中小・中堅企業が直面する課題を解決する「クラウドERP」とは

 2025.08.20  株式会社システムインテグレータ

中小・中堅企業において、システム老朽化や人材不足、事業拡大に伴う業務の複雑化は、今や共通の課題となっています。従来のオンプレミス型ERPでは、導入や運用に多大なコストとリソースが必要となり、変化のスピードに柔軟に対応できないケースも少なくありません。

こうした状況の中で注目を集めているのが「クラウドERP」です。従来のERPと比べ、導入のしやすさや柔軟な拡張性、そして限られたリソースでも運用を継続できる点から、多くの中小・中堅企業にとって現実的な選択肢となっています。

本記事では、クラウドERPの特徴やメリット、導入によって解決できる中小・中堅企業特有の課題、さらにおすすめの製品について解説します。ERP刷新を検討中の企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

クラウドERPとは

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クラウドERPとは

クラウドERPとは、インターネット経由で利用できるERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務システム)のことを指します。従来のように自社サーバーへインストールする必要がなく、ベンダーが提供するクラウド環境を利用するため、導入や運用の負担を軽減できるのが大きな特徴です。
「クラウドERP とは」という検索ニーズが高いように、多くの中小・中堅企業が今まさに注目している領域です。

オンプレミスERPとの違い

オンプレミス型ERPは、自社内にサーバーを設置し、ソフトウェアを導入して利用する仕組みです。カスタマイズ性やセキュリティコントロールの自由度は高いものの、初期投資や運用管理の負担が大きく、IT人材不足に悩む中小・中堅企業にはハードルが高いケースも少なくありません。

一方、クラウドERPはインフラの保守・管理をベンダーに委ねられるため、自社のITリソースを効率的に活用できます。最新機能へのアップデートも自動的に反映されるため、常に最新の環境で業務を運用できる点も大きなメリットです。

SaaS型ERPとの違い

クラウドERPは「SaaS型ERP」とイコールと捉えられがちですが、正確にはクラウドERPは SaaS(Software as a Service)型に加えて、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)の形態も含む広い概念 です。

SaaS型ERPは、標準化されたソフトウェアをインターネット経由で利用できる形態であり、クラウドERPの一種といえます。中小・中堅企業にとっては、業務標準化やFit to Standardの実現に直結する点から導入のメリットが大きい一方、業種特有の要件に応じて柔軟に構築したい場合は、IaaS型ERPやPaaS型ERPといった選択肢も検討対象になります。

なぜ今中小・中堅企業は「クラウドERP」なのか

近年、多くの中小・中堅企業でクラウドERPの導入が加速しています。その理由は単なるシステム刷新ではなく、企業成長と変化に柔軟に対応するための「経営基盤」としての重要性が増しているからです。

事業成長に合わせた柔軟なシステム基盤の必要性

中小・企業は既存事業の拡大と並行して新規事業にも挑戦する機会が多く、事業の変化に伴って業務プロセスも頻繁に変わります。業務が変われば、それを支えるシステムも変わらざるを得ません。

オンプレミス型やカスタム開発に依存したERPでは、その変化への対応が重荷となりがちです。その点、クラウドERPであれば、スモールスタートから始めて必要に応じて機能を拡張でき、他社システムとの連携も容易に行えます。これにより、成長フェーズに応じた柔軟な経営基盤を築くことができます。

法制度対応へのスピーディな対応

電子帳簿保存法やインボイス制度など、日本国内の法制度は企業に対して常に新たな対応を求めています。オンプレミス型では法改正のたびに自社でシステム改修を行う必要があり、大きな負担となります。クラウドERPであれば、ベンダーが提供するアップデートによって迅速かつ確実に法制度へ対応できるため、安心して本業に集中できます。

最新技術の活用による生産性向上

クラウドERP、特にSaaS型では、ベンダーが自社の製品価値を高めるために生成AIやローコード開発ツールといった最新機能を継続的に提供しています。これらを活用することで、業務効率化だけでなく、データ活用による意思決定の高度化や生産性の飛躍的向上が可能になります。結果として、他社との差別化や競争力の維持にもつながります。

