デイリースクラムとは?目的や実施手順、よくある課題と対策を解説

 2022.10.12  株式会社システムインテグレータ

「デイリースクラム」とは、スプリントゴール達成のためにスクラムチームメンバーで行うミーティングです。計画との乖離や作業を進める上での障害などを明らかにでき、必要に応じて軌道修正ができるようになります。

この記事では、デイリースクラムの目的やルール、実際に行う際の手順などをわかりやすく解説します。デイリースクラムを開発に取り入れていないという方や、上手に活用できていないという方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

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デイリースクラムとは

「デイリースクラム」とは、アジャイル開発におけるスクラムチームメンバーのためのスクラムイベントです。毎日同じ時間、同じ場所で15分程度、今後の作業計画やスプリントゴールに対する進捗の確認・調整をします。デイリースクラムによって、計画との乖離や作業を進める上での障害などを明らかにできるため、必要に応じて軌道修正ができるようになります。

デイリースクラムは、さまざまな企業で「朝会」や「ミーティング」として扱われており、スプリントゴール達成のために、問題なく進んでいるかを確認する行事です。スクラムを成功させるために欠かせない重要なイベントです。

ちなみにアジャイル開発とは、システム開発を小さな単位ごとに区切り、実装とテストを繰り返しながらプロジェクトを進める開発手法です。アジャイルには「素早い」「機敏」という意味があります。アジャイル開発の特徴として、開発途中に仕様を変更ができるため、開発手法との大きな違いといえるでしょう。アジャイル開発におけるスクラムチームの人数は、一般的に3〜10人程度とされています。

アジャイル開発についての詳細を知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

アジャイル開発とスクラム開発の違いとは?それぞれの開発手法について特徴やメリット、その関係性について解説

デイリースクラムの目的

前述のように、デイリースクラムの⽬的は「スプリントゴール達成のために、問題なく進んでいるかを確認すること」です。計画との乖離や作業を進める上での障害などがないかをしっかりと確認し、必要があれば今後の作業を調整しつつ、スプリントゴールの達成を目指します。

また、デイリースクラムによって開発メンバー同士の状況把握や情報共有ができます。これにより、チーム全体での作業が進めやすくなります。もしもデイリースクラムを行わずにスプリントを進めた場合、進捗の遅れや問題点が把握できなかったり、コミュニケーション不足になってしまったりする恐れがあります。

便利なデイリースクラムですが、単なる「進捗報告の場」にならないように意識することが大切です。なぜなら、デイリースクラムの目的は「スプリントゴールの達成」であり、進捗報告そのものではないからです。

デイリースクラムのルールや手順

続いて、デイリースクラムのルールや手順を解説します。デイリースクラムの実施が初めての場合や、実施しているもののあまり効果が見られない場合は、以下を参考にしてみてください。

デイリースクラムのルール

以下は、デイリースクラムの基本的なルールです。

・毎日同じ時間に、同じ場所で行う

デイリースクラムは毎日同じ時間に、同じ場所で行ってください。時間や場所を固定することで、開発メンバーがそれぞれのタスクに集中できるのに加えて、集合場所の検討やスケジュールの確保にリソースを使わずに済みます。

・実施時間は15分以内にする

スプリントイベントは時間厳守が原則です。デイリースクラムの会議時間は15分を超えないようにしましょう。万が一、何かのトラブルなどでデイリースクラムが15分を超えてしまうようなら、必要なメンバーだけで別の会議を設けるようにしてください。

実施前に必要な準備

以下は、デイリースクラムを実施するために必要な準備です。

・進捗状況を確認し、報告できるようにしておく

デイリースクラムの実施までに、自分の担当タスクの進捗状況を確認しておきましょう。タスク管理ツールを使用している場合、自分の担当タスクを最新の状態に更新します。

・他の開発メンバーに共有すべき情報がないかを確認しておく

デイリースクラムの際に、他の開発メンバーに共有すべき情報がないかをあらかじめ確認しておきましょう。話し合いが必要となる情報がある場合、デイリースクラム内ではなく、後に別のミーティングを設定します。

