IFRS(国際財務報告基準)とは?特徴・導入メリットを徹底解説

 2021.12.10  株式会社システムインテグレータ

IFRSは多くの国で導入が進んでいる会計基準であり、日本では2010年から適用できるようになっています。しかし、日本ではIFRSの導入が遅れており、IFRSの概要やメリットなどが十分に周知されていない状況です。

そこでこの記事では、IFRSの特徴や導入によるメリットを具体的に解説します。日本会計基準との違いや適用条件に関しても解説を行うので、IFRSの導入を検討している方は当記事を参考にしてください。 

IFRS(国際財務報告基準)とは

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IFRS(国際財務報告基準)とは、国際会計基準審議会(IASB)によって策定された会計基準の総称です。IASBの前身であるIASCが作成した国際会計基準(IAS)を継承する形でIFRSが策定されており、2021年時点ではIASの一部規定が引き続き有効になっています。

これは国際的に活用されることを目的とした会計基準であり、経済のグローバル化に対応する形で設定されたという背景があります。IAS・IFRSの各基準は1年に1回の頻度でIASBによる順次改訂、見直しが行われており、全3冊の基準書がIASBから毎年発行されています。 

IFRSは世界で急速に普及している

2005年にEU域内の上場企業に適用が義務付けられたことを始めとして、IFRSの導入企業は増加しています。2021年時点で140以上の国と地域で採用されている会計基準として、IFRSは急速に普及を進めています。

日本では2010年3月期から、上場企業の連結財務諸表においてIFRSの適用が認められています。当初は2012年を目途に強制適用が検討されていましたが、2011年6月にはIFRSの強制適用を見直し、改めて準備期間を設定する旨の発言が当時の金融担当大臣から行われています。その後は任意適用の積上げを図る方針を打ち出しており、各企業でIFRSへの対応が進められている状況です。

日本国内におけるIFRS適用済、適用決定会社数は2010年から継続的に増加しており、2021年時点でのIFRS適用済、適用決定会社数は240社以上とされています。 

IFRSの主な特徴

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日本で使用されている会計基準は、日本会計基準・米国会計基準・修正国際基準(JMIS)・IFRSの4種類です。企業ごとに適した会計基準を採用するには、基本的な特徴を把握することから着手することをおすすめします。ここでは、IFRSの特徴について解説します。 

原則主義

原則主義とは、基礎となる解釈指針が示されており、具体的な指標や数値などがほとんど明示されていない会計主義です。対になる用語として細則主義というものがありますが、これは具体的な指標や数値を設定しておく会計主義です。なお、日本では基本的に細則主義が用いられています。

原則主義を採用する場合、各企業の判断に沿って会計方針を作成することになります。幅広い状況に対応できる会計基準を作りやすく、経営の実態に適した会計処理を行えることが原則主義の特徴であり、おもな利点です。

一方で、会計処理を行う際の根拠を具体的に示す必要があることから、会計方針に対して多くの注記を付加することになります。作成者と監査人の間で解釈に相違があった場合、後付けで修正を行う労力がかかる点も原則主義の問題点のひとつです。 

貸借対照表重視

IFRSでは、企業の資産価値を図る際に貸借対照表が重視されます。貸借対照表は企業の資産・負債・純資産が記載されており、企業がどのように資金を調達し、運用しているかを確認できる書類です。株主や金融機関にとっては、貸借対照表が企業の経営状況を図る目安となります。

なお、日本会計基準では一定期間内の損益を表す損益計算書を重視する考え方が用いられています。 

グローバル基準

IFRSは世界各国で使用できる会計基準というコンセプトで作成されており、各国のシステムや使用言語などを加味せずに会計基準が策定されています。使用言語の差異による影響を抑えることを目的として、IFRSではすべて英語で定義が行われています。 

日本会計基準とIFRSの比較

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日本では独自の会計基準のひとつとして、日本会計基準(JGAAP)があります。多くの日本企業が採用している会計基準であり、日本会計基準で作成した財務諸表が必要になる業務は複数存在します。ここでは、日本会計基準とIFRSの概要や各種基準の違いを簡単に比較します。

