アジャイル開発のフレームワーク「SAFe」とは?特徴や導入メリット解説

 2022.02.28  株式会社システムインテグレータ

アジャイル開発で使用するフレームワークの1つに「SAFe」というものがあります。SAFeは最近注目を浴びており、導入を検討している企業も多いでしょう。ただ、スクラムと似ていて、違いがよく分からない人もいるかもしれません。

ここではSAFeについて特徴や導入するメリット、導入方法などについて解説していきます。

SAFeとは

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「SAFe」は、「Scaled Agile Framework」を略したものです。アジャイル開発で用いられるフレームワークの一種で、「セーフ」と読みます。また、Scaled Agileというのは、SAFeを提供している会社の名称です。

SAFeは大規模開発の際によく利用されており、全世界で2万社以上の企業が利用しています。

SAFeが注目されている理由

昨今ではテクノロジーの進歩も社会情勢も変化が激しい状況です。それに伴い顧客のニーズも大きく変化することから、状況に臨機応変に対応できる開発手法が好まれます。こういった理由から、多くの企業でアジャイル開発の採用が進めでいます。

さらに、開発に直接携わる部署だけでなく、企業全体で変化に対応することが求められる傾向が強まっています。SAFeは開発に携わる部署よりも上の経営層にもアプローチできるのが特徴です。企業全体に対して体系を立てることができて、変化の激しい状況に対応しやすいということで注目を浴びています。

アジャイル開発とは

SAFeについて詳しく知るには、まずアジャイル開発について知っておかなければなりません。アジャイル開発というのは、開発工程を小さく分けた上で、何度も開発とテストを繰り返す開発手法のことです。

1つの工程は少人数で担当し1~3週間程度の短期間で完了します。変更などがあっても、他の工程への影響は小さく、変化に対して迅速な対応をしやすいのが特徴です。

アジャイル開発について詳しくはこちらで説明しています。
アジャイル開発とは?特徴やウォーターフォールとの違いなど徹底解説

スクラムとの違い

アジャイル開発の中にもさまざまな手法がありますが、そのうちの1つにスクラム開発という手法があります。

SAFeもスクラムベースで開発を行います。スクラム開発では、1つのプロジェクトにおいて1つのスクラムチームを作るのが一般的ですが、SAFeは、複数のスクラムチームを作るという点が異なります。

スクラムについてはこちらの記事もぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とスクラム開発の違いとは?それぞれの開発手法について特徴やメリット、その関係性について解説

SAFeを導入するメリット

SAFe は、問題をより早く表面化できる作業計画、レベル全体のバックログの進捗をリアルタイムで可視化できる機能の導入、検査と適合の手順など、信頼を構築する行動を奨励しています。SAFeを導入することで、開発に着手してからリリースされるまでの時間を短縮することができます。これまでよりも短期間で利益を生み出せるようになるということで、企業にとってメリットが大きいです。工程ごとにゴールを決めることから従業員エンゲージメントも向上するでしょう。

リリースまでの時間が短くなるため、品質低下の懸念を抱く人もいるかもしれませんが、そのような心配もありません。むしろ工程ごとにPDCAサイクルを回すため、品質の向上が期待できます。

あらゆる変化にも柔軟に対応できるため、DXとの相性も良く、これから社内でDX化を進めようとしている企業に最適です。

SAFeのコアコンピテンシー

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SAFeには7つのコアコンピテンシー(核となる能力)があります。

Team and Technical Agility (TTA)

チームがソリューションを構築する際に用いるスキルと原則、プラクティスのことです。

スキルというのは、SAFeを用いて開発を行う際に作る複数のアジャイルチームのことを指します。

原則というのは、ビルトインクオリティとも呼ばれ、市場の変化に対応し、製品の品質を改善していくことです。

プラクティスというのは、高いパフォーマンスを持つアジャイルチームのことを指します。

Agile Product Delivery (APD)

価値のある製品をリリースし続けるためにユーザーに対して行うアプローチのことです。

「カスタマーセントリシティとデザインシンキング」、「ケイデンス開発とリリースオンデマンド」、「DevOpsと継続的デリバリーパイプライン」という3つの特徴があります。

顧客を意思決定の中心に据えて、継続的に価値を提供します。

Enterprise Solution Delivery (ESD)

