プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM (以下、OBPM)は統合型プロジェクト管理ツールです。
IT業界向けの製品に加えて、昨年春に「製造業版」の販売をリリースしました。
この書き出しを見て、「製造業版?」と疑問に思われるかもしれません。
総務省の統計分類によると、製造業の業種コード(中分類)だけでも24種類あり、小分類になると700種類にもなります。このブログでは、OBPMのプロジェクト管理機能が、製造業のどの業種で効果を発揮するかをご紹介いたします。
製造業の分類
この章では、製造業の分類について整理をします。製造業が作っている製品は、大きく2つに分類されます。
消費財:一般消費者が最終消費のために使用するもの。
- 近くのスーパーやコンビニで購入するもの(最寄品:食料品、日用雑貨など)
- 専門店や百貨店で購入するもの(買回品:衣料品、靴、カバン、家電製品など)
- 専門店で購入するもの(専門品:自動車、高級家具、貴金属など)
生産財:法人(公共機関)が、商品の生産や経営活動で利益をあげるために使用するもの。
- 主要設備(経営活動に必須で大きな投資が必要なもの)
- 補助設備(購入頻度が高く機械的に購入手続きが行われるもの)
- 原料(基礎製品)
- 半製品(ある産業の最終製品:鋼材、鋼管、鉄板、木材、ガラスなど)
- 部品(蓄電池、天下プラグ、タイヤなど)
OBPMの検討をいただく製造業の多くは、生産財を製造しています。その中でも主要設備を生産する企業が圧倒的に多いと思います。
製造業におけるプロジェクトとは?
OBPMの製造業版をリリースしてから、各地の展示会に出展する機会が増えておりますが、ブースに来られるお客様から「プロジェクト管理とは何の管理ができるの?」とよく質問をいただきます。製造業では、日々の業務をプロジェクトと表現することが少ないため、プロジェクト管理というキーワードだと業務のイメージが沸かないように感じます。「工程管理」や「製番管理」とお伝えすると「自社の業務に合うのかな?」と製品紹介に耳を傾けていただけます。
製造業におけるITシステム
製造業における、一般的なITシステムです。多くの企業では業績管理のため生産管理システムが導入されています。自社の製造に合わせて作ったスクラッチシステムもありますが、訪問した多くの企業では生産管理システム(ERP)が導入されております。量産試作が終わり、繰り返し生産の領域ではOBPMの出番はありません。OBPMは、本作前の、試作開発・量産試作までのプロジェクト管理や、機械メーカーのように個別受注生産に近い製品を製造されている企業から多くの提案機会をいただいております。最近では、複数チームが長期にわたって進める研究開発プロジェクトでも検討をいただく機会が増えております。
分類別製造業のプロジェクト管理ニーズ
分類1:製番別工程管理
生産管理システムが導入されている企業では、日々の実績はしっかりと管理ができておりますが、生産計画の段階では苦労されているようです。(製造業におけるITシステム ①)
先日、訪問したお客様では、ERPから出力される生産計画は納期に合わせて組まれるため、日によって指示がでなかったり、ある日はドカンとでたりと、平準化ができないという課題を伺いました。生産計画の段階では、生産スケジューラなど外部のツールを使って生産計画を作成している企業も多いのではないと思います。
OBPMは、ERPやスケジューラで管理が難しい個別受注生産の生産計画でニーズがあります。導入事例をいただいている機械メーカーでは、用途に応じた製品モデルを用意していますが、ほとんどの案件はお客様のニーズに合わせてカスタマイズが入るそうです。また、最近、提案させていただいた薬の受託製造では、原材料は製薬メーカーから供給されるため、決められた納期までに空いている人や設備を確認しながら計画が立てられていました。毎回、異なる要件がある個別受注生産では、TATが一定でないためスケジューラによる計画が難しく、EXCELで計画を立てている企業も少なくありません。
OBPMは、製造モデルごとに各工程のリードタイムをテンプレート化することができます。新規の案件は、計画段階では製造モデルのテンプレートを呼び出し、個別受注要件に合わせてテンプレートの工程タスクを変更しますが、テンプレートを活用することでヌケモレのない精度の高い計画を短時間で作成することができます。また、OBPMでは工数実績や各タスクの進捗率を簡単に登録することができますので、製番別に進捗状況をリアルタイムに把握することができます。最終的な製番別の原価は生産管理システムで管理されるため、登録した工数実績はデータ出力機能を使って生産管理システムに連携します。
分類2:試作開発における部門間の情報共有
定期的にモデルチェンジが行われる完成品においては次期製品の試作開発が行われています。モデルチェンジのタイミングは製品によって様々ですが、短いものでは1年、長いものでは5年といったサイクルで行われています。(製造業におけるITシステム ②)
本作までの試作開発では、現行製品の不具合や顧客からの要望、営業担当者から共有される新規ニーズを取り入れて開発が進められます。試作開発は、製品企画からスタートし、設計、試作・試験、工程設計、量産試作という流れで進みますが、各工程の最終段階ではデザインレビューが行われます。
各工程で実施されるデザインレビュー
OBPMでは、デザインレビューの結果を「マイルストーン機能」によって記録することができます。マイルストーンは、「ガントチャート画面」で各工程の必要なタイミングに設定します。マイルストーンを登録する際、予めドメイン(雛形)に登録してある各工程の品質基準やレビューパターンを合わせて設定することができます。 試作開発の各工程の終了時に、マイルストーン一覧から必要なマイルストーンを呼び出すことでデザインレビューの結果を記録することができるのです。
分類3:研究開発における進捗報告
最後に、研究開発におけるOBPMのニーズをご紹介いたします。(製造業におけるITシステム ③)
最近、研究開発フェーズのプロジェクト管理でOBPMを提案させていただきました。その会社では、10を超えるチームが個々の研究テーマを4年の期間をかけて開発されているとのことでした。弊社が訪問に伺ったタイミングでは、すでにオープンソースのプロジェクト管理ツールなど複数のツールをご覧になられた後でしたが、検討したツールでは、いろいろ管理ができるものの登録ステップが多く研究開発のプロジェクト管理には合わないという結論でした。OBPMの機能を紹介した後のQAで、「週次報告をする機能はありますか?」と質問をいただきましたので、バージョン5.5に実装されたプロジェクトメンバーの週報機能を紹介したところ、現状の週次報告に近いと、高い評価をいただいております。
OBPMの週次報告機能
要素技術などを開発する研究開発においては、各チームに計画の進め方が委任されているため、細かなタスク管理は必要ないのかも知れません。どちらかというと研究テーマに対する活動結果と実績を部内で共有できる仕組みが重要なのだと感じました。
今後のOBPM製造業版の機能強化について
製造業版をリリースしてから1年間、数多くの製造業を訪問しましたが、IT企業とは異なるプロジェクト管理のニーズがあることが分かってきました。特に、IT企業のプロジェクトと進め方が違うと感じるのは、各工程で組織が分かれているということです。
製造業の工程管理
設計部門は複数製番の設計工程を管理し、製造部門は複数製番の製造工程を管理しておりますので、全社で動いている全製番の進捗は、企画部門が定期的に情報収集を行い大工程表に落として共有されます。ある工程が遅れると、次工程や他の製番に影響があるため、遅れに対してはアラートで注意を促したいといった要望が多くあがっています。また、デザインレビューに対しては、現状のOBPMでは品質管理部門が代表してレビュー結果を登録する仕様になっておりますが、レビューに参加した各部門のレビュアーの評価結果を残したいといった要望も多くいただいております。
統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」を製造業向けにご紹介する資料もご用意していますので、こちらもぜひご覧ください。
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