2006年に当時のGoogle最高経営責任者であったエリック・シュミットは、米国で開催された「サーチエンジン戦略会議」にて、次のような言葉を残しています。
「ブラウザの種類も、アクセス手段も、パソコンかマックか、携帯電話かも無関係です。“雲(クラウド)”のような、巨大なインターネットにアクセスすれば、その利益、恵みの雨を受けられる時代になっています」
“クラウド・コンピューティング”という言葉は、このエリック・シュミットの発言を受けて誕生しました。現在では、クラウドはインターネット上で提供されるサービスを指す言葉で、GmailやGoogle検索などをイメージすると分かりやすいかと思います。
ここ10年で、クラウドはソフトウェア開発の市場を一気に塗り替えました。従来パッケージ製品を販売していたベンダー企業は、そのほとんどがクラウドの提供を開始し、多様化する顧客企業のニーズに対応しています。
例えば企業向けプロジェクト管理ツールであるSI Object Browser PMもクラウド対応したITソリューションの一つです。今回はプロジェクト管理をクラウドで行うとはどういうことなのか、どのようなメリットがあるのか、気になる市場のトレンドを解説していきます。
インターネット上でシステムを利用できる“仕組み”
通常プロジェクト管理ツールを導入する場合、まずは社内のハードウェアリソースを確認した上で、調達が必要かどうかの判断を下します。必要ならば新たなサーバを購入し設置場所を検討しますし、必要なければ既存のサーバで対応します。
また、ネットワーク構成についてもトラフィック量などを考慮し再考しなくてはならず、そうした作業がすべて完了した上でようやくソフトウェアのインストールに取り掛かります。
対してクラウドではこうした作業をまったく必要としません。ソフトウェアを稼働するには必ずサーバが必要ですが、これはシステムベンダー側にてサーバを用意し、そのサーバ上でソフトウェアが稼働しています。(※SI Object Browser PMはスマートクライアントのインストールがインターネット経由で必要になります)
システムベンダーは手元で稼働しているソフトウェアを、GmailのようにWeb上で公開することによって、ユーザーが利用できる仕組みを整えているのです。
ユーザーは利用したいクラウドがあれば契約し、ユーザー数に応じて月額費用や年額費用を支払って、専用アカウントを作成します。つまりPC、インターネット接続環境、予算さえあればいつでもクラウドでプロジェクト管理ツールを導入できるということです。
プロジェクト管理ツールをクラウドで利用するメリット
プロジェクト管理ツールをクラウドで利用することでのメリットを、具体的にご紹介します。
場所を問わずにツールを利用できる
クラウドには場所に制約がありません。「PCとインターネット接続環境があれば利用できる」という特徴は、オフィスと社外の垣根を取り除いてくれるのです。
例えばプロジェクトリーダーが外出中で、チームメンバーはリーダーの承認を早急に得る必要があります。しかし、従来のシステム環境ではリーダーがオフィスに戻ってこない限り承認作業を進めることができません。
かといってメールでのやり取りで承認作業を完了させるのも後々問題になってしまうので、チームメンバーは手持無沙汰でリーダーの帰りを待つしかない状態に陥ります。また、お客様先に常駐しているメンバーなどは自社に戻らない限りプロジェクト管理ツールを扱えないなどの制限も考えられるでしょう。
クラウドであれば、このような問題を解消することが可能になります。リーダーは所持しているノートPCなどの端末を外出先でインターネットに接続することで、オフィスで使用しているのと同じプロジェクト管理ツールにアクセスできます。また、客先に常駐しているプロジェクトメンバーなどはモバイルデバイスから簡単に進捗報告を行うこともできるのです。
これなら、緊急で承認を得ることが必要になっても、承認フローが滞ることなく進みますし、無駄な帰社なども必要ないでしょう。外出先からプロジェクト管理ツールのフル機能を使用できるので、現代的なワークスタイルに対応できるようになるのです。
導入コストの削減と、導入期間の短縮ができる
前述の通りクラウドはサーバなどの社内インフラを必要としません。すなわち、導入コストの削減と導入期間の短縮というメリットがあります。
サーバ購入はそれだけで結構なコストがかかるものですし、その後のハードウェア、ソフトウェア含めた運用管理などを考えると高価になる可能性もあります。
クラウドであれば安価な初期費用や定額費用と簡単な初期設定で、導入コスト削減と導入期間短縮が実現できることになるのです。
“働き方改革”ができる
プロジェクト管理ツールをクラウドで導入する場合、導入コスト削減や導入期間短縮といったメリットに目が行きがちですが、それよりも価値のあるメリットが“働き方改革”です。クラウドを利用することで外出先や常駐先はもちろんのこと、自宅からの業務にも対応するので、新しい働き方を提案することができます。
現在多くの企業が取り入れようと方法を模索している“リモートワーク”。クラウドのプロジェクト管理ツールならば、このリモートワークを支援する強力なツールになります。残業時間を減らし36協定を守ることは重要ですし、働きやすい会社にするために労働時間削減を実現しなければなりません。
その結果、社員の満足度が向上したり、優秀な人材の確保が可能になるのです。
すぐにやめられる
クラウドのメリットは短期間で導入できることはもちろん、すぐにやめられるというのもメリットの一つです。クラウドでは始めるのが簡単ならやめるのも簡単なので、自社にフィットしないツールだと判断したら、新たなプロジェクト管理ツールに乗り換えることも可能です。ただし製品によって契約が月単位か年単位か異なるので、その点は注意しましょう。
システム運用コストがかからない
パッケージ製品は一見ランニングコストがかからないと思われがちですが、実施はシステム運用に多くの労力を必要とします。さらに細かく言えば、サーバの消費電力や設置スペースも立派なコストになります。
システム運用が必要ないということは、こうしたコストの一切が無くなるということなので、ランニングコストまで削減できるケースも少なくありません。
セキュリティを強化できる
昨今サイバー攻撃による重大な情報漏えい事件がメディアを騒がせています。特に大きな問題となっているのは、その規模と範囲です。サイバー攻撃は年々悪質さを増し一つ一つの被害が大きくなっている上に、大企業など特定のターゲットばかりが狙われるのではなく、中小企業など次第にターゲットの範囲が拡大しています。
これまで被害に遭うことがなかった中小企業も「うちは大丈夫」と対岸の火事ではいられない現状があるのです。
しかし、独自にセキュリティ対策を取るのは非常に高いコストがかかります。複数のセキュリティソリューションを導入したり管理体制を整えたりと、それこそ経営を圧迫してしまうでしょう。
クラウドならばシステムベンダーによってセキュリティ対策がなされている場合がほとんどなので、独自に対応しなくてもセキュリティを強化できるメリットもあります。
最新バージョンが常に使える
オンプレミスで展開される場合、ソフトウェアのバージョンアップ作業などは自社の責任のもの行われるのが一般的ですが、クラウド上に展開されるソフトウェアの管理はベンダーが行います。たとえばSI Object Browser PMのクラウド版では常に最近のバージョンが提供されるので、ユーザーは安心して最先端のプロジェクト管理ツールを利用できるメリットがあるのです。
まとめ
今回はプロジェクト管理ツールのクラウドによるメリットに関してご紹介しました。
実際には必ずしもクラウドを利用できる環境にない企業もあるかと思います。自社に適したプロジェクト管理ツールの導入形態を選ぶことです。もし迷っている場合にはシステムインテグレータまでお問い合わせいただければ幸いです。
OBPM Neoについてわかりやすくご紹介する資料もご用意していますので、ご興味をお持ちいただけましたらこちらもぜひご覧ください。
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