こうした背景から、クラウドERPは単なるコスト削減のためのツールではなく、中小・中堅企業の成長と変革を支えるデジタル基盤として注目されています。

中小・中堅企業にとってのクラウドERPのメリット

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中小・企業がクラウドERPを導入することで得られる効果は、単なるコスト削減にとどまりません。ここでは、導入後に期待できる具体的なメリットを整理します。

初期投資を抑えたスピーディな導入

クラウドERPはサブスクリプション型で提供されることが多く、オンプレミス型ERPのようにサーバーや機器への大規模投資が不要です。スモールスタートが可能なため、投資回収のスピードを早められる点も中小・中堅企業にとって大きな魅力です。

運用負担の軽減とセキュリティ強化

システムの保守・セキュリティ対応はベンダーが担うため、情報システム部門の運用負担を大幅に削減できます。IT人材不足が深刻化する中小・中堅企業にとって、限られた人材を業務改善やDX推進といった付加価値の高い領域にシフトできる点は大きなメリットです。

業務標準化による生産性向上

クラウドERPにはベストプラクティスを反映した標準機能が備わっており、属人化や重複作業を排除できます。業務標準化(Fit to Standard)を進めることで、業務効率が向上し、品質やガバナンスの強化にもつながります。
Fit to Standardについてはこちらの記事をご参考ください。

データ活用による経営判断の高度化

クラウドERPはリアルタイムでのデータ収集・分析を可能にします。これにより、在庫や原価の可視化、収益性の把握など、経営判断に必要な情報を迅速かつ正確に得られます。生成AIやBIツールとの連携によって、経営層が求めるスピード感ある意思決定を支援します。
データドリブン経営についてはこちらの記事をご参考ください。

成長に応じた拡張性と柔軟性

事業拡大や新規事業の立ち上げに応じて、機能追加や他システムとの連携を容易に行えるのもクラウドERPの強みです。企業成長に合わせて段階的に拡張できるため、無理のないシステム基盤構築が可能です。

中小・中堅企業が直面する課題とクラウドERPでの解決事例

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よくある課題1:部門ごとに分断された基幹システム

販売管理は販売管理システム、在庫はExcel、会計は会計ソフト、といったように部門ごとに異なるツールを使っている中小・中堅企業は少なくありません。システムが分断されているために情報がリアルタイムで共有できず、需給計画の精度が低下したり、経営状況を全社的に把握するのが困難になります。

クラウドERP導入の効果
基幹業務を統合しデータ
を一元管理することで、在庫や収益性をリアルタイムに可視化。経営判断のスピードと精度を高められます。

よくある課題2:グループ共通ERPと自社ニーズのズレ

親会社やグループ全体で共通のERPを利用している場合、自社の業務フローに合わないケースがあります。「必要以上に複雑で使いにくい」「逆に自社に必要な機能がない」といったミスマッチが発生し、結局Excelや別システムでの二重管理に頼らざるを得なくなることもあります。

クラウドERP導入の効果
標準化された仕組みを活用しつつ、必要に応じて機能を拡張したり外部システムと連携したりできるため、グループ方針に準拠しながらも自社に合った運用が可能になります。

よくある課題3:システム保守の重荷

オンプレミス環境では、サーバーの維持管理やバージョンアップ対応など、システム保守が情報システム部門の大きな負担となります。特に中小・中堅企業ではIT人材が限られているため、日々の運用に追われ、本来取り組むべき業務改善やDX推進に手が回らない状況に陥りがちです。

クラウドERP導入の効果
保守やアップデートをベンダーに任せられるため、常に最新かつ安全な環境で運用可能。情報システム部門は運用から解放され、戦略的な業務に注力できます。

