さまざまな工程をライン化する(決まった一連の流れにする)ことで、同じ製品をスムーズかつ大量に作ることができるライン生産方式。工程順に機械・設備を並べられることから単一製品の生産に優れており、効率よく大量生産ができます。
しかし、ライン生産方式による生産だけでは安価でも高品質な製品を製造することはできません。欠かせないのが検査です。ライン生産においては「インライン検査」と「オフライン検査」が用いられます。
今回の記事では、ライン生産における「インライン検査」と「オフライン検査」の概要と、それぞれのメリットやデメリットをご紹介します。
インライン検査とは
インライン検査とは、生産ラインの中に検査工程を組み込んだ検査方法のことを指します。全数検査がしやすく、生産性に優れている点が特徴です。
ただし、目視での検査は人の体力や能力に限界があります。そのため、検査装置を活用して自動化する場合がほとんどです。
インライン検査の方法
インライン検査は、生産ライン上に対象物の計測を行うためのセンサーを設置して、あらかじめ設定されたしきい値を元に、製品の良否判定をシステム上で行います。
現場によって方法は異なりますが、たとえば事前に良品と不良品のサンプルを用意して、CCDカメラの画像から不良判定される寸法や検出個数の設定を行います。製品に異物があった場合は、設定された判定条件に 従ってシステム上で良否判定が自動で実施されます。不良の水準に達した異物であると判断した場合は、個数判定などを行って製品の良否を出力します。
オフライン検査とは
オフライン検査は、生産ラインの外にある検査工程で行う検査のことです。精密な検査を実施しやすい点が特長ですが、検査を行う製品を生産ラインから運搬したり計測を行ったりするなどといった作業が必要となるケースが多いため手間と時間がかかってしまいます。
インライン検査は生産ラインに検査工程を組み込む(In Line)、オフライン検査は生産ラインと検査を分ける(Off Line)と考えるとわかりやすいでしょう。
オフライン検査の方法
オフライン検査は、生産ライン上での実施や管理が難しい複雑な検査や物理的な検査のほか、インライン検査機を導入できない連続生産ラインなどで実施されることが一般的です。生産スタートとエンドで実施して異常が見つからなければ、対象ロットの製品は良品であるという判断に用いられることもあります。
生産ラインが複数ある製造現場では、すべての生産ラインに同じインライン検査機を導入することは困難です。こうしたケースでは、品質保証のために抜き取りによるオフライン検査が行われることもあります。
インライン検査とオフライン検査のメリット・デメリット
インライン検査とオフライン検査は以下のとおりそれぞれにメリットとデメリットがあるため、現場の環境や状況に応じて使い分けられます。
【インライン検査】
メリット |
デメリット |
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【オフライン検査】
メリット |
デメリット |
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上から順番に詳細を見ていきましょう。
インライン検査のメリット
インライン検査の主なメリットは以下のとおりです。
- 全数検査を実施しやすい
- その場で異常検知できる
- 自動化で人件費を削減できる
インライン検査は生産ライン上で行えるため、全数検査に適しています。その場で異常検知ができるので、迅速なフィードバックも可能です。イニシャルコストは発生しますが、自動化に対応しやすく人件費を削減できることもメリットです。
品質を保証しつつ人材不足を解消したい場合には、インライン検査が向いています。
インライン検査のデメリット
インライン検査の主なデメリットは以下のとおりです。
- 自動化には設備設計が必要
- 設備の導入に手間がかかる
- イニシャルコストが発生する
自動化するには導入するために設計を行う必要があるほか、設置にも手間がかかります。生産ライン上で検査を行うには設備を導入しなければならないので、イニシャルコストも発生してしまいます。
設備導入の手間や費用をかけたくないなら、インライン検査は不向きです。
オフライン検査のメリット
オフライン検査の主なメリットは以下のとおりです。
- 精密な検査がしやすい
- 抜き取り検査ができる
- イニシャルコストがかからない
生産ライン上で検査を行うわけではないので、検査時間が生産ラインのスピードに影響することはありません。そのため、時間のかかる精密な検査が行いやすく抜き取り検査にも向いています。インライン検査のように特別な設備を導入する必要がないので、イニシャルコストがかからない点もメリットです。
オフライン検査のデメリット
オフライン検査の主なデメリットは以下のとおりです。
- 人の検査では品質にバラつきが出る
- 全数検査には不向き
- 人の検査では人件費が発生する
人が行う検査では品質の均一性を保つのが難しいほか、1人あたりで実施できる検査数が限られるため全数検査にも向いていません。また、検査員を増やすほど人件費は高くなります。
インライン検査とオフライン検査の比較
インライン検査とオフライン検査にはどのような違いがあるのでしょうか。
生産ライン上で検査を行えるインライン検査は、全数検査を行えるほか自動化しやすい点が特徴です。そのため、生産数の多い製品を検査するのに適しています。
ネジやナットのような製品が該当しますが、人の目で全数検査を行う場合は人件費と手間がかかってしまうほか、品質のバラつきも懸念されます。インライン検査であれば自動化できるので、イニシャルコストは発生するものの人件費も手間もかからないうえ一定の品質を保つことができます。
