固定費とは?変動費との違いと区別すべき理由、削減の方法

 2023.07.10  株式会社システムインテグレータ

「固定費」と「変動費」は事業を営む上で必ず発生する経費です。勘定科目とは異なった費用の分類方法で、正しい経理処理や効果的な費用削減を実現するには、この固定費と変動費を明確に区別して扱う必要があります。

この記事では、固定費と変動費の違いとこれらを区別すべき理由、固定費と変動費を削減する方法について解説します。

固定費とは

固定費とは、常に発生する変動しない費用、つまり事業を継続するために固定的に発生する費用です。そのため、「不変費」とも呼ばれます。なお、固定費は会社の売上高や販売数には左右されません。

固定費の例

主にこれらの経費を固定費として扱います。

  • 人件費
  • 減価償却費
  • オフィスや店舗の家賃
  • 光熱費
  • リース費

社員の給与・賞与・退職金や福利厚生費などは人件費に含まれますが、「残業手当」は固定的ではないため、変動費とする考え方もあります。また、業種によってはリース費や光熱費が変動費として扱われる場合があります。

このように、事業を継続する上で必ず発生する費用が対象です。

変動費とは?固定費との違い

変動費とは、生産量や販売数と連動して増減する費用のことです。「可変費」ともいいます。主にこれらの経費を変動費として扱います。

  • 原材料費
  • 仕入れ原価
  • 運送費
  • 販売手数料
  • 外注費
  • 運送費

例えば「今月は100個の製品を製造するために原材料を100個仕入れる必要があり、来月は200個の製品を製造するために原材料を200個仕入れる必要がある」など、原則として売上高や生産高と連動して金額が「変動」する費用は変動費となるのです。

売上高や生産高が増える繁忙期のみに雇う派遣社員や短期アルバイトの人件費は、「売上高や生産高の増加に連動して増えた経費」となり、変動費として扱うことがあります。

固変分解とは

「固変分解」とは、経費を固定費と変動費に分けることです。しかし、全ての経費をはっきりと区別し、固変分解することはできません。

前述したように営業時間内の給与は固定費に区別されますが、雇用期間が決まっている派遣社員や短期アルバイトの人件費や残業手当は、変動費となる場合があります。このように、明確に固定費と変動費を区別する絶対的な基準は存在しません。

関連する指標

固定費と変動費をしっかり把握できると、会社経営で重要な3つの指標である「限界利益」「限界利益率」「損益分岐点」を得られます。

ここでは、変動費と固定費から導きだせる「安全余裕率」「売上高変動費比率」も含め、それぞれの指標について解説します。

限界利益

限界利益とは、会社や事業が儲かっているかどうかがわかる指標です。限界利益が大きいほど儲けが大きいことになり、黒字であれば事業を存続させても良いという判断ができるのです。

限界利益は、以下の計算式で求められます。

限界利益=売上高-変動費

例えば、1個当たり1,000円で仕入れた商品を1,500円で売ると仮定します。この場合は売上高が1,500円で、変動費が1,000円です。つまり、限界利益は「1,500円(売上高)-1,000円(変動費)=500円」となります。

ただし、限界利益全てが企業の利益になるわけではありません。限界利益には、販売する店舗の家賃や人件費などの固定費が含まれています。なお、限界利益から固定費を差し引いた利益を「経常利益」と呼びます。

限界利益率

限界利益率とは、「売上高が一定額増加した時、そのうち何%利益が増加するか」という比率を表した指標です。限界利益率の高い商品やサービスは稼ぐ力があるということになります。

限界利益率の計算式は以下の通りです。

限界利益率=限界利益÷売上高

例えば販売価格が1,000円で製造・販売にかかる固定費が300円、変動費が500円の商品Aと、販売価格が2,500円で製造販売のかかる固定費が600円、変動費が1,500円の商品Bがあるとします。それぞれの限界利益・限界利益率を出すと以下のようになります。

