社会保険とは?加入条件や 国民健康保険との違いなど基本を解説

 2023.10.25  株式会社システムインテグレータ

求人情報などで「社会保険完備」という言葉をよく目にしますが、社会保険とは具体的にどのようなものか、詳細を把握していない方は少なくありません。

そこでここでは、社会保険の概要、国民保険との違い、社会保険の加入対象となる企業と従業員、社会保険のメリットなどを詳しくご紹介します。

社会保険とは、社会的な相互扶助の制度

social-insurance

社会保険という呼称は、広義と狭義の用法があります。

広義での社会保険とは、「健康保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」「介護保険」の五つからなる、公的な社会保障制度です。
病気やケガ、加齢や失業などの理由で生活が破綻しないように制定されました。加入者全員が互いに助け合う制度で、今では日本に住む人々の安心な暮らしに欠かせないものとなっています。

狭義の社会保険とは、「健康保険」「年金保険」「介護保険」の三つを指します。そのほかの「労災保険」と「雇用保険」の二つは「労働保険」と呼ばれています。

なお、求人広告や求人票で目にする「社会保険完備」という文言は、広義の社会保険すべて(ただし介護保険は40歳以上から)に加入できるという意味です。

以下では、広義の社会保険に含まれる五つの保険について詳しく紹介します。

健康保険

社会保険に含まれる「健康保険」は、公的医療保険のひとつです。加入者が保険料を少しずつ支払うことで、本人を含めた誰かが医療機関を受診する際に、保険証を提示すれば窓口で支払う負担金が原則1~3割になるという制度です。

ただし、社会保険に含まれる健康保険(公的医療保険)は、従業員だけのものではありません。日本は1961年から「国民皆保険」が実現・維持されており、乳幼児から高齢者まで、国民の誰もが何らかの公的医療保険に加入することが義務とされています。

公的医療保険の種類は、下記の三つです。

  • 被用者保険(いわゆる社会保険):会社員や公務員など
  • 国民健康保険:自営業者、農家、フリーランス、退職後に社会保険を任意継続しない人など
  • 後期高齢者医療制度:75歳以上の方など

制定前は約3,000万人もの人が公的医療保険に未加入だったと言われていますが、国民皆保険制度が実現されたことで、子どもから高齢者まで誰もが公平・低コストで医療へアクセスすることが可能となりました。

負担額の割合は、未就学児は2割、70歳未満は3割、70~74歳は2~3割、75歳以上は1~3割が原則です。また、子どもは自治体により医療費助成制度が設けられています。

介護保険

高齢化に伴って、従来は家族が担っていた介護を社会全体で支え合うために、2000年から新しく始まった制度です。介護のための費用・サービスを提供することで、本人はもちろん、支援者の負担を抑えることも目的です。その後何度も改正が重ねられ、現在の形になっています。

以前にも「老人福祉法」や「老人保健法」がありました。しかし、利用者がサービスを選択できない、収入のチェックがある、食堂・浴室などが整備されておらず長期的に療養できない、などの問題があり改善が求められていました。

主な介護サービスとして挙げられるのは、ヘルパーが自宅で入浴・排せつ・食事などの介護などを行う訪問介護、福祉用具のレンタル、通所介護(デイサービス)、リハビリテーション、ショートステイ(短期入所生活介護)、特別養護老人ホームの提供などです。

介護保険の被保険者は以下の通りです。

  • 第1号被保険者:65歳以上
  • 第2号被保険者:40歳~64歳

介護保険サービスを受けられる対象者は以下の通りです。

  • 第1号被保険者:要介護・要支援状態と認定された場合
  • 第2号被保険者:16種類の特定の疾病が原因で要介護(要支援)状態にあると認定された場合

なお、16種類の特定の疾病とは、末期がん、関節リウマチ、若年性認知症、骨折を伴う骨粗しょう症など、老化を起因とする疾病を指します。

40歳以上の被保険者は、介護保険への加入が義務づけられています。保険料は、40~64歳の場合は健康保険と一緒に給料から、65歳以上の被保険者は年金から天引きされます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、70歳未満の会社員や公務員などが加入できる公的年金のひとつです。厚生年金に加入している人は、将来、国民年金(基礎年金)だけでなく厚生年金も加算して受け取れます。厚生年金の場合、保険料は事業主と被保険者で負担するため、全額自己負担の国民年金に比べて有利です。保険料は、給料から天引きされます。

