2層ERPとは?旧来のERPとの違いや導入メリット・デメリットを解説

 2023.09.15  株式会社システムインテグレータ

ERPは、企業経営の基本となる基幹業務に重要な概念で、自社のリソースを一元管理するシステムです。企業経営の分野では、グローバル化する企業経営やM&Aが活性化する中、新たに「2層ERP」というシステムが注目されています。2層ERPならばこれまで運用してきたERP(従来型ERP)の課題を解消できるだけでなく、状況に応じて柔軟にシステムの最適化が可能です。

本記事では、経営管理や生産性低下に課題を抱えている方向けに、ERPの基本をおさらいしながら2層型ERPについて解説します。

2層ERPとは何か

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まずはERPと2層ERP、それぞれの仕組みや機能を整理してみましょう。また、2層ERPについて、各層の違いやユースケースも併せて解説します。

ERPの仕組みと機能

ERP(Enterprise Resource Planning)とは「企業資源計画」のことです。企業経営において適切な意思決定を行うために重要な「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」の各情報を一元管理する考え方です。

一般的に「ERP」とは、この一元管理する機能が実装された「ERPシステム」のことを指し、以下のような機能を持ちます。 

  • 財務、会計管理(財務諸表の作成、管理会計の実施など)
  • 経費精算(備品の購入、従業員の立替精算、旅費交通費の支払いなど)
  • 販売管理(自社の製品、サービスの販売状況の管理など)
  • 生産管理(製造業を中心に、製造における各工程の業務支援など)
  • 資産管理(自社の固定資産の台帳化や減価償却の実施など)
  • 債権、債務管理(売掛金管理、入金の債権消込、請求書ベースの銀行振込など)
  • 人事管理(従業員情報、給与計算など)

 また、これらの入力されたデータのバックアップ機能、ログイン時の高度なセキュリティ機能も搭載されているのが特徴です。

ERPによって、一つのデータベースですべてのデータを一元管理できるため、各データの集計に手間をかけず、常に的確な経営判断を即座に行えます。

一方で、多くの企業がERPパッケージを販売しているため製品選びの難しさや、システムの導入やその後の保守運用において、多くの費用と人手を要するという課題があります。

「2層ERP」の登場

従来のERPの課題を解決するものとして、近年多くの企業が注目しているのが「2層ERP」です。2層ERP(Two-tier ERP)は、「1st Tier ERP(1層目のERP、コアERP)」「2nd Tier ERP(2層目のERP)」の2層構造で設計されています。

1st Tier ERP

1st Tier ERPは、世界中で事業を展開する世界最大規模の企業を想定して構築されたシステムです。2層ERPにおいて「コアERP」として本社で活用するERPとなります。

1st Tier ERPは、導入や保守運用に多額のコストを要するため、自社事業のニーズを満たすようにカスタマイズするには時間と多大な労力が必要です。そのため、企業ではソフトウェアの管理に専任できるITチームの体制を整えているのが一般的とされています。

2nd Tier ERP

2nd Tier ERPは、中小企業や子会社、海外の事業所を想定して構築されたシステムです。2層ERPにおいて「サブERP」として各拠点で活用します。1st Tier ERPよりもコストを抑えて導入できるのが特徴です。

システムは製造や小売など特定業種にターゲットを絞ったものがあります。一部の2nd Tier ERPでは「人事」「販売」「在庫管理」「生産管理」といった1st Tier ERPの機能を含むため、1st Tier ERPと2nd Tier ERPの双方を提供できます。必要に応じて各リソースを調整できるほか、海外拠点での運用に最適です。

「2層ERP」モデルのイメージ

ユースケースとして、本社で稼働する大規模なERPシステム(1st Tier ERP)とは別に、支店や各拠点で展開される事業内容や規模、ニーズに合ったERPシステム(2nd Tier ERP)を導入します。両者では一定の規律に基づき、データの連携を図るイメージです。

また、昨今ではクラウド型のERPが浸透してきたことで、インターネット経由で容易にERPを導入できるようになり、従来のERP導入に存在した「インフラ整備」「コスト面」の課題が解決されるようになりました。

