SaaS型ERP5選を比較!種類や基礎を詳しく解説【2025年最新版】

 2025.08.19  株式会社システムインテグレータ

かつてERPは「大企業のための高価なシステム」というイメージが一般的でした。しかし、近年はSaaS型ERPの普及によって、その状況が大きく変わりつつあります。クラウドを基盤とするSaaS型ERPは、従来に比べて初期投資や導入負担が軽減され、中堅・中小企業でも現実的な選択肢となりました。

企業の成長に伴い、業務プロセスは複雑化し、既存システムでは対応しきれない場面が増えています。限られたITリソースで全社のインフラを支える情報システム部門にとって、短期間で導入でき、かつ運用負担の少ないSaaS型ERPは、経営基盤を強化する有効な手段といえるでしょう。

本記事では、SaaS型ERPの市場における位置づけや特徴を整理するとともに、代表的な5つの製品を比較し、それぞれの業務領域や特長を解説します。

SaaS型ERPについて

SaaS型ERPとは

SaaS型ERP(Software as a Service)は、クラウド上で提供されるERPのことです。企業のデジタル化を支える基盤として、業務の効率化や標準化を進めるうえで欠かせない存在となりつつあります。

従来のオンプレミス型ERPは、自社サーバーやネットワークを整備するために多額の初期投資が必要であり、保守・運用には専門的な人材も不可欠でした。そのため、十分なITリソースを持つ大企業に限られて導入が進んでいたのが実情です。

一方で、SaaS型ERPでは、必要なアプリケーションやインフラをベンダーがクラウド上で提供・管理するため、自社でハードウェアを持つ必要がなく、インターネット環境があれば利用を開始できます。初期コストや運用負担を大幅に軽減できるほか、自動アップデートやセキュリティ対策もサービス側で実施されるため、システム管理要員が限られる企業にとって大きなメリットとなります。

また、SaaS型ERPはスケーラビリティに優れ、事業拡大や新しい働き方にも柔軟に対応可能です。これにより、急成長する中堅・中小企業にとっても、将来を見据えた経営基盤の整備に有効な選択肢となっています。

ERPの種類

ERPは大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」に分けられます。さらにクラウド型は「IaaS型/PaaS型」と「SaaS型」に分類され、それぞれ特徴や導入の適性が異なります。ここでは主要な形態を整理してみましょう。

オンプレミス型ERP

オンプレミス型は、アプリケーションからミドルウェア、インフラまでをすべて自社で管理する方式です。サーバーやネットワーク機器を自由に選定・設定できるため、業務プロセスに合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。

一方で、導入コストが高額になるうえ、保守・運用も自社で担う必要があります。そのため、十分なITリソースを持つ大企業向けの選択肢といえるでしょう。

IaaS型/PaaS型ERP

IaaSやPaaSを利用するERPは、サーバーやネットワークといったインフラ部分をクラウド事業者が提供し、その上でユーザーが自社でソフトウェアやミドルウェアを構築・管理する形態です。

オンプレミスに比べてインフラ管理の負担は軽減されますが、ERPの構築やカスタマイズはユーザー側の責任となります。柔軟な運用が可能な反面、IT部門に一定のスキルとリソースが求められる方式です。

SaaS型ERP

SaaS型ERPは、アプリケーションからインフラまでをベンダーが一括で提供・運用する方式です。インターネット環境さえあれば利用でき、自社でのインフラ整備や運用要員の確保が不要となります。

サブスクリプション型の料金体系が一般的で、初期投資を抑えられるため、中堅・中小企業にも広く導入が進んでいます。


ERP市場におけるSaaS型ERPの成長

株式会社矢野経済研究所の調査によると、2023年度の国内ERP市場規模は1,419億8,000万円となり、前年比で9.5%の成長を記録しました。依然として堅調に拡大を続けていることが分かります。

2024年のERP市場動向

2024年の市場については、インボイス制度対応が一段落し大きな制度改正のトレンドが見えにくいことや、一部ベンダーのリソース不足が影響し、成長率は前年より鈍化すると予測されています。とはいえ、企業のIT投資意欲は依然として強く、特にクラウド移行の需要は根強く続いています。

