プロジェクト管理ツールとその費用対効果(Vol.22)

 2018.01.29  株式会社システムインテグレータ

「費用対効果を経営陣に説明しないといけないんですよねぇ。」

 プロジェクト管理ツールを提案する中で、よくお客様から聞くセリフです。

極端に言い換えるのであれば、「費用対効果が高いシステムであれば導入する。」「費用対効果が低いシステムであれば導入しない。」ということになります。

企業である以上、何かに投資をする際には費用対効果を考えるのは当然のことですが、どのように費用対効果考えるか、その基準は非常に難しいと思います。それは、費用対効果を計測し易いものと、そうでないものがあるからです。

今回は、プロジェクト管理ツール導入とその費用対効果について考えることで、皆様のプロジェクト管理ツール導入検討のお役に立てればと思います。

プロジェクト管理ツール導入にかかる費用

まず、費用対効果の話をするうえで、プロジェクト管理ツール導入にかかる費用について見ていきます。一般的にプロジェクト管理ツールを導入する際にかかる費用には以下のようなものが考えられます。

① ライセンス費用(買い取り費用、もしくは月額利用料)
② ライセンスの保守費用(年額)
③ ハードウェア費用(サーバー購入費、もしくはクラウド利用料)
④ 導入支援費用(メーカーや代理店による支援費用)
⑤ 導入リソース費用(自社側の導入に関わるメンバーの費用)
⑥ 運用維持に関わる自社メンバーの費用(バージョンアップ作業、ツールでの管理/監視)

オープンソースのプロジェクト管理ツールの場合①②④が不要な代わりに⑤や⑥が大きくなったり、クラウドサービスの場合には②③が不要だったりと、ツールによってかかる費用にはそれぞれパターンがあります。 

いずれにしても、プロジェクト管理ツール導入の費用対効果を計測する場合、上記の費用に対してどれだけ効果が得られたのかを考えなければならないということになります。

では次に、プロジェクト管理ツールの導入によって得られる効果にはどのようなものがあるかを考えていきます。

プロジェクト管理ツール導入によって得られる効果

一概に決めることは出来ませんが、プロジェクト管理ツール導入によって得られる効果には以下のようなものがあります。

① データ集計及びチェックコストの削減(プロジェクト管理コストの削減)
② データの一元管理によるプロジェクトの可視化(プロジェクト管理効率の向上)
③ 利用ツール統一による業務標準化(プロジェクト管理業務の標準化)
④ ノウハウの蓄積と活用(プロジェクト管理レベルの向上)
⑤ ①~④による失敗プロジェクトの削減(経営課題解決)

①については、計測し易い効果の一つだと思います。
例えば弊社の場合、自社開発のプロジェクト管理ツールOBPMを運用する前と後で、データ集計や報告書作成にかかっていた管理コストを、年間約200万円削減出来ました。

別のブログにも書きましたが、以前私が訪問した不採算プロジェクトゼロを実現している企業では、専任のPMOが2名体制でExcelを駆使し、毎週木曜日と金曜日の2営業日をまるまる使い、全プロジェクトをチェックしていました。1ヶ月で16人日(2名×2人日×4週)、年間で192人日=9.6人月。仮にPMOの標準原価を80万円/月だとすると、年間で768万円という費用がかかっている事になります。プロジェクト管理ツールを導入した後、当該コストがどの程度削減できたのかを計測すれば効果を算出出来ます。

②についても、効果を計測し易いと思います。例えばリソースの可視化を考えた場合、ツール導入前はいちいちPLやメンバーに空き状況をヒアリングしていた作業が、ツールを導入したことによって、そのヒアリングにかけていた時間が削減されたとなれば、削減された費用を算出することが出来ます。

③はどうでしょうか。会社として、もしくは部門として業務が標準化されたかどうかを判断することは出来ますが、標準化実現度合いを計測できたとしても、それによって得られる効果を数値で計測するのは難しいように思います。更に言うのであれば、標準化を実現することで、逆に業務効率が下がる人も出てくる可能性があります。

