コプラナリティとは?検査の重要性や課題点について解説

 2021.12.21  株式会社システムインテグレータ

PC・スマートフォンをはじめとする電子機器などの小型化が進む現代では、内部に搭載される部品にも精密化・小型化が求められています。しかし、電子部品の小型化・精密化が進むと、稼働時の負荷などで基板や接続部とコネクタの間に「浮き」が生じやすくなり、結果として接触不良や不具合が発生する可能性も高くなってしまいます。

自動車や飛行機などに組み込まれる半導体・ICチップなどでは、そうした事態は人命に関わる大きな事故につながりかねません。これらのリスクを回避するにはコネクタと基板の接続品質を高める必要があります。そこで重要になるのが、接続部の平面性(コプラナリティ)をチェックする「コプラナリティ検査」です。

従来の「すきまゲージ」や「顕微鏡」を用いた検査方法にはいくつかの課題が残っていました。それらの課題を解消する手法として、自動的に形状をスキャンしスピーディな測定を実現するAI技術を用いた検査方法が注目を集めているのです。

本記事ではコプラナリティの概要から検査における重要性、そして従来の検査方法が抱えていた課題解消の方法まで幅広く解説します。

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コプラナリティとは

コプラナリティとは

コプラナリティ(coplanarity)は「共平面性」を意味する言葉です。共平面とはひとつの平面に対して複数の点がある状態または性質を指します。場面によっては「平坦度」「平面性」「面均一性」と表現されることもあります。いずれも一般的に電子部品のコネクタを扱う際によく耳にする用語です。

コネクタにおけるコプラナリティについて

コプラナリティはPGAのピンなどでも出てくる言葉ですが、コネクタにおいてはコネクタ端子(ピン)の平面度を表現する際に用いられます。

具体的にはコネクタピンの最も低い接触点と高い接触点の間の最大値、つまりコネクタ端子のピンの高さがどれだけ平坦に保たれているかを表す言葉です。一言にコネクタといってもさまざまな種類・端子があり、分類によって特徴も異なります。ここからコネクタの種類やコネクタにおけるコプラナリティについて詳しく解説していきましょう。

コネクタとは

コネクタ(コネクタ端子)は、電気信号や電力の流れをつなぐための端子部品です。一般的なコネクタはオス(プラグ)側とメス(レセプタクル)側で構成されており、オス側とメス側を物理的に接続することで電気信号の流れを構築します。

なじみのある例でいえば、下記のような機器は日常的に見る機会が多いはずです。

  • PCのUSB端子

LANケーブル(PC側がメス端子、外付け機器がオス端子) など

また家電や精密機器の内部など、普段目に見えない部分でもさまざまなコネクタが用いられています。用途に応じてコネクタの形状も異なりますが、大きく下記4種類に分類できます。

  • 二つの基板を配線でつなぐ基板対電線接続
  • 二つの基板を直接つなぐ基板対基板接続
  • 機器同士をつなぐI/O(Input / Output:入出力)
  • その他

コネクタを構成する要素

コネクタは、電気を流すための金属部品(端子・ターミナル・ピン・コンタクトなど)と、周囲の部品を保護・絶縁・接続するための部品(非伝導性材料/樹脂モールド・プラスチックなど)で構成されています。金属部分・非伝導性材料の名称はいくつかありますが、基本的にはいずれも同じ性質の部品です。

コネクタの主な種類

一言にコネクタといっても、製法・加工法によっていくつかの種類に分類されます。具体的には「プレス端子」「ヘッダー加工端子(塑性加工・鍛造加工端子)」「切削加工端子」の3つです。以下にそれぞれの端子のメリット・デメリットをまとめました。

