業務標準化とは?2つの方法とメリット、具体的な手順やポイントを解説

 2023.09.15  株式会社システムインテグレータ

担当者がいないと仕事が止まるといった、属人化による業務の停滞に悩んでいる方も多いでしょう。業務が属人化すると担当者一人に負担が集中し、トラブルが起きた際には通常業務に加えトラブルの処理まで抱え込まなければいけません。

厄介な業務の属人化を解消するには、業務標準化を行う必要があります。業務標準化を行えば、担当者以外も業務を行えるようになるため、業務のブラックボックス化が防げるのです。

この記事では業務標準化の2つの方法とメリット、実施するための具体的な手順やポイントを解説します。

業務標準化とは

業務標準化とは、業務を遂行する従業員全てが同じ成果を出せるよう、業務フローやマニュアルを整えることです。休暇や退職、異動などによって担当者が不在になった際、業務が止まったり、担当者以外が作業することで作業の質が落ちたりすることを防ぐ目的があります。

業務標準化によって、人材が入れ替わった場合や働き方の多様化に対応しやすくなるため、効率や生産性を高められます。また、属人化の防止・解消にも効果的です。

業務標準化が推進されない場合のデメリットとしては、「従業員の業務意欲の低下」「業務の可視化ができない」点が挙げられます。業務が属人化してしまうと、担当者の不在時に他の従業員が業務をカバーできないため、業務進行が止まってしまいます。他にも、担当外のメンバーは業務フローを把握していないため、代わりに作業に入った際の作業負荷が高まるでしょう。結果的に若手従業員の教育へ時間を割けなくなったり、担当者に残業が発生したりして、従業員の業務意欲の低下につながってしまいます。

また、各従業員が自分の担当業務のみを行う職場環境では、他の従業員を教育する機会も減ってしまいます。結果、担当者個人の中で業務がルーティン化され、無駄な工数が発生していたとしても見直す機会がなく、業務改善ができなくなってしまう可能性があります。

業務標準化の方法

業務標準化を実現するには、「業務フローの標準化」と「タスクの標準化」が必要です。それぞれの特徴を詳しく説明します。

業務フローの標準化

業務フローの標準化とは、メインで業務を行っている担当者が代わったとしても、他の従業員が業務の流れや内容を速やかに把握できる状態にすることです。

担当者が代わった場合もスムーズな引継ぎや業務の遂行を可能にするには、わかりやすい業務フローの設計と、業務フローに沿った業務遂行をする必要があります。特に、業務に同時進行や作業の分岐が生じる場合は、フローの整理による効果が得やすくなるでしょう。

タスクの標準化

タスクの標準化とは、業務にあたる従業員によって業務の内容や成果に差が出ないよう、タスクをマニュアル化することをいいます。マニュアルの共有・訓練を実施し、どの従業員が担当しても業務品質が安定するよう整備しましょう。新入社員の配属や担当者の異動・退職など、業務の担当者が代わっても、マニュアルがあれば同じ方向性を持って業務に取り組めます。特に、業務自体の発生頻度が少なかったり、作業にあたる人数が多かったりする場合に有効です。

業務標準化の効果・メリット

業務標準化によって4つの効果が期待できます。それぞれのメリットを見てみましょう。

業務の効率化

業務の効率化とは、業務における無駄な部分を改善し、効率的な手順にすることです。無駄は排除し、ムラがあるものは均一化して業務を効率化すると、よりコストが少ない状態で成果を出せるようになるため、生産性向上にもつながります。

業務標準化をしていない状態では、手順や成果の水準が定まっていないため、業務中の無駄の洗い出しが困難です。しかし、業務標準化が行われていれば、手順や成果の基準が設定され、共有できる体制もつくれます。無駄のある手順に対して議論を行いつつ、効率化を図ることができるようになるでしょう。

業務品質の均一化

業務標準化によって業務品質の均一化も見込めます。業務標準化を行っていない場合、業務にあたる人によって手順が違ったり、せっかく誰かが良いやり方を発見しても共有する体制がなかったりするため、業務品質にバラつきが生じてしまうのです。

