでしょう。担当者の意見もヒアリングしながら、在庫管理マニュアルをチームで作成してみてください。
全てのプロセスを考える
在庫管理だけでなく、生産管理や販売管理など、事業全体のプロセスも一緒に考えましょう。製造業では小売業や流通業と異なり、生産・加工・販売というプロセスの中に在庫管理が含まれます。在庫管理だけを万全に行えたとしても、ほかのプロセスに問題が生じれば在庫管理も影響を受けます。例えば、需要予測や販売計画が立てられていないなど、生産管理が不十分だと需要をはるかに上回る製品を製造してしまい、結果として在庫を過剰に抱えることになるという事態にも発展しかねません。
また、販売管理が適切に行われていなければ、販売データをもとにした売上予測の精度にもブレが生じるため在庫が不足するケースも発生します。在庫管理だけでなく関連するすべてのプロセスを網羅的に管理するようにしましょう。
在庫管理システムを導入する
在庫管理を行うにあたってエクセルを使う方法もありますが、在庫管理システムを活用するとより効果的です。エクセルはあくまでも表計算ソフトであるため、機能も在庫管理だけには特化していません。
一方、在庫管理システムは在庫管理に特化して作られたシステムで、在庫情報や入出庫情報などを入力して正確な在庫を管理できます。エクセルのように機能不足や重い動作で悩む必要もありません。在庫管理システム導入のメリットは多くありますが、第一に作業を効率化できることが挙げられます。エクセルなどによる在庫管理はアナログな要素が含まれますが、在庫管理システムではハンディーターミナルなどと連携させれば情報入力の自動化が可能です。
また、人的エラーも防止できるので、スピーディで正確な作業を行えます。ほかにも、過剰在庫や欠品を防止できたり、在庫状況をリアルタイムに可視化できたりするため、多くの企業が在庫管理システムを活用しています。
在庫管理システムについてはこちらでも詳しく解説しています。
在庫管理システムとは?基本機能や導入メリット、おすすめシステムまで解説!
関連情報をまとめて管理!ERP
在庫の管理に特化した在庫管理システムの導入はもちろん効果的ですが、在庫管理だけでなく発注や販売など、すべてのプロセスにしっかり目を向けることも重要だと前章でご説明しました。
その場合、販売管理や生産管理などすべてのプロセスをまとめて管理できるERPの導入がおすすめです。ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略で、日本語では統合基幹業務システムを指します。
ERPは、会計・人事・生産・物流・販売などの企業の基幹となる業務を統合し、効率化と情報の一元化を図るためのシステムとして誕生しました。製造業で在庫管理は大切ですが、それ以外の関連する重要な情報も少なくありません。事業のすべての情報を網羅して一元的に管理するにはERPが最適です。
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GRANDITはコンソーシアム企業の叡智から生まれた、常に進化するERPです。
GRANDITには多彩な業務ノウハウが集約されており、在庫管理・ワークフロー・EC・BIなどの優れた基本機能で業務の情報化と最適化を実現します。
そして、あらゆる企業規模や業務特性に適応してフレキシブルな形態を選択でき、導入で手間取る心配もありません。完全WEB-ERPで操作性と運用性にも優れており、多くの企業様に導入いただいています。
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多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
日本の製造業において在庫管理は重要な業務です。適切な在庫水準を維持することは、お客様のニーズに的確に応えるためには欠かせません。最適な在庫管理が行われていないと、販売ロスやピッキングミスが発生したり、キャッシュフローが悪化したり、さまざまな不具合が生じてしまいます。
そうした問題を予防するためには、在庫管理だけでなく生産管理や販売管理など、すべてのプロセスを見直すようにしましょう。そして、中でもおすすめなのが在庫管理に適したシステムの導入です。システムを導入すれば業務の効率化を実現させるだけでなくヒューマンエラーなども防止できます。
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