プロジェクトメソッドと言う言葉をご存知でしょうか?
こども達に自発的な目標設定、計画立案、実行、評価とプロセス立てて行わせることで自主性や社会性を向上させる教育方法の一つです。
20世紀初頭のアメリカで生まれた方法ですが、日本にも影響を与えてます。
皆さんも夏休みの宿題で自由研究をされたことがあると思います。
この自由研究などはまさにこのプロジェクトメソッドが生かされていると言えるでしょう。
プロジェクトメソッドは計画が大事
ところで夏休みの自由研究と言えば、私はかなり苦労をした覚えがあります。
研究テーマがなかなか決まらなかったり、他の宿題や遊ぶ事を優先して中々やらなかったり、気付けば夏休みが終わりかけていて、絶望感と共に慌てて作業を開始するわけです。
この苦労の背景には計画力が潜んでいると私は感じています。
いつまでにテーマを決め、いつまでに何を作り、いつまとめるのか、ちゃんとスケジュールを作成して、進めていけば私のような苦労はしなくて済んだと言えるでしょう。
実際のプロジェクトにおける計画メソッド
この計画について、実際のプロジェクトでも同じようにこの計画力が成功の秘訣です。
作業詳細が決まらない、計画にない作業が増える、作業ボリューム大きく終わらない、etc
こういった想定外の出来事があれば、当初のスケジュールから大きく逸脱する事態に陥り、プロジェクトが失敗する可能性が高まります。
では上記のような事態は本当に「想定外」だったのでしょうか?
どの出来事も計画段階でしっかり詰めていれば、ある程度事前に分かった事です。
つまり、しっかり計画を立てる事で、失敗するリスクを軽減、成功につなげる事が出来るのです。
今回紹介するのは計画における管理メソッドです。
スコープとWBS
スケジュールを立てる上で大きく2つのポイントがあります。
1つは「スコープ」、もう1つは「WBS」です。
スコープについて
プロジェクト内で「行うべき作業」と「作るべき成果物」をスコープと呼んでいます。
つまり作業範囲の事です。
例えば、アサガオの観察日記を作る自由研究をするのであれば「アサガオを栽培して、観察日記をつくる」のがこのプロジェクトの目的となります。
この時に「アサガオを栽培する」「観察日記をつくる」と言うのが「行うべき作業」、プランターに入った「アサガオ」や「観察日記」が「作るべき成果物」です。
「作るべき成果物」、これを定義するのはイメージしやすいと思います。
一般的なシステム開発であればつまり「納品物(設計書、プログラム一式、テスト結果報告書)」とそれに付随する「成果物(レビュー結果一覧、障害一覧など)」の事です。
これらを定義する事で、例えばプログラムを反映させる「インストーラー」の作成を忘れてた、など作業の漏れを回避するとともに、PJメンバ間でも作らなければいけないものだ、と認識させることが出来るので作業の増加を防ぐことが出来るのです。
「やるべき作業」は作業内容の定義です。
例えば「要件定義」と言っても作業内容はプロジェクトによって様々で現行システムを利用するのか、システム構成は物理サーバなのか、など扱うシステムによって確認すべき内容が異なります。
後から実は他システムとの連携が必要だったと判明すると、そのタイミングで連携仕様に対しての確認作業をする必要が出てきます。
このようにやるべき作業が漏れてしまわないように事前に洗い出す必要があります。
WBSについて
WBSとはプロジェクトで行う作業を分解、洗い出して、階層毎にまとめた(構造化した)ものです。
例えば、アサガオの観察日記を作る自由研究をする場合、先ほど「アサガオを栽培して、観察日記をつくる」とスコープを定義しました。
WBSを作るにはさらにどんな作業をやるのか、と掘り下げて考えます。
アサガオを栽培するにはまずアサガオの育て方を調べたり、種や道具を手に入れないといけません。調べ方は図書館に行けば育て方に関する本がありますし、道具はジョウロであれば家にあるかもしれませんが、プランターや支柱はホームセンターで買ってこないといけないでしょう。
さらに他の視点からも深掘りします。タイミングは毎日何時に観察するか、栽培に使う土は市販の土を使うのか、腐葉土や有機肥料を混ぜて自作するのか。
