仕入れ・在庫管理業務をエクセルで管理したい方や、仕入れ管理の流れなどについて把握しておきたいという企業担当者の方も多いことと思います。本記事では、便利なエクセルの機能や関数、無料で利用できるテンプレートを紹介しながら、仕入れ管理時のポイントについても解説していきます。
仕入れ管理とは?
仕入れ管理とは、会社で販売する商品、部品、加工品に使う原材料などを管理することです。小売業や製造業では、製品を仕入れてから必要に応じて加工などを行い、販売につなげます。仕入れから販売までを正しく管理できていると、事業運営の効率が向上し利益につながるため、仕入れ管理は経営上とても重要な業務のひとつです。
仕入れ量が不足していると、販売機会を失ったり製造工程を止めたりする原因になるため、利益管理にも大きく影響します。しかし仕入れ不足を避けるため大量に仕入れを行っていると、売れ残りとなり、大量の不良在庫を抱えるリスクが大きくなります。また、適切な仕入れ管理ができていれば顧客ニーズや需要の高い商品の把握にも役立ち、適正な仕入れをするといった発注戦略をとれます。
仕入れた製品の管理が徹底されていると確実な在庫の増減管理が可能になり、在庫の不足が発生してしまった場合でもすぐに気付くことができます。
仕入れ管理の流れ
仕入れ管理業務は主に「見積依頼、契約・発注、入庫・検収、記帳、支払い」の流れで行います。届いた物品に対する業務や契約・支払いに関する業務など、物品と代金が関係するため、各様式の書類を用いて都度確認が必要です。このため、業務量が多くなればなるほど、膨大な書類のやりとりが発生します。適切に書類を作成・管理できていれば、仕入れ管理業務の効率化につながります。
では、仕入れ管理業務の流れについて詳しく説明します。
1.見積依頼
発注前に品物の数や納期などを記載した見積書の作成を依頼します。一般的には、すでに取引のある会社へ前回までと同様の発注をする場合には見積書は必要ありません。初めて取引をする相手や価格などが変動する物品を仕入れる場合に見積書の発行依頼が必要です。
2.契約・発注
取引を行う場合には、契約期間、請求書の締め日、支払い日、支払い方法、解約条件などの条件を決めて取引相手と契約を結びます。そして、仕入れ先に注文書を発行して依頼すると発注が完了します。
3.入荷・検収
発注した物品が届いたら、納品書と納品された物品に、内容や数量の誤りがないかをチェックします。このあとさらに入荷したものに不良品がないか確認し、数量の過不足がないかも再度厳密に確認します。この確認作業を検収といいます。
4.記帳
仕入れた物品を検収・受領したあとは、入荷後の納品書を経理担当者に連絡します。仕入れ額は買掛金として台帳に、仕入れた物品は商品有高帳に記帳して、残高をそれぞれ管理します。
5.支払い
仕入れた物品の代金は、契約上の締め日にまとめて経理担当者が支払い業務を行います。発注ごとに支払うケースや毎月分をまとめて支払うケースなど、取引先によって適した方法で支払う必要があります。
仕入れ管理というと、記帳の工程をイメージされることが多いのですが、このような流れすべてを含めた業務が仕入れ管理です。
エクセルを活用した仕入れ管理の方法
仕入れ管理業務は多岐に渡るため、複数の部署でさまざまな業務が行われるのが一般的です。そのため、業務をスムーズに行うには管理方法を明確にし、システム化することがおすすめです。決まった仕組みを利用することで、仕入れ管理のプロセスで確認した情報をデータ化し、分析・管理できるので発注や在庫のバランスなどの管理が容易になります。
仕入れ管理をシステム化して管理するには、専用のソフトウェアを導入するという方法もありますが、すでにインストールされているエクセルを活用してシステム化することも可能です。そこで、エクセルで行う仕入れ管理方法について説明します。
最初に仕様を固める
仕組み化する際には、最初に必要な業務を確認して仕様を固めることが大切です。仕入れ管理システムは在庫管理だけでなく、発注業務や入庫業務、買掛金の管理などの業務にも活用できると便利です。一度システムの仕様を決めると運用後の変更は難しいので、よく検討してから仕様を決定します。
また、「5つの適正」を押さえることも意識しましょう。5つの適正とは、企業が商品を作る前段階から販売につなげるまでの商品政策であるマーチャンダイジングにおいて、ベースとなる要素です。具体的には、ニーズのある「適正な商品」、売れやすい場所に陳列する「適正な場所」、売れる季節や時期に合わせる「適正な時期」、地域や時期などから販売数量に基づいて決定する「適正な数量」、消費者が購入しやすい「適正な価格」のことです。