一方、国民年金は20~60歳未満の人が全て加入する基礎的な公的年金です。前年度の所得が一定水準以下の場合などは、申請して審査に通れば免除や納付猶予も可能です。

厚生年金には以下の三つがあります。

  • 「老齢年金」
    一般的に「厚生年金」という場合に指すのは、この老齢年金のことです。加入者が65歳以上になったら受け取れます。
  • 「障害厚生年金」
    厚生年金に加入している間に病気・ケガなどで障害を負った場合に受け取れます。障害の度合いによって1級~3級まであり、目や聴覚、手足などの外部障害だけでなく、うつ病や双極性障害などの精神疾患、がんや糖尿病などの内部障害も対象に含まれます。
  • 「遺族厚生年金」
    厚生年金の被保険者が亡くなった場合、遺族が給付金を受け取れます。被保険者と生計を同じにしており、収入要件を満たしている配偶者・子どもなどに支払われます。

労災保険

労災保険とは、業務中や通勤中に病気やケガを負ったり亡くなったりした場合に、従業員やその遺族に対して国から療養給付(治療費)、休業給付などが支払われる制度です。正式名称は「労働者災害補償保険」と言います。正社員だけでなく、パート・アルバイト、日雇いなど、全ての従業員が対象です。保険料は事業者が全額負担します。

労災保険は、例えば以下のような場合に支払われます。

  • 炎天下で作業を続けて熱中症になった
  • 上司のパワハラでうつ病になった
  • 通勤中に交通事故に遭いケガをした

労災にあたるかどうかは、事業主ではなく、労働基準監督署が判断します。事業主は、従業員が労災を申請したいと申し出た場合、速やかにそのサポートをすることが義務づけられています。

雇用保険

雇用保険とは、加入者が失業・休業した場合に給付金を受け取れる制度です。週の所定労働時間が20時間以上で31日間以上雇用される見込みがある労働者が加入できます。保険料は事業主と労働者が一定の割合で負担します。

雇用保険の給付にはいくつかの種類がありますが、代表的なものは「求職者給付(失業手当)」です。年齢、雇用保険の加入期間、障害の有無、離職の理由などによって、90~360日の間で給付を受けられます。目安ですが、例えば月額20万円の収入だった場合、支給額は月額13.5 万円ほどです。

参照元:厚生労働省「雇用保険制度 Q&A」 
※Q10をご参照ください

解雇・倒産など会社都合での退職なら7日後に支給が始まりますが、自己都合で退職した場合は2~3か月かかるという違いもあります。求職者給付の場合、受給を希望する本人がハローワークで手続きをする必要があります。

給付を受けられるのは、原則として離職する前の2年間に、12か月以上雇用保険に加入していた従業員(倒産・解雇などの離職であれば6か月以上)です。また、積極的に就職しようとする意志があること、いつでも就職できる能力があること、なども条件とされています。出産や病気などですぐに働けない人は給付の対象外となるため、受給期間の延長申請をする必要があります。

他にも以下のような給付があります。

  • 「就職促進給付」
  • 「教育訓練給付」
  • 「雇用継続給付」:「介護休業給付金」「高年齢雇用継続給付金」が含まれます。
  • 「育児休業給付」

社会保険と国民健康保険の違い

いわゆる社会保険(被用者保険)と国民健康保険は、どちらも公的な社会保険制度です。双方ともに医療費の自己負担は原則3割ですが、対象者や保険料、手当金の有無などが異なります。

企業の従業員などの健康保険

いわゆる社会保険は、会社員とその家族を対象とした健康保険で、「協会けんぽ」と「組合健保」の2種類があります。そのほか、公務員とその家族を対象とした共済組合や、船員保険があります。

協会けんぽは全国健康保険協会が運営し、独自の組合健保を持たない中小企業・小規模企業が主に加盟しています。

組合健保は、常時700人以上の被保険者がいる大企業が単独で、もしくは複数の企業が共同で運営しています(複数の企業の場合は、合計で常時3,000人以上の被保険者が必要)。

いずれにしろ、一定の要件を満たしていれば、正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣社員なども加入する必要があります。保険料は事業主と従業員が折半で支払います。従業員の扶養に入った家族が増えても、保険料の金額は変わりません。また、出産手当金、傷病手当金なども支払われます。

