マイクロマネジメントとは?部下への悪影響と改善方法

 2023.03.10  株式会社システムインテグレータ

近年、部下を細かく管理し指示を出す「マイクロマネジメント」が話題になっています。マイクロマネジメントは、仕事に不慣れな部下には効果的なケースがある一方で、過剰に行うと部下の成長や主体性を奪ってしまうリスクもあります。そのため、「自分も過剰にマイクロマネジメントをしていないだろうか」「自分のマネジメント手法に問題はないだろうか」と悩まれている方もいるかもしれません。

この記事では、マイクロマネジメントの特徴や事例、防ぐためのポイントなどを解説します。

マイクロマネジメントとは

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マイクロマネジメントとは、管理職である上司が部下の行動を細かく管理し、指示を出すマネジメントのことです。部下を細かく管理しすぎる「過干渉」を意味し、一般的にはネガティブなイメージで用いられる言葉です。上司が過剰にマイクロマネジメントを行うと、部下に悪影響を及ぼすリスクがあるものの、そのことに気づいていないケースが多くあります。ここでは、マイクロマネジメントの具体的な例を紹介します。

マイクロマネジメントの例

マイクロマネジメントの例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 仕事の手順を事細かに指示し、自分のやり方を強制する
  • 業務進捗の報告を頻繁に求める
  • 電話の仕方や、メールの内容などを細かくチェックする
  • 「社内チャットの返信は10分以内」といったルールを義務付ける
  • 企画書やプレゼン資料などを過剰にチェックする
  • 細かなミスであってもしつこく追及する
  • 部下の居場所や行動を常に把握しようとする
  • 在宅勤務中に頻繁に進捗状況を報告させる
  • 在宅勤務中はWebカメラで仕事の様子を監視する

いずれも実際の事例ですが、一般的には行き過ぎた管理といえるでしょう。このようなマイクロマネジメントは、部下にさまざまな悪影響を与える恐れがあるため、避ける必要があります。また、部下の過剰な管理は職場の離職率が高くなるばかりか、場合によってはパワーハラスメントやモラルハラスメントと見なされるケースもあるため、十分に注意しなければなりません。

マイクロマネジメントをしがちな人の特徴

管理職の中には、無意識にマイクロマネジメントをしている方が多くいます。ここでは、マイクロマネジメントをしがちな管理者の特徴を3つ紹介します。

<特徴1>自分の仕事のやり方に自信がある

自分の仕事のやり方に強い自信がある方は、自分の考えや方法が正しいと思うあまり、部下の考えを尊重しない傾向があります。また、部下から尊敬されたいという気持ちが強いことも、マイクロマネジメントをしがちにする要因の一つです。

<特徴2>仕事を部下に任せられない

仕事を部下に任せられないことも、マイクロマネジメントをしがちな人の特徴です。根本的に部下を信用しておらず、部下のミスが心配でマイクロマネジメントを行ってしまったり、自分で業務を抱え込んでしまったりする傾向にあります。

<特徴3>マネジメント手法を知らない

マネジメントでは、部下のモチベーションを向上させて成長を促したり、チームビルディングに努めたりすることが求められます。しかし正しいマネジメント手法を知らない管理職は、部下の些細なミスを追及したり意見を尊重しなかったりと、無意識のうちにマイクロマネジメントをしがちです。

マイクロマネジメントをしてしまう理由や背景

マイクロマネジメントが最近注目されるようになったのは、いくつかの理由や時代的な背景があります。ここでは、マイクロマネジメントをしてしまう理由や背景を4つ紹介します。

上司の心理的な不安

上司は部下に対する管理監督責任があるため、部下のミスは自分の責任となります。場合によっては、部下のミスで自分の評価が下がる場合もあるかもしれません。この部下のミスへの不安から、「業務の進捗確認を頻繁に行う」「メールや資料を過剰にチェックする」といったマイクロマネジメントをしてしまうケースがあります。