④も同様です。過去のAプロジェクトのリスク対応結果や障害対応の結果、見積情報を活用したことで、今進めているBプロジェクトが上手くいっていることを証明するには、少なくともBプロジェクトに関わるメンバーがAプロジェクトのノウハウを ' 活かした ' という事実を記録、共有出来ていなければならないため、効果を計測するのには限界があります。また、仮に計測できたとしても、Bプロジェクトが完了するまで ' 活きたかどうか ' が判断出来ないため、効果を計測できるまでにそれなりの時間を要することになります。

⑤はどうでしょうか。結論から言うと計測しやすい効果ではあります。プロジェクト管理ツールを導入する前の失敗プロジェクト件数と導入後の失敗プロジェクト件数を比較、もしくは、導入前のプロジェクトあたりの利益率と導入後の利益率を比較すれば定量的に計測することが出来ます。しかし、最低でも年単位の時間が必要になることは言うまでもありません。

以上のように、得られる効果には計測し易いものと、そうでないものがありますし、計測できたとしても長い時間がかかるものがあります。そういった効果を考え、かける費用との対比を行なうのには限界があるように思います。ましてや、ツールを導入する前に見込んだ効果にどれほど信憑性があるかわかりません。

では、費用対効果をどのように考えれば良いのでしょうか。

プロジェクト管理手法入門ガイド
プロジェクト管理ツール 比較ガイド

プロジェクト管理ツール導入の費用対効果を出すためには

前項までを踏まえ、プロジェクト管理ツールを導入し高い費用対効果を生み出すために重要なことは何なのか。

弊社がプロジェクト管理ツールを導入したお客様、また他社のツールを導入しているお客様で高い効果を出しているお客様に共通していることがあります。それは、「開発側であるメーカーが意図した使い方をちゃんとしているかどうか」です。 

いわゆるパッケージソフトと呼ばれている完成品は、当然ながらちゃんと使えば効果が出るように開発されています。効果が出ていない、もしくは効果が出るのに時間がかかっている企業には以下のような共通点があるように思います。 

・メンバーが運用ルールをちゃんと守らない。

・管理者が見るべき項目をちゃんと見ていない。

・定期的に運用の改善を行なっていない。

これは、プロジェクト管理ツールに限らず言えることなのではないでしょうか。皆様の会社の中で使われている様々なツールを考えたとき、効果が出ているものとそうでないものを比較すると、前述のような原因にいきつくのではないでしょうか。 

最後に費用対効果を出すための大前提をお話します。何よりも大切なのは、何のためにプロジェクト管理ツールを導入するのかという、目的を明確にすることです。

プロジェクト管理ツールの導入目的と効果

なぜ、目的を明確にする必要があるのか。それは目的を明確にしなければ、プロジェクト管理ツールを導入した結果得られた効果が、もともと得たかった効果なのかが判断出来ないからです。一般的にプロジェクト管理ツールを導入する目的には以下のようなものがあります。

・要員の状況を正確に把握するため。

・プロジェクト管理業務(集計、報告、共有etc)を効率化するため。

・課題やタスクの抜け漏れを防ぐため。

・スケジュールを一元管理するため。

・プロジェクトの見える化を実現するため。

・会社のプロジェクト管理業務を標準化するため。

・プロジェクト管理レベルを上げるため。

・失敗プロジェクトを減らすため。

「要員の状況を正確に把握する」という目的を達成するのであれば、工数予実に特化したツールを検討すれば良いですし、「課題やタスクの抜け漏れを防ぐため」という目的を達成するのであればRedmineのようなオープンソースのツールを選べば良いと思います。「スケジュールを一元管理するため」という目的を達成するのであれば、MSProject(Sever)のようなスケジュール管理を軸としたツールを選ぶのも良いと思います。

プロジェクト管理ツールをご提案する中で、意外とこの目的が明確になっていない企業が多いように思いますし、ツールを導入する中で、ツールの機能に引っ張られて目的が悪い意味で変わってしまっている企業様も多いように思います。

導入目的を明確にし、それにFitするプロジェクト管理ツールを選び、そのツールが意図している使い方をちゃんとする。当たり前のことですが、これこそがプロジェクト管理ツールの費用対効果を高める唯一の方法だと思います。

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