AI外観検査とは、人による目視、あるいは検査装置を使っている外観検査業務をディープラーニングによる画像認識で自動化、効率化をすること、またはそれを実現するソリューションのことです。
「ものづくり大国」である日本の製造現場では、少子高齢化の影響による労働力の減少から「生産性の低下」や「品質の低下」といった課題が浮上しています。グローバル展開するメーカーが国内回帰する動きもあるため、労働力の減少傾向は今後続く見込みです。
しかし、労働力が減少しても製造現場では品質や生産性を維持向上していく必要があり、高品質な製品の安定生産には「外観検査」が欠かせません。高品質を維持しつつも人員を有効に活用するためのツールがAI技術であり、今後の製造業には不可欠な存在とされています。
そこで今回の記事では、外観検査にAI技術が活用されるようになった背景とそのメリットについてご紹介します。
AI外観検査とは?
AI外観検査とは、製造品に傷・汚れや異物の付着・混入といった外観の不良を、AIによって検査することです。
従来、外観検査は検査員が目視で行っていましたが、近年は人手不足の解消や検査工程の効率化などを図るためにAIで検査を自動化するケースが増えています。具体的には、カメラで撮像した製造品の画像をAIの画像認識技術を使って解析し、外観に不良がないか検査します。
目視検査よりも速度や精度が向上し、検査員の習熟度や体調などに左右されずに検査品質を維持できるといったメリットがあります。
外観検査とは
外観検査は、製品や部品の外観における欠陥を目視や装置でチェックして良否判定する検査のことです。英語では「Visualin Spection」と訳されます。
外観検査についてはこちらの記事でも詳しく解説していますのでぜひ併せてご覧ください。
外観検査とは?目的や発見可能な不良など徹底解説
AIとは
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、「人工知能」と訳されます。明確な定義は定まっていませんが、一般的には学習・推論・判断といった人間の知能の働きをコンピューターで再現したもの、と解釈されています。
AIの歴史
年代 |
変遷 |
主な技術・出来事 |
1950年代 |
第一次人工知能ブーム |
チューリングによる提唱 |
1960年代 |
自然言語、ニューラルネットワーク |
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1970年代 |
冬の時代 |
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1980年代 |
第二次人工知能ブーム |
知識ベース、音声認識 |
1990年代 |
データマイニング |
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2000年代 |
第三次人工知能ブーム |
ディープラーニング |
2010年代 |
画像認識 |
AIの種類
機能の観点から、AIは大きく「特化型AI」と「汎用型AI」の2つに分けられます。
特化型AI
特化型AIは、特定の課題を解決することに特化したAIです。例えば、気象データを分析した天気予測システムや、画像認識、言語処理など、狭い範囲のタスクに対応することができます。
汎用型AI
汎用型AIは役割が限定されておらず、あらゆる課題を解決できる能力を持っています。柔軟性が高く、様々な状況に適応できることが特徴です。しかし、現状では完全な汎用型AIの実現は難しく、主に特化型AIが多くの企業で活用されています。
外観検査におけるAI活用の背景
従来の画像認識による外観検査は、精密さにおいて検査対象や環境などの条件によって良否判定の結果が左右されるといった課題がありました。
たとえばシミがあるガラス製品を不良品として判定するというルールを設定すると、目視検査では良品としていた目立たないシミも不良品として検出されてしまいます。逆に過検出を防ぐために不良判定項目からシミを除外すると不良品が良品として判定されてしまいます。
また、こうした判定の基準や項目は市場や顧客からのフィードバックなどを受けて常に変動します。従来の画像認識では、判定基準に変更が発生するたびにルール設定を修正する必要があるため、工数がかさむ点も課題でした。
