CAPEXとOPEXとは?4つの違いと削減方法・注意点

 2024.11.21  株式会社システムインテグレータ

企業が成長を続け、競争力を維持するためには、経費管理が重要な役割を果たします。その中でも、企業の支出をCAPEX(資本的支出)とOPEX(運営費用)のどちらで管理するかは、財務戦略における重要な議論の一つです。
これらの概念は経営管理に留まらず、近年では企業のDX推進やシステム導入プロジェクトにおいても頻繁に使用されています。CAPEXとOPEXは企業活動の基盤を成し、資金配分や適切な支出水準の維持を判断する上で欠かせない指標です。

本ブログでは、CAPEXとOPEXの違いを明確化し、それぞれを効率的に管理するための実践的な方法や戦略について詳しく解説します。特に、近年注目されている「CAPEXのOPEX化」や、効率的なコスト削減のアプローチにも焦点を当てます。

CAPEXとOPEX

企業の財務戦略を構築するうえで、CAPEX(資本的支出)とOPEX(運用費用)を理解することは非常に重要です。これらの概念は、予算編成、投資計画、コスト管理などにおいて頻繁に使用されます。それぞれについて整理しました。

CAPEX(資本的支出)とは

CAPEXは「Capital Expenditure」の略で、企業が長期的な価値を創出するための投資を指します。主に、固定資産の取得、維持、改修など、資産の価値や耐用年数を向上させる支出が該当します。CAPEXに分類される支出は、財務諸表上「資産」として計上され、減価償却を通じて費用化されます。

具体例

  • 新しい工場や建物の建設
  • 生産設備やITインフラの購入
  • 研究開発に必要な設備投資

OPEX(運用費用)とは

OPEXは「Operating Expense」または「Operating Expenditure」の略で、企業の日常的な事業運営に必要な費用を指します損益計算書上で即時「経費」として計上され、販売費や一般管理費(販管費)などに含まれます。具体的な支出内容は業界によって異なります。

具体例

  • 製造業: 作業人員の人件費や工場の水道光熱費
  • 不動産業: 不動産維持にかかる固定資産税や損害保険料

主な項目

  • 人件費(給与、福利厚生費など)
  • 広告宣伝費
  • 研究開発費(短期的なもの)
  • 旅費交通費
  • 通信費
  • 水道光熱費
  • 修繕費(日常的なメンテナンス費)

CAPEXとOPEXを明確に区別し、それぞれに適した管理手法を導入することが、持続的な成長と効率的な資金運用に繋がります。

CAPEXとOPEXの違い

CAPEXとOPEXの違いは、会計処理や税務面での取り扱いなど、さまざまな観点から整理できます。以下にその主要な違いを説明します。

会計処理上の違い

  • CAPEX
    長期的に使用する「資産」として計上され、減価償却を通じて徐々に費用化されます。そのため、損益計算書には直接反映されにくく、主にキャッシュフロー計算書や貸借対照表で管理されます。

  • OPEX
    発生時に即座に「経費」として計上され、損益計算書の「販売費および一般管理費」に反映されます。例として、従業員の給与や光熱費が該当します。ただし、ローン金利や減価償却費はOPEXに含まれません。

税務上の扱い

  • CAPEX
    企業の資産価値を増加させる投資であるため、固定資産税の課税対象となります。このため、税負担を考慮した慎重な資産管理が求められます。

  • OPEX
    多くの経費が税控除の対象となります。「DX投資促進税制」では、デジタル技術や企業変革に関連する要件を満たしたソフトウェアや設備投資に対し、税額控除(3~5%)や特別控除(30%)が適用されるケースがあります。

管理方法の違い

  • CAPEXの管理
    長期的な視点で計画的な資金運用が求められます。「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の財務三表を活用し、減価償却費やキャッシュフローを定期的に確認します。

  • OPEXの管理
    日々の経費として計上されるため管理が容易です。経理処理を徹底することで問題点や改善の余地を明確にできます。サブスクリプション費用などの定期的な支出も含まれるため、適切なコスト削減策を実施する必要があります。

増加が意味すること

  • CAPEXが増加する場合
    CAPEXの増加は、新規事業や設備投資への積極的な取り組みを示しています。たとえば、新工場の建設や設備の更新など、将来の成長を見据えた支出の増加が挙げられます。ただし、投資の費用対効果が低い場合には、財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあるため、注意が必要です。