ソフトウェアやネットワークなどの仕様決定や開発、運用などにおいて、リーンアジャイルの原則とプラクティスを当てはめる方法です。

「リーンなシステムとソリューションエンジニアリング」、「トレイン(ARTs)とサプライヤーの連携」、「運用中のシステムの継続的な進化」の3つの方法で行われます。

Lean Portfolio Management (LPM)

「戦略および資金投資」、「アジャイルポートフォリオ運用」、「リーンガバナンス」の3分野により、戦略と実行の足並みを揃えることです。

ポートフォリオに対して、それを実現するために必要な資金投資を行います。その上で、ポートフォリオ上のプログラムがそれぞれ独立して実行できるようにサポートを行います。

また、費用の予測や測定も実施し、支出に関しても適切にガバナンスを行います。

Lean-Agile Leadership (LAL)

SAFeを導入する組織のリーダーは、導入前の段階で基礎を構築しておかなければなりません。手本を示すことで、チームのメンバーをコーチングし、成功に導きます。

そして、変革をリードすることも重要です。組織やそのメンバーにとっては、これまでのやり方を大幅に転換することになるでしょう。そのため、メンバーに変革ビジョンを与えて、モチベーションを与える必要があります。併せて心理的安全性を確保することや、トレーニングを行うことも大事です。

Organizational Agility (OA)

変化の激しい社会情勢に適応するため、「リーン思考のメンバーとアジャイルチーム」、「リーンなビジネスオペレーション」、「戦略のアジリティ」が必要です。

SAFe導入にあたって、メンバー全員がアジャイルなマインドを身に付けなければなりません。そのためには、リーンアジャイルに対する教育を実施する必要があります。

それと併せて市場を継続的に調査し、変化があれば素早く感知し、その変化に合った戦略を実施します。

Continuous Learning Culture (CLC)

知識や競争力、パフォーマンスなどを継続的に高めるためのプラクティスを示すものです。学び続ける組織、イノベーションの文化、たゆまぬ改善という3つの特徴から構成されています。

組織が変革を続けながら成長していくためには、その組織を構成する社員も常に学び続けなければなりません。そして、常に新しいアイデアを模索することが求められます。製品をリリースして終わりではなく、常に改善点がないかどうか探す姿勢が大事です。

SAFeの導入に必要な12のステップ

SAFeを導入する際には次の12のステップが必要です。

転換点へと到達する

社会情勢の変化や法令の改正などに伴い、これまでのやり方が通用しにくくなってきます。多くの場合、現状維持に努めようとしますが、それが難しいと判断されれば変化の必要性を認識するでしょう。これが転換点です。

転換点に到達したときに、SAFeの導入を検討し始めることになります。

リーンアジャイル変革者を育てる

リーンアジャイル変革者というのは、ビジネスリーダーなどに対して、SAFeに関するトレーニングを行う人のことです。その役割を担えそうな人材を社内から探して育てます。なるべく下地となる知識を持ち合わせている人を選ぶのがいいでしょう。

エグゼクティブ、マネージャー、リーダーの育成

リーンアジャイル変革者となる人が十分な知識を身に付けたら、幹部に対してトレーニングを行います。経営陣に近い上級幹部からマネージャーや現場のリーダーまでが対象です。そうすることで、SAFe導入後も実際に開発作業を担う社員が、これまでのやり方からスムーズに転換できます。

リーンアジャイルのセンターオブエクセレンスを作成

開発を担当する部署でスムーズにリーンアジャイルに転換できても、それ以外の部署ではなかなか浸透しないことも多いです。

そこで、センターオブエクセレンスを作成しましょう。センターオブエクセレンス(直訳すると「優秀な中心」で、組織の中核を成す部署や研究拠点の意味合い)なら、社内全体にリーンアジャイルを浸透させることができます。

バリューストリームとARTの設定

バリューストリームというのは、クライアントに対して価値の提供を行う基本構造のことを指します。ARTはAgile Release Trainの略で、ソリューションの開発を行うアジャイルチームのことです。

これらをきちんと特定することで、全社的にSAFeの重要性を認識するように促せます。

導入計画の策定

SAFeを導入することで、何をどのように変革したいのか具体的なビジョンを定めましょう。その上で、目標や優先順位の策定も必要です。目標を達成するために、いつまでに何を行うべきなのか大まかに決めておきましょう。ロードマップを作成すると、分かりやすくなります。