テレワークの増加

テレワークの普及も理由の一つです。従来のように同じオフィス空間での業務であれば、部下の様子をいつでも確認できますが、テレワーク主体の仕事環境の場合は常に様子を見ることが困難になります。そのため、部下がさぼっているのではないかと不安を覚え、頻繁な進捗報告の強制や過度なWebカメラでの監視といった、マイクロマネジメントに陥ってしまうケースが増えているのです。

こちらの記事も合わせてご覧ください。

テレワーク・在宅勤務のさぼりの実態とは?原因や防止策による生産性向上について解説

残業削減の影響

昨今の働き方改革の推進により、残業時間の削減が求められていることも理由として挙げられます。働き方改革の一環として労働基準法が改正され、現在では時間外労働の上限が法律に規定されています。これによって、時間外労働の上限を超えると企業側に罰則が科されるようになり、部下に残業をさせることが難しくなったのです。

もし同じ業務量のまま人員の増加を行わない場合、限られた業務時間の中で成果を出すことが求められる上司は、部下の管理を厳しくすることで生産性を高めようとするため、マイクロマネジメントに陥ってしまうのです。

人材の多様化(中途採用者の増加)

昨今では、即戦力に期待し中途採用に力を入れている企業は少なくありません。そのため、中途採用者を部下に持つ管理職も多いでしょう。しかし中途採用者は、豊富な経験による戦力強化と企業変革が期待できる一方で、仕事のやり方が前職に基づいており、自社のやり方や考え方になじむのに時間がかかってしまう場合があります。

上司の中には、時間をかけて対話や教育でなじませるよりも、部下の行動を細かく制限する方が早いと考えてしまうため、マイクロマネジメントにつながってしまうのです。

マイクロマネジメントが部下に及ぼす悪影響

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マイクロマネジメントは、部下にさまざまな悪影響を及ぼします。また、それを認識していない上司も多くいるでしょう。ここでは、マイクロマネジメントが部下に及ぼす4つの悪影響について解説します。

モチベーションの低下

マイクロマネジメントは、部下のモチベーション低下に大きく影響を与えます。マイクロマネジメントをする上司のもとで働くと、「自分は上司に信頼されていない」「自分の裁量で仕事ができない」と感じてしまいます。また、部下個人のモチベーションの低下は職場全体にも影響を与え、場合によっては生産性の低下や離職率の悪化につながる恐れもあるのです。

こちらの記事も併せてご覧ください。

社員のモチベーションを向上させる効果的な施策とは?低下の要因と対策を解説

部下の主体性が失われる

部下の主体性が失われることも、マイクロマネジメントによる悪影響の一つです。

上司が細かい事柄にまで指示を出すと、部下は指示に従うことに専念するようになるため、いわゆる「指示待ち人間」になります。そうなると部下は自分で考えることをやめてしまい、自分で判断する能力が身につきません。結果、部下はいつまでたっても成長せず、キャリア形成にも悪影響を及ぼすのです。また、指示待ちの部下だけになると、新しいアイディアや提案が生まれなくなり、組織のパフォーマンスも低下します。

メンタルヘルスの悪化

過剰なマイクロマネジメントは、部下のメンタルヘルスの悪化につながります。上司による「業務の細かい進め方の強制」「些細なミスに対する執拗な追及」といった過干渉は、部下に大きなストレスをもたらします。

ストレスが長期間にわたり継続すると、最悪の場合、うつ病といった精神疾患を引き起こします。また場合によっては、パワーハラスメントやモラルハラスメントに認定されるケースもあります。

上司自身の負荷も大きい

マイクロマネジメントは、部下にさまざまな悪影響を及ぼすと同時に、上司自身にも大きな負荷がかかります。部下への事細かな指示や管理は、かなりの時間と労力を要するためです。

また、仕事を部下に任せられない上司は、本来は部下に任せるべき業務も自分で行ってしまいます。そのため、ますます余裕がなくなり、「部門の戦略・方針の立案」「部下の育成」といった管理職としてやるべき仕事ができなくなり、悪循環に陥るのです。