よくある課題4:成長に伴う業務拡張や組織再編への対応

事業拡大や新規事業立ち上げ、M&Aによる組織再編など、変化が多いのも中小・中堅企業の特徴です。しかし既存のシステムでは柔軟な拡張が難しく、機能追加や改修に時間とコストがかかり、成長スピードにシステムが追いつけないケースが少なくありません。

クラウドERP導入の効果
スモールスタートで導入し、必要に応じてモジュール追加や連携を柔軟に行えるため、成長や変化に合わせたシステム運用が可能になります。

中小・中堅企業におすすめのクラウドERP

GRANDIT

「GRANDIT」は、GRANDITコンソーシアムが提供する国産の統合型ERPパッケージです。
年商100〜1,000億円規模の中小・中堅企業を主な対象とし、日本企業の商慣習に合わせた設計とWebベースの操作性を特長としています。会計、人事、給与、販売、在庫、生産管理、工事(プロジェクト管理)など主要な基幹業務を幅広くカバーし、IaaS環境でのクラウド運用や他サービスとの柔軟な連携にも対応しています。
GRANDIT製品ページ

GRANDIT miraimil

「便利 × 手軽 × 中小企業向け」をコンセプトとした、年商30億~300億円規模の中小・中堅企業向けSaaS型ERPです。シリーズ製品「GRANDIT」で培われたノウハウを活かし、特に商社・卸売業、IT・ソフトウェア開発、サービス業に強みを持っています。販売・経理といった基幹業務に加え、プロジェクト原価管理や継続契約管理など、業種特有のニーズに対応可能です。
最近では生成AIを活用したチャットボットや情報検索機能との連携も進んでおり、利便性がさらに向上しています。
GRANDIT miraimil製品ページ

SAP Cloud ERP

年商100億~500億円規模の企業を対象としたSAPのSaaS型ERPです。多業種で蓄積されたベストプラクティスを活用し、業務の標準化・効率化を実現できる点が大きな特長です。さらに、AIやRPAなど最新技術を取り込みながら、企業の変革を継続的に支援します。
SAP Cloud ERPの製品ページ

NetSuite

1998年に設立された、世界初のSaaS型ERP企業として知られています。「Oracle ERP Cloud」が大企業向けであるのに対し、NetSuiteは中小・中堅企業向けに位置付けられています。財務・会計、CRM、SFA、プロジェクト管理、BIなど幅広い機能を持ち、グローバル展開にも強みを発揮します。190通貨、27言語、複数子会社管理に対応しており、海外拠点を持つ企業にも適しています。
NetSuite製品ページ

奉行VERPクラウド

オービックビジネスコンサルタントが提供するSaaS型ERPで、年商30億~300億円規模の企業が対象です。機能・ユーザー数・データ容量に応じた柔軟な価格設定が可能で、比較的導入しやすい点が魅力です。特にバックオフィス業務に強みを持ち、自社・他社サービスとの連携もしやすい設計となっています。
奉行VERPクラウド製品ページ

まとめ

これまでERPは「大企業向けのシステム」という認識が一般的でした。導入コストや運用負担の大きさから、中小・中堅企業や中小企業には現実的ではないとされてきたのです。

しかし、クラウドERPの普及により状況は大きく変わりました。初期投資を抑えられるサブスクリプション型の料金体系、ベンダーによる保守運用のサポート、そしてスモールスタートから段階的に拡張できる柔軟性といったメリットにより、むしろ中小・中堅企業にこそ適した選択肢 になりつつあります。

いまやERPは、単なるシステム刷新にとどまらず、経営スピードを高め、競争力を維持・強化するための経営基盤 として検討する企業が増えています。

もしERPに関する情報収集や具体的な導入検討でお悩みがあれば、ぜひシステムインテグレータまでお気軽にご相談ください。当社は30年以上にわたりERP導入を支援しており、特に中小・中堅企業における豊富な実績をもとに、最適なご提案をいたします。

クラウドERPを経営基盤として活用し、次の成長へ踏み出す一歩を、ぜひ今から検討してみてはいかがでしょうか。


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