外観検査で異物や汚れ、キズを検出するには?外観検査装置導入のメリット

 2024.07.10  株式会社システムインテグレータ

製品の品質を担保するためには、製品や部品に異物や汚れ、キズなどがついていないかといった外観検査が不可欠な工程です。今までは熟練工といわれる検査員が行っていました。ところが、近年では人件費の高騰や後継者不足、少子高齢化といった問題が製造業を悩ませています。

そうした問題を解決するために登場したのが、外観検査装置です。
今回の記事では、外観検査装置とはどういったものなのか、どういった欠陥を検出するのかといった疑問にお答えしていきます。

 

キズや異物の外観検査とは

外観検査装置とは?キズや異物を検知する仕組みや導入メリットを解説

外観検査とは、製品や部品の表面にある異物やキズの付着などといった欠陥などを確認する検査のことです。

現在の主流は「目視検査」であり、人間の肉眼を使ってキズや異物といった欠陥を検出しています。検査工程で見つかった不良や原因は、データとして蓄積させることがほとんどです。

外観検査が行われる大きな目的は、以下の2つです。

  • 不良品の市場流出の防止
  • 不良が発生する根本的な原因の特定や改善

不良品を市場へ流出させてしまうと、顧客クレームが発生するだけでなく自社の信頼を大きく低下させてしまい、製品の回収には多額のコストも伴います。

また、外観検査で何らかの異常を発見することは発生原因の解明にもつながるので、以降は同じ不具合が発生しないように対策することもできます。

つまり、外観検査を行うことで、不良を流さないだけでなく不良を作らないことにもつながるのです。

外観検査の詳細については、下記の記事もご参照ください。
関連記事:外観検査とは?検査の必要性や項目、発見できる不良など徹底解説

外観検査で発見できるキズや異物

外観検査で発見できる欠陥の例として、次のものが挙げられます。

  • 金属や樹脂についたキズ
  • 布に付着した汚れ
  • 食品パッケージに付着した異物
  • LEDの点灯不良
  • 樹脂やゴムの成形で発生するバリや欠け

外観検査では検査基準が明確に定められていて、文字や写真で記載された仕様書や基準書をもとに判断されます。濃淡など基準が曖昧な項目については、合格・不合格の限度を示す「限度見本」「不良見本」「標準見本」を使って判断するのが一般的です。

キズや異物の範囲によって判断が分かれる場合には「ドットゲージ」と呼ばれる、さまざまな形状の傷や異物を異なる面積で表示した基準ゲージが使われる場合もあります。

キズや異物を発見する外観検査の種類

キズや異物を発見する外観検査の種類は、大きく2つあります。

  1. 目視検査
  2. 外観検査装置

それぞれの特徴を、詳しく見ていきましょう。

目視検査

目視検査は、「人間の肉眼を使って行う検査」です。

視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった人間の五感を使って品質を判断する「官能検査」の一種であり、視覚を用いた検査方法です。検査内容によっては高度な知識や経験を要するものもありますが、一般的には手軽に行える手法として製造現場では広く普及しています。

目視検査のメリットは、専用の設備が不要なことから、設備費用や開発費用といったイニシャルコストが発生しないことです。人材さえ確保できれば、その日から実施することができます。

しかし、従来の目視検査は、人手不足や検査品質の均一化が難しいなどの課題があり、近年は「外見検査装置」の導入が一般的になりつつあります。

目視による外観検査については、下記の記事でも紹介しています。
関連記事:外観(目視)検査で設定すべき基準とは?必要な項目を解説
関連記事:目視検査に潜むリスクとは?解決方法まで解説!

外観検査装置の活用

外観検査装置とは、自動で製品や部品の外観を検査できる装置のことです。

必要な設備は「センサー(カメラ・赤外線など)」や「画像処理システム」であり、人によって行われる目視検査に限りなく近い検査を実施することが可能です。

人で例えると、センサーは「目」、画像処理システムやソフトウェアは「脳」です。

検査員による目視検査は、手順書や基準書、限度見本に基づいて行う必要がありますが、外観検査装置ではデータに基づいた判定が行われます。

外観検査の自動化については、下記の記事でもご紹介しています。
関連記事:外観検査を自動化するためのポイントと装置について

次章では外観検査装置について、より詳しくご説明します。

外観検査装置の仕組み

外観検査装置とは?キズや異物を検知する仕組みや導入メリットを解説-1

外観検査の自動化は、次のような手順で行われます。

  1. 製品や部品を照明で照らす
  2. カメラで撮像する
  3. 撮像したデータを画像処理装置に送信する
  4. 画像処理装置による撮像データの加工・変形で、対象部分の特徴を抽出する
  5. 抽出された特徴点から異常の有無を判定する
  6. 異常があった場合は警告などを発して知らせる