そこで、これらの課題を解決する手段として活用されるようになったのがAIです。AIは過去のデータから学習しながら良否判定を行うため、従来の画像認識ではルール化でカバーできなかった判定基準の設定が可能になり、変更が発生した際にも工数をかけずに対応できるようになります。
このように、ルール設定の困難化、設定工数の増加、AI技術の発展といった背景を受けて、近年はAIを活用して外観検査の自動化を推進する現場が急速に増えているのです。
画像認識・異常検知に活用されるAI技術
1.ディープラーニング(深層学習)
ディープラーニングとは、本来「データを複数の階層にまたがって、学習する」ことを指します。deepとは深層という意味があり、深層学習とも呼ばれています。ですが、「大量のデータから自動的に学習できるAI」のことを指して使われることが一般的になってきています。
このディープラーニングによって、非常に高度な画像認識、音声認識や、自動翻訳、そして異常検知に対しての実用的な能力を手に入れたと言えます。
関連記事:異常検知におけるディープラーニング(深層学習)の活用
2.GAN(敵対的生成ネットワーク)
GANは2つのニューラルネットワークを敵対させ、互いに競わせて学習を深めていきます。この動作メカニズムから、GANは敵対的生成ネットワークと呼ばれるようになりました。
GANが画期的とされるのは、今までの機械学習に必要だった訓練用のデータの準備が必要なくなることです。特に2つ生成したニューラルネットワークがお互いの存在のみで「鍛え合う」ことで自動的に学習するというところに特徴があります
関連記事:敵対的生成ネットワーク・GANを用いた異常検知とは
3.Metric Learning(距離学習)
Metric Learningは距離に基づいた特徴的な量の空間について機械学習を行わせる手法です。画像データに写っている検査物を構成する要素の「距離が近い=似ている」というように判断を行います。転じて「距離が遠い≠似ていない」という考え方をすることができ、距離が遠いものを異常と判断することで異常検知に応用することができます。
関連記事:Metric Learning(距離学習)は異常検知にどこまで使えるのか?
4.AutoEncoder(自己符号化器)
AutoEncoderは、もともとは次元削減の手法として注目されていました。AutoEncoderは、機械学習における次元削減に有効な手法の1つです。 ですが、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)やRNN(リカレントニューラルネットワーク)など、最近の人工知能アルゴリズムの中に次元削減処理が含まれるようになっているので、事前処理としてAutoEncoderが使われることは少なくなってきています。そうした事前処理に代わり、正常データだけを学習する異常検知モデルへの適用に注目が集まっています。
AI外観検査のメリット
今後は、AI外観検査ソリューションの普及が見込まれます。外観検査にAIを活用するメリットは、以下の5つです。
- 生産性の向上
- 検査品質の均一化
- ヒューマンエラーの防止
- 細かな点まで検査可能
- 設定作業の短縮化
上から順番に、詳細をみていきましょう。
生産性の向上
人間による目視検査では、人が物理的に不具合を認識できる速度にしか対応しません。しかし、コンピューターによる画像認識検査であれば瞬時に判断ができるので、生産性の向上が見込まれます。
また、目視検査の場合は何らかの不具合が発生するたびに検査員の負担が増えてしまいます。不良の発生頻度があがると見逃しのリスクが増えたり検査速度が落ちてしまったりすることから、検査員の増員が必要になる場合もあります。生産に必要な人員を検査員として配置せざるを得ない場合は、生産性が落ちてしまうでしょう。
AIによる自動検査を導入すれば必要な人員を最小限に限定できるので、検査員に割いていた人員を生産工程に回して生産性を向上させることも可能です。
検査品質の均一化
AIを活用すれば、検査品質のばらつきを限りなく均一化できます。
従来の人間による目視検査では、検査員の習熟度や経験、その日の体調や精神状態によって検査品質が左右されてしまうこともありました。
また、限度見本を用意しても判定にばらつきが出ることもあります。
たとえば、製品に生じた変色の濃淡で不良を判別する場合です。明らかに限度見本より薄いものでも、自身の判断に自信が持てない検査員は「不良」と判定しまいがちです。起こり得るのは、限度見本よりも濃い変色の製品を「良品」と判定して不良が市場へ流してしまい、回収を余儀なくされるケースです。
