社会保険料控除とは?対象の社会保険料、計算方法、手続きや知っておきたいポイントを詳しく解説

 2023.12.08  株式会社システムインテグレータ

年末調整や確定申告の際に目にすることの多い社会保険料ですが、よく理解した上で控除の手続きを行わないと、損をしてしまうかもしれません。しかし、手続きや仕組みについて難しいと思う方は多いでしょう。そこでこの記事では、社会保険料の概要や計算方法、支払い方による控除の申請方法の違いなど、損をしないためのポイントを解説します。

社会保険料控除とは

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社会保険料控除は15種類ある「所得控除」の一種で、1月1日から12月31日までの1年間に支払った社会保険料の全額を、その年の所得金額から差し引ける控除制度のことです。対象となる社会保険は「厚生年金」「国民年金」「国民健康保険」「健康保険」「高齢者医療保険」「労働保険(雇用保険)」「介護保険」があります。納税者が配偶者や子供、親族など生活・家計を一つにする人の社会保険料も払っている場合は、そちらも対象です。

所得税や住民税を計算する場合は、1年間の所得額が必要になります。社会保険料控除とは、所得税と住民税を計算するにあたって、本人が得た所得から支払った社会保険料を差し引くことで、所得額から控除される制度です。社会保険料控除は給与所得者だけでなく、個人事業主も受けられます。

控除の対象となる社会保険料の種類

社会保険料といっても、控除の対象となる社会保険料は多岐にわたります。ここでは、対象となる社会保険料にどのようなものがあるのか、徴収方法や控除の方法などを紹介します。

健康保険料

国民健康保険および企業の加入する健康保険などの健康保険料は、社会保険料控除に含まれます。国民健康保険は公的医療保険制度の一つで、公務員が加入する共済組合、企業の加入する健康保険、後期高齢者医療制度など他の医療保険に加入していない全ての人が対象です。

自営業者などが加入する国民健康保険では控除証明書が無いため、自治体から送付される納付額通知書を基に確定申告書にて控除を受けることになります。納付額通知書は確定申告に間に合うように各自治体から1月中旬から下旬に発送されます。

なお、会社員は務めている企業の健康保険に加入しており、保険料は天引きされているため控除の手続きは必要ありません。

年金保険料

国民年金と厚生年金も、社会保険料控除の対象です。国民年金は国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入する公的な年金制度で、働いていない方や自営業などで厚生年金に加入していない方は原則として保険料の支払が必須となっています。国民年金に加入している場合は、控除証明書が日本年金機構から送られてくるため、それをもとに確定申告を行います。

厚生年金は、厚生年金保険が適応される企業に勤務する会社員、または公務員が加入する公的年金制度で、保険料の半分は会社負担です。厚生年金は給与からの天引きになっており、その中に国民健康保険料が含まれています。

国民年金は第1号被保険者、厚生年金は第2号被保険者とも呼ばれ、将来の年金受給額は第2号被保険者の方が高くなります。

年金基金の保険料

年金基金はあまり聞きなれない言葉かもしれません。これは、任意で老齢基礎年金に保険料を上乗せして支払うことで、将来受け取る年金受給額を増やす制度です。厚生年金に加入している会社員と、国民年金のみとなる自営業者を比較すると将来受け取る年金額に大きな差が出るため、その差を解消できるよう定められました。

年金基金も、年末に送られてくる控除証明書を添付し、年末調整か確定申告を行うことで控除を受けられます。

また、年金基金だけでなく企業型確定拠出年金(DC)や確定給付型企業年金(DB)、個人型年金(iDeCo)なども、社会保険料控除の対象です。これらは、年金受給額を厚くしたい場合に加入する制度です。以前は企業年金がありましたが、長引く不況などが原因で破綻する懸念が出てきたため、採算が難しかった企業年金は解散し、代わって企業型確定拠出年金と確定給付型企業年金の制度が創設されました。また、個人型確定拠出年金であるiDeCoなども普及してきています。