自営業者などの国民健康保険

国民健康保険は、個人事業主やフリーランスなどの自営業者、年金生活者、退職して社会保険の任意継続をしなかった人、親の扶養から外れたアルバイトの人などが対象です。

社会保険との大きな違いは、保険料が全て加入者の自己負担であるということです。世帯の所得と加入者数によって保険料が決まるので、扶養する家族が増えると世帯全体の保険料も高くなります。

保険料は加入者の前年度所得に基づいて計算され、6月頃に送付される納付書を使って、年10回支払います。保険料の納付が難しい場合は、減免・軽減制度が設けられています。

国民健康保険では、出産一時金は支払われますが、出産手当金、傷病手当金は支払われません。
加入者が他の市区町村へ転居する場合は、改めて転居先の市区町村で手続きをします。

保険料の計算方法が違う

社会保険(企業の従業員などの健康保険)と国民健康保険では、保険料の計算方法も違います。社会保険は事業主、国民健康保険は従業員が居住している都道府県が計算します。

算出方法については、それぞれ詳しく解説します。

まず、社会保険の計算方法についてです。

協会けんぽの場合、保険料は事業主と従業員が折半します。全国健康保険協会が都道府県別に保険料率を決定し、毎年4~6月の3か月間の平均給与を、標準報酬月額表の等級区分と、介護保険第2号に該当する(40歳以上)/しない(40歳未満)にあてはめることで算出します。算出した保険料は、原則として同年9月~翌年8月までの1年間に適用されます。

例として、同じ報酬月額でも介護保険第2号に該当する(40歳以上)かしないかで保険料がどの程度異なるかを示します(令和5年(2023年)3月分(4月納付分)の保険料)。

東京都在住の42歳、報酬月額30万円の場合:17,730円
東京都在住の35歳、報酬月額30万円の場合:15,000円

参照元:令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

また、就職間もない従業員は、初任給をもとに標準報酬月額を決定します。育児休業や産前産後休業を取得しているなら、その期間中は保険料が免除されます。また、3歳未満の子どもを養育している期間中に標準報酬月額が下がった場合、養育開始前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取れる措置もあります。

基本給だけでなく、残業手当、通勤手当、役職手当、家族手当、住居手当、年4回以上支給される賞与なども含めた報酬も、月額報酬の中に含められます。また、社宅などの現物で支給されるものも報酬として換算されます。

組合健保の場合、財政状況などに応じて保険料率や被保険者と事業主の負担割合を独自に定めることが可能です。

その一方で国民健康保険は、「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分」という三つの要素があり、そのそれぞれに前年中の所得(所得割)、世帯内の被保険者1人あたりの金額(均等割)、1世帯あたりの金額(平等割)がかかっています。

扶養の考え方が違う

前項で少しふれましたが、社会保険には扶養制度があるものの、国民健康保険にはありません。

例えば、AさんBさん夫婦に子どもが2人いたとします。仮にAさんが会社員で社会保険に加入しており、Bさんが家事・育児に専業していたとしたら、Aさんの扶養にBさんと子ども2人が入っても、社会保険料は変わらずAさん1人分です。

このように、社会保険は従業員に扶養する人(被扶養権利者)が増えても保険料は変わらないので、扶養する人が多い従業員にとってはメリットがより大きくなります。

それに対して、先程のAさんが自営業を始めて国民健康保険に加入した場合、Bさんと子ども2人を含めて合計4人分の保険料がかかるので、保険料の負担は社会保険よりも重くなります。

社会保険のメリット

国民健康保険よりも社会保険のほうが有利といえる理由を、従業員・企業双方の立場から見てみましょう。

従業員にとってのメリット

ここまで見てきたように、従業員にとっては社会保険に加入することで、下記に挙げる大きなメリットがあります。

  • 保険料を事業主にも払ってもらえて負担が減る
  • 配偶者や子どもを扶養に入れても、保険料の支払いは1人分で済む
  • 出産や育児、介護、傷病などの給付金が支給される

企業にとってのメリット

ここまで主に従業員にとってのメリットを解説してきましたが、企業にとっての一番のメリットは、社会的な信用が高まり、採用活動も有利に働くことです。

株式会社マイナビが実施した「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」では、求人求職者が企業を選ぶ際のポイントとして「安定している」が最多となっています。
さらに、「マイナビ 2023年卒大学生活動実態調査(3月)」で企業に安定を感じるポイントを複数回答可で答えてもらったところ、「福利厚生が充実している」が53.3%で最多でした。求職者は、福利厚生が充実した職場を求めている傾向がうかがえます。
福利厚生のなかでも社会保険への加入は企業の義務ですが、求職者への大きなアピールポイントともなります。