芽が出て育って来たら植え替えをするのか、病気予防に薬剤をまくか、追加の肥料を加えるか、などこうして深掘りする事で「アサガオの種や道具を買ってくる」「土に腐葉土と有機肥料を混ぜ合わせる」「病気予防に薬剤をかける」「追加の肥料を加える」と言った作業を洗い出します。
さらにこの洗い出した作業をフェーズによって区分けをします。
「事前準備」⇒「アサガオの育て方を調べる」「種や道具を買ってくる」「観察するタイミングを決める」
「アサガオの栽培」⇒「土づくりをする」「種をまく」「植え替えをする」「薬剤を散布する」「肥料を追加する」
こうして階層構造にまとめたものがWBSです。
ここでどれだけ検討して洗い出しが出来るか、が計画を立てる上で最も重要なポイントとなるでしょう。
WBSのメリットは構造化出来る事です。
上記のように、「事前準備でやる事」「栽培でやる事」と分けて考えて可視化がする事で「事前に土作りのやり方を調べるのを忘れてた」などの作業の抜け漏れ防止につながります。
また、作業が荒いさせることで担当者を割り当て、作業分担する事が出来ます。
作業の多い大規模案件では作業分担する事でスケジュールの短縮を図れますし、上記のような「育て方を調べる」「道具を買ってくる」のような細かな作業は担当者のTODOで管理し、進捗管理は「事業管理」で管理すると言った、管理メッシュを考える事も出来ます。
上記の通りWBSのメリットは沢山あるのですが、毎回ゼロベースで洗い出そうとすると時間もかかり、抜け漏れも発生しやすくなってしまいます。
そうならないように予め、作業のテンプレートを用意しておく事が重要となります。
スケジュールを立ててみよう
それではスコープとWBSがわかったところでスケジュールを立てていきましょう。
先ほど作成したWBSの作業ごとに担当者と期間を設定していきます。
期間を設定する際には注意しなければならないのが期限(納期)です。
プロジェクトの評価はQ(品質)C(コスト)D(納期)を基準にされますので、スコープで決めた成果物をいつまでに完成させればD(納期)が守れるのか、を中心にして、その為にはこの作業はここまでに終わらせなければならない、と終わりから逆算をしてスケジュールを組み立てます。
この自由研究で言えば、新学期の開始(9/1)に種をまいてから約1ヶ月半の期間分の観察記録を提出できなければ、担任から親宛にクレームが飛んでしまう事態になるので、何としても納期を守らねばなりません。
アサガオは種をまいてから花が咲くまでおおよそ5週間程度掛りますので、8月に入ってから種をまいては花が咲く前に夏休みが終わってしまう可能性があり、7月中には種をまかなければなりません。
そうなると「土作り」をするのは種をまく前、夏休みに入ってからすぐに済ませなければなりませんし、「育成方法を調べる」「道具を準備する」と言った事前作業は夏休み前には完了しておく必要があるでしょう。
スケジュールを引く際もWBSで構造化してあれば、まずは大枠である「事前準備」「アサガオの栽培」「観察日記の作成」の単位で期間を設定し、その期間の中で細かな作業「土作りをする」「種まきをする」の期間を設定すると言ったやり方でスケジュールが引ける為、作業が前後していたり、同時進行してしまうような事態を防ぐことができます。
プロジェクト管理ツール:Object Browser PMとスケジュール
プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM(以下、OBPM)」では今回紹介した「スコープ」や「WBS」を管理する画面とチャート形式でスケジュールを引く「ガントチャート」画面を使ってスケジュール作成をしています。
「WBS」と「ガントチャート」が連動している為、構造を意識したスケジュールが組みやすく、スコープを共有、WBSを作成して、スケジュールを引く、と順序立てて作業出来る仕組みになっています。
また、ドメインと呼ばれるWBSのテンプレート機能がありますので、予めテンプレートを用意しておけば新任のPM、PLでも作業の抜け漏れを防ぐ事ができます。
テンプレートの管理も、新規に作るだけでなく、成功したプロジェクトのWBSやノウハウをベースにしてテンプレートを追加できる為、管理レベルの底上げなどにも役立つことでしょう。
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