ERPにおけるRFPとは?導入検討企業が知るべき基礎知識

 2025.05.28  株式会社システムインテグレータ

ERPシステムの導入にあたり、プロジェクト成功のカギを握るのが「RFP(提案依頼書)」の作成です。しかし、「RFPとは何か」「RFIやRFQとの違いは?」といった基本的なポイントを正しく理解していないと、ベンダー選定やシステム要件の整理が曖昧になり、プロジェクトの失敗リスクも高まります。

ここでは、ERP導入を検討する企業がまず押さえておくべき、RFPの定義や役割、そして関連する文書との違いについて解説します。

RFPとは?

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RFP(Request for Proposal:提案依頼書)とは、企業がERPなどのシステムを導入する際に、自社の課題や要件を整理し、ベンダー各社に対して最適な提案を求めるための公式文書です。

ERP導入では、業務プロセスの見直しや部門横断的な調整が求められるため、単なる製品選定ではなく「どのような支援・ソリューションが自社に最適か」という視点が欠かせません。RFPはこの視点をベンダーに共有し、機能要件だけでなく運用・体制・サポート体制などを含めた“提案内容の質”を見極める土台となります。

RFPを通じて整理される主な内容は以下の通りです

  • 導入背景と目的
  • 現状の業務課題と改善方針
  • 必要とする業務機能やシステム要件
  • プロジェクト体制・スケジュール・予算
  • 提案に対する評価基準

このように、RFPは単なる「見積依頼」ではなく、企業側の課題意識や導入の狙いを明文化し、ベンダーと認識をすり合わせるためのコミュニケーションツールといえます。

RFI・RFQとの違いと使い分け

RFPと混同されやすい用語として、「RFI(Request for Information:情報提供依頼書)」や「RFQ(Request for Quotation:見積依頼書)」があります。それぞれの違いと使い分けについて見てみましょう。

項目 RFI(情報提供依頼) RFP(提案依頼) RFQ(見積依頼)
目的 ベンダーの情報収集 課題に対する提案募集 条件に基づく価格提示
タイミング 検討初期 要件整理後 ベンダー選定直前
内容 製品概要、導入実績など 要件提示と提案依頼 仕様に基づいた価格条件
出力物 情報資料 提案書 見積書

まず、初期段階ではRFIを活用し、市場に存在する製品やベンダーの情報を幅広く収集します。この情報をもとに、自社の課題やニーズを整理し、RFPを作成します。RFPでは、業務要件やシステム要件を明確に提示し、それに対するベンダーからの提案を募ります。

RFQは、RFPで提出された提案内容を比較・評価した後に、より具体的な条件(価格、導入期間、支援内容など)を確認するために依頼するものです。
ただし、近年ではRFPの段階で見積書の提出を求めるケースも増えています。この場合の見積はあくまで暫定的なものであることを理解しておく必要があります。多くの場合、正式な見積は、RFPへの提案書やプレゼンテーション、質疑応答などを経て、要件定義フェーズの後に提示されるのが一般的です。

このように、RFI・RFP・RFQを正しく使い分け、各フェーズの目的を明確にすることが、ERP導入プロジェクトの成功に直結します。

ERP導入におけるRFPの重要性とメリット

ERP導入プロジェクトにおいては、「RFP(提案依頼書)」の有無やその質が、後の導入フェーズに大きな影響を与えます。ERP導入は、費用も期間もかかるうえに、社内リソースも多く割かれるため、企業にとっては失敗が許されない重要なプロジェクトです。

したがって、RFPは単なる書類や形式的な手続きではなく、導入プロジェクトの方向性を明確にし、社内外の関係者との認識を一致させるための、非常に重要なツールであると認識すべきです。
以下に質の良いRFPがもたらすメリットを記載します。

1. 要件の明確化による社内の意識統一

RFPを作成する過程で、導入目的や業務課題、必要な機能が洗い出され、社内での認識が統一されます。部門間の意見の食い違いや、目的のあいまいさを解消し、プロジェクトの初期段階から「何のためのERP導入か」が明確になります。