ARTのローンチに向けた準備

ARTの立ち上げを行うには、ARTの定義を明確にし、期限も具体的に定めなければなりません。その上でチームのメンバーを決める必要があります。

ARTが立ち上がると、メンバーがトレーニングやバックログなどを行うでしょう。そのため、必要な準備も立ち上げ前に済ませておかなければなりません。

チームのトレーニングとARTのローンチ

ART立ち上げ後は、各チームのメンバーは自分の役割をしっかりと理解しておかなければなりません。その役割を全うするためのスキルも必要です。

そのため、チームのメンバーに対して、トレーニングを行います。SAFeを導入したばかりだと慣れないことも多いため、必要なスキルは確実に身に付けておきましょう。

また、ARTは優先順位がもっとも高いものから立ち上げます。上手くいったら、次の優先順位のARTを立ち上げます。

ARTの実施に関するコーチング

ARTを遂行する際には、計画を立てるところから行い、スタンドアップミーティングやバックログリファインメントなども行います。

一通りのことを実践していくうちに、上手くいかない点も出てくるでしょう。ところどころでコーチングを行うことで、チームのメンバーの力を引き出します。ストレートに指示を与えるのではなく、コーチングをするということが重要です。

さらにバリューストリームとARTをローンチさせる

優先順位の高いARTの遂行が上手くいったら、下位の優先順位のARTまで順次立ち上げて遂行していきましょう。その際には、優先順位の高いARTと基本的に同じやり方で行います。

準備をした上で立ち上げて、チームのメンバーが役割を果たせるようにトレーニングを行うという具合です。ART遂行にあたっては、コーチングも行います。

どれも必要な手順であるため、省略してしまわないように注意しましょう。

ポートフォリオレベルでの適用

ポートフォリオレベルでリーンアジャイルを適用することで、ビジネスの変革を先導することができます。そして、全社規模でリーンアジャイルの方法が確立します。

全社での維持と改善

全社規模でリーンアジャイルの方法でことを進めていると、これまでよりもスムーズにいくこともあれば、問題点が発生することもあるでしょう。

上手くいく部分に関してはそれを維持するように努め、問題点を少しずつ改善していきます。そうすることで、これまでよりも効率良く業務を進められるようになり、迅速な対応もしやすくなります。

アジャイルをスケールさせる各種フレームワークとの違い

アジャイル開発のフレームワークはSAFe以外にも有名なものがいくつかあります。SAFeを導入するなら、他のフレームワークについても概要を知っておくことが大切です。

では、他の主なフレームワークとSAFeとの違いについて見ていきましょう。

LeSS

LeSSは、「Large-Scale Scrum」を略したもので、大規模な開発においても最小限のアプローチで行うのが特徴です。SAFeよりもシンプルなソリューションを提供したい場合に向いているでしょう。

基本的に2~8チームで開発を行います。8チーム以上の場合もありますが、LeSS Hugeとして通常のLeSSとは区別されます。個々のメンバーの担当箇所という概念が薄く、全てのメンバーが全体に目を向けるのもSAFeとの違いです。

また、SAFeと比べてプロダクトオーナーの権限や影響力が強いのも特徴です。

DAD

DADは「Disciplined Agile Delivery」を略したものです。開発を行う際に、エンドツーエンドのライフサイクルで行うことを基本としています。

SAFeと比べてプロジェクトのライフサイクルを意識する傾向が強く、意思決定のタイミングなども明確に定めているのが特徴です。

Nexus

NexusはSAFeと同様に、アジャイル開発の中でもスクラム開発を行う際に用いられるフレームワークです。大規模開発を想定しており、透明性を重視しているのが特徴です。

顧客との認識の齟齬をなくすため、開発途中で顧客に対して説明を行い確認を求めることなどもあります。

Scrum@Scale

Scrum@Scaleもスクラム開発を行う際に用いられるフレームワークですが、スクラムチーム内のメンバーを交代できるのが特徴です。

また、スクラムマスターサイクルとプロダクトオーナーサイクルの両方があり、それぞれでバックログとアプローチを繰り返します。そして、これら2種類のサイクルが重なり合う部分もあるのも特徴です。

まとめ

SAFeについてご理解いただけましたでしょうか。弊社では、過去に実施した「アジャイル開発のプロジェクト管理手法」セミナー(講師:弊社会長梅田)の講演資料を公開しています。SAFeを導入する場合や、SAFeについてより理解を深めたい場合は、こちらもぜひご覧ください。


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