異常があった製品はNG判定されますが、NG品の処理は搬送設備の有無や内容によって以下のように異なります。

  • NG品の処理を人が行う
  • NG品の処理をロボットが行う
  • NG品の処理を自動搬出で対応する

「搬送設備が未導入」「NG品の詳細検査を行う」といった場合は、人がNG品を処理しなければなりません。警報が鳴ったあとは対応要員が内容を確認し、仮置き場へ静置して製造ラインを再開させます。

ロボットがNG品の処理を行う場合は異常を認知したあと、ロボットコントローラがNG品を仮置き場に静置するので、手動による製造ラインのスピード調整が必要です。

自動搬出による対応は、自動で製造ラインを切り替える指令を発令して製造ラインがNGラインへと切り替えられるので、製造ラインのスピードは自動で調整されます。

ロボットや自動搬出によるNG品の処理は、製造ラインを停止させる必要はありません。

外観検査装置で検出できるキズや異物

従来、カメラなどを用いたキズや異物の検出は難しい点もありました。

例えば食品などを包装している透明なフィルムや、ベアリングやナットなどの金属部品に対するごみや汚れの付着、異物混入などは比較的多く発生しますが、カメラやセンサを活用した検出が難しいものでした。金属や透明なフィルムなど、光沢があったり光の反射が起きてしまうようなものは、カメラで撮影した際にも反射などが映りこんでしまうためです。

しかし近年では、照明やカメラを工夫して活用することはもちろん、AI活用による画像処理技術向上により、今まででは画像による判定が難しかった異常も判定が容易になってきました。

外観検査装置の検出に向いているキズや異物を、業界別で簡単にまとめました。

業界名

製品例

欠陥例

金属

ボルトやネジ

バリ、クラック、割れ、変形、寸法ズレ

ベアリングなど

サビ、腐食、キズ、へこみ、打痕

溶接部分

アンダーフィル、アンダーカット、割れ、気泡、ピット

食品

パッケージ

キズ、汚れ、印字ズレ、印字間違い、異種混入

容器

焼け、焦げ、汚れ、破れ、へこみ、キズ、異物、印刷ミス

ボトル

気泡、異物混入、キズ、ピンホール、汚れ、印字ミス

電子部品

プリント基板

断線、ショート、クレイジング、ミーズリング

半導体パッケージ

モールド不良による膨らみ・変形、ピン端子の曲がり・変形、表面のキズ・クラック・汚れ・バリ

はんだ

ボイド、はんだボール、ピンホール、ブリッジはんだ、はんだ不足

コネクタ

ピンリードの曲がり・欠陥、ピッチ幅の位置ズレ

シリコンウェハー

反り、変形、割れ、欠け、キズ、クラック、打痕、異物

液晶

反り、変形、割れ、欠け

樹脂

樹脂成型品

キズ、スジ、気泡、銀状、フローマーク

ボトルキャップ

パージ材の残り、変形、焼け、汚れ

医療

医薬品容器、外箱

異物、キズ、汚れ、液面高さ、内容量、印字ミス、ラベルのズレ・破れ

成形部品

ガラス

キズ、汚れ、異物、気泡、割れ、クラック

シート・フィルム

ピンホール、ゲル、気泡、異物、汚れ、フィッシュアイ、スジ、シワ

上記はほんの一例ですが、画像認識技術を使うことで検知できる不具合であれば、人工知能(AI)によって認識できます。一般的に検知が難しい不具合であっても、外観検査装置のメーカーによっては特化した製品を提供している場合もあります。

外観検査における照明やカメラについては以下のブログで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

なぜ外観検査では特殊な照明を使うのか
外観検査で使用するカメラの特徴は?最適なカメラの選び方を解説

外観検査装置を活用するメリット

外観検査装置とは?キズや異物を検知する仕組みや導入メリットを解説-2

外観検査装置を活用するメリットは、大きく3つあります。

  1. 効率的な外観検査の実施
  2. 検査品質の均一化
  3. 細かなキズや異物の検知

上から順番に解説していきます。

効率的な外観検査の実現

1つ目のメリットは、効率的な外観検査が行えることです。

外観検査装置は人間と同等の精度があるだけでなく、検査スピードも高速です。

例えば、ネジやナットのように生産量が多いうえに単価が安い部品の検査の場合、人による目視検査を製品すべてに実施すると時間もコストもかかるので、採算が合わなくなってしまいます。解決策として抜き取り検査を実施する場合、全数検査に比べて不良品を市場へ流出させてしまうリスクが高くなります。

また、不具合の発生によって検査項目が増えてしまうと検査員を増員させる必要があるので、場合によっては生産工程の人員を削って補う必要がありました。しかし、生産工程から人員を削減すると、さらに製品の品質が下がってしまう恐れもあります。

