SaaS型ERP5選を比較!対象となる業務領域や特徴を解説

 2024.11.18  株式会社システムインテグレータ

かつてERPは「大企業向けのツール」というイメージがありました。しかし、SaaS型ERPの登場により、コストや導入負担が軽減されたことで、近年では中小企業にも広くERPの導入が進んでいます。

本記事では、ERP市場におけるSaaS型ERPの位置づけや、注目の主要製品の特徴について詳しく解説します。

SaaS型ERPについて

SaaS型ERPとは

SaaS型ERP(Software as a Service)は、クラウド上で提供されるERPサービスであり、企業のデジタル化と業務効率化を促進する重要なツールです。従来のオンプレミス型ERPは、サーバーやネットワークインフラに多額の初期投資が必要で、保守・運用にも専門的な人材を求められていたため、主に大企業向けとされてきました。

しかし、SaaS型ERPの登場により、ユーザーは高価なハードウェアやインフラ整備を必要とせず、サービス提供会社が管理するクラウド上でインターネット経由でERP機能を利用できるようになりました。これにより、初期コストや保守・運用負担が削減されるため、短期間での導入が可能です。また、セキュリティ対策やシステムのメンテナンスもサービス提供者に委託でき、利便性が向上しています。さらに、自動アップデートや高いスケーラビリティを備えており、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応できるため、中小企業や急成長中の企業にも適しています。

ERPの種類

ERPには大きく、オンプレミス型ERPとクラウド型ERPに分けられます。クラウド型ERPはさらに、「IaaS型/PaaS型」「SaaS型」に分けることができます。ここでは、それぞれの提供形態についてご紹介します。

  • オンプレミス型ERP

    オンプレミス型ERPは、アプリケーション、ミドルウェア、インフラをすべて自社で管理するERP形態です。SaaS型ERPと異なり、サーバーやデバイスなどのインフラを自由に選択・設定でき、業務プロセスに合わせたアプリケーションのカスタマイズも可能です。 ただし、すべてを自社で管理するため、導入時のコストが高く、保守・運用も自社で行う必要があります。このような背景から、特にITリソースが充実している大企業に適しているといえます。

  • IaaS型/PaaS型ERP

    IaaS/PaaS型ERPは、サーバーやネットワークなどのインフラ部分をクラウド事業者が提供する形で運用されるERPです。インフラ基盤はクラウド事業者が管理しますが、ソフトウェアやミドルウェアについては、ユーザーが自社で構築・管理する必要があります。オンプレミス型ERPと比較するとインフラ管理の負担が軽減される一方で、ERPの管理やカスタマイズはユーザー側が引き続き行うため、柔軟な運用が可能です。

  • SaaS型ERP

    SaaS型ERPは、クラウド事業者がアプリケーション、ミドルウェア、インフラを一括で運用管理するERPです。これにより、自社でインフラを用意する必要がなく、インターネット環境さえあれば利用できることが大きな利点です。多くの場合、サブスクリプション型の料金体系が採用されており、初期費用を抑えられるため、中堅・中小企業にも導入が進んでいます。

ERP市場におけるSaaS型ERPの成長

株式会社矢野経済研究所が発表したデータによると、ERP市場の2023年度の売上金額は1,419億8,000万円で前年比9.5%増となりました。

2024年のERP市場動向

2024年のERP市場は、インボイス制度対応が終了し大きなトレンドがないことや、一部ベンダーのリソース不足により、成長率が2023年を下回ると予測されています。しかし、企業のIT投資意欲は強く、クラウド移行の需要は続いています。

2023年度におけるERP提供形態別の市場シェア率は以下の通りです。

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  • IaaS型/PaaS型ERP:前年比3.8%増の41.9%
  • SaaS型ERP:前年比1.2%増の15.3%
  • オンプレミス型ERP:前年比5%減少の42.8%

このままクラウド型ERPの普及が進めば、2025年にはクラウド型ERPが市場シェアの約7割を占めると予想されます。

SaaS型ERP市場動向について

2023年のSaaS型ERP市場では、2022年に引き続きOracle Fusion Cloud ERPや、Microsoft Dynamics 365といった海外製品が高いシェアを獲得しました。大手企業向けには複雑な業務ニーズに応える海外製品が選ばれやすい一方、国産SaaS型ERPは中堅・中小企業向けが多く、独自の機能で差別化を図っています。

また、国内でのSaaS型ERP市場では、従来のオンプレミス型ERPを販売していた企業がSaaS製品のラインナップを拡充したこともあり、新規参入が増加しています。SaaS型ERP製品のラインナップの増加にともない、2025年にはSaaS型ERPが市場全体の約20%を占めると予測されています

SaaS型ERPが選ばれる理由

SaaS型ERPが従来型ERPに対して選ばれる理由としては、コスト面だけではありません。ここでは、SaaS型ERPをユーザーが選択する理由について詳しく見ていきましょう。

低コスト

高額なハードウェア購入やインフラの構築が不要なため初期費用を抑えることができます。また月額や年額のサブスクリプション形式での支払いとなるため、導入時から運用コストの見通しが立てやすく、スモールスタートが可能です。

短期導入が可能

SaaS型ERPは、インフラの整備にかかる時間が不要で、クラウド事業者と契約するだけでERPを利用できます。基本的に標準機能を利用するため、カスタマイズの期間も不要で、最短で数週間以内に利用を開始できます。

運用の負担が少ない

SaaS型ERPでは運用や保守もクラウド事業者が行います。ソフトウェアの更新やバックアップ、セキュリティ対策もクラウド事業者が対応するため、自社でのシステム管理の負担が軽減されます。

