単体テストとは?メリット・デメリットやテスト手法を詳しく解説

 2022.05.13  株式会社システムインテグレータ

システム・ソフトウェアの開発プロジェクトでは、製品の品質を確保するためにさまざまなテストが実施されます。複数あるテストの種類のなかでも最初に行われるテストであり、個々のプログラムの動作確認を行うために重要となるテストが「単体テスト」です。

当記事では、単体テストの概要・目的から、実施するメリット・デメリット、主なテスト手法、テスト実施のポイント・注意点、テストを効率化する方法を解説します。

単体テストについて全体像を知りたい方や、実務に役立つ知識を身に付けたい方の参考になれば幸いです。

単体テストとは

単体テストとは?メリット・デメリットやテスト手法を詳しく解説 1

単体テストとは、システム・ソフトウェア開発のプロジェクトにおいて最初に実施されるテストです。モジュール単位・コンポーネント単位といった小規模な単位に対してテストを行い、各機能が正しく動作するかの確認を行います。

単体テストは、実装工程でコードを記述した開発者によって、比較的早いタイミングで実施されるケースが一般的です。

単体テストを実施する目的

単体テストは別名ユニットテスト・ユニット工程とも呼ばれており、名称の通り比較的小さな単位(ユニット)に対してテストを行うことで、一つの画面・機能ごとに正常な動作を担保することを目的としています。

一般的にシステム・ソフトウェア開発のプログラムは数多くの画面・機能から構成されていますが、単体テストによりユニットごとの動作が担保されることで、プログラムの組み合わせ・組み上げといった後の工程をスムーズに進めることが可能です。

単体テストと結合テストの違い

システム・ソフトウェアの開発プロジェクトでは、単体テストだけでなく結合テストも実施されます。ここでは、両者の違いについて解説します。

  • 単体テスト
    小規模な機能単位で行われるテスト。各機能の動作確認を行い、後の工程へ繋げるのが主な目的。
  • 結合テスト
    複数のモジュールを組み合わせて行われるテスト。仕様通りにプログラムが動作することを確認するのが目的。

単体テストではシステム・ソフトウェアの仕様の確認は行いませんが、結合テストでは仕様の確認まで行い品質を担保する点に大きな違いがあります。単体テストでバグや不具合を取り除いて開発を進めた延長線上に結合テストが位置することにも留意しておきましょう。

結合テストについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考下さい。

結合テストとは?目的や手法、単体テストとの違いを解説

単体テストを実施するメリット

単体テストには、小単位で行われるからこそ得られるメリットがたくさんあります。システム開発・ソフトウェア開発をスムーズに進めるためには、単体テストのメリットを把握して上手く使いこなすことが非常に重要です。

ここでは、単体テストを実施する主なメリットについて解説します。

不具合を発見し、修正・調整できる

単体テストは、モジュール・コンポーネントといった細かい単位でテストを行うため、バグ・不具合を発見しやすく問題個所の特定を行いやすいことが大きなメリットです。テスト結果をもとに、プログラムの修正や調整もスムーズに行うことが可能です。

開発プロジェクトの要所で単体テストを実施することで、プログラムの動作を確認しながら質の高いシステム・ソフトウェアを作り上げていくことができます。

リファクタリングを行いやすい

リファクタリングとは、システム・ソフトウェアの外部的挙動は変更せずに、プログラムの内部構造に変更や改善を加えることです。コードの内部構造を最適な状態に保つためには重要な作業です。

単体テストの要件や実施内容を適切に準備します。外部的挙動に問題があった際にはテスト結果として検出されるため、リファクタリングをスムーズに行うことが可能です。反対に単体テストの準備が不十分であれば、リファクタリングの実施が困難になるだけでなく、内部構造の劣化や工数の増加を招く恐れがあります。

このようにプログラムに変更を加える必要がある際の障壁を取り除けることも、単体テストを実施する大きなメリットです。

単体テストのデメリット・課題点

単体テストを実施するにあたっては、デメリットや課題点もあります。スムーズにテストを実施するためには、いかにデメリットや課題点を払拭するかがポイントです。

以下に、単体テストのデメリット・課題点について解説していますので、ぜひ確認しておいて下さい。

準備に手間がかかる

単体テストは、プログラムの個々の機能や小単位での機能に対してテストケースを作成するため、準備に時間と手間がかかることが大きなデメリットです。テストケースを作成する数が多いほど、負担は大きくなります。

単体テストの準備には時間と手間がかかることは避けられないため、実施の際には十分な余力をもって臨むことが重要です。

テストの品質はスキル次第

単体テストの品質は、テスト実施者のスキルにより品質が大きく左右されます。効果的なテストを実施するには、不具合が起こりやすい条件を想定したテストコードの作成やパラメーターの設定を行うことが重要となりますが、それには一定以上のスキルが必要不可欠です。

テスト実施者のスキルにより、テスト品質にばらつきがでてしまうことは、単体テストの実施に伴う大きな課題です。

負荷を理由に実施を省略するケースも

単体テストの実施にあたっては、不具合を検出するためのテストケースの質と数を十分に確保することが重要です。手間と時間をかけて準備を行うほど、テスト品質の担保は行いやすくなります。