業務標準化を行えば、従業員の業務スキルが一定以上のレベルになるため、職場全体のスキルの底上げにつながります。また、全体のスキルの底上げが実現すると、タイムロスが減り、さらなるスキルアップへ時間を回せるようになります。結果的に、同じ人員でより多い成果を生み出せるようになり、生産性向上につながるでしょう。

属人化の防止

業務の標準化は、業務の属人化の防止にもなります。業務の属人化とは「ある業務が特定の担当者個人のものになってしまい、担当者にしかわからなくなる状態」のことです。

属人化がひどくなると、その担当者が不在の場合には業務が滞り、誰もわかる人がいない状態になります。また、万が一属人化の進んだ業務でトラブルが起きた場合、その担当者以外に対応できる人がいないため、ひとりでトラブルを抱えることになるでしょう。結果として顧客や取引先にも悪影響を及ぼすリスクがあります。

さらに、属人化した業務は不正の温床になる恐れもあります。加えて、ベテランが仕事を抱え込むと、若手や他の従業員の成長する機会が失われます。若手が成長しなければ知識や技術を引き継ぐ人材が不足し、属人化がより長期化する負のスパイラルへ陥ることもあります。

業務標準化が進めば手順やノウハウだけでなく、進捗状況も従業員同士で共有し教えあう体制となるため、属人化の防止が可能です。また、異動や退職などで従業員が入れ替わったとしても、引継ぎがスムーズになり、他の従業員からのサポートも受けやすくなります。

成果目標の明確化

業務標準化は、成果目標の明確化にも役立ちます。業務標準化ができていれば、従業員の作業を客観的に評価する定量分析が可能となり、成果目標が明確に設定できるのです。また、目標が具体的になるとどのような行動をとるべきかわかりやすくなり、従業員は先を見通せるため、モチベーションの維持につながります。

さらに、成果目標の明確化は、従業員の仕事について人事評価をする際にも効果的です。業務が属人化しているということは、業務の手順やノウハウなどが共有されていない状況であるため、成果を数字で表せず、定性的に評価しなければなりません。それでは評価は曖昧になるでしょう。そこで、業務の標準化によって成果目標を設定すれば、一定の基準を用いて判断できるようになるため、従業員が納得できるような公正な評価を行えるようになります。

業務標準化の手順

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業務標準化を実際に行う際は5つの手順で進めていきます。それぞれ詳しく解説します。

業務フローやタスク、ノウハウを洗い出す

業務標準化を行うには、まず業務フローやタスク、ノウハウを洗い出す必要があります。現在の担当者に業務フローを書き出してもらい、業務の見える化を行います。特に担当者が固定されており属人化している業務は、見逃している項目がないかといったヒアリングを併せて行うことで、より精度が高まります。今わかっている課題や問題意識、今後の懸念や不安なことも洗い出しを行いましょう。

また、洗い出しがおわったら、以下の項目も明確にしておくことで、次のステップで行う優先順位付けがスムーズになります。

  • 業務のフロー(所要時間や担当者数など)
  • 目標や達成率、担当者ごとの実績
  • 顧客・取引先リスト
  • 取扱商品・サービスのリスト
  • 関係省庁への報告書といった提出物

標準的な手順を検討する際に必要になる、業務に関わる全ての事柄を洗い出し、「見える化」することが重要です。

標準化する業務に優先順位をつける

業務フローの洗い出しで現状把握ができたら、明らかとなった問題点に基づいて標準化する業務を選びます。業務を選ぶ際は、属人化している業務はもちろんのこと、業務へあたる従業員によって成果にバラつきのあるものも標準化の対象とすることがポイントです。

ただし、全ての業務を標準化するのはコストや手間がかかりすぎてしまいます。標準化すべき業務に優先順位をつけ、一つひとつ解決していきましょう。

標準的な手順を決定する

業務の優先順位をつけたら、フローチャートを使って「いつ・誰が・どうやるか」といった、業務の流れをわかりやすく可視化しましょう。業務内容が目に見えていれば、無駄な作業を削減したり順序を入れ替えたり、業務フローの整理がしやすくなります。

