SAP S/4HANAに標準で搭載されている「SAP Fiori(フィオーリ)」は、企業がSAPシステムをより使いやすくするためのユーザーインターフェースです。
グローバルスタンダードであるSAPは豊富な機能を備えていますが、業務によって使いやすい画面設計は様々です。SAP FioriはユーザーがよりSAPを使いやすくするための機能を提供しています。本記事では、SAP Fioriの概要と、その前身であるSAP GUIとの違いについて詳しくご紹介します。
そもそもSAPとは?
SAPとは、ドイツのソフトウェア会社であるSAP社が提供しているERPシステムのことです。SAPは、販売管理、生産管理、財務管理など、企業のあらゆる業務を効率的に実行・管理できるようになっています。あるデータを入力すると他の関連する業務にもそのデータが即時に反映されるなど、一元化されたデータ管理で、各部門間の動きを数値として即時に把握できるようになっています。
SAPについては以下のブログで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
SAPとは?ドイツ発ERPの特徴や導入のポイントを解説
現在SAPの最新バージョンとして「SAP S/4HANA」が提供されており、SAP HANAというSAP社が開発したデータベースがインメモリデータベースとして採用されています。
SAP FioriはこのSAP S/4HANAで利用できるシステムとなっています。
SAP Fioriとは
SAP Fioriは2013年に発表された、SAP S/4HANAをより効率的に活用できるような画面をHTMLなどのオープン系の言語で作成できるシステムで、SAP S/4HANAに標準で実装されています。
例えば伝票の入力画面やレポート出力画面などユーザーが利用しやすい画面を作成することが可能です。
ユーザーに一貫性のある総合的なUXを提供することをコンセプトに、ユーザー中心のデザインで構成されたシステムです。
SAP GUIとSAP Fioriの違い
SAP GUIとSAP FioriはいずれもSAPシステムとユーザーをつなぐインターフェースです。SAP Fioriが登場する前のメインインターフェースがSAP GUIだったのですが、機能が豊富な反面、機能が豊富すぎるためボタンが密集し、利用したい機能を見つけられないなど活用が難しいという難点がありました。
特に活用を難しくしていたのが、開発のプログラミング言語です。SAPはABAPというSAP社が独自開発したプログラミング言語で構成されており、SAP GUIもABAPのスキルが必要でした。さらにSAP GUIはクライアントPCごとにインストールの必要があり、デスクトップでしか利用できない点も改善箇所がありました。
そこで、機能中心からユーザー中心のデザインへ変更されたのがSAP Fioriです。
まずバックエンドとフロントエンドの画面設計言語が変更されたのが大きな特徴です。ユーザーはHTML5、JavaScript、CSSなどのオープン系の言語で開発が可能になりました。
SAP GUIが1つの画面で様々な処理ができていたのに対し、SAP Fioriでは1つの画面で1つの処理ができるような構成に変更になっています。ユーザーはよりシンプルな構成で必要な入力などを容易に行うことができます。
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SAP GUI |
SAP Fiori |
デザイン |
機能を中心としたデザイン 機能は豊富だが、機能が多すぎて操作が複雑 |
ユーザー中心としたデザイン 直感的な操作が可能 |
使用できる言語 |
ABAP |
HTML5、JavaScript、CSSなどのオープン系言語 |
動作環境 |
デスクトップ上で動作(インストールが必要) |
マルチデバイス、マルチブラウザで動作 |
SAP Fioriの種類
SAP Fioriの種類は大きく以下4つにわけられます。
- Transactional Apps:伝票等を登録・更新、参照するアプリケーション
- Fact Sheets:伝票情報やマスタ情報などを検索、閲覧するアプリケーション
- Analytical Apps:グラフなどを用いてグラフィカルな分析が可能なアプリケーション
- Smart Business:KPIを分析し、評価するアプリケーション
SAP Fioriのメリット・デメリット
メリット
自社の使いやすい形にカスタマイズ可能
SAP Fioriの大きなメリットは、画面を自由にカスタマイズできることです。
データ自体はSAP HANAに集約されているため、データを一元管理しつつビジネスモデルや業種・業態に合わせて使いやすい形に画面を構成することができます。
シンプルで使いやすいUI
SAP FioriはSAP GUIと比較し、非常にシンプルで使いやすいUIを実現しています。
SAP GUIがデスクトップPCからしか利用できなかったのに対し、SAP Fioriはタブレットやスマートフォン、ブラウザからも利用ができるため利用者にとっても使いやすい形になっています。
フロントデザインはHTML5やJavaScriptが使えるため、開発者にとっても使いやすい・開発しやすい構成になっています。作業や運用コストを抑えることができます。
デメリット
デメリットとしては、すべてのシステムにも言えることですがスムーズに使えるようになるには少し時間がかかることです。UI自体は見やすくなっているものの、SAP Fioriで提供されている機能自体は多く、初心者向けの資料も少ないようです。運用が安定するまでには一定期間が必要と考えると良いでしょう。
SAP S/4HANA Cloud Public Edition 導入ならシステムインテグレータ
SAP FioriはSAP S/4HANAに標準で搭載されたツールです。SAP S/4HANAはオンプレミス型、プライベートクラウド型、パブリッククラウド型の3種類のエディションを提供していますが、パブリッククラウド型のSAP S/4HANA Cloud Public Editionは、導入に際してサーバーやストレージなど大規模なITインフラを社内に整備する必要がなく、中堅企業もERPの基本機能をサービスとして利用することができます。
SAP S/4HANA Cloud Public Editionをご検討の際はぜひ株式会社システムインテグレータにご相談ください。約20年にわたるERP導入のノウハウをもとに、最適な業務改善を実現します。
まとめ
SAP Fioriについてご紹介しました。直感的なUIやカスタマイズ性を持ったSAP Fioriを活用することで、業務の効率化やデータ分析の効率化が可能になるでしょう。
業務やデータ分析の効率化に当たっては、前提としてデータが整備され、一元管理されている必要があります。SAP S/4HANA Cloud Public Editionに関する詳細な資料もご用意してありますので、ぜひ併せてご覧ください。