ERPとIoTの連携で何がよくなるのか?インダストリー4.0への道

 2020.02.12  株式会社システムインテグレータ

インダストリー4.0

ドイツ政府主導で進められているこの国策は、ミッテルシュタント(ドイツでの中小企業の呼称)を中心にIoTなどの最新デジタル技術の導入を支援することで、工場のスマート化を図り完全自動化された製造・生産を実施し、飛躍的な生産性アップとコストダウンを実現することを目指します。

さらにその先には、生産工程の完全自動化による消費者1人1人の趣向に合わせたマスカスタマイゼーションにより、製造業の価値を高められるといいます。

ドイツにおけるミッテルシュタントは、企業全体の99%に達しますし、製造業を基幹産業としていることから、日本の構造と共通したものがあります。さらに、ドイツと日本は人口減少や少子高齢化という社会問題まで共通しており、日本の製造業はドイツから学べることがたくさんあります。インダストリー4.0はそのうちの1つと言えるでしょう。

本稿では、ERPとIoTが連携することで何が起きるのか?何が良くなるのか?両者の関係を紐解きながら説明していきます。

ERPとIoTの関係

最初に、ERPとIoTについてそれぞれ解説します。

ERP(Enterprise Resource Planning)

1980年代に誕生した生産管理概念のMRP(資材所要量計画)からMRPⅡ(製造資源計画)へと発展し、その概念を経営全体に活かすという考えからERP(経営資源計画)に至っています。昨今のERPといえば、経営資源を統合的に管理するために、複数の基幹系システムが統合されたプラットフォーム製品を指します。経理、債券、債務、販売、調達、在庫、製造、人事、給与、資産、経費といったそれぞれの管理項目をすべて1つのプラットフォームで完結させ、統合的に情報を管理することで経営可視化や組織全体としての業務効率向上など、大きなビジネスインパクトを持ちます。

IoT(Internet of Things)

あらゆるモノにコンピューターが内蔵され、いつ何時もコンピューターによる支援が得られるような概念であるユビキタスから発展。すべてのモノにセンサーが内蔵され、ネットワークで繋がることで新たな価値やサービスを生み出す概念、およびそれを実現する技術をIoTと呼びます。身近な例で言うと皆さんが普段から使っているスマートフォンこそIoTの代表例であり、携帯電話がネットワークに繋がることで、爆発的な情報増加と価値の多様化、新たなサービスが生み出されました。

ERPとIoTには極めて密接な関係があります。データを統合的に管理するERP、データを大量に生み出すIoT、これらのシステム・技術を連携することで、製造業ではもちろん、非製造業においてもビジネス価値やサービスの創出が可能になり、イノベーションを引き起こすことができます。

ERPとIoTのユースケース

では、ERPとIoTを連携すると具体的にどういったことが可能なのでしょうか?分かりやすく説明するために、ユースケースを1つご紹介します。

産業機械を製造しているメーカーAでは、同社から製品を購入した顧客へのアフターフォローとして、機械・設備に問題があった際はフィールドサービスエンジニアが現場へ駆けつけて問題解決に取り組むというサービスを展開していますが、初期対応での問題解決率の低さが問題となっております。

問い合わせを受けてから現場まで駆け付けるのは素早いものの、機械・設備を実際に確認しないことには何が原因で問題が起きているのか判断できず、初期対応では原因究明に終わり、改修は後日になることが多かったのです。その際に部品在庫が無い場合は仕入先から購入するところから始めるため、対応期間が長くなり、顧客満足度が低下することもあります。

この問題を解決する方法として考案されたのが、ERPとIoTを連携させた「予兆保全」です。ERPのIoTから生成されるデータを合わせることで、顧客先で稼働している機械・設備の稼働状況を把握できるようになりました。

IoTから送信されるデータには閾値を設定し、その値を超えると「問題発生の兆候」として通知され、問題が起きる以前に対処します。それにより問題発生率を大幅に下げ、かつ初期対応での問題解決率も高めることで、顧客満足度向上と保全コスト削減に繋がりました。

ERP×IoTで得られるメリット

メーカーAのユースケースからは、ERPとIoTを連携させることのメリットがいくつか読み取れます。

1. 業務プロセスの自動化を促す

ERPは基幹系システムを統合し、各システムのデータを統合的に管理します。ただし、データそのものを生み出すのは人手によるところが多く、ERPを導入したからといってデータ生成まで効率化されるわけではありません。一方、ERPとIoTが連携された環境では、センサーから様々な情報が生まれ、今まで所得できなかったデータと業務プロセスを結びつけることができます。つまり、データを生み出すための業務プロセスそのものを自動化でき、大幅な生産性向上が見込めます。

2. 付加価値向上による顧客満足度向上

IoTによって生成されるデータは、それらを分析することで価値ある情報に変換できます。メーカーAの事例で言えば、「問題の兆候」という情報にデータを変換することで予兆保全を可能にし、製品自体の付加価値を向上しているのです。それにより顧客満足度は向上し、最終的にはLTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。

3. 新しいサービスの創出

実は、メーカーAのような予兆保全を実施している企業は少なくありません。中には、予兆保全をサービスとして提供し収益を得ている企業もあります。ERPとIoTの連携は新しいサービスを創出するチャンスでもあるのです。

以上のメリットから、ERPとIoTを連携することは一種の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」だということが分かります。DXは現在、日本政府も推進しているデジタル技術を用いた変革であり、IT活用が遅れている日本企業にとって今後最も重要なキーワードになると考えられます。

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ERPとIoTで工場自動化は可能か?

インダストリー4.0では、ERPやIoTといったデジタル技術を駆使することで、工場自体の自動化を実現し、機械・設備がネットワークで繋がることで互いに制御し合うためのCPS(Cyber Physical System)を作ります。

工場自動化を実現するためにはERPとIoTだけでなく、AI(人工知能)やクラウドコンピューティングのような環境も必要です。AIはIoTから収集したデータを解析するための頭脳として、クラウドコンピューティングはビッグデータをダイナミックに管理するための基盤として欠かせません。

ERPとIoTだけでも非常に大きなビジネスインパクトを得ることができますが、AIとクラウドコンピューティングとの連携は必要不可欠と言えるでしょう。皆さんもこの機会に、ERPとIoTの連携を検討し、最終的にインダストリー4.0を目指した取り組みを検討してみてはいかがでしょうか?


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