【商品①】

限界利益:1,000円-500円=500円

限界利益率:500円÷1,000円=0.5

【商品②】

限界利益:2,500円-1,500円=1,000円

限界利益率:1,000円÷2,500円=0.4

この場合、商品1個あたりの売り上げは商品②の方が大きくなりますが、効率的に稼ぐ力は商品①の方があることになるのです。

損益分岐点

損益分岐点とは、「売上-費用=0」になる黒字と赤字の分岐点です。売上が落ちたとしても利益が確保できるか見極める基準になるため、必ず把握しておきましょう。

以下は、損益分岐点の計算式です。

損益分岐点=固定費÷限界利益率

例を挙げて実際に計算してみましょう。

例:3万円で販売する商品の製造・販売にかかる1か月あたりの損益分岐点

・固定費が80万円、変動費が9,000円の場合

80万円÷((3万円-9,000円)÷3万円))=約114万2,858円

この場合、1か月あたり39個売れないと損益分岐点を下回るため、赤字となります。仮に変動費を8,000円に抑えられたとすると、損益分岐点は80万円÷((3万円-8,000円)÷3万円))=約109万910円となり、先ほどよりも少ない37個を販売すれば利益が出るというわけです。損益分岐点からは、何個以上売れれば利益が出るのかと、利益を出すためにはどれくらい固定費や変動費を削減すれば良いかがわかります。

安全余裕率

安全余裕率とは、経営が安全かを確認できる指標です。安全余裕率が高い程経営が安定しており、赤字になるリスクが少ないといえるでしょう。

安全余裕率は以下の式を用いて計算します。

安全余裕率=(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高×100(%)

安全余裕率は10%〜20%未満が平均値とされており、赤字の場合はマイナスで表示されます。平均値以下の場合は今後の経営状況に注意が必要です。特に、固定費が高い会社は安全余裕率が低く出る傾向にあるため、売上高を伸ばすか損益分岐点売上高を下げるなどの対策をしましょう。

売上高変動費率

売上高変動費率とは、売上高に対する変動率の指標です。固定費は売上に関わらず一定額かかるため、固定費が増えれば利益の減少につながります。対して変動費は売上によって変わるため、売上が減っても大きな影響は受けません。

売上高変動費率の計算式は以下の通りです。

売上高変動費比率(変動費率)=変動費÷売上高×100

70〜80%が平均値とされており、この値が平均値以下の場合は経営状況が環境の変化に弱いといえます。中小企業の場合は、大企業と比較すると平均水準が低めに設定されています。

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固定費と変動費を分ける理由

なぜ、固定費と変動費を分ける必要があるのでしょうか。主に3つの理由があります。

利益を予測するため

事業を行う目的は利益を得ることです。そのため、経営者は売上に対して得られた利益を把握する必要があります。固定費と変動費を分類すれば、固定費と予測売上から算出した変動費を差し引き、予測利益を計算できます。

適切な経費削減のため

売り上げが減って利益が少なくなった場合、経営者は何らかの手を打たねばなりません。その一つに経費削減があります。業績悪化の際に行われるリストラもその一つであり、売上に影響しない人件費、つまり固定費を削減し、短期間で収益改善をする狙いがあります。

一方、変動費は売上と連動して変わるため、削減するとさらなる業績悪化を招くリスクがあります。そういったリスクを回避するため、固定費と変動費は明確に区別する必要があります。

損益分岐点を知るため

売上高-変動費で求められる「限界利益」と固定費はイコールの関係性です。そのため、損益分岐点は赤字と黒字の境界線を示す大事な指標となるのです。損益分岐点を求めるには、まず固定費と変動費をしっかり分ける必要があります。

固定費と変動費を分ける方法

先にも触れましたが、固定費と変動費を分ける基準は存在しません。しかし、固定費と変動費は、以下の2つの方法で分けられます。

勘定科目法

勘定科目法とは、固定費か変動費なのかを勘定科目ごとに判断する方法です。企業会計で最も用いられている固変分解の手法です。

どの勘定科目に入れるべきか迷う場合は、固定費と変動費どちらの性質が強いのかを企業ごとに判断して区別します。一つの目安として中小企業庁が2003年度に策定した「中小企業の原価指標」があるため、参考にすると良いでしょう。

回帰分析法

回帰分析法は、「ax+b(a=変動費率、b=固定費)」という近似曲線を使うため、「最小二乗法」とも呼ばれます。

固変分解する際にグラフを用意し、売上高の散布図を作成します。その際、縦軸を「総費用」、横軸を「売上高」とします。総費用と年間12か月分の点12個を近似曲線で結ぶと「y=ax+b(a=変動費率、b=固定費)」の公式で表され、傾きと切片から変動費率と固定費を導き出せる仕組みです。手書きでは手間がかかるため、Excelなどの表計算ソフトを使うと良いでしょう。

