ERP導入にあたり欠かせない作業「RFP(提案依頼書)」をご存じでしょうか?知っているけれど、具体的にどんな資料なのかは分からない、RFPを作成したけど正しいかどうかわからない、という方も多いかもしれません。ERPの導入に欠かせないRFPは、その質によってERP導入の可否が分かれるほど重要なものと言えます。
本稿では、なぜRFPが必要なのか?いつ作ればいいのか?ボリュームはどれくらいか?その内容は?といった、知っているようで知らない情報をお伝えしていきたいと思います。
RFPとは?
RFPは提案依頼書の文字通り、システム構築依頼をするにあたって開発ベンダーに提案を依頼するための資料です。つまり、検討段階に開発ベンダー各社に提出して、内容に沿った提案を受けるための資料ということになります。
「RFPが無くても提案は受けられるのに、なぜわざわざ資料を作成するのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。確かに、RFPが無くても提案は受けられますし、あえて作成する必要性もないように感じます。しかし、RFPには非常に重要な役割があります。
その役割というのが「共通の認識を持たせることにより、開発ベンダー各社からの質・粒度を均一にすること」です。これはどういうことか?たとえば、ERP導入にあたって開発ベンダー3社に提案を依頼したと仮定します。その際に、大まかなシステム要件を伝えるわけですが、それだけでは3社ともに質・粒度がバラバラの提案を受けることになります。
「会社が違うのだから、バラバラで当たり前じゃない?」と思われるかもしれません。実際にRFPを作成・提示しても、まったく同じ提案を受けることはありません。ただし、各社の提案内容の質・粒度が均一でなければ、比較する意義がなくなります。
RFPが無いと、開発ベンダーが提案する内容は各社の主観によるところが大きく「何ができるか?」「どこまでできるか?」「いくらでできるか?」の条件がそれぞれに異なってしまいます。
RFPの重要性を料理に例えてみる
RFPのないシステム開発は、例えて言うならば、3人のシェフを捕まえて「ラタトゥイユを作りたいのだけれど、それに必要な材料・予算・時間はどれくらいか提案してください」と言っているようなものです。同じ料理を作る場合であっても、シェフごとに使う材料は違いますし、高級食材だけを使えば費用は青天井になります。もちろん、完成までにかかる時間もバラバラでしょう。
この場合、非常に大切なポイントが抜けています。それは「どんなラタトゥイユが欲しいか?」の要望です。一口にラタトゥイユと言っても、シェフによって出来上がったものは違いますし、どんなに良い提案を受けてもそれが依頼側の持つ「ラタトゥイユの定義」に沿ったものでなければ意味はありません。
しかし、RFPが無いと明確な「ラタトゥイユの定義」を伝えることができないので、各シェフが独自の定義に従って提案をします。この中から依頼側の「ラタトゥイユの定義」に最も沿った提案を受け入れるのが果たして最適でしょうか?きっと違うでしょう。
事前に「ラタトゥイユの定義」を3人のシェフにしっかりと伝えていれば、3人ともからより良い提案を受けて、その中から最高の提案を受け入れられたはずです。
システム開発におけるRFPも同様です。「どんなシステムを開発して欲しいのか?」「なぜそのシステムが必要なのか?」「予算はどれくらいか?」「いつまでに必要なのか?」といった情報を開発ベンダー各社に提供することにより、そこで初めて各社からRFPに沿った質・粒度が均一の提案を受けることができます。
つまりRFPとは、「開発ベンダーから質・粒度が均一化された、より良い提案を受けるための資料」だと言えます。
その他、RFPが必要とされる理由
上記で説明したRFPの必要性以外にも、RFPが必要とされる理由があります。
- 複数の開発ベンダーから提案を広く募れる
- 1社1社に依頼側の要件を説明する手間が省ける
- RFPを作成する過程で潜在課題を発見するケースが多い
- 開発ベンダー各社の提案を評価する基準になる
- 要件を明文化することで後々のトラブルを防げる
- RFPを作成しておくことで要件定義フェーズの負担が軽減される
この中でも、「RFPを作成する過程で潜在課題を発見するケースが多い」は特に重要です。ERP導入の目的は、今ある経営課題を解決し、業務効率向上やビジネスに新しい付加価値を生み出すことや、要件に応じてプロセスを柔軟に変更できる環境づくりを実現することなどが挙げられます。
しかし、依頼側が現在感じている経営課題というのは顕在的なものが多く、その裏に潜む潜在課題を把握できていないことが珍しくありません。実はそこに抜本的改革のカギが隠されていることが多いのです。
RFPを作成すると、その過程で潜在課題に気づくことがあります。たとえ依頼側が気づかなくても、しっかりと作られたRFPを見ることで開発ベンダーが気づくこともあります。そうすれば、より実態に即したERP導入を目指し、失敗しないプロジェクトへと導くことができます。
RFPを作成するタイミングはいつ?
多くの企業では、RFP作成のタイミングはプロジェクトごとに異なっています。これはRFPに関するルールが整備されていないため、完成したRFPの質も作成担当者によってバラバラなのが実情です。
RFP作成のタイミング設定は企業により異なりますが、一般的には「開発ベンダーとの契約」から逆算して考えます。ERPは統合的な基幹システム製品なので、プロジェクトが比較的大規模になります。従って、RFP作成から開発ベンダー選定までにかかる期間は数ヶ月を要するケースが大半なので、これを基準に考えてみましょう。
また、企業の方針としてシステム開発依頼の期間が決まっているのであれば、その期間から逆算した数ヶ月前にはRFPを作成します。さらに細かいタイミングについては、プロジェクトの規模から考えましょう。
RFPのボリュームは?
よくある「良い提案を受けられないRFP」の特徴は、機能要件については細かく記載してあるものの、ERP導入に乗り出そうと考えた背景・目的などについて説明されていないことです。相反する要求が記載されているもの、優先度が把握できないもの、スケジュールだけが決められたものなども、提案内容に大きなブレが生じる可能性が高まります。
また、ボリュームが多すぎるRFPはかえって複雑になってしまい、良い提案を受けられなくなってしまう可能性があります。しかしながら、最低限「機能要件」「ERP導入に至った背景」「要求の優先度」「予算」「既存のシステム環境」「大まかなスケジュール」については記載するようにしましょう。
RFPの詳しい書き方を教えて欲しい!
本稿で、RFPの重要性についてご理解いただけたら幸いです。ただ、「結局RFPってどう書いたらいいの?教えて!」という方も多いでしょう。その点については当社システムインテグレータにお気軽にお問い合わせください。
また、RFPの基本から、何を記載すればよいのか、どうやって書いたらいいのかなどをまとめた資料もございます。RFPについて気になる情報が満載なので、こちらもぜひ参考にしてください。
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