アジャイル組織とは?特徴やメリット・デメリット、組織づくりのポイントを解説

 2022.02.28  株式会社システムインテグレータ

アジャイル組織という言葉をご存知でしょうか。システム開発をされる方はよく耳にする言葉でしょう。
近年、変化が激しい世の中になってきています。それに伴い、組織のあり方にも変化が必要です。そこで注目されているのがアジャイル組織です。
今回はアジャイル組織について概要や特徴、メリット・デメリットなどをご紹介します。今後の組織づくりの参考にしてください。

アジャイル組織とは

アジャイル組織とは?特徴やメリット・デメリット、組織づくりのポイントを解説 1

アジャイル組織とは、柔軟性や機敏性を重視した組織構造です。ビジネスにおいては計画が重要視されるものの、アジャイル組織は実行しながら改善を加えていく点が特徴です。改善することを前提としているため、意思決定のスピードが速くなります。

また、スピード重視の組織であることから、トップダウンではなく現場に一定の意思決定の権限があることも特徴です。変化のスピードが速い現代にマッチした組織像といえます。

アジャイル開発との違い

アジャイル開発とは、システム開発やソフトウェア開発で取り入れられる開発手法であり、小規模単位で開発とテストを繰り返すことです。ウォーターフォール開発のように、開発前に綿密な計画を作るのではなく、設計に余白を残して開発を進めていきます。

そのため、顧客などからの要望にも柔軟に対応できるメリットがあります。不具合やトラブルが発生したとしても手戻り工数が少ないため、納期遅延などを防ぎます。

このアジャイル開発がアジャイル組織の起源です。ただし、アジャイル組織は、開発領域に限った話ではなく、他の業種や業界でも取り入れられています。

アジャイル組織が生まれた背景

アジャイル組織が誕生した背景には、世の中のニーズが「モノ」から「コト」へと変化していることが挙げられます。
すでにモノは飽和状態となっており、世の中の価値が経験などによって変化しています。さらにその価値は多様化が進んでいます。すでに世の中には高品質で高機能なモノが提供されているため、モノよりも個人にとって価値のあるコトが重要視されています。

また、近年ではSNSなどの普及により個人が自由に情報を取得・発信することができます。個人が得た情報をもとに行動をするため、変化のスピードも速まりました。ビジネスにおいても素早い変化に対応することが求められており、これらの背景からアジャイル組織が誕生したといえるでしょう。

現在、アジャイル組織はアメリカやアジア諸国を中心に普及しており、世界中でその考え方が取り入れられています。

また、昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にはアジャイル組織がカギになると言われています。DX推進には経営や事業戦略を見直すことが必要な、新しい取り組みのため、臨機応変に柔軟に進めていく必要があります。関係者も多く、進み方も複雑なため、変化する優先順位に合わせて取り組める組織体系であるアジャイル組織に注目が集まっています。

アジャイル組織において生産性を向上させるためには、組織のメンバーもアジャイルマインドを持っている必要があります。それぞれのメンバーが役割や責任を理解して、短期間で導入を進めなければ、「アジャイル組織」と名乗っても生産性の向上は期待できないでしょう。

アジャイル組織の特徴

ここではアジャイル組織の特徴をご紹介します。アジャイル組織には、以下の5つの特徴があります。

フラットな組織

アジャイル組織は、メンバーもしくはチームに権限が分散されたフラットな組織です。プロジェクトにおいてアジャイル組織を構成するときは、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、カスタマーサポートなどさまざまな立場のメンバーで作ります。

小規模ではあるもののさまざまなメンバーで構成することで、顧客からの要望を汲み取りやすい構造となっています。その要望に対して、各メンバーが一定の権限を持つことができるため、各自が自立した行動につながります。

権限と責任を与えるフラットな組織構造は、メンバーの人間性が尊重されて「人」を重視した組織文化が根付くでしょう。

従来の組織はトップダウンや年功序列などが多く、全てのメンバーが尊重される機会が少ない傾向にありました。しかし、アジャイル組織であれば、年齢や性別に限らず誰でも気兼ねなく意見を出せる点が強みです。