  • OPEXが増加する場合
    OPEXが増加している場合、日々の運営コストが増加していることを意味します。これは、業務拡大やOPEXモデルへの移行が進んでいる兆候ともいえます。しかし、過剰な経費増加は利益率の低下を招く可能性があるため、定期的な見直しやコストの最適化が求められます。

CAPEXとOPEXはいずれも企業運営に欠かせないコスト要素です。それぞれの特性を理解し、適切に管理することが重要です。長期的な資産投資を見据えたCAPEXと、効率的な経費運用を目指すOPEXのバランスを保ちながら、健全な財務状況の維持を目指しましょう。

CAPEXの削減方法

CAPEXのOPEX化

CAPEXのOPEX化とは、従来資本的支出(CAPEX)として扱われていたものを運用費用(OPEX)に変える戦略です。特にITや設備管理の分野で注目されており、クラウドサービスやサブスクリプションモデルの普及がその背景にあります。この手法により、維持やコスト面での負担を軽減できます。

CAPEXのOPEX化の例

  • 例 : 自社サーバーの購入・設置をクラウドサービスに切り替える。
  • 例 : 高価な機械を購入せず、月額リース契約を結ぶ。

CAPEXをOPEXに移行する理由

DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、CAPEXからOPEXへの移行が加速しています。この移行が推奨される理由は以下の3点です。

  • 保守・運用コストの削減
    従来のオンプレミス型のインフラは障害対応やメンテナンスに多額のコストがかかり、長期的な運用負担となっていました。これらをクラウドサービスに移行することで、保守作業が簡略化され、運用負担とコスト削減が可能です。また、運用費が予測しやすくなる点も大きなメリットです。

  • 初期投資の抑制とキャッシュフローの改善
    CAPEXモデルでは、システム導入時に大規模な初期投資が必要です。一方、OPEXモデルでは、月額や年額の支払いによって費用を分散できるため、キャッシュフローへの負担が軽減されます。

  • 効率的な資金運用
    IT技術の進化は非常に速く、CAPEXで購入した設備が短期間で陳腐化するリスクがあります。一度購入した設備は長期間使用することが前提のため、技術革新への対応が難しい点が課題です。しかし、OPEX化することで、クラウドサービスやサブスクリプションを利用し、必要に応じて最新技術を活用する柔軟性が得られます。これにより、設備の陳腐化を避けつつ、資金を効率的に運用できます。

CAPEXをOPEX化する際の注意点

CAPEXからOPEXへの移行は有効な戦略ですが、OPEXも費用であるため、増加しすぎないよう注意が必要です。また、自社の競争力を維持するため、すべてのシステムやインフラをクラウドサービスに依存するのではなく、どの領域を内製化するかを慎重に見極めることが重要です。

特に、事業のコア業務や競争力に直結する分野は外部依存を最小限に抑え、内製化することで自社の強みを活かした差別化が可能になります。

また、単にCAPEXを削減するだけでは必要な設備投資を怠るリスクがあり、それにより成長が阻害される可能性があります。CAPEXとOPEXのバランスを適切に管理し、持続的な成長と競争力の強化を目指すことが大切です。

OPEXの削減方法

OPEXは事業規模が大きくなるにつれて増加しますが、OPEX(運用費用)削減で重要なのは「企業の利益を最大化させること」です。以下に、3つの経費削減方法を紹介します。

なお、コスト削減についての詳細は「コスト削減(経費削減)とは?期待できる効果と見直しのポイント」を参考にしてください。

人件費の削減

人件費の削減を目指す際は、単なるコストカットではなく、業務効率を向上させる改革を優先することが重要です。

業務の見直しと最適化

業務を見直さずに人員を減らすと、残った従業員への負荷が増え、職場環境の悪化を招く恐れがあります。そのため、業務フローを再設計し効率化を図ることで、残業時間の削減や生産性向上が期待できます。これにより、従業員の負担軽減と職場環境の改善も実現可能です。

人件費削減における「売上高人件費比率」の把握

売上高人件費比率は、売上高に占める人件費の割合を指します。以下の計算式で求められます。

売上高人件費比率=(人件費 ÷ 売上高)×100(%)

人件費のみに着目して削減すると、売上高も低下し、結果として比率が改善しない場合があります。また、リストラや賃金カットは従業員のモチベーションや労働生産性の低下につながるリスクがあるため、適正な比率を保つことが重要です。