人間による不安定さのないAIであれば、オーバーキルや見逃しといったリスクを回避できます。
ヒューマンエラーの防止
検査を自動化すると検査員が不要なので、人的ミスが発生しません。
そもそも人間による目視での外観検査は、高度な集中力や異変を察知する洞察力が要求されます。原因は、不注意や注意力の低下、見落としなどさまざまで、「指示を忘れていた」「判定ボタンを押し間違えた」といった初歩的なミスもあります。
不良品を見逃してしまうことで、不良品が発生する原因を突き止めるのに時間がかかるだけでなく、最悪の場合は市場へ流出した不良品を回収しなければなりません。
そのため、熟練の検査員が集められることも多いのですが、それでもヒューマンエラーを完全に防ぐことは不可能です。
AIを活用することで、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。
細かな点まで検査可能
画像認識システムを用いると、細かい不具合でも検出することができます。
従来の外観検査の場合、精度を高めるには視力の高い検査員を集めたり製品や部品を拡大できるレンズを使用したりする必要があります。
たとえば、ネジやナットなどの金属は裸眼での検査が可能です。しかし、プリント基板やセラミック基板では2倍から4倍に拡大できる拡大鏡、カメラのレンズなどは最大300倍に拡大できる顕微鏡を使わないと検査ができません。
しかし、高画質な画像センサーを搭載した画像認識システムを使えば、肉眼では認識できない小さな不具合も瞬時に検出できるのです。
設定作業の短縮化
新しい設定を行う作業を短縮できることも、AIを活用するメリットです。
従来の画像認識システムでは、新製品が登場するたびにその不良を判定するルール設定を行う必要がありました。システムによっては専門知識を持った人材しか扱えず、しかも膨大な時間や労力を要したのです。
しかし、学習機能を備えたAIを活用することで、新製品が登場しても学習用の追加データさえ用意できれば柔軟な検査に対応できます。
AI外観検査と従来の外観検査との違い
目視検査 | 外観検査装置 | AI外観検査 (汎用パッケージ) |
AI外観検査 (オーダーメイド) |
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---|---|---|---|---|
外観検査の判定方法 | 人間の目 | ルールベース | 単一のAI処理 | 複数のAI処理 |
精度のムラ | ||||
柔軟性 | ||||
学習に必要な画像枚数 | 不要 | 少量 | 100枚~ | 100枚~ |
導入コスト | 人件費/教育コスト | 数百万円~ | 数百万円~ | 1,500万円~ |
実装までの期間 | 不要 | 5ヶ月~ | 3ヶ月~ | 5ヶ月~12ヶ月 |
AIと検査機には、人間と異なり疲労による判断ミスは起きないという共通の特徴があります。一度設定や学習をした欠陥はほぼ認識できるため、不良品の出荷を減らすことができます。
しかしAIと検査機にも得意不得意があります。自社の検査対象にとって適したほうを選ばないと、余計な負荷やコストが発生し、逆に効率が悪くなることもあります。従来実用化が難しかった外観検査の置き換えを実現するには、製品・撮像・運用の条件によってAIと検査機の適正を見極め活用することが重要です。
既存の製造ラインに設置された検査機とAI外観検査を組み合わせることで、過検知などの課題を解決することができます。自社のワークとの相性を理解するために、ルールベースの検査機とAI外観検査システムの特徴と違いについて理解しておきましょう。
検査機(ルールベース)の特徴
■メリット
- 人が設定した検査ルールに該当すれば、100%の精度(ロジック)で判定が可能
- ピンポイントで局所(部)的な異常であれば、検出精度も高く、判定速度も速いので、高速で流れる製品の異常でも見つけることが可能
■デメリット
- 検査機に対して撮像した画像(ワークの各面の画像)の特徴量定義(長さや面積、重心、位置、色差、濃淡、類似度)を行う必要があり、かつその設定が複雑になる
- 検査機の設定作業が属人化する
- 明確なルール設定が必要となり、曖昧な欠陥認識が苦手なため、誤検知を防ぐ設定をした場合に過検知となってしまうことが多くなる
なお、検査機については以下の記事でも詳しく説明していますのでぜひご覧ください。
「画像検査機」を導入すべき理由と選び方を解説!
