「オフコン」という言葉に聞き馴染みがないという世代が増え、生まれながらにデジタルツールを潤沢に備えたベンチャー企業が台頭してきています。そのため近年はオフコンの廃棄量が増加傾向にあり、徐々に市場から姿を消しつつあります。しかしそんな状況であっても、未だにオフコンを社内に抱え込んでしまっている企業も存在します。
そもそもオフコンは大手メーカーが開発しており、独自OSによって運用されています。実際、オープンOSに移行するメリットや、このまま使用し続けるリスクが分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そんなオフコンに焦点を当て、リプレースするべき理由やオープン化の注意点などを深く解説します。現在もオフコンを使っている方、オフコンの扱いに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
オフコンとは
そもそもオフコンとは、オフィスコンピュータと呼ばれる、1960年代から作られ始めた事務処理に特化した小型コンピュータを指します。メインフレームとなる汎用機がITのプラットフォーム企業に普及した一方で、当時メインフレームに予算を割けなかった中堅・中小企業を中心にオフコンは広く普及しました。
ちなみに、「オフコン」は日本だけで使われている呼称で、海外では「ミニコンピュータ」や「ミッドレンジコンピュータ(限られた領域のコンピュータ)」などと呼ばれています。業務ごとに役立つ専門性から、1990年代初頭までオフコンは間違いなく日本や世界のビジネスを支えてきた存在でした。
しかし、新たなコンピュータの台頭によって、オフコンがレガシーシステム(ITにおける負の遺産)と呼ばれるようになったことを皮切りに、先述の通りオフコンの廃棄台数は増加の一途をたどるようになりました。
オフコンの誕生から普及の歴史
それでは、オフコンと呼ばれるコンピュータシステムはいつ頃誕生したのでしょうか。その歴史は1968年にまで遡ります。社団法人情報処理学会によると、オフィスコンピュータと銘打って初めて生産したのは、当時の三菱電機が開発した「元帳会計計算機MELCO81」というコンピュータでした。しかし、実際にはこの製品以前に、国産技術によりすでにオフコンの前身となる技術が開発され、日本独自の進化を辿りながら国内の小型事務用計算機市場を形成していたのです。
そして1970年代に入り、リコーが64ビット演算機「RICOM8」を発売。1980年代には富士通のベストセラー機「Kシリーズ」が生まれると、他メーカーも続々と市場に参入し、オフコン市場は群雄割拠の時代へと突入します。
その後、各メーカー同士の開発競争の中で生まれたハードウェア技術やOS技術そして数々の業種・業務アプリケーションが、全国の中堅・中小企業の顧客業務を支える文化が形成されるに至りました。
オフコンの利点
オフコンを使う利点とは一体何なのでしょうか。ここでは主要な2点を紹介します。
安定性
オフコンはオープンOSとは異なり専用のOSを用います。そして、一つひとつの業務に特化していることから、システムトラブルなどが起こりにくいという利点があります。また、CPU・ハードウェアもメーカー独自の仕様であることから、ウィルスに感染するリスクがオープンOSよりも格段に低く、セキュリティ対策としても優れているともいえます。
信頼性
オフコンはIBMやリコーをはじめ、NEC・富士通といった名だたる大手メーカーが開発・販売していることから、市場における信頼性も確かなものがありました。また、当時オフコンをどれだけ導入しているかが中堅企業としてのステータスとなっていたこともあり、信頼性と企業力をアピールするために導入する企業も多くありました。
オフコンの問題点
冒頭でお話した通り、オフコンは既にレガシーシステムの烙印を押されてしまい、撤退するメーカーが後を絶たない状況です。では、オフコンのどこに問題があったのでしょうか。以下でオフコンとオープンOSについて比較していきます。
|
オフコン |
オープンOS |
---|---|---|
CPU |
メーカー独自の仕様 |
AMD・X86などのマイクロプロセッサ |
OS |
専用OS |
Unix・Linux・Windowsなどの標準OS |
ハードウェア |
メーカー独自の仕様 |
標準化仕様 |
ソフトウェア |
|
|
ネットワーク |
メーカーの独自SNAなど |
TCP/IP・インターネット |