非上場株式の取り扱いについては、日本会計基準では取得価額で計上を行います。対して、IFRSでは非上場株式を公正価値測定することが要求されます。公正価値とは時価のことであり、非上場株式のような時価が無い商品については、市場で取引することを想定して金額を算出する仕組みです。IFRSでは、公表価格がない資本性金融商品及び資産はすべて公正価値測定を行うように定義されています。

また、M&Aを実施した際に発生する「のれん」の会計処理については、日本会計基準では計上後20年以内に償却することが定義づけられています。対して、IFRSでは「のれん」の償却は基本的に行わないという違いがあります。ただし、のれんの価値を計る減損テストは毎年実施する必要があり、のれんの価値が著しく低下したと認められる場合は減損処理を行います。つまり、IFRSでは投資金額に沿った利益が得られていると判断できる場合、貸借対照表にのれん代を計上する必要がないということです。結果として会計上の利益が減りにくくなるため、M&Aを積極的に行う企業にとってはIFRSを採用した方が有利になる場合があります。

なお、IFRSを策定するIASBでは、のれんの会計処理に関する見直しが検討されているようです。2021年時点では減損処理のみを行う規定が維持されていますが、将来的に規定の見直しが行われることも考えられます。

そして、収益認識基準については日本会計基準、IFRSとも、履行義務が充足された時点で収益を認識するという取り扱いです。日本会計基準では「収益が実現した時点で収益を認識する」という取り扱いになっていましたが、2021年4月に「収益認識に関する会計基準」が強制適用されたことで、収益認識基準がIFRSとほとんど共通するものに変更されています。

上記で紹介したことの他にも、IFRSと日本金融基準の違いは多数あります。そのため日本会計基準からIFRSへの移行を検討する際には、会計及び税務の専門家へ相談をすることをおすすめします。 

IFRSを導入するメリット

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海外拠点を保有している、海外進出を検討している企業にとって、IFRSを導入することは業務効率化やコスト削減など、多くのメリットが見込める施策です。ここでは、IFRSを導入することで得られるメリットを解説します。 

海外における資金調達の選択肢が拡がる

IFRSの基準に沿って財務諸表を作成することで、海外で資金調達を行う際の交渉や手続きが行いやすくなります。日本会計基準とIFRSは必要な書類を始めとして、財務諸表の作り方が大きく異なっています。企業の経営状況を他国に正しく伝えるには、IFRSの基準に沿って作成された財務諸表のほうが役立つと考えられます。 

海外企業・投資家への情報伝達が容易に

海外に事業拠点を持つ企業の場合、各拠点でIFRSを導入することで現地の企業、投資家に対する情報伝達を円滑に進めやすくなります。IFRSは140ヶ国以上の国と地域で導入されており、IFRSの基準に沿って作成された財務諸表は海外の企業や投資家にとって内容を理解しやすいと考えられます。企業の経営方針や財務状況といった情報を正確に伝達する手段として、IFRSの規定に沿った財務諸表を作成することは有効な対策といえるでしょう。 

統一した基準で管理・比較しやすい

複数の事業拠点を持つ企業の場合、国内拠点と海外拠点で異なる会計基準を使用していると、各拠点の経営状況を正確に把握しづらくなることが問題です。会計基準をIFRSで統一すると、統一された基準で連結財務諸表を作成することができ、各拠点の経営状況を正確に比較できるようになります 

業績をより正確に表現できる

IFRSは特別損益に対する取り扱いや「のれん」の会計処理、収益認識などが日本会計基準と異なっています。自社の経営情報を伝達する際には、IFRSの基準に沿って財務諸表を作成することで企業の業績をより正確に表現できるケースもあります。 

