ものづくりの現場では、さまざまな種類の検査が行われています。ピンホール検査も、ものづくりの分野で活用されている検査の一種ですが、どのような仕組みなのか理解できている方は少ないのではないでしょうか。本記事では、ピンホール検査の仕組みや種類、活用シーンなどを解説します。
ピンホールとは
ピンホールとは、目に見えないほどの小さな欠陥のことです。ピンは針、ホールは穴を意味し、針であけた小さな穴のように見える欠陥をこう呼びます。建築業や食品業、薬品業など、ピンホールはさまざまな業界で頭を悩ませる問題として認識されています。
たとえば、建築・建設業におけるピンホールとは、塗膜の表面に現れる小さな穴です。塗装工事では、専用のローラーを使用して塗料を対象物に塗布します。このとき、ローラーの毛が塗料を引っ張ってしまい、気泡ができてしまうことがあります。この気泡が破れると、穴があいてしまうのです。
工業においては、溶接部分に生じた小さな欠陥を、ピンホールと呼びます。高温で溶かした金属の内部に生じたガスが噴出すると、溶接箇所に極小の穴や盛り上がりができてしまいます。ほかにも、紙やフィルム、ビニール被覆電線、プラスチック包装、食品カップ、液晶など、あらゆるものにピンホールは生じます。
先述したとおり、ピンホールは目に見えないほどの小さな欠陥であり、目視だけでは検査で気づかれないケースも少なくありません。それほどに小さな欠陥であっても、消費者にさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあるため、多くの業界がピンホール対策に努めています。
ピンホール検査はなぜ重要なのか
ピンホール検査とは、ピンホールの有無を調べる検査です。企業や業界によって採用している検査手法は異なりますが、どの企業もピンホールの発見に力を尽くしているのは確かです。では、なぜそこまでピンホール検査が重要なのでしょうか。ピンホールが生じると、腐食や損傷の原因になってしまいます。もともとは極小の穴でも、腐食や損傷により穴が広がる恐れがあります。そのような箇所は、ほかの部分より脆弱になり、甚大な被害をもたらす場合があります。
たとえば、食品の包装にピンホールが生じているとしましょう。梱包や輸送の過程でピンホールが広がると、内容物が外に漏れてしまう可能性があります。また、穴が広がることで、外部から汚染物質が入り込みやすくなり、内容物に影響をおよぼす恐れもあるでしょう。
包装内の食品が汚染されると、それを食べた消費者が健康被害を受けるかもしれません。場合によっては、重大な健康被害をおよぼし、大きな訴訟案件などに発展する可能性もあります。食品を扱う企業にとって、これは今後の事業継続にも関わる致命的な問題といえるでしょう。
また、建物の塗装にピンホールが生じた場合、そこから内部が腐食し、建物の骨格部分である躯体に悪影響をおよぼす可能性があります。その結果、建物の耐久性低下や雨漏りの発生といった問題が生じる恐れもあるのです。
このように、あらゆる業界において、ピンホールは撲滅すべき欠陥です。だからこそ、ものづくりの世界においては、適切にピンホール検査を実施し、欠陥を早期発見しなくてはなりません。
ピンホール検査の仕組み
ピンホール検査の種類はいくつかあり、目視検査や気密検査、浸透探傷検査、超音波検査、放射線透過検査、放電式検査、外観検査などが該当します。従来のピンホール検査で最もよく用いられていたのは浸透探傷検査です。これは、浸透性のよい検査液を対象物の表面に塗布し、現像処理をすることでピンホールの有無を目視で確認できるようにする検査です。
浸透探傷検査にもいくつか種類がありますが、最もよく用いられているのは溶剤除去性染色浸透探傷検査と呼ばれる手法です。前処理で表面を洗浄してから浸透処理を行い、浸透液を除去した後に現像して検査を行うといった流れで実施されます。
ただし、浸透探傷検査は事前処理に多大な手間と時間がかかり、対象物の素材によっては検査が難しいといった問題がありました。そこで、現在では、光を照射してピンホールを検出する検査や、AIを用いた外観検査など、さまざまな手法が誕生しています。