セキュリティ |
独自OSのため、マルウェアなどのウィルス感染へのリスクは低い |
インターネット経由で感染の危険性はある一方、ソフトで対策可能 |
このように、オープンOSはUnix・Linux・Windowsといった世界基準のOSを搭載している一方、オフコンは専用OSのみであることをはじめ、ソフトウェアやネットワーク環境にさまざまな違いがあることがわかります。
以下で、それらの違いから生じるオフコンの問題点についてフォーカスしていきます。
老朽化による故障のリスク
老朽化によるリスクは全てのツールに対して言えることであり、それを回避することはできません。故に、オフコン本体が丈夫で高性能であったとしても、故障によるリスクは常に考慮しなくてはなりません。
また、オフコンの保守費用は他のIT機器と比較にならないほど高額です。したがって故障リスクに対する費用が釣り合っているかをよく考える必要があります。
保守部品の流通の不足
常に技術が進歩しているオープンOS準拠のコンピュータであれば、故障や保守部品の破損などがあっても、メーカーに依頼してリスクを回避することが可能です。一方で、オフコンは現在ほとんどのメーカーが撤退しているため、故障したとしても対応できないケースもあります。故障のリスクに加え、保守部品の流通もストップしていることは、オフコンを利用する大きなリスクと言えるでしょう。
データ活用の難航化
上記の表でお伝えした通り、オフコンは業務に特化したコンピュータです。そのため、PCでのデータ活用や他社製品のオープンOSとの連携が難しいというデメリットがあります。PCにデータを移行する際にその都度連携がもたついてしまっては、業務の生産性を著しく下げてしまうことになるでしょう。
また、2018年に経済産業省が発表したDXレポートでは、2025年までにシステム刷新を図らなければ、IT予算に当てられるIT管理費は全体の9割に達してしまうと言われています。現状維持のためだけに予算を割かれ、新しいビジネスモデルや業務形態を生み出すための投資が不可能になることが予想されているのです。
選定企業の縮小
オフコンは各メーカーが独自に組み上げたOSを用いるため、必然的に独自規格のコンピュータとなります。したがって、オープンOSであればさまざまなメーカーから選ぶことができる一方、オフコンはメーカーや業者を選定することができません。これだけビジネスが多様化していく中で業者を選ぶことができないということは、それだけ生産性の幅を狭めてしまうリスクにつながります。
社員の意識停滞
オフコンを使用し続けるうえで最大のデメリットといえるのが、社員のモチベーション低下です。さまざまな業界でDX化が進む中、自社だけ連携が難しく保守費用だけが高額なツールでは、効率の良いパフォーマンスを発揮し続けることは難しいでしょう。また、生産性と業務の柔軟性が低下してしまうと、高額意欲の高いエンジニアは、生まれながらにデジタル技術を完備したデジタルネイティブな企業へと流出する危険性があります。そのため、人材確保の観点からも、オフコンを使用し続けることは大きなリスクであると言えます。
オフコンをリプレースすべき理由
オフコンを業務に用いている企業は、現在でも半数近くあります。しかし、その中でも多くの企業はオープンOSと世界基準のハードウェアを導入しています。そして、さまざまなシステムを常に動かしながら機会があればアップグレードします。一方で、一部の企業は未だにオフコンをオフィスに置いてしまっているか、ダム端末として使用しています。
それでは、このままリプレースしないでオフコンを使用し続けるとどのような課題に直面することになるのでしょうか。以下でそれらの課題を取り上げつつ、オフコンをリプレースするべき理由について詳しく解説します。
保守運用費用の増大
先述の通り、どのようなシステムであってもメンテナンスは必要です。それはオフコンも例外ではありません。特に、オフコンはメーカーによる独自の仕様であるため、市場が独占されている現在は、運用費用や保守費用が高額である場合がほとんどです。
事実、それらをメンテナンスによって保守していくことは可能です。しかし、それは将来のため投資ではなく、あくまで現状を維持する行為でしかありません。そのため、費用に対して将来への投資や費用対効果を得ることはできないでしょう。
また、費用と同じく貴重であるIT人材を、将来性が不透明なシステムの保守・運営のために割かなければなりません。このことから、オフコンを使用し続けるということは、単なる延命措置でしかないと言えるでしょう。
