この記事では個人の能力をより発揮し、チームの成果も高めたいという方向けに、チームビルディングに注目して、目的やプロセス、取り組む際のポイントを解説します。
チームビルディングとは
チームビルディングはチームで掲げられた共通目標に対し、多様な価値観を持ったメンバー間で信頼関係を築き、個々の強みや長所を最大限生かせるような配置、環境を整え、目標を達成できるチームを作りあげることが目的です。チームビルディングには型となるプロセスがあり、研修やメンバー内のイベント、ワークプログラムなどがチーム内のコミュニケーションを活性化するために行われます。
チームビルディングに似た言葉として「チームワーク」「チームマネジメント」などがありますが、課題解決や目標達成を優先し、個々の強みを生かすことはあまり重視しないのが「チームワーク」、個々の強みを生かすことを重視しているのが「チームビルディング」です。また、「チームマネジメント」はチームの管理者による取り組みを指しますが、「チームビルディング」はチーム全員で行う取り組みを指すという違いがあります。
チームビルディングの目的
チームビルディングを行うことで、チームに関わるさまざまな立場の人への効果が期待できます。目的を意識して取り組むことで、より充実した成果が得られるでしょう。ここでは、チームビルディングの5つの目的を解説します。
チームの関係強化
メンバー同士がお互いを尊重し、何かあれば自然とフォローし合う関係性があれば、チームとしての結束力は強く、トラブルや変化に強い体制といえます。自分の業務に問題なく対応できていたと思っていても、他のメンバーから見れば気づかなかった事柄や見落としがあるかもしれません。自分のやり方に自信を持つことは大切ですが、チームの関係強化や相互理解、結束力を高めようという意識も必要です。
チーム目標の明確化やビジョンの浸透
メンバー個人だけでなくチームとしての目標が不透明で、ビジョンも浸透していなければ、モチベーションの維持が難しく目標達成までに時間がかかります。一方、メンバーが明確なビジョン下に置かれていれば、どのような目標にも優れた結果を残しやすくなるのです。また、メンバーが集まり目標やビジョンへの意見を交換し合うことで、偏った解釈や認識を排除し、個人のスキルが発揮しやすい環境が整えられます。
マインドセットの形成
目標達成には、メンバーがより強く「目標を達成したい」という意思を持つことが重要です。チームビルディングに取り組めば、目標達成に向けたマインドセット(無意識の思考や行動パターン)を形成できます。メンバー同士で一体感を感じられるイベントを通じ、積極的なコミュニケーションが生まれるような環境作りが大切です。
チームビルディングの効果・メリット
続いて、チームビルディングによって得られる効果やメリットについて4点ご紹介します。
モチベーション向上
自分が所属する部署やチーム内で孤立している場合、業務に対するモチベーションを保つのは容易ではありません。同じ時間勤務するのであれば、意識的にモチベーションを高く保つ方が明らかに効率的です。チームビルディングは個人の成功体験ではなく、チーム全体で成功体験を積み重ねます。自分の行いが評価され、周囲からも良い刺激を受けることで、チーム全体のモチベーション向上が期待できます。
心理的安全性の向上
心理的安全性とは、所属する集団(組織)の中で周囲から非難される不安を持たず、安心して自分の意見を発言できる状態を意味します。役職や年齢にかかわらず、チームのメンバー同士が互いを尊重し、指摘し協力し合える環境が理想的です。多様な人材を活用するダイバーシティ経営、コロナ禍で広まったテレワークによる仲間とのコミュニケーション不足などのリスクに対しても、心理的安全性向上への取り組みは注目されています。
新規アイデアの創出
同じテーマに取り組んでいても、メンバーはそれぞれ異なる価値観を持っています。1人で考えるばかりでなく、他のメンバーの意見を取り入れればより良いアイデアが生まれ、相乗効果も生まれるでしょう。1人では得られなかったアイデアは連鎖して組織イノベーションにつながり、長期的な生産性の向上が期待できます。