デイリースクラムの進行

以下は、デイリースクラムを実施する際の基本的な流れです。

はじめに、あらかじめ決めたデイリースクラムの実施時間を宣言します。前述の通り、15分間での実施が一般的です。

その後、開発者が各自の状況を持ち回りで報告していきます。主に「昨日やった作業」「今日予定している作業」「現在困っていること」「解決したこと」を共有していきましょう。具体的な流れは次の通りです。

・昨日やったこと

「昨日終わらせる予定だった業務は終わったのか」という報告をし、滞りなく進行できているか、問題点は無いかなどを確認します。もし、昨日やるべきタスクが終わっていなかった場合、スプリントゴール達成を阻む問題が見つかる可能性が高いです。

・今日予定している作業

続いて当日の作業予定を報告します。「昨日やったこと」と同様に、開発メンバーが当日の作業の流れを上手に説明できない場合、スプリントゴール達成を阻む可能性があります。「今日1日の流れとゴール」がわかるような説明を心がけましょう。

・現在困っていること

現在起きている問題点などを報告します。人によっては問題点を表に出すのが苦手だったり、問題が大きくなるほど言いづらくなってしまったりするものです。トラブル化を未然に防ぐためにも、デイリースクラムでは個人が抱えている疑問点や問題点を積極的に聞く機会を作りましょう。

・解決したこと

問題が解決した場合も必ず報告し、情報を共有しましょう。

デイリースクラムは、慣れるまではスクラムマスターが司会・進行役をして進めてください。スクラムマスターは、スクラムチームのリーダーであり、チームメンバーの全員が正しくプロジェクトを理解し、開発にあたっているかのチェックを行います。 また、チームをまとめたり、自律的な行動を引き出したりといった、最大限の成果を引き出す役割があります。

報告が済んだら、スプリントゴールが達成できるか否かを確認し、現所に改善点があれば適宜、軌道修正します。デイリースクラムが単なる「進捗報告会」にならないように、全員がしっかりと意識しましょう。

スクラムマスターについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

スクラムマスターとは?役割や仕事内容、必要スキルまとめ

デイリースクラムのよくある課題と対策

デイリースクラムとは?目的や実施手順、よくある課題と対策を解説 2

デイリースクラムを取り入れた際に陥りやすい課題点と、その対策方法を紹介します。デイリースクラムを有効に活用するために、次のことに注意しましょう。

報告や共有のみで終わってしまう

デイリースクラムで陥りやすい失敗例として、「チームのメンバーからリーダーへ報告するだけの場」になってしまうケースがあります。特にチームの立ち上げ初期には、このような状況になることが多いようです。

まだまだアジャイル開発に慣れていないエンジニアが多い場合、リーダーに状況を報告しながら作業する形になってしまいがちです。

しかし、スクラムチームはあくまでも全員平等であり、チーム全体でゴールに向けて進んでいくものです。リーダーに報告して指示を仰ぐのではなく、自分たちで議論を重ねながら開発の方針を決めて業務にあたりましょう。そのためにも、「デイリースクラムはリーダーへの報告の場ではない」という意識を持つことが大切です。

デイリースクラムを単なる「進捗報告の場」にしないために、以下の3つを共有するようにしましょう。

・昨日やったこと

・今日やったこと

・問題点

ただし、共有するだけでデイリースクラムを終えてしまっては意味がありません。共有された情報をどう活かすかを検討し、対策してください。

15分の時間内に収まらない

スクラムの大前提として、スクラムイベントはあらかじめ決められた時間を厳守する必要があります。そのため、デイリースクラムも15分以内で設定された時間内に終えなくてはいけません。もしも、デイリースクラムが15分を越えてしまった場合、時間内に終わらなかった原因を見つけて、改善していきましょう。