2層ERPのメリットは後述しますが、2層ERPはグローバルに事業を展開する大企業に限らず、中小企業のビジネスモデルにも幅広く対応できるのが強みです。

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従来型ERPの課題を2層ERPはどのように解決したか

従来型のERPには、2つの課題がありましたが、この解決策となったのが2層ERPです。ここでは、2層ERPがそれぞれの課題をどのように解決したのか解説します。

グローバルに事業展開を行うグループにおける課題

世界各国に拠点をもつ企業の場合、言語や通貨の違い、関連法規や商習慣はもちろん、ローカル要件も拠点ごとに異なります。ノウハウが異なれば、そのギャップを埋める手間が業務に上乗せされます。世界中の拠点から寄せられる報告の形式や粒度は異なりますが、それらを正確に集計するのは困難でしょう。

しかし、これまで日本国内で使ってきたERPが海外の拠点で使いにくくとも、日本と海外で互いに独立したERPを運用する選択は避けたいものです。

2層ERPならば、このような状況でも各拠点の経営状況をリアルタイムで把握でき、有効な経営戦略をすぐに検討できます。 

投資対効果における課題

ERPに限らず、システムの導入にかかった投資資金を回収するまでには時間がかかります。市場や経営状況によっては、新設した拠点や支社が早期撤退を余儀なくされる場合もあるでしょう。撤退の判断やタイミングを誤れば損失は拡大し、選択によってはシステムの費用対効果も大きく下がってしまうリスクがあります。特に、地理的に離れた海外拠点の場合、情勢を把握しにくいため大がかりなERPの導入に資金を投じる方法は得策ではありません。

2層ERPの場合、各拠点で導入するのは規模の小さいサブERPです。これにより初期費用を大幅に減らせるだけでなく、不要になった場合も損失を抑えられます。 

2層ERPのメリット

続いて、2層ERPのメリットを紹介します。2層ERPは柔軟性に優れており、さまざまなコストを抑えられます。 

コスト削減

2層ERPのメリットの中でも、コスト削減という点は大きな強みです。従来型ERPを導入する場合、全体のインフラ整備も含めた導入費用の相場は次の通りです。 

ERP(パッケージタイプ)

項目

相場費用

構成比

ハードウェア費用

350万円

11%

ライセンス費用

700万円

21%

導入サポート費用

1,680円

50%

カスタマイズ費用

500万円

15%

トレーニング費用

100万円

3%

合計

3,300万円

100%

従来型EPRに対し、2層ERPの場合は拠点を増設する際に小規模のクラウド型ERPからスタートするため、大幅にコストを抑えられます。クラウド型の費用目安は次の通りです。

ERP(クラウド型)

項目

相場費用

構成比

導入初期費用

10万円

12%

ライセンス費用

6万円

8%

サブスクリプション費用

65万円

80%

合計

81万円

100%

比較してみても、両者の費用の差は歴然です。クラウド型の採用によって浮いた資金や人材は、直接利益を生むところへ回せます。

強化された柔軟性

市場で生き残るには、変化や顧客ニーズにリアルタイムで応えられるようにソフトウェアの調整が必要です。2層ERPは2つのERPが独立しているのではなく、お互いが組み合わされ、データを一元化しています。そのため、必要に応じて柔軟にプロセスを調整し、ビジネスへ反映できるメリットがあるのです。 

各拠点のローカル要件に対する最適化

国内市場では、多種多様な企業とグローバルに事業を展開している企業は少なくありません。しかし、商習慣が異なる拠点を、従来型ERPのような単一のシステムで運用すると、システムが複雑化してしまいます。

その点、2層ERPならば各拠点に適したERP(2nd Tier ERP)を選んでいるため、変化にもすぐに適応できます。新たなシステムを導入するとしても、2nd Tier ERP自体は中小企業のニーズに調整され使いやすく設計されているため、学習コスト・教育コストも抑えられます。 