生産性の向上
ビジネスにおける生産性とは、投入する経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)に対してどれほどの生産量が得られたかを指しています。労働生産性の場合、労働者1人の労働時間にどれほどのアウトプット(成果物)が得られたかがポイントです。長時間労働や業務効率化、人件費削減などは多くの企業が課題としています。チームで取り組むことで新たなアイデアが生まれたり、業務の効率化を進めたりできれば、同じ時間でより多くの利益を上げられるようになり、生産性の向上に寄与します。
新人・若手社員の育成につながる
新社会人や第二新卒者の場合は組織の風土に慣れ、社会人としてのマナーや業務に求められる基本を習得することが必要です。「報連相の重要性」「主体性」「粘り強さ」など、チームビルディングに取り組む過程で業務における基本のスタンスを身につけられるよう育成していきます。
マネジメント層の育成につながる
入職から3年ほど経過すれば、後輩の上に立つという自覚や、自分や周囲へのマネジメント意識が必要です。そのため、組織のトップ層や役職者と後輩の中間に立つ者として、現場の状況を把握しながら目標達成に向けて取り組み、成果を挙げることが求められます。このような立場の方がチームビルディングに取り組むことで、「後輩の育成スキル」「ベクトルの異なるメンバーを統合した体制づくり」などのスキル向上に役立ちます。
チームビルディングを進める5段階のプロセス
チームビルディングは、心理学者ブルース・タックマンが提唱した「タックマンモデル」の5段階の順に沿って進めるのが通例です。5段階それぞれの過程を解説します。
形成期
チーム形成から日が浅い時期は、相手とどのように関わるべきかをお互いに探り合う段階です。形成期はチーム内の共通目標もあいまいで、あまり大きな生産性は期待できません。
メンバー同士の相互理解やコミュニケーション強化を意識する目的で、たとえば全員参加型のカードゲーム、クイズ大会、アクティビティなどを通じてチーム内に一体感が生まれるような工夫が効果的です。
また、チームのリーダーが主導となりチーム内の共通目標を立て、続く段階で目標達成に向けてスムーズに動き出せるような姿勢も必要です。
混乱期
チーム内の共通目標が明確になり、プロジェクトが稼働し始める頃に訪れるのが「混乱期」です。
時には意見が対立したり、何らかのトラブルが生じてチームが混乱したりすることもあるかもれません。しかし、対立を恐れていてはチームの成長にマイナスです。混乱期をより早く乗り越えるためにも、メンバー同士の相互理解を深められるように積極的にコミュニケーションをとりましょう。
統一期
チーム内で意見が対立しても積極的にコミュニケーションをとり、互いが納得しうる解決策やアイデアを見いだしていく中で、徐々にメンバー同士の相互理解が深まっていきます。
統一期は、団結力や他のメンバーへの信頼感が生まれ、自分に求められている役割が明確になり、生産性も上がり始める時期です。統一期は、たとえば全員参加型のワークショップの機会などを設け、参加者の発言を通じメンバー個々人のスキルや長所を生かすことを意識しましょう。
機能期
機能期はリーダーが主導しなくともメンバーが主体的に行動し、仲間同士で自然にフォローし合う段階です。チームのリーダーであれば、なるべく早い段階で機能期にまで導くのが役割といえます。
個人レベルでも自発的に業務に取り組みながらも、チーム全体としても機能している状態が理想的です。機能期に限った話ではありませんが、人員配置を見直し各メンバーがよりスキルを生かして意欲的に働ける工夫を施せれば、生産性を上げるスピードが加速します。
散会期
散会期はチームが散会、つまり解散する段階です。プロジェクトの終了やメンバーの異動により、チームとしての活動が終了する時期になります。
メンバー同士が互いの取り組みを称賛し、チームの解散を惜しむようであればチームビルディングは成功です。散会期には当初の目標達成の状況を確認し、取り組んできたチームビルディングの効果を検証します。成功要因や反省を見直すことで、どのメンバーも自分の成長を感じられ、今後につながる学びに気づけるでしょう。