しかし、外観検査装置を活用すれば検査時間が短いだけでなく高い精度で不具合を検出できるので、検査員を増員させる必要はありません。

上記のように、生産数が多く安価な部品の検査や人手不足になりやすい製造現場では、外観検査装置の活用がおすすめです。

検査品質の均一化

2つ目のメリットは、検査品質を均一化できることです。

従来の人による目視検査では、検査員の体調や精神状態といったコンディションによって品質が左右することもありましたが、外観検査装置なら基準が一定なのでバラツキは発生しません。

また、目視検査であっても限度見本などの見本があれば一定のバラツキは抑えることはできますが、人による感覚が重視されるために完全になくすことは不可能です。

ほかにも、バブル期の過剰な新規採用のあとに訪れた就職氷河期の影響で中間層の人材が抜けてしまったため後継者不足が問題となっており、若手の検査員を熟練レベルにまで育成するのも困難です。習熟度が低いとオーバーキルや見逃しのリスクも高くなるので、研修や技能実習などを行う必要があります。しかし、多額の費用がかかることから体力のある企業でないと難しいでしょう。

低コストで品質を均一にするのであれば、外観検査装置の活用がおすすめです。

細かなキズや異物を検知できる

細かいキズや異物を検知できることも、外観検査装置ならではのメリットです。

人の目を使って行われる従来の外観検査では、精度を向上させるために視力の高い検査員を集めたり拡大鏡・顕微鏡などを用いたりする必要がありました。

しかし、近年では著しく精密化している製品もあり、例えばプリント基板のような電子機器では2倍から4倍、カメラのレンズでは最大300倍まで拡大しないと検査できない状況です。

外観検査装置なら、2,000万画素を超える超高画質センサーや画像認識システムを搭載することもできるので、肉眼では確認できない製品の不具合であっても瞬時に検出することが可能です。

検出に時間がかかるうえ見逃しのリスクも高いことから、微細な不具合が発生する製品こそ外観検査装置の導入をおすすめします。

キズや異物を発見するための外観検査手順

外観検査装置とは?キズや異物を検知する仕組みや導入メリットを解説-3

以下は、キズや異物を発見するための外観検査手順です。

  1. 撮像
  2. 検査対象の切出
  3. 画像処理
  4. 不良検出
  5. 結果出力

上から順番に説明していきます。

撮像

タイミング信号の入力により撮像が行われます。照明で照らされた部品や製品の状態を、CCDカメラで撮像します。

検査対象の切出

撮像した画像データから検査の対象が切り出されます。切り出された画像データは、画像処理へと送信されます。

画像処理

画像処理では不良個所を判定しやすくするために、画像データに強調処理、フィルタ処理、マスク処理、明るさの調整といった加工が行われます。

処理量の多い未加工の画像はグレー化によって低減されたあと、画像に乗っているノイズがメディアンフィルターによって除去されます。そして、画像の特徴を抽出するために画像は二値化され、輪郭を抽出して不良個所の大きさや寸法測定ができるようになるのです。

不良検出

検査対象範囲内にある基準とは異なる反射率(濃淡の違いを判別)の箇所を検出します。

結果出力

検査の結果、判定基準内であれば良品判定、判定基準の範囲に満たない場合は不良判定が行われます。

AI外観検査システム「AISIA-AD」

外観検査を自動化するなら、AI外観検査システムの「AISIA-AD」がおすすめです。

AIによる外観検査は、多種多様なキズや異物の検出を得意としています。機械学習の一種であるディープラーニング(深層学習)を用いることで、サンプルをもとに学習を行うので、熟練の検査員と同レベルの精度でキズや異物をみつけることができます。人間では検出が難しい0.1mmほどの極小のキズであっても数秒で検出が可能です。

AISIA-ADでは「正常データのみ学習」と「正常異常両方を学習」という2つのモデルに対応しています。異常データを保管していない現場であっても「正常のみデータ学習」が使えるなど、製造現場の事情に合ったモデルを導入することができるのです。

また、異常検出に要する機能は最初から備わっているため、一から試行錯誤を繰り返してAIモデルを作成する必要がないことから、現場の負担は最低限に抑えられます。

外観検査でお悩みの製造現場は、ぜひAISIA-ADをご検討ください。

まとめ

外観検査は、不良品の市場流出防止や不良原因の特定・改善といった重要な役割を担う、製造現場は不可欠な工程です。

近年の製造業は少子高齢化や後継者不足といった大きな問題に直面しているうえ、製品や部品の精密化が著しいことから、品質を維持・向上させるのが難しくなってきています。

そのため、AIを搭載した外観検査が注目されて導入が進んでいますが、AIといえども得手不得手が存在します。貴社に適したものを選ばないと、逆に効率が悪くなる恐れもあります。

AISIA-ADは他社のものとは違って、お客様に合わせて柔軟に対応できる構成で設計されたツールですので、貴社の課題解決をご支援できると考えています。

ご相談は無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。
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