デイリースクラムに限らず、時間内に終わらないからといって時間を延長していては、毎回延長する癖が付いてしまいます。すると、時間内に収まらない原因の特定が行われなくなり、状況が改善されなくなるでしょう。

時間超過への対策として、必ずしも全員が「昨日やったこと」「今日やること」「問題点」を順番に述べる必要はないということを意識しましょう。

デイリースクラムはあくまでも、スプリントゴールの達成までの作業を効率的にするために行う取り組みのひとつです。つまり、チームメンバー全員の詳細な進捗状況に注視するのではなく、スプリントゴール達成にフォーカスを当てるのです。

また、デイリースクラムの参加者はしっかりと事前に準備をしておきましょう。開発メンバー以外は部外者となるため、関係者以外は参加しないようにし、参加が許された場合もデイリースクラムで長々と話をしないようにしてください。デイリースクラムで本質からずれた話題が続くような時は、スクラムマスターまたは他の参加者が軌道修正をします。

問題が発見できていない

本当に問題がないのであれば良いことですが、実際は問題があるにもかかわらず見落としていることも少なくありません。これは、デイリースクラムの中でも特に難しいポイントです。特に「スプリントゴール達成を阻みかねない問題」は、なかなか表に出てこないことが多くあります。本人も問題に気が付かず、周りが確認した結果、問題が発覚するというケースもあるでしょう。

また、「問題はないか?」と聞かれた際、問題があっても「特に問題はありません」と答えてしまった経験は誰しもあるのではないでしょうか。人は問題を抱えていても、つい平気なふりをしてしまうものです。そのため、締め切り前日や開発の最終日になって、ヘルプを出されたり、相談されたりすることもあるかもしれません。

このように、問題が先送りになるのを防止するにはどうしたら良いのか、対策方法を紹介します。

・作業の透明性を高める

スクラム開発において「作業の透明性」はとても重要です。デイリースクラムを進行していく上で、作業が不透明な状態であるのは好ましくありません。透明性を上げるためには「自分のタスクで想定よりも時間がかかっている所はないか」「仕様が曖昧な箇所はないか」などを自問自答してみましょう。

・問題を抱えた人を客観的に見えるようにする

作業を進めていくうえで、本人は気が付かなくても、他人が見れば「それは問題ではないのか?」と思うようなことも出てくるでしょう。普段からメンバー全員が疑問を持ち、お互いに問題を見つけ合える癖を付けておくことをおすすめします。これは自分を客観視することにもつながります。

・問題を相談しづらい雰囲気にしない

多くの人は、問題が発覚した際に言いづらく感じてしまうでしょう。スクラムにおいては、その言いづらさを排除することが重要です。そのためには、開発チームのメンバー全員が、問題を受け入れ、対策を考えられるような雰囲気を作る必要があります。

まとめ

アジャイル開発におけるデイリースクラムについて解説しました。デイリースクラムの⽬的は「スプリントゴール達成のために、開発が問題なく進んでいるかを確認すること」です。デイリースクラムによって計画との乖離や作業を進める上での障害などを明らかにできるため、必要に応じて軌道修正ができるようになります。

デイリースクラムの時間を有効に活用するためには、単なる「進捗報告の場」にせず、共有された情報をどう活かすかを検討し、対策に活かす必要があります。もしもデイリースクラムで問題や改善策が発見できなかった場合、それは「改善する理由や余地がない」ということになり、スクラムとして成り立っているとはいえません。

日々のデイリースクラムを無駄にしないためにも、作業の透明性を高め、問題を抱えた人を客観的に見えるようにし、相談しやすい雰囲気を作りましょう。

弊社ではプロジェクト管理に関するさまざまなノウハウを公開しています。過去に実施した「アジャイル開発のプロジェクト管理手法」セミナーの講演資料もダウンロードいただけますので、こちらもぜひご覧ください。


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