なお、散会期にこそリーダーや責任者への研修を積極的に実施することが大切です。
チームビルディングの具体的な手法
ここではチームビルディングを実行する際は、「ルールの整備」「研修やイベントの実施」「1on1ミーティングの実施」といった手法を用います。ここでは、それぞれの手法を詳しく見ていきましょう。
ルールの整備
チームビルディングで初めに行うのは、ルールの整備です。ルールは規則として縛るものではなく、お互いを信頼して協力する土台作りが狙いとなります。ルールの例として「他のメンバーが発した意見を否定しない」「根拠となる数値を主体にした意思決定」「チームの主要関係者への情報伝達の方法」などが挙げられます。
早期にチーム内のコミュニケーションを意識したルールを整備することで、その後メンバーが安心して取り組みやすい基盤が作られるのです。
研修やイベントの実施
以下に挙げるような研修やイベントを交えながらチームビルディングに取り組むことは、メンバー同士の結束力向上や関係性強化に効果的です。研修やイベントは日頃の関係性を多少なりとも忘れて盛り上がるため、会の終了後にはチームの仲間同士で打ち解けられます。
- ワークショップ(コミュニケーション力や協調性)
- チーム対抗によるゲーム(役割分担に基づく行動や相互理解)
- 屋外研修(コミュニケーション力)
- 合宿研修(チーム内の距離感)
- オンライン研修(参加者が平等に発言しやすい・低予算)
1on1ミーティングの実施
定期的な1on1ミーティングの実施も効果的です。
チームにはキャリアや価値観の異なるメンバーが集まります。チームの風通しを良くするためにも、リーダーとメンバーの1on1ミーティングの実施は大切です。一人ひとりの多様な意見を吸い上げてこそ、実効的なチームビルディングが行えます。
1on1ミーティングに関しては以下の記事も参考にしてください。
1on1ミーティングの効果的なやり方・効果・ポイント、実施手順を詳しく解説
チームビルディングのポイント
チームビルディングに取り組むプロセスの中で、以下の3つのポイントを意識しながら行うことでより効果的な成果が得られるでしょう。
メンバーの主体性を育む
ビジネスシーンにおいて、メンバーの主体性を育み、個人のスキルを最大限発揮させるには「安心できる環境」を確保することが重要です。そのためには、メンバー自身がチーム内での自分の居場所があると自覚し、発言や行動が尊重される環境が整えられている必要があります。
明確な役割を与える
チーム結成初期にこそ、リーダーは積極的にメンバーに役割を与えることが重要です。
ここでリーダーが意識したいのは「指示」ではなく「役割」を与えることです。メンバーが自分自身に指示を行い、都度リーダーの指示がなくとも主体的に行動できるように促します。メンバー自身が役割や課題を意識し、主体的に業務に臨むことで結果的に自己有用感や自己肯定感が高まるのです。
メンバー任せにしすぎない
個人の主体性に配慮し、ある程度の裁量を与えることも必要です。しかし、裁量を与えすぎれば自分の「都合」が優先されてしまい、チームの結束力が損なわれる恐れがあります。何かの業務を任せる場合も、範囲や求める内容を明確にすることが大切です。特にリーダーはメンバーに対し「個人目標」とチーム全体の「チーム目標」をそれぞれ意識し、バランス良くチームの結束力を高める働きかけを行いましょう。
まとめ
チームビルディングは性質上、一朝一夕で成果が見られる取り組みではありません。多くの企業には限られた時間や人材リソースを効率的に活用し、継続的な事業発展を図ることが求められます。企業にはこのような課題意識が根底にあるからこそ、チームビルディングが注目されているのです。
自社への帰属意識が育ち、社内に風通しの良い環境が整うと、今後長期にわたり高い生産性が期待でき、変化にも強い組織体制が構築できます。
プロジェクト管理全般に関する詳しい資料もご用意していますので、ぜひご活用ください。
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