サポート期限切れや扱える人材の減少
オフコンはITの歴史を鑑みても最も古いコンピュータシステムです。そのため、使われている技術も古く、OS・開発ソフトウェア・開発言語を活用できる人材が激減しています。そもそも、現代はオープンOSが主流であるため、オフコンを構築する基幹システムなどの仕様や、それらの仕組みを熟知している人材はそう多くありません。
また、オフコンに使われるハードウェア・システム・ソフトウェアのサポートが切れてしまうといった運用リスクもあります。他のシステムやツールと連携が取れないことから、データのサイロ化が起こり、データがどこにあるのかが分からなくなってしまいます。オープンOSなら一括管理にしておけるものでも、会社のさまざまな場所にデータが分散することで、企業の生産性を著しく下げてしまうでしょう。
新しい技術を導入できない
オフコンがレガシーシステムと呼ばれる最大の理由が、新しい技術を導入することができない点です。
企業の成長とともに新しいシステムを加え、新たなツールと連携することは、自社の企業力・競争力を維持するために必要不可避です。しかし、レガシーシステムの古い技術では、新しいシステムとの連携・統合ができないことが多く、他の競合企業から明確に遅れをとることになるでしょう。システムを連携させるためのプロセス開発は煩雑になり、セキュリティリスクを抱えたままになることも多く、企業内の技術的な成長は一切期待できません。
ビジネスのDX化が世界中で浸透してきている昨今、5G・IoT・AIといったテクノロジーとリンクできないというだけで、さらに遅れをとってしまうリスクもあるでしょう。
なお、DX化の必要性と課題については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?「2025年の崖」との関連性や推進ポイントまで解説
DXを見据えたリプレースを検討すべき
それでは、未だにオフコンを使い続けている企業は、どのようにしてオフコンからの脱却を図るべきなのでしょうか。オフコンを廃止するためには、前向きにDX化を検討し、最新の技術を活用できる企業へと生まれ変わることが必要不可欠です。
DXは「第3のプラットフォーム」と呼ばれるクラウド・モビリティ・ビッグデータ・ソーシャルという4つの技術と、AIやIoTなどの最新デジタル技術を駆使することで、既存の業務プロセスや風土を打ち壊して新たに築く動きを指します。これにより、革新的な製品・サービス・ビジネスモデルを創出するのです。
したがって、オフコンをリプレースするのであれば、DXを視野に入れた取り組みが必要になるでしょう。最新デジタル技術の導入を進めること自体は、さほど困難ではありません。現在は中小企業やIT技術が充分完備されていない企業向けにさまざまなサービスが提供されており、それらを積極的に活用することでDX化は実現に近づくはずです。また、DXを包括的にサポートする企業もあるため、何から始めるべきか悩んでいる企業は、そういった外部のサービスに頼ったり、コンサルティングやアドバイスを受けたりすると良いでしょう。
DXを前向きに検討することがオフコンからの脱却を可能にし、新時代のビジネスに対応可能なシステム・組織・業務プロセスを構築するきっかけになるはずです。
バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ
多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
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まとめ
レガシーシステムであるオフコンを現在も導入している企業にとって、システムの一新は容易ではありません。事実レガシーシステムの問題は大きく、先述の通り莫大な費用がかかることからも、一歩踏み出せないでいる企業が多いのが現状です。
GRANDITでは、多様化・グローバル化・スピード化にマッチしたさまざまな機能で企業のDX化に大きく貢献します。社内で現在オフコンを使っている方や、社内のDX化をより一層促進させたいと考えている方は、以下より資料をダウンロードいただけますので、ぜひチェックしてください。
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