明確なビジョンを持つ

アジャイル組織は、明確なビジョンや目的意識を持っている点が特徴です。戦略を練るときは、既存の価値観にとらわれず新たな価値観を創造します。

また、顧客中心の理念からステークホルダーのさまざまなニーズに対して迅速に対応できるよう、柔軟なビジネスモデルの創出にも重点を置いています。

この一貫した考えを保つために、行動指標や目的、ビジョンを明確にしているアジャイル組織がほとんどです。ちなみに、アジャイル組織ではそれらのビジョンや目標のことを「北極星」と表現しています。北極星はメンバーが心から共感できる内容であることが必要です。

PDCAサイクルが早い

アジャイル組織は、PDCAサイクルが速いことも特徴です。

そのため、アジャイル組織は新サービスや新たな開発を行うとき、企画工程には時間をかけません。大枠のニーズをもとに早めに手を動かし、実際の製品やサービスを提供して、顧客からフィードバックをもらって改善を重ねていきます。

改善後は再び市場に提供して、フィードバックを繰り返すサイクルです。短期間で開発、提供、フィードバックを繰り返すことで学びや気づきも多くなります。

その学びを次のビジネスに活かせる点がアジャイル組織の魅力でしょう。

柔軟に対応できる

アジャイル組織は、時代の変化に合わせて最先端の技術を積極的に取り入れることができます。既存商品について柔軟にカスタマイズして、新たなニーズに応えることも可能です。最新のニーズに応えるには、最先端の技術を取り入れることが不可欠であり、アジャイル組織はこれを日常的に行っています。

従来の組織は人手がかかっていたところをシステムやツールで代替えすることに重点をおいていましたが、アジャイル組織ではテクノロジーとビジネスの壁をなくして融合しています。

ビジネスとテクノロジーで足りないところを補い合うイメージです。最新のテクノロジーを取り入れつつ、顧客に新たな価値を提供します。

メンバーのエンゲージメントがより求められる

アジャイル組織ではメンバーのエンゲージメントが重要です。エンゲージメントは、メンバーの定着率や生産性、モチベーションなどにつながります。リーダーはメンバーをしっかりと信頼して、目的やビジョンに向けて牽引することが求められます。

従来の組織のようにリーダーがメンバーのタスク管理や業務コントロールをすればいいのではなく、コーチングなども必要とされます。メンバーの意識やモチベーションをいかに保てるかがアジャイル組織のポイントです。

アジャイル組織のメリットとデメリット

アジャイル組織とは?特徴やメリット・デメリット、組織づくりのポイントを解説 2

ここでは、アジャイル組織のメリットとデメリットを詳しく見ていきます。アジャイル組織にはメリットだけではなくデメリットもあるため、内容を理解していきましょう。

メリット

アジャイル組織のメリットは、以下のとおりです。

・柔軟かつスピーディーに対応できる

アジャイル組織は、顧客のニーズを素早く察知して対応することが可能です。これはアジャイル組織の大きなメリットでしょう。素早く対応できるのは、各メンバーに一定の権限が与えられているからです。そのため、意思決定の時間が短く業務全体のスピード感につながっています。

・メンバーのモチベーションが高まる

アジャイル組織は、メンバーに一定の権限を与えることから、メンバー自身のモチベーションの向上につながります。モチベーションが上がることで、さらなる生産性の向上が期待できるでしょう。各メンバーのモチベーション向上は、チームや組織全体の生産性の大幅な向上に好影響です。

以上がアジャイル組織の主なメリットです。一方でデメリットもあるため、次章で見ていきましょう。

デメリット

アジャイル組織のデメリットは、以下のとおりです。

・アジャイルに慣れていないとマネジメントに難しさがある

アジャイル組織では、メンバーが意思決定の権限を持つことが多く、リーダーがマネジメントしにくい側面があります。各メンバーが自らの責任で行動することはメリットですが、リーダーがしっかりと管理しなければ、チームが間違えた方向に行く可能性があります。

タスクの複雑化も考えられるため、管理ツールなどを活用しながら適切にマネジメントしましょう。

・プロジェクトによっては着地点が見えにくい

アジャイル組織は、制作物の改善ありきで行動するため、改善や追加がつきものです。そのため、計画を立てていても最終的なゴールが見えにくくなります。常により良いものを作るという認識で進めることが大事になるでしょう。

