小売業、卸売業やアパレル業、製造業など、「モノ」を扱う企業に必ず発生するものが「在庫管理」です。在庫管理は、取り扱っているモノ(商品や部品)を在庫として、その情報と現物を適切に管理することが目的です。
企業経営において在庫管理は非常に重要な要素です。在庫管理が徹底して行われずに損益計算書上では黒字にもかかわらず、不適切な在庫が原因で倒産に至るケースもあります。今回は、そんな在庫管理について詳しく解説していきます。
在庫管理とは
「在庫管理」とは、「必要な商品・資材・量を、必要な時に・必要な分だけ」供給できるように、在庫水準を維持するための活動のことです。
業務内容としては、現品管理や棚卸をして実際にある在庫の確認を行います。また、在庫情報を把握して廃棄が出ないように管理します。
ちなみに、「在庫」とは単に製造前の部品や、販売前の製品や商品を指す言葉ではありません。言い換えるならば、在庫とは「現金化を待っているモノ」です。たとえば小売業においてある商品を仕入れた場合、それは在庫となり管理されますが、同時に現金化を待っていることにもなります。企業は在庫を販売することで利益を得るので、いかに効率良く在庫を現金化するかが大切です。
在庫管理とロケーション管理の違い
在庫管理は在庫水準を維持するための活動全般を指しますが、「どの在庫が、どの倉庫の、どの棚の、何段目にある」といった、在庫の保管場所を管理することが在庫管理のことだとよく誤解されます。
こういった在庫の場所の管理は「ロケーション管理」と呼ばれます。ロケーション管理は単にどこにおいてあるかを把握するためだけでなく、庫内オペレーションを最適化するためにも行われます。
たとえば、同梱する頻度が高い商品が遠くに置かれていると作業効率は著しく落ちてしまいます。こうした作業効率の観点でも置き場所を管理するのがロケーション管理です。
在庫管理の目的
在庫管理の最大の目的は、適正在庫を保つことです。在庫は保有しすぎると不良在庫としてムダなコストが発生してしまい、逆に在庫が不足してしまうと顧客からの注文に応えられず、販売機会損失を起こす可能性があります。そのため、在庫が過不足なく最小限であるように適正在庫を保つことが大切です。
では、適正在庫数を維持するためにはどうすればよいのでしょうか。
適正在庫を保つ
適正在庫を保つためには、「発注方式」「需要予測」「調達・製造リードタイム」を把握することが重要です。
発注方法
発注方式には大きく分けて2つの方式があります。以下の方法を適切に使い分ける必要があります。
定期発注点方式
「毎週1回」「月に1回」など、決められた発注間隔で必要な発注数量を計算して発注する方式です。発注するたびに数量を変更できるので、需要をしっかりと予測したい重要商品に対して用いられる方式です。
定量発注点方式
ある一定の数量より在庫が少なくなったタイミングで必要数量を発注する方式です。発注時期は在庫状況により左右されますが、発注量は毎回同じになるのが特徴です。在庫状況をすぐに確認できる体制が必要になります。
需要予測
過去の販売実績や顧客の動向、最新のトレンドなどを細かく分析し、需要予測の精度を上げることが重要です。需要予測の精度を高めることで、「何が」「いつ」「どれくらい」必要になるのか予測を立てられ、欠品や過剰在庫を最小限に抑えることができます。
リードタイム
調達・製造リードタイムを短くすることも重要です。リードタイムが長いと、その分顧客を待たせることになるため、欠品が起こらないようできるだけ多くの在庫を持たなければなりません。リードタイムを短くすることで不要な在庫を削減できるので、過剰在庫の発生を防ぐことにつながります。
在庫管理の重要性とメリット
ここまで在庫管理の目的についてご説明しましたが、ここからは在庫管理を行うことの重要性やメリットについてご説明します。
在庫管理がなぜ重要なのか
まず、企業において在庫管理がいかに重要なのかをご説明します。
顧客のニーズに対して在庫が不足すると販売機会の喪失、つまり売上が減ってしまいます。また、製造前の原材料や部品が欠品すると生産工程に進むことができず、製造がいったん停止の状態に追い込まれます。それとは逆に、在庫が過剰になると保管コストが発生したり、倉庫のスペースを圧迫したりします。この過剰在庫の売れ残りを避けるために価格を下げて乱売を行ったりすれば、利益を圧迫することになります。また、前述したように在庫は会社の資金で購入しているため資金回収できるまでの間、資金繰りを悪化させることにもなります。
このように在庫管理が不十分な場合には販売機会喪失による売上の減少、利益の低減、資金繰りの悪化を招くことになるのです。
在庫管理ができていない場合、このようなリスクが高くなりますが、逆に在庫管理を行うことで多くのメリットを受けることができます。
在庫管理を適切に行った場合に得られるメリット
在庫管理を行うことで以下のようなメリットを得られます。
生産性向上
顧客から受注しても在庫がなくすぐに提供できなかった場合、せっかくの販売機会を損失してしまい、売上を逃してしまうことになります。在庫管理を行うことで需要にすぐに対応できる在庫を維持し、即座に提供できるように管理することで、企業の生産性向上につながります。
コスト削減
在庫の管理ができておらず在庫を過剰に抱えすぎると、無駄なコストがかかります。たとえば、倉庫を管理するための人件費や光熱費がかかるだけでなく、余らせてしまった在庫の廃棄処分にも費用がかかってしまいます。適正在庫を常に把握して、不要な在庫を削減していくことで、不要なコストを削減することができ、結果的に利益を上げることにつながります。
余剰在庫の減少
適切在庫を保つことで、余剰在庫の減少につながります。余剰在庫を減らすことで、倉庫のスペースにある程度の余裕を持たせることができるため、急な在庫変動があったときにもすぐに対応できます。また、無駄なスペースもなくなるため、管理費や光熱費など余計な経費の削減にもつながります。
品質の安定
在庫は時間が経つにつれて劣化していきます。丁寧に管理していても、季節の変化による湿気や乾燥などから影響を受けて経年劣化していきます。場合によっては製品としての価値が下がったり、販売できず破棄したりしなければなりません。在庫管理で在庫を適正数に保つことで、こうした劣化による利益の損失を防ぐことにつながります。
在庫管理はなぜ難しいのか?
