業務分担表とは?活用のポイントや作成方法を解説

 2023.01.06  株式会社システムインテグレータ

プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、内在する業務内容や各業務における担当者の数は増し、複雑化していきます。そのため、「誰が」「何を」「どのように」遂行しているのか、進捗状況はどの程度なのか、明確に分かる状態が理想的です。そこで有効なのが「業務分担表」です。

では、状況把握に役立つ業務分担表は、具体的にどのような役割やメリットがあるのでしょうか。この記事では、業務分担表の必要性や作成するメリットやポイント、作成方法と運用のコツについて解説します。

業務分担表とは

業務分担表とは、プロジェクトにおける全体像を把握するための表です。全体像は、プロジェクトに携わるメンバーと担当する業務の全てを指します。業務と担当メンバーの関係性が一目で理解できるため、プロジェクト内容の「見える化」に貢献する重要な表です。

業務分担表の必要性

プロジェクトの規模にかかわらず、業務分担表がある場合とない場合では業務の効率が大幅に異なります。また、該当のプロジェクトとは直接関与しない部分に与える影響が大きいのも、業務分担表の特徴です。ここでは、なぜ業務分担表が必要なのか、3つの観点から見てみましょう。

時間的・物理的制約の緩和

プロジェクトに携わるメンバーの全員が、プロジェクトの「開始から完了」まで休みなく取り組めるとは限りません。

あるメンバーが産休・育休や慶弔休暇を取ったり、急なけが・病気で休まざるを得なくなったりなど、中長期的に一部のメンバーがプロジェクトから外れることは十分に想定できる事態です。子育て中の世帯で、なおかつ共働きであれば、フルタイムで業務に臨めない場合も想定されます。

また、近年はコロナ禍の影響でリモート勤務も増えています。数多くの便利なコミュニケーションツールがあるため、メンバー間のやり取りに多大な悪影響が出ることは少ないかもしれません。それでも、顔と顔を合わせなければ伝えきれない情報があるのも事実です。

そこで、時間的・物理的制約を緩和するためにも、業務分担表で業務内容とメンバーの関連性や、担当メンバーの状況をリアルタイムで把握できるようにする必要があります。他にも、メンバーの属性に応じてあらかじめ業務の割り振りをしておくことが重要です。

属人化からの解放

ある業務に精通している1人のメンバーがいると仮定します。社内でとある業務を滞りなく実行できる人材が1人だけだった場合、将来的に以下の問題点が発生するでしょう。

・業務量過多によるクオリティの低下
・ミスの隠蔽
・業務の引継ぎ、スキル継承の難易度上昇
・担当者の不在、退職による業務の半永久的停止

上記の状態を「属人化」といい、会社組織としては最も避けたい状態の一つといっても過言ではありません。

業務分担表を活用すれば、誰がどのような業務を担っているのかがすぐに分かります。個人に業務量が偏っていないかもチェックできるため、属人化を避けられるのです。

メンバーの意欲維持・向上

業務に携わるメンバーが一時的に業務から離脱する場合、復帰したメンバーに以前と同じ責任と量の業務を任せるのかそうでないかは、会社によって異なります。いずれにしても、以前よりも簡単で責任の伴わない業務を与えると、会社・チームへの信頼度低下や自信の喪失につながるおそれがあることを認識しておきましょう。

また、業務分担表は、「なぜ今自分がこの役割を担っているのか」を把握できます。チーム・会社において、携わっているプロジェクトの重要性と自身の状況を客観的に見られるため、たとえ与えられた仕事が簡単なものであっても、納得して業務に臨むことが期待できます。

業務分担表を作るメリット

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規模の大小にかかわらず、プロジェクトを成功させることは会社組織の維持・成長に直結します。そのために、業務分担表の存在が不可欠です。続いては、業務分担表の作成によって期待されるメリットを4点紹介します。

業務の分担が明確になる

「誰が」「どのような」業務を担っているのかが一目で分かる点は大きなメリットです。仕事をしていて、「どこまでが自分の仕事で、どこからが担当外の仕事なのか」が不明瞭になってしまうと業務効率の低下を招きかねません。

業務分担表を作成すると「自分のすべきこと」が明確になるため、社員の業務に対するモチベーションが向上します。業務を達成すれば表に反映されるため満足度が上がり、同じ業務を別の社員同士で重複して行ってしまう事態を防ぐことも可能です。

業務の漏れを防ぐ

業務分担表がない状態で業務を割り振った場合、以下の問題が考えられます。

・個々人は行うべき業務を覚えているが、割り振った上司が把握しきれていない
・追加の業務が発生した場合割り振りにあたって混乱が生じるおそれがある

業務分担表は、作成時点でプロジェクトの進行に必要な業務と必要ない業務とを選別し、いつでも目に見える形で存在しているため、不要な業務を排除しつつ、必須業務の漏れなくプロジェクトを進められます。メンバー全員が、「誰が」「何の」業務を「なぜ」担っているのか把握できるため、追加の業務が発生しても混乱が起きづらいです。