AI外観検査システムの特徴
■メリット
- 設定された条件に加え、曖昧さや柔軟性など人間的感覚を数値化して表現することが可能です。
- 厳格な設定をすることなく、自ら学習して新しいルール定義に適応していくことが可能
■デメリット
- 画像(ワークの各面の画像)から寸法や面積、位置など定量的ルールの学習と検出は苦手なため高い精度が出せない
- 目的や検査対象によって異なるが豊富な学習データ(画像)を準備する必要がある
AI外観検査が有効な検査対象の例
AI外観検査は画像認識の技術を応用して行われるため、検査装置と同様、検査に用いられる画像の質によって大きく精度が異なる傾向があります。そのため実際に対応可能かどうかはPoC(概念実証)にて検証する必要があるのですが、おおよそどのような外観検査で活用されているかをまとめると以下の通りです。
- 金属業界:割れ、欠け、バリ、寸法ズレ、変形、サビ、巣、気泡、打痕など
- 食品業界:破れ、汚れ、焼け、凹み、キズ、異物、印刷ミス、異品種混入など
- 樹種業界:シルバーストリーク、キズ、汚れ、スジ、変色、気泡など
- 電子デバイス業界:汚れや異物の付着、ショート、断線、はんだ不足など
- 日用品業界:印字の有無・かすれ・ミス、ラベル破れ、ラベルずれ
- 医療業界:液面高さ、封緘シール、内容量、ラベルずれ・破れ、印字ミスなど
- 成形・シート業界:ピンホール、フィッシュ愛、ゲル、気泡、割れ、クラックなど
上記は一例ではありますが、「属人的でない」「疲れによる精度悪化が起きない」「ルール化できないものにも対応ができる」といったAIの特徴が活かせる相性のよいワークで活用すると大きな効果を発揮することができるでしょう。
仕組みや対応可能な範囲については以下の記事で詳しく解説しています。
画像を用いた外観検査の仕組みや検出できる範囲とは?おすすめのシステムまでご紹介
AI外観検査の導入手順
以下は、経済産業省のガイドライン(2020年12月発行)によるAI外観検査の導入手順です。
手順 |
内容 |
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Ⓐ企画 |
①導入範囲の決定 |
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②機材の見積り |
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Ⓑモデル構築 |
①データの取得 |
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②モデル構築・最適化 |
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Ⓒ導入・運用 |
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Ⓐ企画
企画の段階では、導入の目的、必要な情報、手段、予算、スケジュールといった5W3Hを決定しておく必要があります。何の計画もなくプロジェクトを進めても、導入の延滞や予算オーバーなどうまくいかない場合が多いからです。着実に進行するためには、達成目標を決めたうえで設定目標を決めて適性を見極めることが重要です。
そこで、まずは導入範囲を決定します。いきなり全検査をAIで自動化するのは多くの場合現実的ではありません。解決したい課題を整理し、AIによる自動化の必要性を確認したうえで、見込める効果や実現可能性などを基準に自動化の対象を選定します。
また、自動化に必要な機材を整理して費用の概算を見積もります。目視検査から移行する場合は揃えなければならない機材が当然多くなりますが、すでに検査機を使っている現場では既存の機材をそのまま使える可能性もあります。見込める効果とコストをもとに、AIの導入を進めるかを判断しましょう。
Ⓑモデル構築
導入が決定したら、次にAIモデルを構築していきます。本格導入前に概念実証検証「PoC」を実施し、実現可能性と投資対効果を明確にすることをお勧めします。
まずAIモデルの構築に使うデータを収集します。より精度の高いモデルを構築するためには、カメラのピントや照明の明るさ、写真内の製品の大きさを一定に保つなど、実際の検査現場と同じ条件で撮像環境を整えて撮影を行うことが重要です。
カメラや固定機具、照明といった撮像時に必要な各種機材を選定する際には、現場の環境や検査対象などさまざまな要素を考慮する必要があります。特にカメラは種類が多いため、撮像対象物の形状や素材、検出したい異常の種類などによって一番適したカメラを選びましょう。
外観検査で利用するカメラは、エリアスキャンカメラ(以下「エリアカメラ」)とラインスキャンカメラ(以下「ラインカメラ」)の2種類に分かれます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
比較項目 | エリアカメラ | ラインカメラ |