IFRSを導入した財務諸表なら国際取引時にそのまま使える

自社の会計基準をIFRSに統一することで、国際取引を行う際に財務諸表を直接使用できるようになります。異なる会計基準を利用している企業と取引を行う際には、相手企業の基準に応じて財務諸表を書き換える作業(コンバージョン)が必要です。IFRSに沿った財務諸表を作成することでコンバージョンにかかるコストを削減でき、結果として事業の海外展開を行いやすくなるというメリットがあります。 

IFRSを導入するデメリット

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IFRSは海外展開を行う際に必要になる会計基準であり、日本の会計基準とは財務諸表の作り方が異なっていることが特徴です。IFRSを導入する際には、適用条件を達成する労力や費用がメリットに見合っているかを事前に検討することをおすすめします。ここでは、IFRSを導入する際にどのようなデメリットがあるのか解説します。 

導入にかかる労力が大きい

日本会計基準を採用している企業がIFRSを導入する場合、考え方や計上する項目の違いを理解し、書類の書き換えや会計システムの見直しなどを行う必要があります。日本会計基準と比較して、IFRSは計上する項目が多い会計基準です。資産や負債として計上する必要が無かったものを把握、記載する労力がかかる分、多くの労力やコストが必要になることが考えられます。IFRSは1年に1回の頻度で基準が改訂されるので、新しい基準に対応した書類作成が進めづらいことも問題点のひとつです。

IFRSを適用する際には、自社内でIFRSに対応できる従業員を教育する、専門のコンサルタントやアドバイザーと契約するといった準備が必要になります。いずれも多額の費用がかかることが予想されるので、IFRSの準備は経営状況や自己資金に余裕があるタイミングで行うことをおすすめします。 

IFRSと日本会計基準の複数帳簿が必要となる

日本国内で企業を経営する際には、日本会計基準に沿った財務諸表が必要です。IFRSを導入している企業でも、原則として、個別財務諸表へのIFRSの適用は認められていません。つまり、日本会計基準とIFRSに沿った帳簿がそれぞれ必要となるのです。

IFRSは原則主義である関係上、会計方針に対する注釈が多くなる傾向があります。単純に書類作成に要する時間が増えるほか、書類のページ数が増えることによって、情報開示にかかる費用が増加することも問題点のひとつです。 

IFRSを導入すべき?判断基準とは

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IFRSは世界各国で採用されている会計基準であり、海外に事業拠点を持つ企業にとっては、IFRSを導入することでさまざまなメリットを得られます。一方で、導入にかかるコストや労力が大きいため、企業によってはデメリットの方が大きくなる可能性もあるでしょう。

なお、IFRSの任意適用を行う条件については、証券取引法第百九十三条の規定に基づく規則で定められています。「自社内でIFRSに基づいた連結財務諸表を作成できる体制を整えていること」「IFRSに関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、IFRSに基づいて連結財務諸表を適正に作成することができる体制を整備していること」が条件とされています。2013年10月に規制緩和が行われたことにより、非上場企業や資本金20億円以上の海外子会社を持たない企業でもIFRSを適用することが可能になりました。

金融庁が2020年11月に公表した資料によると、IFRS任意適用・適用予定企業242社の内、236社が上場企業だとされています。2020年10月時点における236社の時価総額は267.2兆円で、日本の全上場企業の時価総額に占める割合は42.4%です。当時における全上場企業数は3,756社であることから、時価総額が高い企業がIFRSを適用していることが推測できます。

こうした傾向から、時価総額が高い企業、IFRSの準備に割ける人材や資金があり、海外拠点を保有している企業はIFRSを導入することをおすすめします。 

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まとめ

日本においてIFRSは任意適用の会計基準であり、適用する義務はありません。しかし、グローバル市場への展開を考えていたり、海外子会社が多かったりする場合などは、IFRSを導入することで管理がスムーズになるメリットがあります。またERP導入により、管理会計業務の効率化につながる場合もあるでしょう。弊社ではERP導入による管理会計業務の効率化をご支援しています。国産ERPの特徴やポイントをまとめた資料などもございますので、こちらもあわせてぜひご覧ください。


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