SaaS型ERP5選を比較!対象となる業務領域や特徴を解説 1

2023年度の提供形態別シェアを見ると、次のような傾向が見られます。

  • IaaS型/PaaS型ERP:前年比3.8%増の41.9%
  • SaaS型ERP:前年比1.2%増の15.3%
  • オンプレミス型ERP:前年比5%減の42.8%

この推移から、オンプレミス型の比率は今後も縮小し、クラウド型ERPが市場全体の主流へと移行していくと見込まれています。2025年にはクラウド型ERPが市場の約7割を占めるとの予測も出ています。

SaaS型ERP市場動向について

2023年のSaaS型ERP市場では、前年に引き続き Oracle Fusion Cloud ERP や Microsoft Dynamics 365 といった海外ベンダー製品が高いシェアを獲得しました。特に大企業では、複雑で多様な業務ニーズに対応できる点が評価され、海外製品が選ばれる傾向が強まっています。

一方で、**国産のSaaS型ERPは中堅・中小企業向けを中心に展開されており、業種特化型の機能や、国内の商習慣に即した仕組みで差別化を図っています。**システム要件や業務プロセスがシンプルな企業にとっては、導入・運用のしやすさが大きな魅力です。

さらに近年は、従来オンプレミス型ERPを主力としてきた国内ベンダーが、SaaS型製品のラインナップを拡充していることも市場を押し上げています。新規参入の増加により、選択肢は年々広がっており、2025年にはSaaS型ERPが市場全体の約20%を占めると予測されています。

SaaS型ERPが選ばれる理由

SaaS型ERPが選ばれるのは、単にコスト削減のためだけではありません。情報システム部門にとって、限られた人員で全社システムを支えるうえで重要なポイントが数多く備わっています。主な理由を整理すると次の通りです。

資金計画が立てやすい

SaaS型ERPは、高額なハードウェアやインフラ構築が不要で、サブスクリプション形式の料金体系を採用しています。そのため初期投資を大幅に抑えられるだけでなく、導入直後から運用コストの見通しを立てやすいのが特徴です。月額・年額の定額課金により、予算管理や資金繰りの計画が明確になり、経営判断における安心材料となります。

さらにオンプレミス型ERPと異なり、バージョンアップ費用や突発的なシステム不具合に伴う追加費用が発生しにくいため、長期的にも安定したコスト管理が可能です。

ERPの立ち上がりがスムーズ

SaaS型ERPでは、基本的にカスタマイズを前提とせず、あらかじめ設計された業務テンプレート(標準機能)を利用します。そのため導入時は Fit to Standard の考え方に基づき、業務をERPの機能に合わせていくことが前提となります。

一見すると柔軟性が制限されるように感じますが、これにより大規模な開発工程が不要となり、通常オンプレミス型で発生する要件定義・設計・開発といった工数やコストを大幅に削減できます。結果として、導入から利用開始までの立ち上がりが非常にスムーズで、短期間での稼働が可能となるのです。
Fit to Standardについてはこちらの記事をご参照ください

運用の負担が少ない

SaaS型ERPでは、アプリケーションだけでなく、サーバーやネットワークといったインフラも含めてベンダー側が一括で運用・管理します。自社でサーバーを調達・維持する必要がなく、インフラ面の管理が不要となるため、限られたITリソースを本来の業務に集中させることができます。

さらに、ソフトウェア更新やバックアップ、セキュリティ対策といった保守業務もベンダー側が対応するため、自社でのシステム管理負担は大幅に軽減されます。情報システム部門にとっては、日常的な運用負荷を抑えつつ、安定したシステム利用が可能になる点が大きなメリットです。

最新の機能を常に利用できる

SaaS型ERPは、ベンダーによる自動アップデートが定期的に行われるため、常に最新バージョンを利用できます。これにより、法改正への対応やセキュリティ強化もタイムリーに反映され、自社で改修作業を行う必要がありません。

さらに、AIやRPAといった新しいテクノロジーや業界標準の機能も迅速に取り入れられるため、システムを常に最新の状態に保つことができます。結果として、企業は追加投資や手間をかけることなく、最新機能を活用し続けられるため、競争力の維持・強化にもつながります。