また、「マイナビ 2023年卒大学生のライフスタイル調査」によると、「夫婦共働きが望ましい」と回答した学生は女性で7割超、男性で約6割でした。「育休を取得が男女問わず積極的に推奨されており、復帰後もキャリアが途切れないような体制が整っている」などの配慮をすると、キャリアを積みながら長く働きたい人材を確保しやすくなると考えられます。女性の地位向上にも寄与するため、社会的な信用へとつながります。

参照元:マイナビ「2023年卒大学生就職意識調査」

そのほか、公的な助成金や補助金の給付を受けたり、銀行からの融資を受けたりする際、社会保険への加入の有無を確認されることがあります。

事業所としての加入条件

ここからは、狭義の社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)の加入条件について解説します。

全ての法人事業所や、従業員が常時5人以上いる個人事業所は、「強制適用事業所」として社会保険への加入が法律で義務づけられています。株式会社などの法人の場合、事業主1人のみの場合を含むので注意が必要です。ただし、従業員が5人以上でも、飲食店、美容室、クリーニング業、農林水産業などは適用外です。

強制適用事業所ではなくても、適用事業所となることに従業員の半数以上が同意していれば、申請・認定の上、適用事業所になることができます。その場合は、健康保険と厚生年金保険の両方ではなく、どちらか一方にのみ加入することも可能です。

また、2024年10月からは、従業員数が51人以上の企業で働くパートやアルバイト、派遣社員も、基準(後述の「従業員の加入条件」を参照)を満たせば社会保険加入の対象者となります。

「51人以上」という条件となっている従業員数は、以下のようにカウントします。

従業員数
=「フルタイムの従業員数」+「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数(アルバイト・パートも含む)」
=現在の社会保険の適用対象者

該当する従業員がいる場合は、扶養範囲内で働くことを望んでいる人も少なくないため、事前に希望をヒアリングしておく必要があります。「給与から社会保険料が天引きされるため目の前の手取り額は減るが、将来もらえる年金の額が増え、万が一の時にもらえる傷病手当などの対象となる」など、社会保険に加入することのメリット・デメリットを丁寧に伝えてください。

従業員の加入条件

社会保険の適用事業所の場合、加入条件を満たす全ての人に社会保険の加入義務があります。健康保険、厚生年金保険とも加入条件は同様です。

正社員だけでなく、パート・アルバイトも、「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が同じ事業所で働く正社員の4分の3以上であれば、被保険者となります。例えば、正社員が週40時間、月に20日働いている事業所であれば、そこで週30時間・月15日以上働いている人なら、パート・アルバイトに関わらず、社会保険への加入が現在でも必須です。

前述の通り、2024年10月からは従業員数が51人以上(2022年10月からは従業員数101人以上)の企業で働くパートやアルバイト、派遣社員も、以下の基準を満たせば社会保険加入の対象者となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではないこと

参照元:厚生労働省「従業員数100人以下の事業主のみなさま」

また、正社員は試用期間中でも要件を満たしていれば、社会保険への加入義務があります。従業員が入社した初日から加入義務は発生し、試用期間が短期間だったとしても正式な雇用が前提であれば社会保険への加入は必須です。
仮に雇用契約書で「試用期間中は社会保険には加入しない」といった項目を設けていたとしても例外ではなく、もしも違反すると罰則が科されることもあります。

ただし、季節雇用・臨時雇用などの場合は適用除外になることがあります。

社会保険の手続き

社会保険に加入するにはどのような手続きが必要なのか、提出方法や注意点を含めて解説します。事業所と従業員それぞれの加入方法、扶養に入れる際や退職の際の手続きもそれぞれまとめました。

事業所が加入するための手続き

事業所が社会保険に新しく加入するには、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出しなければなりません。加入条件を満たしてから5日以内に届け出る必要があります。

提出先は、日本年金機構の事務センターか、事業所の所在地を管轄する年金事務所です。窓口、郵送、電子申請いずれも受け付けています。なお、資本金等の額が1億円を超える特定の法人などは、オンラインによる電子申請が義務づけられています。

添付書類は以下の通りです。

  1. 法人事業所の場合
    法人(商業)登記簿謄本
  2. 事業主が国・地方公共団体・法人である場合
    法人番号指定通知書のコピー 
  3. 強制適用事業所である個人事業所
    事業主の世帯全員の住民票(マイナンバーの記載がないもの)