(1)プレス端子

【メリット】

  • 標準のフープ材を使用すれば低コストで製造可能
  • 製造スピードが高速で量産向き
  • 高精度が求められる「狭ピッチコネクタ」にも対応可能

【デメリット】

  • 製造過程で抜きカスによる材料ロスが発生する
  • 金型やプレス設備などの初期コスト・維持コストが発生する
  • 表面にバリや荒れが生じやすい

(2)ヘッダー加工端子/塑性加工・鍛造加工端子

【メリット】

  • プレス端子と比べて初期コストが低め
  • 金型の新規作成が不要
  • 加工設備の調整のみで端子の長さの変更が可能
  • あらかじめメッキ処理された素材を使えば、加工後のメッキ処理が不要
  • 加工後のカスが発生せず効率性・生産性が高い
  • 加工のズレや歪み・断面のバリなどが少なく滑らかな仕上がりになる

【デメリット】

  • 目立ったデメリットはない

(3)切削加工端子

【メリット】

  • 精密性が高く複雑な形状にも対応可能
  • 特殊形状のピンも製造可能

【デメリット】

  • 個別に切削加工を行うため量産が困難

コネクタにおけるコプラナリティ

コネクタにおけるコプラナリティは、コネクタ端子が平坦な長さで均一に整っているかを判断するために用いられます。端子の長さが不揃いでデコボコしている場合は「コプラナリティが悪い」、長さが均一に保たれている場合は「コプラナリティが良い」と判断されます。

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コプラナリティを測定する重要性

コプラナリティを測定する重要性

コプラナリティは基板や機器との伝導品質を左右する要素です。

基本的に端子と基板ははんだ付けで実装されます。しかしコプラナリティが悪いと、はんだ付けをしてもコネクタと基板の間が浮いてしまい通電が不安定になってしまうのです。通電が不安定な状態だと、最終的に接触不良など機器本体の不具合発生の要因となります。

コプラナリティが悪くなる要因はさまざまですが、単純な加工精度の低さから端子の長さが不揃いであったり、加工時の熱が影響してコネクタが反ってしまい、中央と両端の長さが変わってしまったりというケースも少なくありません。

大量ロットのコネクタ製造でコプラナリティの精度や品質にバラつきがあると、他の部品や機器本体への悪影響はもちろん、出荷時の市場や顧客からの信頼にも大きな被害を与えてしまいます。つまり十分な「コプラナリティ検査」を行うことは、コネクタや端子の品質維持だけでなく実装の品質、そして部品を現場で使用する顧客からの信頼獲得にもつながっていくのです。

コプラナリティ検査の課題点

これまでのコプラナリティ検査には、大きく分けて「すきまゲージ」を用いた方法と「顕微鏡」を用いた方法の2つがあります。コプラナリティ検査はコネクタの品質精度を保つために必要不可欠な工程ですが、それぞれの方法にはいくつかの課題点が存在します。

すきまゲージを用いる場合の課題点

すきまゲージとは、文字通り隙間に挟み込み寸法を測るゲージです。シクネスゲージやシックネスゲージと呼ばれることもあります。

すきまゲージは金属製(ステンレス中心)の薄い板で構成されており、一般的に0.03mmから1.00mmの隙間まで測定できます。コネクタ端子などの0.03mmという非常に狭い隙間でも測定できる道具は、すきまゲージ以外にはほとんどありません。そのため精密機器を取り扱う現場では広く活用されています。

しかし、すきまゲージを用いたコプラナリティ検査には以下のような課題点があります。

  • 手作業と目視で測定を行うため、検査員ごとに測定値のバラつきが発生しやすい
  • 対象物に直接すきまゲージを当てて測定するため、精密部品を破損させるリスクがある
  • 物理的な測定方法のため時間と手間がかかり、検査できる数に限界がある
  • 測定データをデジタル記録できないため、手入力での記録が必要になる

小ロットの検査なら対応できるかもしれませんが、より検査精度を求められる場面や大量生産の検査などには不向きな方法です。

顕微鏡を用いる場合の課題点

コプラナリティ検査の現場では金属顕微鏡や実体顕微鏡を用いているケースもあります。

顕微鏡検査は0.001mm(1μm)程度まで測定できるのが特徴です。目視では判断できない精度まで検査できるため、精密部品の製造過程で用いられるケースは少なくありません。また、ステージの移動量を数値で確認できるのも顕微鏡検査の魅力のひとつです。