外観検査については下記の記事でも解説しています。
関連記事:外観検査とは?検査の必要性や項目、発見できる不良など徹底解説
ピンホールの主な検査方法
従来よく用いられていた浸透探傷検査については先ほど紹介したので、ここではそれ以外の手法を解説します。
目視検査は文字通り、目視でピンホールの検出を行う検査です。対象物を人の目でチェックし、欠陥の有無を確かめます。目で見るだけでは発見にいたらない可能性があるため、ルーペを使用することもあります。
気密検査は主に容器の欠陥検出に用いられる手法で、2種類あります。容器に窒素を注入し、水を張った水槽に入れ、内部から泡が出ないかどうかをチェックする「水没検査」と、容器に発泡スプレーを塗布し、窒素ボンベで容器内に窒素を送ることで、発泡の有無を確認する「発泡検査」がこれにあたります。
放電式検査は、欠陥があると考えられる部分を電極ではさみ、電圧をかけてピンホールの有無を確認する手法です。穴が開いていれば、電極から放電アークが発生します。
カメラを用いた外観検査では、主にCCDカメラを使用します。ラインを流れる製品をCCDカメラで撮影し、情報を画像処理装置に送ります。ピンホールの特徴と一致すると判断したときには、警報を発して知らせてくれます。
超音波検査は、主に容器の欠陥検出に用いられる検査です。容器内に圧縮空気を送り込み、小さな穴から空気が噴出するときに発生する超音波を受信機で検知する仕組みです。穴の大きさによって発する超音波の音量が異なり、そこから穴のサイズも判別できます。
ピンホール検査の主な利用シーン
ピンホールは、あらゆるものに発生する可能性がある欠陥です。そのため、ピンホール検査の利用シーンは多岐にわたります。建造物の塗装やコンクリート壁などのほか、食品や薬品のプラスチック包装にも用いられています。現在では、さまざまなピンホール検知器がリリースされています。プラスチック被覆の欠陥検知に特化したものや、食品や薬品容器の検査を得意とするもの、絶縁体の不良を検知するものなど、それぞれの企業が自社の製品にマッチした検査機器を用いなければなりません。
AI外観検査システム「AISIA-AD」なら些細な欠陥も見逃さない
AISIA-ADは、AI技術を搭載した外観検査システムです。現場の環境に合わせた、最適なAIモデルを採用できる検査システムであり、目視検査を行う熟練スタッフの知識や技術を機械学習させて、精度の高い検査を実施します。AISIA-ADなら、ピンホールの検知だけでなく、印字ミスや汚れなど、あらゆる不良の検知が可能です。判定精度向上機能も実装しているため、利用しながら判定精度を高められる点も魅力といえるでしょう。
人が行う目視検査の場合、いくら熟練したスタッフだったとしても、欠陥を見つける能力にはバラツキがあります。また、極小の欠陥を発見するには集中力が求められますが、人間の集中力はそれほど長く継続しません。気のゆるみや疲労など、さまざまな要因により不良を見逃してしまう可能性があります。一方、AIを用いた検知器ならそのような心配もなく、安定した検知精度を保てます。
また、AISIA-ADを導入すれば、検査スタッフの数も最少に抑えられます。これまでのように、ピンホールの検知に多くのスタッフを配置する必要がなくなり、余剰のスタッフは主力業務や別の仕事に割り振ることができます。
まとめ
ピンホールは小さな欠陥ですが、発生すると企業の信頼を著しく落としてしまう可能性があります。そのようなことにならないよう、企業はピンホールの発見に全力を尽くさなくてはなりません。
浸透探傷検査をはじめ、ピンホール検査にはさまざまな手法があります。自社に合ったものを選定する際は、判定精度や得られるメリットも考慮して判断するとよいでしょう。
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