5つの適正を把握・分析できるシステムがあれば最適なマーチャンダイジングが可能となり、売り上げ向上にも役立てられます。ただしすべての適正を完全に把握することは難しいため、ある程度重要な適正を絞った形で仕様を決定しましょう。
テンプレートを活用する
エクセルで仕入れ管理・在庫管理のシステムをゼロから作り上げるのは、時間や労力がかかります。そこで、インターネット上で配布されているエクセルの在庫管理用テンプレートを利用しましょう。テンプレートを使用すると、比較的簡単にシステムを作成できます。
インターネット上のテンプレートは一般的な仕様で作られています。自社で使いやすくするためにはそのまま使用するのではなく、必要な機能を取り入れてカスタマイズすることがポイントです。おすすめのテンプレートについては後述します。
活用したいエクセルの機能と関数
業務を効率化させるため、入力内容から必要な数値が自動計算される関数を有効活用しましょう。テンプレートには、あらかじめ関数が入力されているものもあるので、それを見て覚えるのもおすすめです。ここではよく使われる関数をいくつかご紹介します。
合計値の自動計算(オートSUM)
複数行(列)の数値の合計を自動計算して求めるのが「オートSUM」機能です。数値が入力された複数行(列)のすぐ下(右)のセルを選択し、「ホーム」タブの右にある「Σ」をクリックすると選択したセルに合計が表示されます。(「数式」タブからオートSUMを設定する方法もあります。)
SUMIF関数
SUMIF関数は、条件に該当するセルだけを抽出して合計値を出す関数です。「SUMIF(範囲, 検索条件, [合計範囲])」の数式を使用すると、「範囲」内から検索条件に該当したセルだけが抽出され、抽出されたセルの「合計範囲」部分の合計値が表示されます。例えば「りんご」を検索条件にした場合、「範囲」内の「りんご」と記載されたセルだけが抽出されてさらに「りんごの個数」の合計値が表示されます。
VLOOKUP関数
表を縦方向に検索し、条件に該当する必要なデータだけを抽出する関数がVLOOKUP関数です。数式は「VLOOKUP(検索値,検索場所のセル範囲,検索値を含む範囲内で表示する列の番号,近似値または完全一致どちらかの表示条件)」を使用します。数式には、「検索値」、「検索場所」、検索値列から右に「何番目の列」か、表示する値のルール「近似値(TRUE)または完全一致 (FALSE)」どちらか、の4つの情報が必要です。
物品のコードを指定して、それぞれの物品の「名称」や「個数」などのデータを抽出したりするときなどに利用できます。
おすすめのエクセル仕入れ・在庫管理テンプレート5選
エクセルで仕入れ・在庫管理が行えるテンプレートは、Microsoftやビズオーシャン、Feedsoftなどさまざまな会社が提供しています。企業での仕入れ管理システム作成に役立つテンプレートを5つ紹介します。
書式の王様
(株)ビズオーシャンが運営している、日本最大級の無料ビジネステンプレートサイトです。商品の現在残高を自動計算するシンプルな書式や、商品の増減を入力すると商品別に残高を集計できる書式、商品の在庫、金額、回転率が作成できる書式など、さまざまな書式から希望に合うものをダウンロードできます。在庫管理表の書式は約70件あり、その多くが無料で利用できます。小売店から飲食店、製造業など幅広い業種の利用に適したものが見つかります。
参考:https://www.bizocean.jp/doc/category/127/
Feedsoft
エクセルやワードのさまざまな無料テンプレートがダウンロードできるサイトです。商品管理表は、「単価一覧表」「在庫一覧表」「実績表」「商品仕入れ一覧表」の4種類が利用できます。計算式などが入らないシンプルなテンプレートなので、関数や計算式を入れるなどカスタマイズしやすいのが特徴です。自由にカスタマイズしたい方におすすめです。
参考:https://www.feedsoft.net/template/tplate/excel_sheet.html)
フィデリ
完全無料のビジネス文書を集めたサイトです。「商品管理表」だけでなく「商品別営業管理台帳1」「商品提案書(卸販売用)」「商品管理台帳1(プロジェクト管理)」など仕入れ管理に関するさまざまなテンプレートが多数準備されています。いろいろな書式を比較して業務に適したものを見つけたい場合に向いています。
参考:http://format.fideli.com/format/r_id_fme_fmu_303_domain_format_.html
経費削減実行委員会
企業のコスト削減、業務の効率アップをサポートする各種サービスが利用できるサイトです。無料で使えるエクセルのビジネステンプレートには、「商品別在庫管理表」「棚卸明細表」などの在庫管理に関する4種類の表や、「取引先別仕入れ管理表」「原価管理」「料理別注文管理表」など、仕入れから売り上げまでさまざまな管理ができる表を提供しています。使いやすく見やすいシンプルなデザインで幅広い業種に対応しています。