一方のオフライン検査は、生産ライン上で検査をするわけではないので特別な設備を導入する必要がなく、精密な検査を実施できます。そのため、形状が複雑で単価が高く、生産数の少ない製品の検査に向いています。インライン検査で使われる画像センサーでは死角が生じて検査精度が落ちるほか、画像センサーの数を増やすにも膨大なイニシャルコストが発生するため、このような製品に不向きです。
以上のような特徴を踏まえたうえで、インライン検査とオフライン検査を使い分ける必要があります。
抜き取り検査と全数検査とは
製造現場で実施される検査には、インライン検査とオフライン検査とは別に抜き取り検査と全数検査があります。この章では、それぞれの概要説明します。
抜き取り検査とは
抜き取り検査とは、検査ロットから抜き取った試料の検査を行うことです。
抜き取った試料からロット全体の良否判定を行うため、全数検査よりも検査にかかる手間や時間を削減できます。
検査工程にかかるコストが抑えられる利点がありますが、試料以外に不良品が混ざっていることに気づけないリスクがあります。また、試料が不良品だったためにロット全体が不良品とされてしまい、ロットに含まれるの良品がムダになる場合もあります。
繊維製品や建築機材など「材料の引張試験や破壊試験などを行う製品や部品」のほか、「合格ロットの中にある程度の不良が混在しても許される製品」、「ロット内で品質が安定している製品」などで実施される場合がほとんどです。
抜き取り検査の分類
抜き取り検査の検査方法は2つに分けられます。
- ロット別抜き取り検査
- 管理抜き取り検査
ロット別抜き取り検査とは、「同じ装置、同じ材料を使って製造した製品」の中から一定数の試料を抜き取って検査する方法です。一般的に抜き取り検査といえばロット別抜き取り検査のことであり、この結果によって良否を判定します。
管理抜き取り検査とは、製造工程の各所で試料を検査する方法です。
各製造工程の状態を管理するために行われる検査であり、品質管理で利用する管理図の作成やタクトタイム調査のためのデータ取得など、特殊な管理を行う目的があります。
一般的な抜き取り検査は製品が対象なのに対して、管理抜き取り検査は機械、装置、作業者、作業方法などを判定するために行われます。設備や装置の不具合だけでなく誤った作業も早期に発見し、修正することが可能です。一般的な抜き取り検査と比べて試料は少ないことがほとんどです。
全数検査とは
全数検査とは、対象の製品を一つ残らずすべて検査する検査方法のことです。
対象の製品をすべて検査するため、その製品の品質を完全に保証することができます。検査の実施には大きな労力や手間がかかりますが、判定そのものにミスがなければ不良を限りなくゼロに近づけることができる方法です。品質保証の観点から見ると、理想の検査方法であるともいえます。
一方で、製品の数量や価格によっては不経済になってしまう場合もあります。また、破壊検査のように製品の価値がなくなる検査には実施できません。このように全数検査が難しい場合は、抜き取り検査が行われます。
全数検査が必要となるケース
以下のようなケースでは、全数検査が必要となります。
- 不良品が人命に危険を生じる可能性がある
- 製品が高額
- コストや時間、手間がかからない
不良品が1つでも市場へ流出すると人命に危険が生じてしまう自動車のブレーキやエアバッグ、医療機器などは、全数検査を実施して不良品が漏れないようにしなければなりません。
高額な製品の全数検査は、コストと時間をかけても十分な費用対効果を得られる可能性があります。出荷した製品から不良品が見つかった場合の対応に発生する費用が、全数検査のコストを大きく上回る場合があるためです。
また、全数検査にコストや時間、手間がかからないという場合も、全数検査を行うとよいでしょう。
全数検査が必要なこれらのケースに当てはまる製品の一例が食品です。金属類やガラス片といった異物の混入を検出するためにX線異物検出器や金属探知機を使った全数検査が実施されます。異物混入が消費者に重大な危害をもたらす可能性が高く、全品の回収に多大なコストがかかってしまうためです。何より、機械を使えば簡単にチェックができることも全数検査が行われる大きな理由です。
技術の進歩で全数検査が可能なケースが増加
近年は、AI技術にIoTを組み合わせた検査システムや検査装置が登場していることから、以前よりもさまざまなケースにおいて全数検査が可能になりつつあります。
たとえば、画像センサーで収集した部品や製品の撮像データを、AI技術を活用した画像処理システムを使って精査して、不良品を取り除くといったシステムを構築することも可能です。ほかには、工場内の製造用設備に接続したセンサーから部品や製品の状態を可視化したデータを収集し、機械学習を使って品質データとの相関を把握すれば、品質を判別できるアルゴリズムを作ることができます。
AIやIoTを組み合わせた検査ソリューションは、人の目と経験に頼っていた従来の検査工程を高い精度で自動化できることが強みであり、検査スピードも向上します。
従来の全数検査はコストがかかることがデメリットとされてきましたが、AIとIoTを組み合わせた検査ソリューションが登場したことで、安価なコストで購入できる可能性が高く、人手を要する全数検査よりもコストを抑えることができます。
まとめ
製造業において製品の品質を担保するためには検査が欠かせません。
技術の発展によって、より多くの製造現場で抜き取り検査から全数検査への移行が可能になりつつあります。検査対象となる製品の特性や現在の労力などを踏まえると、全数検査を実施するために必要なコストといったデメリットが解消されることもあるでしょう。
AIを活用することでインライン検査の精度を向上させる取り組みも進んでいます。検査のAI化に関する資料をご用意しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
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