仮に業務に漏れがあった場合、他のメンバーが気付いて指摘してくれる可能性が高まる点もメリットの一つです。

責任感が高まる

「とりあえず自分の仕事だけ終わらせればそれで良いだろう」という姿勢は、プロジェクト全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。期限内に一定品質の業務を完了させること自体は悪いことではなくとも、チームとして動いていることはきちんと意識しなければなりません。チーム意識が欠如していると、無責任な仕事の結果によってプロジェクト全体の進行度合いに遅れが生じたり、前後の工程を担当していたメンバーに迷惑がかかってしまいます。

業務分担表を見れば、自分がプロジェクト内のどの位置にいるのかが明確になり、それに伴う責任の重大さも理解できます。各メンバーの責任感を高められるという点でも、業務分担表は作成する意義があるといえます。

メンバー間でのフォローがしやすくなる

プロジェクトが「どのような業務内容」「どのようなメンバー」で構成されているのか共有することで、ある業務に遅れが生じた場合(または遅れが生じそうな箇所がある場合)にメンバー同士でフォローがしやすくなるのも、業務分担表を作成するメリットです。

特にリモートワークにおいては、同じチーム間であってもメンバーの進捗が分かりづらい場合があります。充実したフォロー体制を整えるために、業務分担表はプロジェクトの開始前に必ず制作しておくと良いでしょう。

業務分担表の作成におけるポイント

業務分担表を作成すれば、スムーズかつ高品質な状態でプロジェクトを進められる可能性が高まります。しかし、誤った認識を持ち業務分担表を作成しても、本来期待されるような効果は出ません。では、どのような点に注意して業務分担表を作成すると効果的なのでしょうか。ここでは、5つのポイントに分けて紹介します。

業務の優先順位をつける

プロジェクトに内在される業務の中には、全体の進行度合いに影響が出そうな重要業務も含まれている場合が多いです。また、急を要する業務が新たに追加されるケースも考えられます。こうした業務は特に優先度が高いものとして、業務分担表を見た際に一目で分かるよう目立たせておきましょう。重要業務の場合は「要」と記載し、緊急の場合は「急」などと追記すれば、見た人全員が「他の業務よりも優先度が高い」と直感的に理解できます。

業務は細かい単位まで落とし込む

「自分が担う業務は明確化しており、前後の工程との関係性もよく分かっている」状態は、業務に臨むメンバーの姿勢として素晴らしいものです。しかし、何らかの事情によって自分が担当する業務を遂行できなくなることはあり得ます。期限が迫っている状態で自分の担当業務を他のメンバーが代行する場合、「担当業務を細分化し、誰が見ても分かりやすい状態にしておくこと」が大切です。

また、細かい指示書きや必要なツール、データの格納場所などを明確にしておけば、他部署のメンバーでも業務を遂行させられるでしょう。あえて業務内容を細かく出力することで、自分が担っている業務への理解が深まり、将来的には他業務を行う際の姿勢作りにもつながります。

細かな雑務も含める

各種雑務についても、明確に「誰が担当するか」を記載しておくことをおすすめします。雑務というのは、デスクの清掃や備品の補充、電話対応や給湯器内のお湯の交換などがその一例です。

このような雑務は新入社員やアルバイトの方が担当したり、一個人の善意によって自然と成立していたりする場合が多い傾向ですが、明確な指示の下に行われていなければ、これも一種の属人化といえます。専門性がなく誰でもやろうと思えばできる内容であっても、特定の誰かや気付いた人だけが実施している状態は健全とはいえません。少しずつ不満が蓄積し、仕事のパフォーマンスに悪影響が出るリスクがある上に、最悪の場合、社内環境に不満を覚えて退職に至るケースも考えられるのです。

「誰々は何曜日にこの業務を行う」など、雑務まで漏れなく含めておくとメリハリのある環境構築につながります。

進捗状況を可視化できるようにする

業務分担表に進捗状況を記載する場合は、「着手中」と「完了」だけで済まさず、より細かく記載すると良いでしょう。その日の業務が一区切りついたら、「何%完了と記述する」「完了したタスクにチェックを入れる」という風に、誰が見ても「どの程度の進行度合い化」が分かるよう明記することをおすすめします。

スケジュールに余裕を持つ

プロジェクトの進行度合いを想定した際に、タイトなスケジュールを設定するのは避けましょう。なぜなら、想定外の業務が追加されたり、欠員が出たりするおそれがあるからです。業務分担表の作成段階は、プロジェクトの進行の初期にあたります。この時点では想定できないさまざまな問題が発生する可能性は十分にあるので、可能な限り余裕を持たせたスケジュールを設定しましょう。

