プロジェクト管理はスケジュール管理?

 2018.08.15  株式会社システムインテグレータ

皆さんは“プロジェクト管理”と聞いて何が思い浮かびますか?もしも「スケジュール計画とそれに付随したタスク」を思い浮かべたのなら、それは不十分かもしれません。では、皆さんにとってプロジェクト管理の目的とは何でしょうか?これも、明確な答えがすぐに出ないのなら危険信号です。

こうした問いかけをぜひチームメンバーに投げかけてみてください。案外多くの人がプロジェクト管理について明確な定義や、目的、成功の基準を持っていないことが分かります。

今回ご紹介するのはプロジェクト管理の基本です。プロジェクト管理が徹底されていないと、そのプロジェクトは失敗までいかずとも成功にも至りません。成功とも失敗ともどちらとも言い難い、そんなプロジェクトが多くなるでしょう。

できる限り多くの方にプロジェクト管理の本質を知っていただきたいと思います。

プロジェクト管理の目的とは?

プロジェクト管理でのスケジュール計画は、QCD(品質、コスト、納期)の“Delivery(納期)”にあたる管理項目です。プロジェクトではこの他に製品の品質やコストも管理しなければならないので、「プロジェクト管理=スケジュール計画」ではないことは明白です。ただし、QCDを遵守することだけがプロジェクト管理の目的ではありません。

よくプロジェクト管理ツールなどの画面でガントチャートなどのタスクとスケジュールの管理画面が出てくるため、スケジュール管理の印象が強いかもしれません。まずはこのイメージを払拭しましょう。

顧客が要望する品質、コスト、納期を守ることはプロジェクト管理において基本中の基本です。なのでQCDの遵守がプロジェクト管理の目的になってしまうと、顧客の期待を上回るような製品は提供できないでしょう。単純に終わっただけというプロジェクトになりかねません。

一つ一つのプロジェクトには必ずビジネスに繋がる目的があります。たとえば顧客の業務システムを開発するようなプロジェクトでは、業務システムを構築すること自体が目的なのではなく、それによってビジネスモデルを確立したり、生産性を向上させて収益に貢献することが目的であるはずです。

従って、プロジェクトの根本的な目的を捉えてプロジェクト管理を実行することで、プロジェクト自体を目的化せずに管理ができます。

自社の利益を確保することもプロジェクト管理の目的である

顧客がプロジェクトに求める“品質”は時代と共に変化しています。1990年代の製造業や情報システムでは、できる限り高品質、低コスト、短納期で製品を提供することが顧客満足度に繋がっていました。そのためQCDを遵守すればプロジェクト管理は完了していたのです。

しかし、時代と共にQCD以上のことが要求されるようになります。高品質、低コスト、短納期は当たり前で、顧客ごとにオリジナル性の高い製品が求められるようになったり、新しい付加価値を求めるようになっています。

こうした顧客の要求に対して、完全に自社のポリシーに従って製品を提供するという企業は少ないでしょう。ほとんどの企業が顧客からの要求に対して、様々な制約の中でその要求をかなえようとします。その結果、採算性がぎりぎりだったり、赤字に陥ってしまうプロジェクトが生まれるのです。

では、企業はそうした状況を仕方ないと受け入れ、常に赤字ギリギリでプロジェクトを実行することが正しいのでしょうか?もちろん諦める必要はありません。そんな状況の中でも自社の利益を確保するためのプロジェクト管理は実行できます。

たとえば設計段階での承認フローは承認者も多く、フローが効率良く回らずに承認が完了するまで数日以上かかってしまうこともあるでしょう。もしもこれを1日やそれ以下に短縮したら、相当なコスト削減や迅速な意思決定が可能になるはずです。

プロジェクト管理は、こうしたいくつもの効率化を実現することで自社の利益を確保するというのも目的の一つなのです。

プロジェクト管理を体系立てたPMBOK

正しいプロジェクト管理を実行するにあたって参考にしていただきたいのが“PMBOK(Project Management Body of Knowledge)”というプロジェクト管理基準です。プロジェクト管理に関する手法やノウハウとして、米国の非営利団体PMI(Project Management Institute)が30年以上前にまとめたものです。

PMBOKはプロジェクト管理に関するノウハウを「10の知識エリア」に分類しています。プロジェクトの最終的な目標になるQCDの3つのエリアに加えて、調達管理、リスク管理、スコープ管理、要員管理、コミュニケーション管理、ステークホルダー管理の6エリア。それにプロジェクト全体を管理する統合管理を加えて計10のエリアがあります。

①統合管理

プロジェクトの開始と終了、コントロールや指揮など細かく分類されたPMBOKのエリアを統合的に管理してプロジェクトを推進します。

②品質管理

品質管理や品質改善だけでなく、品質テストなど品質管理に関わるタスク全体を管理します。

③コスト管理

プロジェクトにかかっている原価の管理、予算管理、それに加えて予実管理など全体のコストを管理します。

④スケジュール(納期)管理

ガントチャートなどのツールを用いてプロジェクトの計画と実行を把握し、進捗を管理します。

⑤調達管理

製造業の場合は仕入先、情報システムの場合は委託先などサプライヤーを管理し、外部要因によるプロジェクト遅延を防ぎます。

⑥リスク管理

プロジェクトに発生し得る問題を予測し、回避のためにそのリスクを管理します。

⑦スコープ管理

プロジェクトスコープ(何を行うか)と成果物スコープ(何を作るか)という2つのスコープに分けてプロジェクトの指針を明確にします。

⑧要員管理

プロジェクトメンバーごとの負荷状況を把握し、負荷均一のためにタスクを振り分けたり適材適所を実現するための管理です。

⑨コミュニケーション管理

プロジェクトメンバーのコミュニケーションを管理することで、情報共有による円滑なプロジェクト推進を目指します。

⑩ステークホルダー管理

顧客やサプライヤーはもちろん、プロジェクトメンバーやプロジェクトに関わるすべての人をステークホルダーとして管理し、全体として円滑なプロジェクトを目指します。

以上のPMBOKの知識エリアから分かるように、プロジェクト管理はQCDを遵守するだけのものではありません。QCDに加えてリスクマネジメントを取り入れたりプロジェクトメンバーのコミュニケーションを管理したりと、プロジェクトに関するすべての要素を管理することがプロジェクト管理です。それによってQCDの達成はもちろん、自社の利益を確保することがプロジェクト管理の本質です。

まとめ

本稿を通じて、今までプロジェクト管理はスケジュール管理だと思っていたけれども、本当の目的を理解できたという方が少しでもいれば幸いです。今回の内容を念頭に置きつつ改めてプロジェクト管理について考えてみましょう。

また合わせてPMBOKによって効率良くプロジェクト管理の本質を学ぶのもよいでしょう。

プロジェクト管理に関する詳しい資料もご用意しています。ぜひご活用ください。


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