マイクロマネジメントが効果的なケースは少ない

マイクロマネジメントはさまざまな悪影響を及ぼしますが、状況によっては効果的なケースもあります。

例えば、新入社員をマネジメントする際、右も左も分からない状態のため、指示がないと動けません。このような場合は、マイクロマネジメントが効果的な場合もあります。

また、新規プロジェクト立ち上げの際も、マイクロマネジメントは効果的です。初期の段階でマイクロマネジメントを行うことで、軌道に乗った後は部下だけで進められるからです。

しかしマイクロマネジメントは、このような限られたケースのみで有効なものであり、全体としてはデメリットの方が大きいため避けた方が良いでしょう。

マイクロマネジメントをしないために

ここでは、マイクロマネジメントをしないための3つの取り組みを紹介します。以下の方法を取り入れて部下のモチベーションと主体性を高め、成長を促しましょう。

進捗報告ルールを見直す

まずは、進捗報告ルールの見直しです。マイクロマネジメント状態に陥っている場合、必要以上に高い頻度で報告を求めているケースが多いのではないでしょうか。過剰な報告は、部下にとって大きな負担となるばかりか、上司も確認のために多くの手間と時間を要してしまいます。

そのため進捗報告のルールは、始業時に一日の業務予定の報告を行い、終業時に業務の進捗について報告を行うなど、職場ごとに適切なタイミングで行うようにしましょう。

部下に権限を委譲する

上司は部下を信頼し、仕事を任せられないとマイクロマネジメントから抜け出せません。そのため、部下に権限を委譲し仕事を任せることが重要です。業務の目標や目的を部下と共有したら、その後の具体的なプロセスは部下に任せ、上司の判断を仰がなくても進められるように裁量を与えましょう。その結果、部下は自ら考え主体的に取り組むようになり、成長につながるのです。

マネジメントの内容とかける時間を見直す

管理職である上司は、下表にある4つのマネジメントにバランス良く取り組む必要があります。

  • 戦略マネジメント(外部環境の把握とビジネスプロセスの最適化)
  • ビジョンマネジメント(ビジョンの策定と浸透)
  • PDCAマネジメント(業務計画の策定と現場の問題解決)
  • メンバーマネジメント(メンバーの意欲と能力の向上)

マネジメントが「メンバーマネジメント」に偏っている場合、マイクロマネジメントに陥っている恐れがあります。これに対し、タスクやプロジェクトの進捗管理といったマイクロマネジメントに費やす時間を短縮し、その分を他のマネジメントに充てるとマイクロマネジメントから抜け出せるかもしれません。

例えば、進捗報告や全体ミーティングに費やしている時間が長いのであれば、「進捗報告は終業時の夕礼で10分以内」「全体ミーティングは月に2回で30分以内」「1on1は月に1回30分以内」といった対策が挙げられます。報告やミーティングなどの時間を決めることで、質や生産性が向上するとともに、本来優先的に行わなければならないマネジメントに時間を費やせるようになるでしょう。

また、メンバーマネジメントを行う際は、定期的に部下のモチベーションや悩みを確認し、部下が高いモチベーションを保ちながら主体的に行動できるようフォローすることが大切です。

なお、「1on1」とは上司と部下との間で実施される対話形式の面談のことで、部下の成長を促す際に効果的です。詳しくは、以下の記事で解説しているので併せてご覧ください。

1on1ミーティングの効果的なやり方・効果・ポイント、実施手順を詳しく解説

まとめ

部下を細かく管理し過干渉するマイクロマネジメントは、部下のモチベーションの低下や主体性が失われるといったさまざまな悪影響を及ぼします。近年は社会情勢からマイクロマネジメントを行う管理職が増えており、問題視されているのが現状です。そのため、マイクロマネジメントをしないための対策が必要となります。進捗報告のルールの見直しや、部下への権限の委譲などによって、マイクロマネジメントを防ぐことができます。マイクロマネジメントから抜け出し部下のモチベーションの向上や成長の促進に役立てましょう。

また、マイクロマネジメントを改善し、適切なプロジェクトマネジメントを行う際は、ツールを活用したりプロジェクト管理を強化したりすることも効果的です。プロジェクト管理全般に関する資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。


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