しかし、顕微鏡検査には下記のような課題があります。

  • 測定を行う方向に柔軟性がなく、立体的に配置された端子を測定するには治具での調整が必要で手間と時間がかかってしまう
  • 寸法は目視で測るため、検査する担当者によって誤差やバラつきが生じやすい

顕微鏡検査は目視で判断ができないレベルの精度で測定できる反面、一つひとつの検査に対する手間と負担が大きく、大量ロットの検査に対応するのは難しいでしょう。コネクタのような大量生産品でかつ精密性が必要なコプラナリティ検査は、いずれの方法にせよ手作業で測定するには限界があるのです。

従来のコプラナリティ検査には上記のような課題が残っていましたが、近年ではAIや3D技術を用いてこれらの課題を解消する方法が実用化されつつあります。

デジタル技術によるコプラナリティ検査の課題解決

デジタル技術によるコプラナリティ検査の課題解決

従来のコプラナリティ検査であるすきまゲージや顕微鏡を用いた測定は、多大な手間と時間がかかり、検査を行う人によって精度にバラつきが出るなどさまざまな課題が残っていました。また物理的に接触させて測定を行う方法では、測定時に対象物を破損させてしまうなどのリスクもありました。

こうした課題を解消するために、近年ではAIや3D、VRなどデジタル技術を用いた検査方法が注目を集めています。対象物をスキャンするだけで360度から測定を行え、AIによる測定で精度にバラつきが出る心配もありません。ここからはデジタル技術を用いたコプラナリティ検査のメリットについて詳しく解説します。

メリット1:AIにより高速測定・高精度検査が可能

デジタル技術を用いた測定の場合、対象物をステージの上に置いてスキャンするだけで全てを3D画像として読み込むことができます。スキャンにより測定物を360度画像化できるため、治具による固定や測定部位ごとの移動なども不要です。

さらに、画像として可視化したうえで測定数値も自動的に算出されるため、検査員ごとに数値がバラつくこともありません。

これらの製品のAI検査は非常に高精度です。読み込んだ3D画像でピンの高さや平坦度はもちろん、傾きや曲がり方も表現でき、異常がある点を色分けで表示するなど多彩な機能が備えられています。

対象物のどこに異常があるのかを瞬時に把握でき、検査における異常発見から対応までの時間を大幅に短縮できます。結果として欠陥品を高精度で検出したり取り除いたりできるため、顧客や市場からの信頼を得られる可能性も高くなります。

メリット2:対象物を破損させるリスクがない

デジタル技術を用いた測定では、対象物をステージの上に置いてスキャンすれば、以後はスキャンしたデータのみで測定・検査ができます。測定道具を対象物に接触させる必要がなく、接触時の破損など人為的なミスやリスクもほとんどありません。

メリット3:人手不足・人材不足を解消

従来は高品質を維持するために手作業・目視で行っていたコプラナリティ検査も、AIであれば高速かつ高精度に行えます。その結果、品質維持のために行っていた過剰検査が不要になり、必要最小限の人員で今まで以上の検査の実施が可能です。

以上のようなメリットから、AIやデジタル技術を用いたコプラナリティ検査は、従来の方法に比べて精密性・精度・効率性など全てにおいて飛躍的な改善が期待できます。大量ロットのコネクタ製造に伴い、不良品が流出するリスクを抑える効果は高いといえるでしょう。

まとめ

コプラナリティが不良になる原因は加工精度の低さや人為的ミスなどさまざまですが、いずれも結果としてコネクタの不良につながってしまいます。こうした不良品流出を防ぐためには、コプラナリティ検査が必要不可欠です。

しかし目視や手作業による検査では精度や検査数に限界があります。人為的ミスや人手不足などほかの課題もあるでしょう。デジタル技術を用いた検査を利用すればそれらの課題が解消できるかもしれません。

デジタル技術を用いた検査の自動化に興味が湧いた方は、AIを活用した外観検査の方法についてまとめた資料などもございますので、ぜひお気軽にご覧ください。

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