第四回のテーマは「表計算ソフトの限界」です。だれでも利用している表計算ソフトでプロジェクト管理を行うことの限界について話します。
表計算ソフトの手軽さ
パーソナルコンピュータが普及し始めたころから、標準ソフトとして表計算ソフトは普及してきました。普及した理由は3つあると思います。まずは、我々の回りには表形式で計算するものが多い事です。例えば、伝票1つ取っても1行で項目、単価、個数、その合計と計算して、最後にすべての行の総合計を取るようなものがたくさんあります。このようなニーズには表計算ソフトは当然のことですが大変マッチしています。
次にこのような計算を再計算することが頻繁に発生します。電卓では出来なかった個数や単価などを変数として扱い簡単に変更し再計算が簡単にできること。これにより、個人的に作成した表上で試算したりすることに容易できること。また、ある変数を何度も変更して最終的にどのような結果になるのか、シミュレーションすることができるようになったことも理由の1つです。
このように表を作成していくと多くの表が蓄積され、その中の表を再利用することが作業の効率化に結び付くことに気付き始め、多くの表が増殖しながら再利用されています。これに拍車を掛けたのがメールに添付できる機能です。自分が作成したもの以外の蓄積もネズミ算式に増えていきます。
このような表計算ソフトも表計算ソフトとしての関数や操作性の向上以外にグラフィカルな機能も備えるようになってきました。プロジェクト管理で言うガントチャートなどの作成も容易にできるようになり、機能面では大変充実したパッケージになっています。
淡い思い
では、この表計算ソフトでプロジェクトマネージメントを開始しましょう。表計算ソフトの機能面からいうと十分な機能が揃っており、プロジェクト管理はできるはずです。例としてWBSの作成をもとに話を進めます。工程、タスク、サブタスクと詳細化していきます。最終的にはワークパッケージを作成します。ワークパッケージが作成できた時点でスケジュールの作成に移ります。スケジュールの長さが決まったら、当然スケジュールの調整(一般的には短縮)を行います。タスクの関係(例えば、終了-開始の関係から開始-開始の関係)の変更で一般的にスケジュールは短縮できます。
さて、ここまでの作業ですが表計算ソフトで十分できます。但し一人で作業するという条件が付けば。
数人でこのような作業を行うと、ローカライズされた表が増殖していき、タスクの追加削除などの情報が適切に表に反映されなくなります。
表計算ソフトは、あくまでパーソナルユースのものです。それを複数の人で使い始めると一人ではできることが、出来なくなってしまうのです。
プロジェクト管理に対する要求
このような話を進めていくと、全員が同じルールで作成すれば、整合性は保てるという人が出来てきます。まるでプログラミングのコーディング・ルールを定めるように。
しかし、本当にルールを決めれば出来ることでしょうか? メールに添付され増殖したものから最新の表を見つけだすことが素早く正確に出来るでしょうか。しかも工事進行基準への対応や多くのステックホルダーへの適切な報告、PMBOKの適用など最近のプロジェクト管理に要求されるレベルはどんどん高度になっています。それらの要求に対して正確に対応するには、表計算ソフトでは、限界があります。
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