---|---|---|
価格 | 安価 | 高額 |
検査対象の大きさ | 小さな対象向き | 大きな対象も撮像可能 |
照明 | 均一な照明をあてにくい (撮像面の全体に照明をあてるため、場所によって照明ムラを起こしやすい) |
均一な照明をあてやすい (撮像ラインに均一な照明を当てることができる) |
精度 | 解像度のラインアップが豊富で選択肢が多い | 解像度のラインアップは少ないが、高精細な製品がある |
扱いやすさ | 設定や設置が容易 | 検査対象を動かすため、機材の設置や速度の調整が難しい |
AIがいかに優れていても、判断に必要な画像が判別しづらいものだと十分な精度を出すことができません。また、製造ラインの環境や検査対象によっても必要な撮像の条件は異なります。
適したカメラの選び方については以下の記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
ラインスキャンカメラとは?エリアスキャンカメラとの違いを解説
機材が揃い撮像環境が整ったら、実際に撮影して適切に画像データを取得できること確認します。
撮像については以下の記事でも詳しく解説していますので併せてご覧ください。
外観検査の重要工程「撮像」とは?検査精度を高める撮像のポイントも解説
次に、AIに学習させるために取得した画像データを加工し、それをもとに画像の特徴などを学習させてAIモデルを構築します。その後は検証と修正を繰り返し、実用化できるモデルを完成させていきます。
Ⓒ導入・運用
AIモデルが完成したら、最後に検査現場に導入します。検査現場に機材やAIモデルを設置し、AI活用効果を最大限に活かすために使用上の注意点などを含めて新しい検査方法を現場に浸透させます。
また運用開始後は、製品や不良品の判定基準の変更に応じて再学習や再構築などモデルの更新作業を行う必要があります。新しい機材で不具合が発生した場合の対応策などを講じることも重要です。運用開始後の業務フローも事前に決め、スムーズに運用・改善のサイクルを回せるよう準備をしておきましょう。
詳しくは以下の記事でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
AI外観検査システムの導入シナリオ
AI外観検査の導入費用
導入の手順でご紹介したとおり、お客様の実現したい要求に応じてどこまでの対応を行うかをケースバイケースで決定するため、どこまで何をやるかによって大きく費用は異なります。
費用については大きく、PoCのコストとPoCを元にAIのモデルを構築、実装するコストに分けることができます。
PoCの費用相場
100万円~1,000万円
PoCとはProof of Conceptの略で、概念実証のことです。かんたんに言い直すと「AIでどれくらい効率化できるかを検証する」作業です。このPoCも何をどこまで求めるかによって難易度が変わってきますので、発生する費用もピンきりです。PoCを行う企業によっても、どこまでをPoCと呼んでいるのかもまちまちですので、実際には単なる費用での比較ではなく、内容が妥当化を含めて検討する必要があります。
費用感としては、数百万円はかかると考えるといいでしょう。もちろん大掛かりなPoCが必要な場合、それ以上のコストが発生することもあります。検証に時間とコストを費やせば費やすほど、成功の確率が大きく上がるかというとそうではありませんが、そもそも実現不可能な取り組みにコストをかけてしまうという失敗を避けることはできます。そうした観点から、どこまでの情報が揃うと判断できるのかを明確にできるよう、最低限求めるものを想定した上でPoCに望むことが求められます。
構築・実装の費用相場
200万円~5,000万円
構築や実装もどこまで独自の対応が求められるかにより大きく異なりますが、一般的にはPoCの費用よりも高いコストが発生します。ソリューションによってはすでに既存のモデルを利用することで安価に抑えるといった提案もありますが、通常ワークの内容だけでなく、診断に利用する画像の撮像環境や求められる精度とスピードは企業によって大きく異なり、ほとんどの場合提供されている標準的なモデルがそのまま使えるということはありません。
数ヶ月から半年程度で完了するプロジェクトの場合、数千万円は発生すると考えると良いでしょう。
AI外観検査に必要なその他のコスト
カメラ・撮像環境
AIが診断するには画像が必要となるため、撮像に必要なカメラが必要となります。場合によっては既存の撮像機器や検査装置を活用できるケースもありますが、そういったものがない、あるいはAIの活用に適していない場合、別途調達する必要があります。
外観検査に必要なカメラについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
外観検査で使用するカメラの特徴は?最適なカメラの選び方を解説
外観検査に適したカメラとは?