人件費削減につながる対策例
  • 従業員のスキルアップ研修やマニュアル整備の実施
  • 部門ごとの業務量分析による人員配置の見直し
  • フリーランスや契約社員の活用による柔軟な人事施策の実施

消耗品費の削減

消耗品費は削減の成果が見えやすい分野です。ただし、従業員の協力が不可欠です。

削減方法
  • ペーパーレス化の推進
    電子化を進め、紙の使用を削減。電子署名やオンライン請求書を活用することでさらにコスト削減
  • まとめ購入とリサイクルの活用
    再生紙や大量購入など、コスト効率の良い選択実施
  • 使用量の見える化
    消耗品の使用状況を記録・共有し、従業員の意識改革を促進
注意点

削減を行き過ぎると業務効率や従業員のモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があるため、必要な支出は確保することが重要です。

支払い手数料の削減

取引先や従業員への振込などにかかる支払い手数料は、事業規模の拡大とともに大きな負担となります。これらを削減する方法を検討しましょう。

削減方法
  • インターネットバンキングの利用
  • 当座預金振込代行サービスの導入
  • 従業員の給与振込口座を同一銀行の同一支店に統一

OPEX削減は、企業の収益性向上に欠かせない重要な施策です。特に、人件費、消耗品費、支払い手数料といった主要な費目について、経費の使用状況を定期的に確認し、無駄を特定することが求められます。最適な削減方法を導き出すには、従業員の協力を得て意識改革を促すことが重要です。
また、業務効率や職場環境の改善を並行して進めることで、コスト削減と働きやすい環境の両立が可能になります。このような取り組みを継続することで、削減効果を持続させることができます。

OPEXを削減する際の注意点

OPEX(運用費用)は企業活動の基盤を支える重要な支出です。削減を進める際には、業務効率やサービスの質に悪影響を及ぼさないよう注意が必要です。以下に、OPEX削減を成功させるための3つの重要ポイントを説明します。

サービスの質を維持する

OPEX削減を行う場合でも、サービスの質を低下させないことが最優先です。特にOPEX比率が高い業種では、削減しすぎると顧客満足度やブランド価値が損なわれる恐れがあります。

  • 通信業では、仮想移動体通信事業者(MVNO)のように長期的な削減計画が求められる
  • サービス業では、顧客満足度を重視するため、削減の難易度が高い場合が多い

業務改革と並行して進める

単に費用を減らすのではなく、業務効率を高める改革と併せて進めることが重要です。

  • 人件費の削減では、単純に人員を減らすだけでなく、適正な人員配置を行い負担を軽減する
  • IT業界では、業務内容の見直しやサプライヤーとの価格交渉を進めることで、効果的な削減が可能

これにより、コスト削減だけでなく、生産性や従業員の働きやすさ向上も期待できます。

定期的な見直しを行う

OPEX削減は一度きりではなく、定期的に状況をチェックし、変化する市場環境や業界の状況に応じて柔軟に対応することが求められます。

  • 売上が伸びても利益が増えない場合は、OPEX管理の改善が必要
  • 定期的な見直しを行うことで、コスト構造を最適化し、持続的な成長を実現することが可能

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

現在、多くの企業が人手不足という大きな課題に直面しています。その中でも、バックオフィス業務では、いまだに属人化した作業やアナログ業務が多く残り、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。

バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止を図るだけでなく、企業全体の生産性向上にもつなげることが可能です。

当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに応じた最適な改善策をご提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からしっかりとお手伝いさせていただきます。

バックオフィス業務に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

CAPEXとOPEXについて解説してきましたが、削減そのものよりも重要なのは、無駄を省きコストを最適化することです。変化の激しい市場環境の中で生き残るためには、企業会計においてこれら2つの支出を常に把握し、適切に管理する必要があります。むやみに削減を進めた場合、作業効率や生産性の低下、さらには従業員のモチベーション低下を招く可能性があるため注意が必要です。

CAPEXやOPEXの見直しは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が進んでいない企業にとって、変革を図る良い機会となるでしょう。

また、ERPを活用することで、お金だけでなく多岐にわたる情報を一元管理できるため、コスト削減の検討や意思決定を迅速に進めることが可能です。

ERPに関する資料をご用意しておりますので、ぜひご覧ください。


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