業務内容そのものを見直し、業務にかかる時間やコストを削減するといった取り組みも行うと、より効果があります。

マニュアルや業務フローを作成する

決定した手順を基に、マニュアルや業務フローを作成します。マニュアルを作成する際は、どの作業までをマニュアル化するか判断することが大切です。例えば、接客業ではマニュアル化が原因で紋切型な対応となり、かえってトラブルを招くことがあります。そのため、マニュアルにない作業やトラブルが発生した際の対処法も事前に決めておくと安心です。

しっかりとした構成のマニュアルと業務フローを作成し、職場の従業員がすぐにマニュアルを参照できるようにすると同時に、その後も業務フローの改善を継続できる体制を整えましょう。

実践と定期的な見直し

業務標準化を行ったら終わりではなく、業務フローやマニュアルを定期的に見直し、改善の必要な部分があれば積極的に取り組むことが大切です。

また、マニュアルや業務フローを職場の従業員で共有する体制が整ったら、次はマニュアルの運用方法を決めます。

新入社員への共有方法例
誰が:業務の責任者
いつ:配属日
どのように:マニュアルを見る方法、更新の方法など

マニュアルの更新方法例
誰が:部署の担当者を一定期間ごとに交代で担当する
いつ:変更が発生次第随時、変更がなければ一定期間に1回見直すようにする
どのように:マニュアルの修正箇所を部署内でヒアリングし、反映させる

業務標準化による効果をさらに高めていくには、運用の継続が必要です。マニュアルの内容や運用方法に改善点があれば、随時部署内で検討・共有しましょう。

業務標準化の際のポイント・注意点

属人化を解消し、業務の標準化を進めるためには、いくつかのポイントや注意点があります。それぞれ押さえておきましょう。

業務標準化のメリットを現場に理解させる

業務標準化を達成するためには、標準化のメリットを従業員に理解させましょう。「何のために業務標準化をするのか」という目的が明確でなければ、従業員は何を目指して努力すれば良いのかわからなくなり、目的意識の低下を招きます。そのような状態で業務標準化を進めても、目標やミッションが形骸化してしまうでしょう。

業務標準化の目的を浸透させるには、リーダーの一方的な姿勢で行うのではなく、各従業員と認識のすり合わせを行うことが大切です。部署内での合意形成を図ることで各従業員に納得感が出て、目的に向けて足並みがそろいます。

業務標準化ツールを活用する

業務標準化ツールを活用することも重要です。ツールを選ぶ際は、まず自社にある課題を洗い出し、ツールに求める要件を明確化する必要があります。しかし、解決したい課題を先に明確化しないと、どのような機能が必要かわからずツール選びが難航します。業務標準化ツールにもフロー管理向き、マニュアル作成向きなどさまざまな種類やタイプがあるため、はじめにツール導入の目的を明確にした上で、自社の課題解決につながるツールを選びましょう。

また、自社の課題解決につながるツールを選ぶためには無料トライアルの活用もおすすめです。本格的に導入する前にトライアルを行い、実際の画面で操作してみましょう。その際は、部門や部署などの小さな範囲からはじめていきます。スモールスタートであれば、ツールの変更や撤退が決まったとしても影響が小さく、比較的容易に導入できるからです。はじめから全社的に導入してしまうと失敗した際のダメージも大きくなるため、まずは小さな範囲ではじめ、自社に適したツールだと判断できたら徐々に使用範囲を広げていきましょう。

まとめ

業務標準化とは、業務にあたる全ての従業員が同じ成果を出せるよう、業務フローやマニュアルを整えることです。人材の流動性が上がっている今、業務の担当者が不在になった際に業務が止まったり、作業の質が落ちたりすることを防ぐ対策が求められています。

業務効率化を実現するには、「業務フロー」と「タスク」の標準化が重要です。どちらか片方だけ整っていても効果が薄くなってしまうため、同時に進めましょう。また、業務標準化には手順があります。流れやポイントを押さえ、ツールも活用しながら自社に合ったマニュアルを作成してみましょう。

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