2. ベンダーからの質の高い提案

要件が具体的かつ整理されたRFPを提示することで、ベンダー側も自社の強みや導入実績を踏まえた提案が可能になります。「どのベンダーも似たような提案で選べない」といった事態を防ぎ、自社に合った最適なソリューションを比較・検討しやすくなります。

3. 公平かつ透明性の高い選定プロセス

複数のベンダーに対して同一条件のRFPを提示することで、提案の比較がしやすくなり、感覚や人間関係に左右されにくい、客観的な選定が可能になります。これにより、社内外への説明責任を果たしやすくなり、経営層の納得感や関係者の信頼性も高まります。

4. プロジェクト全体のスムーズな進行

RFPは導入初期だけでなく、要件定義や設計フェーズ以降にも活用されます。たとえば「この機能はRFPに記載されていたか?」といった形で、判断や優先度の拠り所になります。プロジェクトが迷走せず、計画通りに進めるための“設計図”としても機能します。

RFP作成の「準備」とは?成功への第一歩

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ERP導入において、RFPの作成はプロジェクト全体の成否を左右する重要なステップです。
しかし、「RFPを早く出さなければ」と焦っていきなり文書作成に取りかかるのは失敗のもと。
まずは、社内の現状や課題を整理し、導入の目的を全社で共有する「準備フェーズ」が欠かせません。

本記事では、RFP作成に入る前に取り組むべき4つの準備ステップを詳しく解説します。

1. プロジェクトチームの編成と役割の明確化

RFP作成は一部門だけで完結するものではなく、全社的な視点が求められます。
そのためには、以下のような関係者を含むプロジェクトチームの体制を整えることが第一歩です。

  • プロジェクト責任者(経営層・情シス責任者)
    └ ERP導入の意思決定・方針提示を担う
  • 業務部門の代表者(部門のキーマン)
    └ 現場業務の実態・課題・改善要望を吸い上げる
  • IT部門
    └ システム実現性や運用面での観点を補完する
  • 外部コンサルタント(必要に応じて)
    └ 客観的視点やRFP作成ノウハウを提供する

このチーム編成によって、多角的かつ実効性のある要件定義が可能となります。

2. 経営視点からERP導入の目的を定義する

ERP導入は「システムの入れ替え」ではなく、経営基盤の強化を目的とするものです。
RFPの方向性を誤らないためにも、以下のような経営視点からの目的を明文化しましょう。

  • 競争力を維持・強化する経営基盤の構築
  • 全社的な業務の標準化と効率化
  • データに基づく意思決定の高度化
  • 柔軟で持続可能なIT基盤の整備

この導入目的をチーム全体で共有しておくことで、業務・機能要件の優先度付けもブレなくなります。

3. 現状業務(As-Is)の分析と課題の可視化

理想の業務(To-Be)像を描く前に、まずは**現状把握(As-Is分析)**が不可欠です。
現場の業務フローや課題を正しく捉え、導入の狙いや改善対象を明確にしていきます。

  • 各業務プロセスの整理(フロー図など)
  • サイロ化(部署ごとのシステム・データ分断)の有無
  • 手作業・属人化・二重入力などの非効率な運用
  • 管理業務の煩雑さやデータの不整合

現場へのヒアリングを通じてこれらの課題を部門横断で洗い出すことで、「ERPで何を変えるか」が明確になります。

4. 業務・機能要件の整理と優先度の判断

現状と理想のギャップを埋めるために、業務要件を定義し、それを支える機能要件を明文化していきます。
このステップでは「単なる機能の羅列」ではなく、業務改善の観点から落とし込むことが重要です。

業務要件(例)

  • 業務標準化による属人性の排除
  • プロジェクト単位の原価・収支の見える化
  • 拠点間の情報連携の強化
  • 月次締めやレポート作成の工数削減
  • 経営データのリアルタイム可視化

機能要件(例)

  • 見積~請求までの一気通貫プロセス管理
  • プロジェクト別の工数・予算・実績管理
  • 会計・勤怠など他システムとの自動連携
  • 柔軟なマスタ管理とアクセス制御