在庫管理は、文章で説明するほど簡単なものではありません。実際に多くの企業が、在庫管理に頭を悩ませ、現状課題をどうにかしたいと考えています。ここでは、在庫管理が難しい理由について紹介します。
1.在庫管理ルールが曖昧で、適切な管理ができていない
在庫管理が適切にできていない場合、そもそもルール自体が曖昧になっている可能性があります。一応組織としての在庫管理ルールはあるものの、それが徹底されない状況です。こうした原因を聞くと、真っ先に現場従業員へ矛先が向きます。しかし、実は在庫管理ルールを徹底できていない企業側の責任の方が大きいのです。
2.データの二重入力により、データと現物が合わない
生産管理において、調達管理や在庫管理など重複するデータを管理する場合、データの二重入力による人的ミスが発生します。調達管理上では正しくても、在庫管理上ではデータがずれていたりすると、在庫データは信頼を失っていきます。その結果、営業が在庫データを信用せず自分の足で在庫確認を行うため、在庫管理ルールが一層守られなくなります。
3.作業ミスによってズレが発生する
在庫管理の現場では、管理しているのはあくまで「人」なのですからミスは起こります。しかし、小さなミスも積み重なると大きな問題になり、頭を悩ませます。このため、極力ミスを減らすための環境は大切です。
4.個人の自己判断でデータがズレてしまう
たとえば営業が、「今月の売上ノルマは達成しているから、商品は今月出荷したけど余剰分の売り上げは来月に回そう」といった個人プレーを行うと、データと実在庫が合わなくなる可能性があります。こうした自己判断による行為は、在庫管理を適切に行えない大きな原因へとつながります。
以上のように、在庫管理には様々な問題があります。在庫管理が不適当な状態は、経営判断を鈍らせます。また、問題を放置することで不良在庫が増え、キャッシュフローは悪化して、最悪の場合には黒字倒産へと陥ります。
適切な在庫管理を実施するために行いたいこと
適切な在庫管理を実施するためには、何を行えばよいのでしょうか?ここではそのポイントを紹介していきます。
在庫管理のルール化と徹底
在庫管理のルールが曖昧であるため、自己判断での作業が増えたり、在庫ルールが守られないという状況は多々あります。そうした状況に対しては、やはり在庫管理のルール化とそれを現場に徹底することが大切です。
単に在庫管理ルールを定めるだけでなく、作業手順書などを作成し、在庫管理をどのように行えば良いのかを明示します。これにより、従業員による自己判断での作業は大方減少するでしょう。
棚卸を短い間隔で取り入れる
実在庫とデータが合致しているかどうかを知るための棚卸業務は、なるべく頻繁に行うことが重要です。毎回、在庫が合わないとなった場合には、その原因を特定し、やり方を変更しなければなりません。一般的に棚卸期間を短い間隔で実施することで原因究明の時間を短縮したり、質の高い経営を行うことが可能になります。
連携の取れた在庫管理システム
在庫管理の問題を解消するための方法として最も有効なのが、連携の取れた在庫管理システムを導入することです。何と連携を取るのかというと、調達管理システムや販売管理システム、生産管理システムなど、在庫管理に関わる基幹業務全般です。
たとえば調達管理システムとの連携が取れていると、商品や部品の仕入れ時に二重のデータ入力作業が発生しません。調達管理システムに入力したデータは、そのまま在庫管理システムに反映されます。
このように、在庫管理システムが複数の基幹システムと連携が取れていると、在庫管理の業務効率が大幅に向上され、さまざまな問題を解決することが可能になります。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。
ERPで連携の取れた在庫管理システムを
ERPは、在庫管理システムを含め、複数の基幹システムがあらかじめ連携された状態で提供されています。つまり、ERPを導入することで、複数の基幹システムが相互連携した、統合システム環境を構築できます。当然、在庫管理システムは調達管理システムや販売管理システム、あるいは生産管理システムなどと綿密に連携しているので、先に紹介したように様々な課題を解決することが可能です。
在庫管理が適切に行えていない、独自のシステム連携が難しい、という企業は、ERPで統合された基幹システムをぜひ検討してみてください。
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