これらの社会保険に関しては、10月下旬ごろに掛金払込証明書などが発送されます。忘れずに手続きを行いましょう。

介護保険料

介護保険は40歳以上の人が支払う義務が生じる社会保険です。40歳から64歳までの第2号被保険者(厚生年金加入者)は保険料が給与から天引きされるため、個別に支払う必要はありません。65歳以上の第1号被保険者(国民年金加入者)は年金受給額によって支払方法が変わります。年額18万円以上を受給する方は特別徴収となり受け取る年金から自動的に天引きされ、年額18万円未満の方は普通徴収となり、口座振替や納付書による支払などで個別に支払います。普通徴収の場合は確定申告で控除の手続きが必要です。

また、40歳以上64歳以下の第1号被保険者は、国民健康保険料の中に介護保険料が上乗せされているため、健康保険料の控除の手続きをすることで一緒に介護保険料も控除されます。

後期高齢者医療保険料

75歳以上の方、もしくは65歳以上74歳以下の方で一定の障害があると認定された場合に加入する医療保険制度が、後期高齢者医療保険です。

納付方法は2種類あり、それぞれ控除の手続きが異なります。年金の受給額が年18万円以上の方は天引きされるため、控除の手続きは必要ありません。年金受給額が年18万円未満の方や介護保険料との合計が年金の2分の1を超える方など、特別徴収とならない場合は口座振替や納付書による支払などで保険料を納め、確定申告で控除の手続きを行います。

労働保険料

労働保険は、勤務中や通勤中に負ったケガや病気に対して補償する「労災保険」と何かしらの理由で働けなくなったときなどに受給できる「雇用保険」を合わせた制度で、会社員を対象としています。労災保険料は基本的に会社が全額負担し、雇用保険料は会社員の給与から決められた額が天引きされるため、控除の手続きは不要です。

一方、労災保険には特別加入制度というのがあり、自営業者や中小企業の役員などで、業務の実態から労働者に準じて労災保険で保護されることが相応と判断される場合に認められます。この場合は、保険料は自己負担になるため、確定申告で控除の手続きが必要です。

社会保険料控除の計算方法

1月1日から12月31日までの1年間に支払った社会保険料の全額が、社会保険料控除の対象です。

会社員であれば、給与から天引きされている場合がほとんどのため、年末調整で控除の手続きを行います。転職した場合は、以前の勤務先から交付された「給与所得の源泉徴収票」などで確認しましょう。また、就業していない期間中に自ら社会保険料を支払っている場合は、新しい就職先で「扶養控除等(異動)申告書」を提出するときに控除の手続きが必要になります。

国民年金に加入している場合は、年間の所得から1年間で支払った国民年金保険料と他の社会保険料、そして医療費控除などの社会保険料以外の所得控除を差し引いた額が課税対象です。例えば、令和5年であれば国民年金保険料は16,520円となっており、年額で198,240円となります。

国民健康保険料・介護保険料は何人世帯なのか、給与収入がどれぐらいなのか、自治体によって計算方法が変わるため、納付書などで確認が必要です。このように社会保険料控除の対象となる社会保険料を合算して、年間の所得から差し引きます。

社会保険料控除の手続き方法と必要な書類

社会保険料の控除手続きは、年末調整と確定申告の2種類の方法があります。社会保険料が天引きされている給与所得者は年末調整で、個人事業主などの場合は所得税の確定申告で行います。給与所得者と個人事業主では、手続き方法が異なるため気を付けましょう。

ここでは、それぞれのケースで必要な書類とどうのように手続きするのかを解説します。

給与所得者の場合

給与所得者には、パートやアルバイトも含まれます。給与所得者が社会保険料控除を受ける場合は、毎年行われる年末調整で手続きをします。年末に近づいてくると勤務先で「給与所得者の保険料控除申告書」が配布されるため、必要事項を記載し提出することで控除の申請が可能です。