参考:https://econavi.owners.ne.jp/template/tag/%E5%9C%A8%E5%BA%AB%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%A1%A8/
アプリマーケット集い
会計事務所顧問先向けの業務用アプリ提供サイトです。クラウド上でどこからでもアクセスできる「給与明細」「グループウェア」などのサービスを提供しています。エクセル在庫管理表テンプレートは5件ほどあり、シンプルなテンプレートや、在庫数の自動計算や在庫の少ない商品のセルを色付けする機能つきのテンプレートなどがあります。色付けする機能があるとひと目で簡単にチェックできるため、楽に管理したい場合におすすめです。
参考:https://www.essamcloud.net/template/zaiko.php
エクセルで仕入れ・在庫管理を行うポイント
エクセルで効率的に仕入れ管理を行う際には、管理の余計な手間やヒューマンエラー、属人化などを防ぐためのポイントがあります。それぞれについて、詳しく解説します。
仕事を増やさない
仕入れ管理業務は、さまざまな日常業務と並行して行わなければなりません。仕入れた商品のデータ入力や計算、在庫管理などに手間がかかるシステムでは管理業務に時間がかかってしまい、ほかの業務に支障が出てしまう場合があるので注意が必要です。入力しやすく、ある程度テンプレートで自動計算できたり、一箇所に入力したデータがほかのシートにも反映されたりするなど、何度も入力する手間を削減できる書式がおすすめです。
ヒューマンエラーを排除する
エクセルには手入力をしなければならないので、仕入れデータの入力時にミスが生じる場合があります。または、入力内容に誤りはなくとも、文字の表記揺れにより集計データに反映されないという可能性があります。入力漏れも起きやすいので、正確なデータを管理するためにはチェックを行ったり、入力エラー機能をつけたりするなどの対策が必要です。
属人化させない
仕入れ管理業務は、担当者に限らず誰でも処理できる状態が望ましいといえます。エクセルのテンプレートを使用している場合、カスタマイズされて複雑になるほど入力・管理ができない人が増えるといった問題が生じる可能性があります。エクセルに詳しい人だけでなく、誰が使っても簡単にできるシステムでないと、入力者によってデータが異なるなどの問題が生じるかもしれません。
作成したデータは活用する
仕入れ管理表に入力し作成したデータは、在庫管理はもちろん、過去の実績から発注金額を設定したり、仕入れ先の評価を参考にしたりするなど、今後の仕入れにも有効に活用できます。仕入れデータを共有できる状態にしておくと、担当者間の情報も偏らずさまざまな業務への活用が可能です。仕入れデータの活用方法を見直すことで、経営の改善にもつなげられます。
ERPで合理的な仕入れ管理を実現
エクセルによる仕入れ管理は、コストがかからないといった点から導入しやすいですが、上記のような課題があることには注意する必要があります。入力から閲覧、管理までをそれぞれの担当者が個々に行うのではなく、ERPの導入などで一元的に管理できると業務効率が格段にアップします。
ERPとは、会計管理、販売管理、在庫購買管理、生産管理、人事給与管理といった企業の基幹業務を統合して情報の一元化を図るためのシステムです。部門ごとに行われていた業務を総合的に管理できるため、業務効率がアップします。
ERPパッケージのなかでも、GRANDITは純国産のシステムなので日本企業の仕組みに適していて利用しやすいというメリットがあります。使いやすいERPを取り入れることで、仕入れ管理業務の効率化や利益の向上に役立てられるでしょう。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
まとめ
エクセルの仕入れ管理表は、インターネット上のテンプレートを利用したり、カスタマイズしたりして活用可能です。ただし、簡易的なシステムには適していますが、他部署との連携や複雑な処理は難しい場合もあります。また、属人化やヒューマンエラーが発生しやすいといった課題もあります。業務を一元化できるERPを取り入れると、複雑な処理にも対応できるだけでなく、社員全員が精度の高いシステムを共有できるため、仕入れ管理業務の効率化に役立てられるでしょう。
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