現場の声を反映しながら優先度を整理していくことで、現実的で使われるシステム像を描けます。

RFPの「作成手順」と記載項目

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RFPを実際に作成しようにも、どのように構成し、どの項目をどの程度書けばよいか分からないという声も少なくありません。

ここでは、実務的に使えるRFPの作成手順と、記載すべき主要項目について詳しく解説します。

RFPの基本構成要素と記載ポイント

RFPには一定の構成パターンがあり、以下のような項目で構成されるのが一般的です。

  1. 表紙・目次
  2. 会社概要・プロジェクト背景
  3. システム導入の目的
  4. 要求機能(業務要件・システム要件)
  5. 非機能要件(運用・拡張・サポート等)
  6. 予算・スケジュール
  7. 提案依頼内容(提出物・評価基準)
  8. 補足資料(現行業務フロー、参考情報など)

すべてを詳細に書き込む必要はありませんが、「なぜ導入するのか」「どのような仕組みが必要か」「どの条件で比較するか」を端的に伝えることが重要です。

自社の現状・システム構築の目的を伝える

導入目的の説明は、単なる背景説明ではなく、ベンダーにとっての“設計思想の出発点”となります。以下のような点を記載しましょう:

  • 導入の背景(業務課題、老朽化、法対応など)
  • 経営・業務上の目標(例:業務標準化、データ統合、プロジェクト原価の見える化)
  • 組織・システムの現状(利用中のソリューション、業務フローの概要)

この章は「どのような未来像(To-Be)を描いているか」をベンダーと共有する役割を担います。

機能・業務要件の明確化

このパートでは、ERPで実現したい業務機能や、導入にあたっての技術要件を具体的に示します。
提案書に直接記載しても構いませんが、ボリュームが多くなる部分であるため、Excelなど別紙でまとめることも検討してください。

  • 各業務プロセスごとの要求機能(販売管理、購買管理、会計など)
  • 必要なデータ連携(他システムとのインターフェース)
  • 対象ユーザー数、拠点数などの利用前提
  • カスタマイズやアドオンの可否に対する方針

また、曖昧な表現はベンダーごとに解釈が異なる可能性があるため、機能要件には「必須」「できれば対応」「将来的に検討」といった優先度を明記すると効果的です。

予算・スケジュール・契約条件の提示

導入予算や希望スケジュールは、提案の現実性を左右します。具体的に提示することで、無理のない計画を提案してもらうことができます。

  • 初期導入費・年間保守費などの目安
  • システム稼働までの希望スケジュール
  • 支払条件・契約方式(定額契約、段階支払 など)
  • 契約形態(直販・代理店経由、サブスクリプションモデルなど)

不明瞭な条件が多いと、ベンダー側も保守的な見積もりや提案になりがちです。可能な範囲で情報を開示しましょう。

補足事項の記載とフォーマットの工夫

RFPの品質をさらに高めるためには、細かな補足情報や記載方法の工夫も重要です。

  • 現行業務フロー図、画面イメージ、帳票サンプルなどの添付
  • 業界用語や略語の定義を巻末に記載
  • WordやExcelベースの記入フォーマットを添える(記述式と選択式を併用)

読みやすく、比較しやすいRFPはベンダーにとっても提案しやすく、結果として自社に最適な提案が集まりやすくなります。

まとめ

ERP導入を成功に導くためには、初期段階での「RFP(提案依頼書)」の作成が極めて重要なステップとなります。

RFPは単なる提案依頼ではなく、企業の現状課題、導入目的、求める機能や運用条件を整理・言語化し、ベンダーとの認識を一致させるためのコミュニケーションツールです。準備にしっかりと時間をかけることで、その後のプロジェクト全体がスムーズに進み、納得感のあるものとなるとともに、最終的なROI(投資対効果)も高まります。

自社に合った最適なERPパートナーを見つけるためにも、RFPの品質には十分にこだわりましょう。

また、当社では、簡易的なERPに基づく現状分析のご支援も行っております。ぜひ、システムインテグレーターまでお気軽にお問い合わせください。

さらに、RFPの基本から、記載すべき内容や作成の進め方をまとめた資料もご用意しています。RFPに関する有益な情報が満載ですので、ぜひご参考になさってください。


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