場所を問わずアクセスできる

SaaS型ERPはインターネット経由で利用できるため、オフィスだけでなく、自宅や出張先からも業務を進めることができます。リモートワークが定着しつつある現在、場所に縛られず利用できる利便性は大きな価値となっています。

また、多くのSaaS型ERPはスマートフォンやタブレットにも対応しており、現場や移動中でも必要な情報にアクセス可能です。従業員の働き方を柔軟に支援すると同時に、迅速な意思決定や業務スピードの向上にも貢献します。

SaaS型ERPパッケージ5製品を比較

本記事では、代表的なSaaS型ERPとして以下の6製品を取り上げ、それぞれの対象企業規模や特徴を整理しました。

  1. SAP Cloud ERP
  2. NetSuite
  3. 奉行VERPクラウド
  4. GRANDIT miraimil
  5. ZAC

SAP Cloud ERP

年商100億~500億円規模の企業を対象としたSAPのSaaS型ERPです。多業種で蓄積されたベストプラクティスを活用し、業務の標準化・効率化を実現できる点が大きな特長です。さらに、AIやRPAなど最新技術を取り込みながら、企業の変革を継続的に支援します。
SAP Cloud ERPの製品ページ

NetSuite

1998年に設立された、世界初のSaaS型ERP企業として知られています。「Oracle ERP Cloud」が大企業向けであるのに対し、NetSuiteは中堅・中小企業向けに位置付けられています。財務・会計、CRM、SFA、プロジェクト管理、BIなど幅広い機能を持ち、グローバル展開にも強みを発揮します。190通貨、27言語、複数子会社管理に対応しており、海外拠点を持つ企業にも適しています。
NetSuite製品ページ

奉行VERPクラウド

オービックビジネスコンサルタントが提供するSaaS型ERPで、年商30億~300億円規模の企業が対象です。機能・ユーザー数・データ容量に応じた柔軟な価格設定が可能で、比較的導入しやすい点が魅力です。特にバックオフィス業務に強みを持ち、自社・他社サービスとの連携もしやすい設計となっています。
奉行VERPクラウド製品ページ

GRANDIT miraimil

「便利 × 手軽 × 中小企業向け」をコンセプトとした、年商30億~300億円規模の中堅・中小企業向けSaaS型ERPです。シリーズ製品「GRANDIT」で培われたノウハウを活かし、特に商社・卸売業、IT・ソフトウェア開発、サービス業に強みを持っています。販売・経理といった基幹業務に加え、プロジェクト原価管理や継続契約管理など、業種特有のニーズに対応可能です。
最近では生成AIを活用したチャットボットや情報検索機能との連携も進んでおり、利便性がさらに向上しています。
GRANDIT miraimil製品ページ

ZAC

株式会社オロが提供する、プロジェクト型ビジネスに特化した国産SaaS型ERPです。IT・システム開発、広告・クリエイティブ、コンサルティング、建設コンサル業など、案件単位で業務を進める企業に強みを持ちます。
プロジェクト別のリアルタイム損益管理により赤字案件を早期に把握し、利益最大化を支援。販売・購買や勤怠・工数、経費、在庫といった基幹業務に加え、グループウェアや管理会計(BI)、IPO対応や法制度対応機能も備え、成長企業の経営課題解決に直結します。
ZAC製品ページ

まとめ

初期投資や運用負担を抑えつつ、短期間で導入できる手段として、SaaS型ERPを採用する企業は着実に増えています。SAPやOracleといった海外大手に加え、国産ベンダーからも多様な製品が登場しており、選択肢は年々広がっています。その一方で、「自社に合った製品はどれか」を見極めることは以前にも増して難しくなっているのが実情です。

本記事では代表的な6製品を紹介しましたが、SaaS型ERPの利点だけに注目して検討を進めるのはリスクがあります。ERPは提供形態や製品ごとに特長や適性が異なるため、自社の業務課題や将来の成長戦略を踏まえ、幅広い視点で比較・検討することが重要です。

もし「どの製品が自社に合うのか分からない」「最新の市場動向を踏まえて検討を進めたい」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にシステムインテグレータへご相談ください。選定のプロセスから情報整理まで、中立的な立場でサポートいたします。


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