しかし、単体テストの準備・実施は負荷が大きいため、スケジュール・リソースを確保できずにある程度妥協したテストを実施せざるを得ない場合があります。その場合は、テストの内容が不十分となり、品質の担保を満足にできないため注意が必要です。

どうしてもスケジュールやリソースが不足する場合は、テストケースの準備に優先順位付けを行うなど、次善の策を講じることも重要です。

単体テストの手法

単体テストとは?メリット・デメリットやテスト手法を詳しく解説 2

単体テストの手法には、大きく分けてホワイトボックステストとブラックボックステストがあります。単体テストの実施にあたっては、両者の違いを理解して使い分けることが重要です。ここでは、それぞれの手法の概要について解説します。

ホワイトボックステスト

ホワイトボックステストは、プログラムの内部構造を理解していることを前提に、意図・想定した通りに動作するか確認を行うテスト手法です。プログラムの内部処理内容の網羅基準をどの程度に設定するかによって、準備にかかる時間・労力と得られる結果が変わってくるため、テストを実施する状況によって適切な基準を設定することが重要となります。

ホワイトボックステストの主な網羅基準は以下の通りです。

  • 命令網羅
    全ての処理が最低1回は通るように設定。
  • 分岐網羅
    全ての分岐を最低1回は通るように設定。
  • 条件網羅
    条件分岐に対して真・偽を各1回は通すように設定。

  • 複数条件網羅
    条件分岐に対してあらゆる組み合わせを通すように設定。

ホワイトボックステストは内部構造を隅々まで理解していることが重要となるため、一般的にテストの実施は開発者自身により行われます。

ブラックボックステスト

ブラックボックステストとは、プログラムの内部構造を考慮せず外部仕様を満たしているかどうかを確認するテスト手法です。主にデータのインプット・アウトプットにフォーカスしてシステム・ソフトウェアの全体を確認していきます。敢えて内部構造を考慮せずにテストを実施することで、開発時に予想や想定をしていなかった不具合等を発見できることが大きな特徴です。

ブラックボックステストのテスト項目・テストケースの作成は、一般的に外部仕様書を参考にして行われます。

単体テスト実施における注意点

単体テストをスムーズに実施して品質を担保するためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。ここでは、単体テスト実施における注意点について解説します。

テストの完了を明確に定義する

単体テストは、テストケースを増やすほどバグや不具合を発見できる確率は高まり、少なすぎるとテストの品質が不十分となる性質を持ちます。ついテストケースを増やすことを考えてしまいがちですが、あまり増やし過ぎると際限なく工数が伸びてしまうため、適度な着地点を見つけてテストの完了・ゴールを明確に定義しておくことが重要です。

事前にテストの合格ラインを定義しておくことで、テストの範囲が不明瞭になることや不必要な工数の延長を防ぐことができます。

テスト結果を記録する

単体テストを実施する際には、テストを実施して品質を確認したことや、バグや不具合に対処したことを証明するために、テスト結果を証拠として必ず記録しておくことが重要です。

記録を残していない場合は、テストを実施した事実や内容を判断することができなくなり、テストを実施した意味が無くなってしまうためです。

漏れなく記録を残すには、単体テストの実施前にテスト一覧を作成しておき、網羅的に記録を残していくのが一般的な方法となります。

単体テストの結果を開発プロジェクトに反映するためにも、テスト結果については必ず記録しておきましょう。

単体テストの実施を効率化させる方法

単体テストはシステム・ソフトウェアの品質向上やプロジェクトのスムーズな進捗に欠かせないフェーズですが、準備・実施に大きな負荷がかかるため、できるだけ効率化を図ることが重要です。

単体テストの実施を効率化するには、以下のような方法があります。

  • 単体テストの標準化を行う

できるだけ単体テストの実施方法を標準化することで、担当者による偏りを無くして効率を高めることができる。

  • 過去のテストケースを使いまわす

同じタイプのシステムを開発する場合や、バージョンアップを行う場合は、再利用可能なテストケースを活用することで工数を削減することが可能。

  • テストツールを活用して自動化を図る

単体テストを自動化できるテストツールを活用することで、テストに要するリソース・工数を削減して効率化を図ることができる。

テストツールの活用による単体テストの自動化について、以下に詳しく解説します。

単体テストの自動化

単体テストの準備・実施は負担が大きく、開発プロジェクトのリソースを圧迫するという懸念があります。ツールを活用して自動化を行えば、以下のように単体テストの多くの課題を解決することが可能です。

  • 多数のテストケースを確実に実施できる
  • テストケースが増えても工数・リソースを圧迫しない
  • 単体テストに携わる人員を削減できる
  • テストをスピーディーに実施できる
  • バグ・不具合の早期発見・早期解決が可能となる

テストを自動化するツールには無料ツールと有料ツールがありますが、有料ツールの方が対応できるテスト環境が多く、機能・性能も優れているためおすすめです。

単体テストを負担に感じている方や工数を削減したい方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

システム・ソフトウェア開発のプロジェクトでは、開発をスムーズに進めるためにも、動作保証や品質担保を行うためにも、単体テストを適宜実施することが重要です。単体テストは準備や実施の負担が大きいため、十分なテストを行うためには効率化・自動化を意識して余力を生み出すことが重要なポイントとなります。

開発現場がひっ迫していてテスト工程を効率化したいとお悩みの方は、以下の資料もぜひご覧ください。


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