建設・工事業向けERPとは?役割と機能を徹底解説

 2021.12.23  株式会社システムインテグレータ

これまで、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)の活躍領域は製造業や小売業などが中心になっていました。もともと欧米製造業を中心に発展したERPは、日本企業においても製造・小売りなどの領域に適していると言われていました。

しかし昨今では、建設・工事業でもERPを活用するケースが増えています。製造業・小売業と比べても特殊なビジネスプロセスを持つ建設・工事業では、ERPがどのように活用されているのでしょうか?

本稿では、建設・工事業でERP導入を検討されている方に向けて、ERPの基礎知識から建設・工事業におけるERPの役割と機能についてご紹介します。

ERPのキホン~ERPの基礎からDXへの活用まで徹底解説~

ERPとは何か?

建設・工事業向けERPとは?役割と機能を徹底解説 1

ERPをシンプルに言い表すならば、「事前検証された統合的な基幹システムの集合体」です。1990年代より活発化した基幹システムの個別最適化は、部門ごとに異なる基幹システムを導入し、それぞれの業務プロセスに特化したシステムを構築しよう、という考え方です。これは建設・工事業でも例外ではなく、部門や業務に応じた個別の基幹システムが構築されていきました。

当初こそ問題はなかったのですが、グローバルでの市場競争が激化するにつれて、日本企業ではシステム上の重大な課題が浮き彫りになっていきます。それが「基幹システム間の連携不足」による非効率な経営です。

基幹システムは経営上不可欠なデータを生み出す源泉です。激化する市場競争の中で強い企業体質を作るためには、組織全体のデータを素早く分析し、正しい経営意思決定を下すための判断材料を可能な限りリアルタイムに整える必要があります。つまり、「スピード経営」が欠かせない、ということです。

しかし、個別最適化が進んだ日本のシステム環境では、各基幹システムから必要なデータを抽出するだけでも時間がかかります。さらに、基幹システムにごとに扱われるデータフォーマットやその粒度も違い、重複するデータも存在します。それらのデータをクレンジング(整理・加工して分析しやすい状態にすること)するのには膨大な時間がかかり、結局リアルタイムな経営可視化が実現できません。例えるならば、数か月前の天候情報や船体状況を確認しながら航海を続けるようなものです。

そこで救世主のごとく登場したのがERPです。日本では2000年代より導入が活発的になったERPは、経営上欠かせない基幹システムが事前に統合された状態でシステム環境が構築され、各基幹系システムがデータ連携をスムーズに行えるようになっています。

失敗から学ぶERP導入プロジェクトの進め方
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ERPについてはこちらのブログでより詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
ERPとは何か?MRPとの違いや、管理手法の変遷を解説   

ERP活用によるメリット

建設・工事業向けERPとは?役割と機能を徹底解説 2

ERP最大のメリットはやはり「基幹システムが統合され、データのやり取りがスムーズに行われる」という点です。ここから生まれるERP効果とはどういうものなのか?以下に、一般的に得られる効果を挙げてみます。

  • 基幹システム間で起きる二重のデータ入力作業が排除され、人的ミスが無くなる
  • 1ヵ所で入力したデータが基幹システム全体に反映されるため、データの信頼性が担保される
  • データが単一のフォーマット・粒度で管理され、データ分析においてクレンジング作業が要らない
  • データ分析を通じて組織全体の経営情報がリアルタイムで可視化できる
  • 分散していたシステム管理業務が集約され、情報システム担当者の負担を軽減し、IT戦略を推進できる
  • システム管理の集約化によってセキュリティ・ポリシーの適用が容易になり、セキュリティが強化される

こうしたERP効果は、当然ながら建設・工事業にも適用されます。特に最近では、建設・工事業向けのERPソリューションが提供されるケースも多いことから、単純な事務作業の効率化に終わらないのが大きな特徴です。