最新の機能が利用できる

SaaS型ERPでは、定期的に機能がアップデートされるため、常に最新バージョンを利用できます。これにより、法改正に伴うシステム修正も不要です。また、最新の業界標準やテクノロジーを活用した機能をタイムリーに取り入れることができ、企業の競争力維持にも貢献します。

アクセスが容易

SaaS型ERPはインターネット経由でアクセスでき、オフィス内外を問わず利用が可能です。リモートワークが広がる現代では、場所を問わず業務を進められる利便性が大きな価値となります。また、多くのSaaS型ERPはモバイル対応しており、スマートフォンやタブレットからも利用できます。

SaaS型ERPパッケージ5製品を比較

【最新版】ERP比較8選|種類や特徴をタイプ別に解説! 2

今回は以下5つのSaaS型ERPを比較しました。

  1. GRANDIT miraimil
  2. SAP S/4HANA® Cloud Public Edition
  3. NetSuite
  4. Dynamics 365
  5. 奉行VERPクラウド

GRANDIT miraimil

GRANDIT miraimilは、「便利×手軽×中小企業向け」をコンセプトにした、年商30億から300億ほどの中小から中堅企業向けのSaaS型ERPです。本製品は、シリーズ製品「GRANDIT」のノウハウや機能を引き継いだSaaS型ERPであり、特に商社・卸売業、IT・ソフトウェア開発企業、サービス業向けに設計されています。販売や経理などのERPの基幹業務に加え、プロジェクト原価管理や継続契約といった業種特有の機能も備えています。さらに、最近では生成AIを活用したチャットボットや情報探索機能との連携も公開され、利便性が向上しています。

GRANDIT miraimil製品ページ

SAP S/4HANA® Cloud Public Edition

SAP S/4HANA® Cloud Public Editionは、SAPが提供するSaaS型ERPです。年商100億円から500億円規模の企業を対象に展開されています。本製品の特長は、SAP社が創業以来培ってきた多業種のベストプラクティスを活用し、企業の業務を標準化・効率化できることです。また、AIやRPAといった最新テクノロジーを継続的に取り入れ、企業のイノベーションを支援し続けています。

SAP S/4HANA Cloud Public Editionの製品ページ

NetSuite

NetSuiteは、1998年に設立された世界初のSaaS型ERP企業と言われています。同社が展開する「Oracle ERP Cloud」が中堅・大企業向けであるのに対し、NetSuiteは中堅・中小企業向けとして位置付けられています。現在では、「Oracle ERP Cloud」「Dynamics 365」に次ぐ市場シェアを誇るERPです。NetSuiteは、バックオフィス業務(財務・会計)、フロントオフィス業務(CRM、SFA)、プロジェクト管理、BIなど多彩な機能を備えており、幅広い業種で導入が可能です。また、グローバル会計機能に優れ、190種類の通貨、27の言語、海外現地会計、複数子会社管理などに対応しています。

NetSuite製品ページ

Dynamics 365

Dynamics 365は、Microsoft社が提供する年商100億円から1000億円規模の企業向けSaaS型ERPです。最大の強みは、Office製品との連携が容易な点で、既にOfficeを利用中のユーザーは、業務プロセスを変えずにOffice 365と連携できます。また、カスタマイズの自由度が高く、Microsoft Power Appsを使うことで、専門知識がなくてもカスタマイズが可能です。マイクロソフト製品のため、Officeに似た画面デザインと操作性が特徴で、ITリテラシーが低い方でも利用しやすいのも利点です。

Dynamics 365製品ページ

奉行VERPクラウド

奉行VERPクラウドは、オービックビジネスコンサルタント社が提供するSaaS型ERPで、年商30億〜300億円規模の企業に利用されています。他のSaaS型ERPと比較して安価で、機能、ユーザー数、データ容量に応じた柔軟な価格設定が可能です。特にバックオフィス業務に特化したシリーズ製品を提供しており、自社・他社サービスとの連携が柔軟にできることが特徴です。

奉行VERPクラウド

まとめ

初期費用や保守費用を抑えつつ、迅速にERPを導入する手段として、SaaS型ERPを採用する企業が増加しています。SAPやOracleといった大手ERPベンダーに加え、国内企業からも新たなSaaS型ERPが次々と登場し、その数は年々増えています。そのため、どのSaaS型ERPが自社に合うのか調査し選定するのに苦労されている企業様も多いのではないでしょうか。そのような方は、ぜひSaaS型ERPの比較資料をご活用ください。

本ブログで紹介したSaaS型ERP 5製品に加え、新たに3製品を追加し、「市場シェア」「対象企業規模」「モジュール範囲(業務領域)」「月額利用料金」「製品の特徴」「SaaS環境」「カスタマイズ容易度」「保守サポート」など、詳細な比較・分析内容をまとめています。皆様の情報収集の参考になれば幸いです。

SaaS型ERPの利便性が注目され、その魅力ばかりが強調される中、検討段階で他の選択肢を十分に考慮せず、SaaS型ERPに絞って選定を進める企業が増えています。しかし、ERPは提供形態によって特徴や適性が異なるため、自社の目的や課題を踏まえて慎重に選ぶことが重要です。SaaS型ERPが適している場合もあれば、別の形態がより適合する場合もあるため、広い視野で検討を進める必要があります。ERP選定にお悩みの企業様は、ぜひお気軽にシステムインテグレータまでご相談ください。
※「資料名」の情報は、当社調べに基づき、2024年11月時点の情報を掲載しています。


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