M&Aへの対応

国内外でM&A市場は活発であり、今後さらに拡大する見通しです。合併や買収によって経営統合を行う場合、他の事業プロセスを組み込む手間や難易度を考えれば、既存のERPは非効率といえるでしょう。異なる言語や通貨のシステムに移行するとなれば、さらに複雑となります。そのため、2層ERPのような専用のプラットフォームを設置し、運用する形態が推奨されます。

2層ERPのデメリット

2層ERPには少なからずデメリットもありますが、自社のビジネスモデルによっては、必ずしもデメリットにならない可能性があります。いずれにしても、メリットと併せてデメリットも把握しておくと良いでしょう。 

各拠点の事業内容に合ったERPの選定、運用が必要

2層ERPを導入するとなれば、各拠点(支店や事業所)の事業内容に合ったERP(2nd Tier ERP)の選定・従業員教育・運用が必要です。導入するERPは自社のビジネスモデルに合わせて選ぶため、選定や導入に多少時間がかかります。また、ERPが異なれば当然、ベンダーごとにサポートの内容も異なるため、ERP導入後のメンテナンスやサポートの質なども考慮しなければなりません。

導入時の初期費用、毎月のランニングコストが発生する

2層ERPは、従来型ERPのように大規模なERPに大きなカスタマイズを加えたものを用意する場合に比べ、導入コストを大きく抑えられます。しかし、2層ERPを導入する際は「1st Tier ERP」「2nd Tier ERP」それぞれに初期費用がかかり、運用していくためには毎月の維持費用(ランニングコスト)が発生します。 

2層ERPはどのような企業におすすめか

2層ERPは、次のような企業での採用が特におすすめです。

国内外の支店や関連企業と共に多様な業務展開を行っている

同一グループの企業でも、本社や支店、拠点間ごとに根本的な商習慣から異なっているケースは少なくありません。グループ全体で従来型の単一のERPを採用している場合、システムと実務にミスマッチが生じ、埋め合わせの際に大きな負担となるでしょう。そうなると、全体の効率性の低下につながります。

このような場合、各拠点でそれぞれの地域で最適化されたビジネス展開を実現するために、2層ERPの導入が求められます。2層ERPで採用されるクラウド型のERPならば多言語、通貨に対応しており、理想的な経営環境の構築に向け、インターネットを介して国内外の経営データをリアルタイムで共有可能です。 

複数の拠点で業務展開を行う中規模企業

中規模企業の中には、事業継承問題を抱えていることでM&Aを検討しているところも少なくありません。M&Aは日本国内のビジネスとして今後さらに活性化する見通しです。将来的にM&Aを行った場合、これまでとは全く性質、環境の異なる企業との統合になります。また、システム環境の違いに起因する諸問題を抱えているという点も見過ごせません。

この場合も2層ERPを採用していれば、全く異なる拠点同士の管理にも役立つため、スムーズにM&Aを行えます。

「2層ERP」のユースケース

2層ERPは、次のようなユースケースにおいて特にメリットを享受できます。自社のビジネスモデルに合ったものがないか、チェックしてみましょう。 

  • 大企業と子会社のビジネスモデルが異なる場合
  • 大企業とは異なる市場へサービス提供、異業種へ製品を販売している場合
  • 本社と別の国で運営される事業所、オフィスを有する場合
  • M&A(合併や買収)によって別会社を組織に組み込む場合
  • 従来型ERPの利用を一部で続けたまま、利便性や管理の手間を減らしたい場合 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

2層ERPは、企業の規模によらず全社的に一元管理できる手法で、次世代の企業活動を担うポストモダンERPの一つとしても注目されています。世界中の拠点で収集されるビッグデータをリアルタイムで把握し事業戦略に役立てられるため、DX推進という点でもトレンドです。また、クラウドERPが登場したことによって、容易にERPを導入できるようになっています。

自社の企業成長を促すためにも、ERPの導入を検討されてはいかがでしょうか。クラウドERPの特徴や製品を比較した資料も用意しておりますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。

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