建設・工事業における課題

建設・工事業向けERPとは?役割と機能を徹底解説 3

まずは、建設・工事業によくある経営課題を以下に整理してみます。

  • 建設・工事業の固有業務に基幹システムが対応しておらず、一部手作業が必要になる
  • 営業システム、工事システム、原価システムが別々に存在し二重入力作業が多々発生している
  • 実行予算など計画の管理が不十分で、正確なプロジェクトの損益把握ができない
  • 物件単位の仕掛コスト算出があまく、コスト超過の察知が遅れる
  • 部品の在庫管理が正確に行えない

建設業や工事業では、その業務特有の管理を行う必要があります。

例えば工事現場の工程や予算、安全を管理する工事現場管理や、資材管理、工事別の実行予算管理や工事進行基準への対応が必要です。

このような管理ができる工事管理システムを個別で導入するといった方法もありますが、異なるシステムを採用することで、二重入力の負担や、結果としてシステムの管理・保守といったコストが高額になってしまう場合があります。

工事管理システムについては以下の記事で解説しています。
工事業界のシステム化を成功させるには?工事管理システムの効果を徹底解説

建設・工事業がERPを活用するメリット

建設・工事業向けERPとは?役割と機能を徹底解説 4

それでは、ERPを導入することで建設・工事業でどのようなメリットを得られるのでしょうか?例えば以下のような課題解決につながります。

  • 見積、受注、手配、工事完了までを一気通貫で管理する
  • 締処理後に間接費を自動配賦し、財務会計データや管理会計データへ自動的に反映する
  • 実行予算の当初と現在の実績を比較表示し、収支の着地見込みを高度に予測する
  • 長工期プロジェクトにおける部品購買の分納や、作業発注の分割検収に対応する
  • 契約、台帳管理、作業や材料の実績管理、生産品の設置・据付など工事・エンジニアリング業に求められる基幹業務を統合する

すでにご説明した通り、建設・工事業ではその業務に適した機能が必要になります。必ずしもすべてのERPがこのような機能を搭載しているわけではありません。

そのため、ERP導入を検討する際は建設・工事業向けの機能を組み込んでいるか、標準機能ではなくてもアドオンモジュールなどで機能追加が可能か、といった点を考慮する必要があります。

それでは、建設・工事業向けのERPが持つ機能を確認してみましょう。

機能 詳細
物件(プロジェクト)登録
  • プロジェクトごとに担当部門、得意先、実行予算、見積、受注、工事着手日、 工事完成日、保証終了日、受注確度などのステータスを一覧確認
  • 受注入力を行うことで、自動的に受注確度が「ステータス:受注」に更新
見積
  • 見積金額と同時に原価金額、粗利額を把握
  • 社内管理用の明細見積とは別に、得意先用に一式見積の作成が可能
原価見積・実行予算
  • 原価明細ごとに原価内訳(作業、部材購買、作業発注、在庫払出)を入力可能
  • 原価見積の明細情報を引用した実行予算作成が可能
受注
  • 受注金額と同時に見積金額、原価金額(最新実行予算)、粗利額を把握
  • 見積情報を引用した受注入力が可能
手配(部材購買・作業発注・在庫払出)
  • 実行予算の各明細情報(部材購買・作業発注・在庫払出)をもとに手配データを一括生成
  • 購買品の分納、作業発注の分割検収にも対応
工数実績
  • プロジェクトごとに工数実績を登録し労務費を計上。間接費プロジェクト(研究開発、間接工数など)入力も可能
  • プロジェクト対象社員のランク別単価設定が可能
  • 外部システムやExcelなどで作成した工数データの取込処理が可能
原価
  • プロジェクトごとの採算状況(見積金額、契約金額、実行予算、売上金額)を把握
  • プロジェクトの見込と実績を月ごとに対比させ、現時点の実績を把握

参考製品:GRANDIT ADM(工事アドオンモジュール)

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建設・工事業に向けたERPによる改革

いかがでしょうか?ERPは今や建設・工事業でも活用することが当たり前の時代です。当社システムインテグレータが提供する「GRANDIT」においても、工事管理モジュールの提供に始まり建設・工事業向けソリューションを提供しております。現状として多くの経営課題を実感している場合は、この機会にERPによる経営改革を目指してみてはいかがでしょうか?

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