容易に行えるのは勘定科目法ですが、より精度の高い結果を求めるのであれば回帰分析法を選ぶのがおすすめです。

固定費と変動費を削減する方法

経費は事業を行う上で必ず発生するものです。経費が増えればその分多く利益を上げる必要があります。

固定費の割合が大きければ、売上高に関係なく常に一定額の経費が必要になるため、なかなか損益分岐点に達しません。対して、変動費の割合が大きいと、損益分岐点を超えても利益が少なくなってしまいます。

ここでは、固定費と変動費を削減するためのポイントを解説します。

またコスト削減については「コスト削減(経費削減)とは?期待できる効果と見直しのポイント」の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

固定費の削減方法

固定費を削減するには、以下のような方法があります。

  • 業務効率化をはかり、適切な人員配置にする
  • 業務委託を活用する
  • 電気やガスの料金を見直し、安いプランに切り替える
  • 不要なリース契約を解約する
  • テナント料の安い物件に移る
  • 契約を電子化し、印紙の添付を不要にする

公共料金の節約やリース代節約などの対策も効果的ですが、経費の多くを占めるのは「人件費」です。人件費を減らすことが固定費の削減に大きく影響してきます。

変動費の削減方法

変動費を削減するには、以下のような方法があります。

  • 仕入れ先を限定し、価格交渉をする
  • 現金仕入れや大量仕入れを行い、仕入れ単価を下げる
  • より安く仕事を請け負ってくれる外注先を探す
  • ペーパーレス化を進め、印刷費や消耗品費を抑える

ただし、仕入先や外注先との価格交渉や外注先の変更は、製品やサービスのクオリティ低下を招く恐れがあります。無理な交渉をするのではなく、慎重に進めましょう。また、ペーパーレス化は、売上に直接影響しないものから優先的に行います。

固定費と変動費を扱う際の注意点・ポイント

実際に経費削減をするには固定費と変動費の削減、どちらを優先して行うべきなのでしょうか。最後に、固定費と変動費を扱う際の注意点とポイントについて解説します。

会計システムを活用する

経費を固定費と変動費に区分することは、限界利益や損益分岐点といった経営に必須な指標を導くために避けては通れません。経営指標の計算や活用というと難しそうに感じますが、会計システムを活用すれば簡単に行えます。

なお、会計システムの詳細は「会計システムとは?導入の目的と失敗しない選び方のポイント」で解説しております。併せてご覧ください。

勘定科目法による固変分解には限界がある

勘定科目法による固変分解にあたって、固定費と変動費の区分に絶対的な基準はありません。そのため、どちらの性質も併せ持つ勘定科目については、どちらの性質が強いかの判断が必要です。しかし、その判断は作業者の経験やスキルに依存しており、精度に限界があります。より高い精度を求める場合には回帰分析法を活用すると良いでしょう。

固定費から削減を検討する

コスト削減を検討するにあたり、固定費と変動費のどちらを優先して削減すべきか迷うかもしれませんが、優先するのは固定費の削減です。

固定費は売上の増減の影響を受けません。つまり、固定費が減っても増えても売上には直接影響しないということです。先に無駄な固定費から削減していき、ある程度固定費の削減を進めた上で売上に影響のない部分の変動費を削減しましょう。

売上に影響しない変動費も削減してよい

変動費は売上と連動しているため、売上の増減の影響を受けます。変動費を削減すると売上高も減ってしまうため、コスト削減の効果が薄いのです。そのため、変動費を削減する場合は売上に影響のないものを削減していきましょう。

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まとめ

経費を固定費と変動費に分ける固変分解をすることが、経営にまつわる指標を導き出す第一歩になります。経費を固定費と変動費に分けるには、「利益を予測するため」「適切な経費削減のため」「損益分岐点を知るため」という3つの理由があり、その方法として「勘定科目法」と「回帰分析法」があります。容易に運用できるのは「勘定科目法」ですが、より精度の高い結果を求めるのであれば「回帰分析法」を選ぶと良いでしょう。変動費と固定費は都度見直しながら、適切に計上する必要があります。

経費の削減をする際は、固定費から優先して行います。固定費を削減しても売上には直接影響がないためです。固定費をある程度削減した後、売上に影響しない変動費についても削減を進めましょう。それぞれの費用を抑えることで、利益率を上げることも可能になります。

ERPを活用することで、お金だけでなく様々な情報を一元管理することができるので、さまざまな経営判断をすばやく下すことができます。

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