エッジサーバ
AIによる異常検知をクラウド上のサーバで実行すると、一般的にネットワークの都合上結果が返ってくるまで時間がかかってしまいます。特に画像認識での異常検知の場合、大量の画像データをインターネット経由で送信することになるので、運用上望ましくありません。クラウド環境の利用料が高額になってしまいます。
そのため、インターネット上ではなく物理的に近い環境にAIによる判定を行うエッジサーバを置くことで、対応することが一般的です。判定はエッジサーバ、学習はクラウド上のサーバという分担になります。
一般的にはこのようなエッジサーバも提案に組み込まれていますが、AIのモデルだけ作れば使えるというものではなく、サーバも必要だということを覚えておきましょう。
エッジサーバ(エッジコンピューティング)についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
製造業で利用できる異常検知はエッジコンピューティング(Vol.6)
AI外観検査システム「AISIA-AD」
AISIA-ADは、最先端のディープラーニング画像認識技術を利用したソフトウェアパッケージです。Microsoft社の「Azure Machine Learning」を活用し、キズ、凹み、異物混入などの異常をAIによって自動検出することができます。
AISIA-ADには、以下の特徴があります。
- 最適なAIモデルを選択可能
- 汎化性能をもつAI
- 良品画像のみで学習
- 検査工程のトータルコーディネート
AISIA-ADは、お客様の製品特徴や運用に応じて導入いただける豊富なAIモデルを用意しています。文字認識や個数カウント、侵入検知などにも対応しています。
汎化性能があるので、従来の画像認識では実現が難しかった「ルール化困難」な異常であっても、ディープラーニングを応用した検査技術で検出が可能です。
良品画像を学習するので、立ち上げ段階や新製品の登場前であるなど不良画像がない場合でも、正常ではないと判断された画像に対して「NG」と判定できます。
AI外観検査システムでは、AI以外にもカメラや照明といった「撮影環境」、フィルタや拡散版といった「ハードウェア」、「Edgeデバイス」や「搬送設備」も重要です。お客様の検査製品の特徴や運用をお聞きしたうえで、必要な機材を必要に応じて提供します。
御社の検査対象でAIを活用した外観検査が効果的なのか、検証するサービスも実施しています。ぜひお気軽にご相談ください。
簡易AI外観検査検証サービス
まとめ
近年、AIを活用した外観検査自動化の事例は増えています。多くの製造現場で人手不足や検査の複雑化といった課題が深刻化するなか、外観検査の自動化は有効な解決策であるだけでなく、製造業にとってもはや避けては通れないステップになりつつあります。
そうはいっても、目視検査や検査機を使った検査から、どうやって自動化を進めればいいのかわからない、本当に効果があるのか不安、といったお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
外観検査自動化の進め方についてまとめた資料がございますので、ぜひご覧ください。
外観検査のAI化でどのようなメリットを得られますか?
AI外観検査が有効な検査対象にはどのようなものがありますか?
AI外観検査の相場はどのくらいですか?
・PoCの費用相場:100万円~1,000万円
・構築・実装の費用相場:200万円~5,000万円