子どもがいる場合は、親が子どもの保険料を負担した証明書が必要になります。10月下旬から11月上旬に日本年金機構から「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が送付されるため、申告書と併せて提出しましょう。子どもの名義で届く書類も一緒に提出します。名義が違っても問題ありません。年金以外の家族の健康保険料や介護保険料などを負担している場合は、証明書の添付は不要です。

また、年末調整で記載できなかった社会保険料がある場合は、確定申告で控除手続きを行います。確定申告書の第二表に支払いをした社会保険料の内容を記載する項目の中に「うち年末調整等以外」という欄があるため、そちらを利用して手続きします。

年末調整についてはこちらのブログで詳しく解説しています。
年末調整とは? 確定申告との違いや書類の書き方、各種控除について説明

個人事業主の場合

個人事業主の場合、確定申告時に控除の手続きを行うことになります。自身が支払った社会保険料が、漏れなく全て記載されているかしっかり確認しましょう。

所得税の確定申告書の中に「所得から差し引かれる金額」という欄があり、その中の「社会保険料控除(13)」の部分に、その年に支払いをした合計金額を記入します。個人事業主は、確定申告書第二表にある「うち年末調整等以外」の欄に、社会保険料の合計額を書きます。

所得税の確定申告の場合でも、国民年金機構から送付される「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を添付します。それ以外の社会保険料の添付は必要ありません。

もし、控除証明書を紛失してしまった場合でも、再発行は可能です。しかし、再発行するには時間がかかる場合があるため、時間に余裕をもって問い合わせましょう。

社会保険料控除において知っておきたいポイント

損をしないよう、社会保険料控除の仕組みを知って賢く利用しましょう。そのためには、認められる社会保険料を漏れなく申告することが大切です。ここまで述べた以外にも、社会保険料控除を受けるためのポイントが2つあります。

国民年金保険料の前納・後納について

国民年期保険料には前納や後納(追納)といった月払い以外の制度があります。それぞれのパターンで見てみましょう。

前納

国民年金は、半年分や1年分、2年分などまとめて前納することが可能です。2年分をまとめて支払った場合は、支払いをした年にその全額を所得から控除するか、2年にわたって分割して控除するかの方法が選べます。個人事業主は、自身の売上予測に応じて切り替えるとよいでしょう。

なお、国民年金保険料はまとめて支払うと割引を受けられます。1年分前納で約2%、2年分前納で約4%となっているため、節約をしたい場合に有効です。

後納(追納)

条件付きになりますが、国民年金保険料は過去にさかのぼって支払えます。通常、国民年金保険料の納付期限は対象月の翌月末となっていますが、払い忘れてしまった場合は納付期限から2年以内であれば後納(追納)ができます。また、学生で国民年金保険料の免除などを受けていた場合は、10年前までさかのぼって保険料を追納することが可能です。個人事業主で業績が思うように上がらず、保険料が支払えなかったため免除を受けていた場合でも、業績が回復して利益がでるようになってから追納できます。将来の年金受給額も増えて節税にもなるでしょう。

家族の後期高齢者医療保険料の支払いについて

家族の後期高齢者医療保険料が普通徴収になっており、その保険料を別の方が支払っている場合は、支払っている方の控除対象となるので確定申告で控除の手続きができます。特別徴収で天引きされている場合は、本人の年金から支払っているので対象にはなりません。しかし、自治体の窓口で手続きを行えば、本人の年金から天引きされるのではなく、別の方の口座振替にすることも可能です。その場合は支払いをした方の社会保険料控除の対象として加算できます。

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まとめ

年末調整は毎年の作業ながら、申告書の配布・回収・チェックなど多くの手間がかかります。しかし、近年、国として企業のDX化を進める中で、年末調整についてもデジタル化を推進しており、控除証明書などをデジタルデータで発行できるシステムが増えてきました。控除証明書を電子化すれば、PC上で必要な情報を入力するだけで簡単に作成できるようになるでしょう。

また、ERPの活用でも各種計算や書類の作成などが効率化できる場合があります。今はクラウド型も含めて様々なERPが出ていますので、ぜひ以下のERPパッケージ比較資料をご覧ください。


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