参照元:日本年金機構「新規適用の手続き」

従業員らが加入するための手続き

社会保険の加入対象となる従業員を採用した際は、5日以内に事業者が「被保険者資格取得届」を提出しなくてはなりません。日本年金機構の事務センターか、事業所の所在地を管轄する年金事務所に、窓口、郵送、電子申請のいずれかで提出します。

結婚や離婚、出産などで被保険者である従業員の氏名が変わったり、扶養する家族が増えたりした場合は、「被扶養者(異動)届 第3号被保険者関係届」を提出しなければいけません。これも同じく5日以内に行う必要があります。

なお、本社で支社の人事や給与の一元管理を行っている場合は、支社を含めたひとつの適用事業所とする申請をすることも可能です。申請していないと、例えば東京本社から大阪支社へ異動する従業員がいる場合、被保険者の資格をいったん喪失させた後、改めて異動先での資格を取得しなければいけません。しかし、本社で一括加入していれば、それらの業務が不要となります。

扶養に入れるための手続き

従業員が配偶者や子ども、親などを扶養に入れたい場合は、事業主を経由して「被扶養者(異動)届 第3号被保険者関係届」を日本年金機構へ提出します。窓口、郵送、電子申請で提出可能です。

主な添付書類

  • 被扶養者の戸籍謄本・戸籍抄本か住民票の写し(扶養者・被扶養者双方のマイナンバーの記載があれば不要)
  • 被扶養者が16歳以上の場合、収入を証明できる書類(事業主の証明があれば不要)

そのほか、被保険者と別居している16歳以上の子どもを扶養家族とする場合などは、仕送り額を証明できる書類が必要になるなど、個別の状況により必要書類は異なります。

夫婦ともに収入がある従業員が子どもなどを扶養に入れたい場合は、夫婦のうち年間収入が多いほうが扶養者として認定されます。

外国籍の従業員の場合は、その人の配偶者や子どもが原則として日本国内に住民票を持っており、生計が同じであれば、日本人と同じく扶養に入れることが可能です。ただし、長期観光や医療を受ける目的で滞在する人は、被扶養者にすることはできません。

退職に関する手続き

従業員が退職する場合、事業者が5日以内に「被保険者資格喪失届」を提出します。その際、健康保険被保険者証(被保険者と被扶養者のもの)も添付します。窓口、郵送、電子申請で提出可能です。

社会保険に入った場合の手取り給与

「手取り給与」とは、従業員の給与口座に実際に振り込まれる金額です。額面給与から社会保険料や税金などが天引きされるため、額面給与よりも少なくなります。給与明細の「差引支給額」に記載されている金額です。

どれくらい天引きされているかは給与明細で調べられます。一般的に控除額は15~25%程度で、手取り給与は額面給与の75~85%程度になることが一般的です。
額面が20万円なら手取りは15万円~17万円、額面が30万円なら手取りは22.5万円~25.5万円ほどが目安です。

社会保険に入らなかったら

要件を満たしている従業員を社会保険に加入させるのは事業主の義務です。違反していて指導にも従わない場合などは、懲役または罰金の対象となります。健康保険法や厚生年金保険法により「6か月以下の懲役」または「50万円以内の罰金」と定められています。

また、未加入の従業員について、未払いの保険料を最大2年間さかのぼって徴収される可能性があります。特に、人数が多い場合や従業員が退職していて請求が難しい場合は、事業主にとって大きな損失となります。

それだけでなく、SNSで瞬時に情報が拡散される現代では、社会的な信用を大きく損なう結果になりかねません。

従業員にとっても、社会保険は国民健康保険にはない魅力があるため、そのメリットをより多くの従業員が享受できるように働きかける必要があります。要件を満たしている従業員の加入手続きを速やかに行うのはもちろん、いわゆる「年収の壁」を気にして働き方をセーブしているパートタイマーに面談をして、メリットを伝えた上で意向を聞くなど、丁寧な対応をするようにしましょう。

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まとめ

日本では戦後に整備された健康保険などの制度は、安心した生活を支える基礎となるものです。特に会社員などが加入する社会保険は、将来の年金額が上乗せされ、安心して働くことのモチベーションになるなど、企業と従業員の双方に大きなメリットがあるため、国も積極的に加入を推奨しています。

ただし、社会保険の支払額の算定などは複雑なため、その業務に携わる担当者の負担にもなります。労務管理系システムやERPを活用することで業務効率につなげられるため、ぜひ活用してください。


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