・アジャイルが向いていない部門も存在する

アジャイル組織は変化に柔軟に対応できる反面、それが常に正しい方向性とはいえないことがあります。たとえば、メンバーがもともと意見を活発に出し合わない風土であればアジャイル組織を採用することは難しいでしょう。

アジャイル組織を構成するには、メンバー一人ひとりに積極性や自立性、責任感が求められます。そのようなメンバーを構成できないときは、従来の組織構造がマッチしている可能性が高いです。

以上がアジャイル組織のデメリットです。現状の組織風土によっては、すぐにアジャイル組織にフィットできないこともあるため、組織改革には十分な検討が必要でしょう。

ほかの組織形態との比較

ここまでアジャイル組織に関して詳しくご説明してきました。ここからは、ほかの組織形態との比較をしてみます。それぞれの特徴と比較してみてください。

ピラミッド型組織との比較

ピラミッド型組織とは、日本でこれまでに採用してきた組織構造で最も多く、経営者から権力順に構成されている組織です。社長、部長、課長、係長、主任、一般社員のように権限順に構成されていることから、ピラミッド型構造と呼ばれています。

ピラミッド構造では、自分の役割が理解しやすく、「報連相」を誰に行えばいいか明確です。責任の所在がはっきりしていることも特徴でしょう。しかし、意思決定には何段階もの工程が必要であり、マネジメント方法を間違えると指示待ち人間が増えてしまいます。

アジャイルに適した組織を作るには

最後にアジャイル組織を作る手順をご説明します。これから紹介する4つの内容をもとにアジャイル組織を作ってみましょう。

組織づくりの計画を作る

まずはアジャイル組織に移行するための計画を作りましょう。組織風土が大きく変化することは、メンバーの混乱を招くことがあり、明確なビジョンや変更点を細かに示す必要があります。

計画書を作る際は、組織変更による価値や構造をデザインして、チームとミッションを定義してみてください。その後、人材やテクノロジーを定義してロードマップにしていきます。

パイロットチームでアジャイル型組織を作る

次は小規模なメンバーで構成するパイロットチームでアジャイル組織を構成します。

もちろん、トップの強力なリーダーシップでアジャイル組織への移行を進める必要はありますが、最終的には大きな組織変革となります。いきなり組織全体をアジャイル組織にするよりは、一部の部署や限られたチームをアジャイル組織にして運用してみてください。

パイロットチームの運用次第で、徐々にアジャイル組織にするほうが、リスクが少なくなります。

アジャイル型人材を育てる環境を作る

アジャイル組織は、メンバーに一定の権限を与えることから、それに適した人材育成や職場環境の構築が必要です。

特に、組織全体で同じ風土を共有するコミュニティになることが求められます。失敗しても許容できる人間関係や反対意見も取り入れてくれる職場環境の構築がポイントです。

誰もが気兼ねなく声を上げることができる環境を目指す必要があります。

学習環境を整える

アジャイル組織にするには、学習環境を整えることも重要です。失敗から学んでチャレンジし続ける姿勢がアジャイル組織には必要となります。とはいえ、実務から学ぶことだけではなく、研修などで新たな知識やスキルをインプットすることも大事です。

研修では、スタッフ自ら学べるe-ラーニングの環境を構築することが有効です。その後、リーダーや上司がフィードバックして、メンバー一人ひとりがレベルアップできる機会を作ってみましょう。

まとめ

アジャイル組織とは、従来の上から下に流れるトップダウンの指示や承認フローではなく、メンバーが一定の権限と責任のもとに自立して業務に取り組む組織です。そのため、リーダーはよりタイムリーな状況把握やタスク管理が重要となります。

しかしながら、多くの企業はアジャイル型プロジェクトを管理するノウハウを持ち合わせていません。そこで弊社が過去に実施した「アジャイル開発のプロジェクト管理手法」セミナー(講師:弊社社長梅田)の講演資料を公開しています。課題をお持ちの方は、こちらもぜひご覧ください。


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