また、各業務内容について、達成に向けた具体的な数値を設定しておくことも重要です。明確な達成目標と余裕のあるスケジュールは、メンバーのやる気向上や業務のクオリティアップに寄与します。

業務分担表の作成方法

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業務分担表の作成は、ゼロから作成する方法とテンプレートを使用する方法の2種類が存在します。テンプレートは、Web上に無料かつさまざまな種類のものが公開されているため、自社に合う内容のものがあればダウンロードして使用すると、時間と手間を短縮できます。

しかし、必ずしも自社のプロジェクトとテンプレートが適合するとは限りません。ここでは、自社内でゼロから業務分担表を作成する際の手順を解説します。

業務の洗い出しと一覧化

まずはプロジェクトに内在する各種業務の洗い出しを行います。各種業務には「重要業務」「通常業務」「雑務」などが含まれますが、イレギュラーな緊急業務が追加されることも想定しつつ、漏れがないようにしましょう。

ポイントとして、業務担当者からのヒアリングを行うことと、洗い出し段階では簡易的なメモ程度にとどめることが挙げられます。業務分担表の作成者は、全ての業務について知識や経験があるとは限りません。現場では実際にどのような工程で業務に臨んでいるのか把握することで、より適切な形で業務を洗い出せます。また、洗い出した後に業務の一覧化作業を行いますが、洗い出し段階で業務分担表として完全に固定してしまうと修正が難しくなるため、この段階ではメモのように記載する程度で問題ありません。

洗い出し作業が完了したら、業務の一覧化(リストアップ)作業に入ります。「部署ごと」「広報関連やオフィス関連」といったカテゴリ分けをしつつ各種業務を入力していきましょう。記載する際は、できる限り内容を明確にすることが重要ですが、細かく区分けしすぎると分かりにくくなってしまうため注意が必要です。

業務の詳細を記入

業務の一覧化まで完了したら、業務ごとの内容を入力していきます。「何をどのように行うのか」がある程度理解できる内容であれば、細かく記載する必要はありません。先述したように、実際に業務を担当する社員が細分化して記載する場合はあるものの、全体的な業務詳細の記載については一目で分かる程度で良いでしょう。つまり、プロジェクトにおける担当業務については、まず「見える化」の実現が重要なのです。

分担や責任者の決定

業務の詳細について記入が完了したら、実際に各種業務を担当する社員の選定と責任者の決定段階に入ります。この際、担当メンバーと責任者双方について、該当業務に適切かどうかや、都合が付くかどうかを漏れなくチェックしましょう。業務に必要なスキルレベルにメンバーのレベルが達していない場合や、反対に簡単すぎる業務を割り振ってメンバーに不満を抱かせる場合があるためです。

業務分担表を適切に運用するコツ

最後に、作成した業務分担表を適切かつ継続して運用していくために必要な2つのコツについて紹介します。業務分担表は「作って終わり」ではなく「作ってからが本番」です。

定期的な見直しを行う

プロジェクトの進行度合いに合わせて、業務分担表は随時見直していく必要があります。なぜなら、初期のプロジェクト構想段階通りに全ての業務が進行するとは限らないからです。先述の通り、急な欠員など人的な影響や、リモートワークにおいて情報伝達がうまくいかず業務が遅延するなどの物理的制約が想定される上に、急な業務の追加もあるでしょう。

このような事態が発生する度に、業務分担表を更新する必要があります。それに合わせて、当初のスケジュールを見直し、修正を行っていかなければなりません。細かい調整を怠らずに実行することで、プロジェクトの品質を落とさず期限通りに完遂できます。

業務のバランスを考慮する

メンバーのスキル習熟度やチーム内での立ち位置、雇用形態や業務に割ける時間など、プロジェクトに携わるメンバーのあらゆる属性を考慮した上で業務分担表を運用していきましょう。メンバーに偏りなく業務を分担することが重要です。業務量過多による不満や自信の喪失につながれば、プロジェクトの品質低下はもちろん、期限までに完了させること自体が難しくなるおそれがあります。

ベテランに重要度の高い業務が回り、新入社員や非正規雇用の方に簡単な業務や雑務が回りやすい傾向はあっても、「なぜそうなったのか」を明示することが重要です。そうすれば、チームメンバー各人が自身に振られた業務に納得した上で着手できます。チームメンバーがプロジェクトへの参加に際して「何を希望しているのか」「どのような業務にモチベーションを感じるのか」という点も、確実にヒアリングして業務分担表を運用していきましょう。

まとめ

会社組織としてプロジェクトを進めていく上で、業務分担表が非常に重要な役割を担っています。プロジェクトの全体像が分かるだけでなく、メンバーの立ち位置を理解・共有できるという点でも、業務分担表は優れたツールなのです。この記事で紹介した内容を参考にしつつ、最適な形で業務分担表を作成し、運用してみましょう。

プロジェクト管理について詳しくまとめた資料もご用意していますので、こちらもぜひご活用ください。


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